マイナス一誠とシトリーさん   作:超人類DX

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ってまあ、書いてる内に斜め45度と化した。


幼馴染みが普通と何時から錯覚した?

 裁判に勝てた。

 ……ってのは大袈裟な話だが、センパイのお陰で俺は連中にスキルがバレる事は無かった。

 それどころか、これ以上俺を無意味に探るようなら魔王の人にチクるぞと脅し入れたら本当に黙ってしまった。

 魔王はやっぱり彼女達にとっては絶対らしい。

 連中の目は最後まで俺に懐疑的だったが、必要以上に互いが干渉しなければ宜しいじゃないかというセンパイの意見で取り敢えずまとめられ、その日の裁判は閉廷した……これがこの前の出来事だ。

 

 で、つい先日は球技大会があったりした。

 しかしながら俺は出てない。

 ていうか出るクラスも無ければ部活も無い。

 だから見ていただけ。

 兄者のチームを見てたり、その過程で金髪の男の方が色々ミスしまくってたのを只見ていただけ。

 まあ、元々運動の類いは苦手だし見学なだけ俺としてはありがたかったので、ボーッと蟻の巣数えながら見てたよ。うん……………まさかトモダチと会うなんてこの時は思わなかったけど。

 

 

 

 婚約騒動を鎮圧させ、球技大会も終わらせて漸くまったりとした日常に戻ると踏んでいたリアス・グレモリーだったが、そうは問屋は降ろさねぇと次なる問題と対峙していた。

 それは、今までの騒動の中に常に己と共に存在する兵藤誠八の弟である一誠が先ずはそうだった。

 誠八とは違い、純人間でありながら着々と自分達の正体(なかみ)を知り続けてありながら、彼には本当に普通の人間なのかと疑問に思えて仕方ない現象が数多くあった。

 最初は眷属の一人である小猫の報告で明るみとなった話……『幻覚を見せてきた』という事と、ついこの前直接目にした『負った傷を瞬間的に消したり出現させる』という……本当に純粋な人間ならまず不可能で不可解な現象を見せたのだ。

 当然何なのか気になるリアスとしては、本人に直接聞いてやろうと、この前誠八の家へと赴いた時にアクションを仕掛けた。

 最近精神が嫌に不安定な朱乃との小競り合いを利用して聞こうとした。

 けれど結局の所は知ることは出来ず、逆に一誠と現状で一番近い存在であるソーナに全てを潰された。

 

 

『今回の事は全て魔王様にご報告させて頂きます。

リアス……そして兵藤君……アナタ達が一般人に手を向けたとね』

 

『なっ……ま、待ちなさいソーナ! 私は只……』

 

 

 淡々と……それでいて何時も以上に冷えきった瞳でリアスとその眷属達を見据えながら言葉を発するソーナに焦りながら弁解しようとする。

 

 

『只……何ですか? アナタ達の誇大妄想が真実か知りたいだけで、ヘラヘラして一向に話そうとしないから仕方なく――とでも? 残念ですが彼のこの姿を見せられて私はアナタ達の味方は無理ですし、そもそも私は、例え彼に落ち度があろうと無かろうと関係ありません。

私は、何が何でも一誠くんの味方になりますから……』

 

 

 とりつく島がまるでない。

 今のソーナはまさにその言葉通りの態度だった。

 声を荒げる事も無ければ怒りに支配された顔でも無い……ただただ冷徹なまでの無表情で語る彼女の姿は、幼馴染みであるリアスも流石に身震いを覚えた。

 しかもソーナを怒らせるもう一つの要因として、先程から彼女の隣に座って頬に氷嚢を当てている一誠の大袈裟過ぎる大法螺だった。

 

 

『うげげ、また奥歯が取れてるし……。

どうも最近は歯を折られてばかりだぞ……』

 

 

 モゴモゴと口内を舌で探ってから口許に手を当て、何かを吐き出してからテーブルにカランと置いたソレは紛れもなく一誠の奥歯であり、血で真っ赤に染まっていた。

 

 

『ぐっ……さ、さっきまでその傷を魔法みたいに消してた癖に……!』

 

『はぁ? いやいやいや、んな訳無いでしょうが。

ほら、俺の永久歯の奥歯がこんな様なんですけど? これでもまだ俺が何かしたみたいな事言うんですか? まあそんなに『お兄ちゃん』が殴った事を無かった事にしたいのならそれで良いですけど――』

