俺のガンプラが擬人化した。何を言ってるかわか(ry 作:高坂ミチル
『ユニコーンガンダム』正式名称、『RX-0ユニコーン』
機動戦士ガンダムシリーズの『機動戦士ガンダムUC』にて主人公、バナージ・リンクスが乗っていた白い機体。
地球連邦軍の対ニュータイプ(NT)用ガンダムタイプモビルスーツ。連邦宇宙軍再編計画の一環である「UC計画」の最終段階として開発された実験機。アナハイム・エレクトロニクス社が保有する月面のグラナダ工場にて作られた。
バナージ・リンクスはこのユニコーンガンダムに乗り、地球連邦軍と一緒に様々な戦いを繰り広げる。時にはビームマグナムでひゃっはーしたり、時にはユニコーン用の装備じゃないけど、などと言いながらビームガトリングを乱射してひゃっはーしたり、NT-D(ニュータイプドライブ)を発動させデストロイモードになってビームサーベルで敵をぶった切って無双しながらひゃっはーしたりと、数え上げればきりが無い。
......それで。
「そんな俺の知っているユニコーンのガンプラが擬人化してしまった姿が、君だと?」
「......その通り、です。......私自身、どうして自我をもってしまったのかは、わかりません」
俺の目の前にちょこんと正座をしながら、さも当然のようにそう言い放つ彼女。
ううむ。正直な話、にわかには信じ難いものだ。それもそうだろう。いきなり目の前の美少女が私モビルスーツのプラモデルだったんです、などと言われても信じられるはずがない。そんな話を美少女だからという理由だけで信じてしまうやつはいっそ病院に行った方がいいと思う。
「......むっ、その顔、信じてませんね、マイマスター」
「そりゃすぐには信じられないよ、そんな話。......っていうかそのマスターっていうのやめてくれ。俺には藤堂(とうどう)薫(かおる)って名前があるんだから、藤堂とでも薫とでも呼んでくれて構わないから」
「......それは、いくらマスターの命令でも、受け難いです。......私は、マスターの手によって作られた、いわば従者のようなものですから」
無表情でそんなことを淡々と告げる彼女。奴隷などと言わないだけまだマシだと考えるべきなのだろうか。いや、マスターなどと呼ばれていては到底マシだなどと言えない。
はたから見たらまるで、いたいけな美少女にマスターと呼ぶよう強制している変態じゃないか。このまま外を出歩けば、間違いなく通報される。
「......まぁ、すぐに信じてもらえるとは、思っていません。......ですから、証拠を、お見せしましょう」
「証拠?」
はい、と相変わらず表情を変えずに彼女は、スっと立ち上がり、そのまま流れるような作業で俺のベッドの布団のシーツを引っペ剥がし、その裏に隠されていた鍵を手に持つと、これまた流れるような作業で鍵のついた俺の机の引き出しに鍵を差し込んで回し、がちゃりという音を確認してからそのまま引き出しをーーー
「って何してんだてめっこらぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
開けようとした瞬間我に返った俺は、引き出しを開けようとした彼女の手を慌てて掴んで止める。あまりにも自然にその作業を行っていたため、呆然としていた。対する彼女はというと、あまり表情を変えないが、頭に『?』という疑問系を抱いているのだけはわかる。だがどうしてそんなキョトンとした顔をするんだ。
「......私は、マスターに、証拠を見せようとしただけですよ?」
「それがどうして俺の秘蔵コレクションの隠し場所と繋がるんだ......あ」
そこまで言って気付く。異常な現象に。そうだ、そうだよ。
「なんでお前......俺の秘蔵コレクションの隠し場所、知ってるんだ?」
そう、なんで俺の目の前であまり変えることのなかった無表情さを一変させてドヤ顔を作っている彼女は、俺の秘蔵コレクションの隠し場所を知っているのだろうか。あんなに厳重にしていたのに、あの多恵でさえ気付かなかった隠し場所を、今日初対面の彼女は知っていた。ありえない。
それも......まるで最初っからそこにあることを『わかっていた』かのような動きだった。
そこまでわかっているなんて、と思いストーカーの可能性を考えたが、破棄する。こんな美少女が俺みたいな普通の男を追いかける理由もないし、仮に、俺に気付かれずに追いかけてきたとしても、こんな美少女がここら辺をうろついていれば、すぐに噂になる。ここはアパートなのだから、住人である俺にもすぐに噂は聞こえてくるはずなのだ。
しかしそれがないということは......。
「......マスターが、私、ユニコーンを作ってから、1ヶ月が経ちます」
「あ、あぁ。確かに、ユニコーンと『あいつ』を作ってから、そろそろ1ヶ月が経つな」
「......マスターは私のことを、大切に、それはもう、大切に扱ってくれました。......ただの、物なのに、無機物だったのに」
な、なんか、微笑みながらそう言われると、恥ずかしいんだけど。っていうか彼女、ひょっとしてだが、無表情などではなく、あまり感情表現が上手くないだけなのではないだろうか。だから時々感情がはっきりと表情に出ている時があるのでは?先程のドヤ顔だったり、今のこの微笑みだったり。......いや、今はそんなことどうでもいいか。
「......私は、その1ヶ月、マスターのことをずっと見ていたのです。......この人は優しい人なんだな、と思いながら。......私としては、そんな優しい人がマスターで、光栄です」
「いやだからそれがどうして俺の秘蔵コレクションの隠し場所と......」
ずっと、見ていた?