 

 

 ソーナ来る直前に見せたあの不可解な現象は気のせいでは決して無かった。

 それなのに、あくまでも一誠とソーナは『お前らの誇大妄想だよ』と言わんばかりの惚けた態度で、逆に自分達を責めているものであるが故に、リアスと誠八の顔は悔しそうに歪んでいた。

 しかも一番に厄介なのが……。

 

 

『よくはありません。一誠くんは毎回被害を被害と思わないでヘラヘラ出来るから良いかもしれませんが、私は違う。

好きな男性が『只言い方に苛立った』という理由で殴られて黙ってるられる程大人じゃない』

 

 

 ソーナが全面的に一誠の肩を持つからだ。

 しかもサラリと好きとまで宣う徹底ぶりだった。

 

 

『だから私はやれるだけの仕返しを代わりにやる。

その為には何だって利用する……他の事なら一誠くん同様にヘラヘラ笑えるかもしれないけど、これは譲れない……だから覚悟してくださいリアス――そして皆さん』

 

 

 

 過負荷(わたしたち)相手にルール無用で戦おうとする愚かさを……。

 

 

 ズズズ……寒気を感じる魔力がソーナの身体から溢れ、口を半月に吊り上げた一誠とを目にしたリアス達は息を飲んだ。

 そして悟った……勝つ勝たないでは無く、この二人と事を起こしたらナニかを台無しにされると……そして気付いた。

 誠八もリアスも小猫も祐人もアーシアも朱乃も解ったのだ。

 

 

 『ああ、本当の意味で同じなんだこの二人』

 

 

 そんな気がしただけかもしれない。

 ひょっとしたら違うのかもしれないけど、リアス達は思ってしまったのだった。

 

 

『これは差し歯確定かなぁ……幾らすんだろ?』

 

『私が治療すれば何とかなります……痛かったでしょう?』

 

『ええ、まあ……蜂の様に刺すって言葉を身を以て体感しましたわ。ホント生きてるのが不思議なくらいだぜ』

 

『……………』

 

 

 何を一誠とソーナが隠しているのかは知らないが、これ以上踏み込んだら危険なのかもしれないと……。

 

 

(私も言われてみたい……『貴女は悪くない。』って……)

 

 

 そしてそのナニかは、リアス達の中の誰かに埋め込まれた事に……本人も気付かないまま時は流れ、今度は別の問題がリアス達へやって来た。

 それが……本日教会から来た二人のシスターである。

 一応前以て来るという話は聞いてたので慌てる事は無かったが、話の内容が内容だけにリアス達は頭が痛かった。

 

 

「分かったわ。要するにグレゴリの幹部のコカビエルから強奪された聖剣の成の果てを奪い返すか破壊するかの話に私達が介入するなって話ね?」

 

「そういう事だ」

 

「うんうん」

 

 

 リアスの何処と無く投げ槍な物言いに、派遣された二人のシスターの片割れで、青髪に緑のメッシュが入った少女・ゼノヴィアは割りと不遜な態度で頷き、もう片割れである少女は『早く話を終わらせろよ』という態度見え見えな顔でゼノヴィアと自分と幼馴染みだったらしい誠八を見てはコクコクと頷く。

 

 

「何で私達の領土なのよ……」

 

「それはコカビエルに聞いてくれ、私は知らん」

 

「確かに……ハァ……」

 

 

 二人がやって来てから幾度となるため息の理由は、今ぼやいた事もそうだが、先程から自分の後ろで殺気を隠さず放ってる騎士のせいでもあったし、昨日兄・サーゼクスから直接怒られたというのもあった。

 あの妹に甘いとされるサーゼクスが、らしからぬ厳格な態度で『彼にはソーナさん以外に干渉する事は許さない』と厳命してきたからだ。

 それは、この前ソーナが言った通り告げ口されたからかも知れないと考えるが、それ以上にサーゼクスのあの態度は『一誠にヘソを曲げられたらヤバイ』という感じがヒシヒシと伝わってきたのだ。

 只の人間に何故サーゼクスが庇うのかは知らないが、これでもう一誠の事を探るのは彼が気まぐれでも起こして自分から話でもしない限り、あの不可解な手品の種を知ることは出来なくなった………………のと、それ以上に魔王に怒られた事に凹んでいたのだ。

 

 