仮に、今目の前にいる彼女が、ユニコーンとしよう。この1ヶ月ユニコーンは、ずっと俺の部屋の机の上に、『あいつ』と一緒に飾られていた。つまりユニコーンは、俺のこの部屋での出来事は、全て知っているはず。コレクションの隠し場所であったり、そのコレクションに行き着くための鍵のありかであったり。
......え?じゃあ、まさか?
「も、もしかして、本当にユニコーンなのか!?」
「......先程から、何度もそう、伝えてます」
ぷぅ、と無表情のまま頬を膨らますその姿を可愛らしいと思えるのだが、今の俺はそれすらも考えきれない。
ガンプラが人になった?美少女になった?そんなのありえない。物理的に無理だ。じゃあどうして彼女は俺の部屋のことを知っている?ストーカー?いやそれはない、ありえないとさっき考えたばかり。そうだ。もっと証拠が必要だ。
「ユニコーンっていうわりには、角と手足のアーマーくらいしかつけてないが......武器はどうした?ビームマグナムは?見たところ何も持っていないようだが?」
「......武器は、出せるには、出せます。......ですが、マスターに危害が及ぶかもという、万が一のことを考えて、出しません」
それじゃあ証拠にはならない。どうすれば彼女は武器らしい武器を見せてくれる?それとも、本当は武器なんか持ってなくて、ただのコスプレだったのか?いや、それにしては辻褄があわない。
怒らせれば武器を取り出したり?
「えっと、ユニコーンのばーか」
「......怒らせて、私に武器を取らせようとお考え、ですか。......危害が及ぶ、かもしれないのですから、その手には乗りませんよ」
「ユニコーンかっこ悪い」
「......乗りません」
「ユニコーン弱い」
「......怒りません」
「ビームマグナムとか対したことない」
「......無駄です」
「貧νーーー」
「......右目と左目、どちらをこのビームマグナムで、ぶち抜かれたいですか?」
あ、これ本物だわ。
いつの間にか持っていたビームマグナムの銃口を向けられた瞬間、そう悟った。うんわかった。この子ユニコーンだわ。考えるな、感じろってこういうことだったのか。
しかしユニコーン......貧νなこと、気にしてたんだな。
「......マスター?」
「誠に申し訳ございません」
まぁそんなこんなで俺は、彼女のことをユニコーンと認めることにした。何故ユニコーンが擬人化してしまったのかは謎すぎるが、今は考えていてもしょうがない。彼女自身わかっていないようだし。今はとにかく、こうとだけ言えるだろう。
アパートでの一人暮らしではなくなった、とだけ。
作者はユニコーンが好きですが何か。いいじゃないか、こういう物語が一つくらいあったって。
え?主人公の持っている秘蔵コレクションってなに?あれですよ。保険の参考書ですよ。
感想等、心待ちにしております。
P.S.そろそろ冬休み。来年は受験の時期になりますねぇ(遠い目)。忙しくて更新遅れたらごめんなさい。