「事情は分かったけど、もしコカビエル達が私達に何かするようなら『正当防衛』で抵抗くらいの真似はさせて頂戴……」

 

「良いだろう。但し聖剣は……」

 

「分かってるわ、そんな毒にしかならないものをどうこうしない……約束するわ……ハァ……」

 

 

 魔王には怒られる。

 ソーナとは敵対寸前までになる。

 自分達の領土で堕天使と天使陣営が傍迷惑な事をやろうとしてる……この時点で三重苦となってしまってる現状のお陰で、普段なら別陣営の連中に噛み付く筈のリアスも自棄っぱちでホイホイ了承した。

 

 

「待てよ……」

「む……何だキミは?」

 

 

 しかも極めつけは……。

 

 

「キミ達の先輩で失敗作の生き残りだ……!」

 

 

 騎士・木場祐人が聖剣とただならぬ因縁があるという事だった。

 殺意を身に纏い、そこらじゅうに剣を出現させながらゼノヴィアと先程からソワソワしてる少女の前へとでた祐人やそれを止めようとする誠八とアーシアの存在に気付いたゼノヴィアが余計な事を言ったせいで誠八まで祐人と一緒になって怒ったもんだから、そろそろリアスは胃が痛くなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 うーむ平和だね。

 相変わらず教室には誰も居ないけど、慣れれば静かに過ごせる空間だと思えるしこれはこれで良い。

 そう思いながら今日も1日を健全に過ごせ、気分良く余韻に浸っている最中、ふと今朝方センパイに言われた事を思い出した。

 

 そういえば、今日センパイは用事があるとかで遅くなるかもしれない……なんて話を聞かされていたので、最早一緒に帰るのが自然の摂理と思ってしまっている俺としては、その用事が終わる時間まで何をしようかなと考えながら飲み物でも買おうと食堂横の自販機目指して歩いていた時だった。

 既に外は暗く、他の生徒達も殆ど居ないのでやっぱり静かでっせ……なんて思いながら歩いていると、旧校舎からけったいな音が聞こえた。

 

 

「爆弾テロか?」

 

 

 そんな訳は無いんだが、旧校舎にたむろしてる連中が連中だったので、ちょっと……ほんのちょっぴりだけ覗いてみようかなと旧校舎に足を向けると、前方から二つ人陰が目に入り、足を止めて目を凝らす。

 

 

「んん?」

 

 

 薄暗いので良くは見えないが、この時間にまで此処に残るのは教師か生徒会の人とかあの連中なので、誰かなどは限られてくる。

 気配と匂いからしてセンパイじゃ無いことは解るし、向こうも俺に気付いてないのかこっちに向かって歩いてくるお陰で、姿がうっすら見えてきて分かったのだが、格好からして先ず此処の関係者じゃ無いぞ。

 

 

「……。やっぱり止めよう。下世話は身を滅ぼすしね……うん」

 

 

 勘とかで片付けたくは無いが、それでも俺の中ではあのフード被りの二人組と関わると絶対変な事に巻き込まれる気がしてならなかった。

 悪い予感に関してはほぼ間違い無しに的中する運の良さを持つ身としては、このまま教室に戻って大人しくセンパイが来るまで待ってるべきだという結論となり、回れ右をしようとした時に事件は発生した。

 

 

「あれ? あそこに居るのって……」

 

 

 はい、バレました。

 こういう時に逃げようとすると直ぐに相手から見つかってしまう運の良さに笑えてしまうが、今はそんな場合じゃ無いので、知らん顔して逃げようとするが、そうは問屋が降ろさないのも俺の運の悪さが故だった。

 

 

「間違いない……イッセーくんよ! やっと見つけたわ!」

 

「む……先程見た兵藤誠八の弟の者か?」

 

「そうよ……って……待ってよイッセーくん!」

 

 

 何でかなんて後で考えるべきだし、どっかで聞いたような気がする声の主が意味の分からんくらいなハイテンションの理由も同じくだ。

 とにかく今はさっさと逃げようと、名前を連呼しながらこっちに向かって走ってきた怪しい二人組を振りきろうと走るが、俺の体力の無さと運動不足気味の足では駄目だったようで、気が付けば俺は背中に襲い掛かる衝撃と共に地面へとダイブしていた。

 

 

「ぐぴゃ!?」

 

 

 受け身もクソも無く、顔面をすり下ろし大根宜しくに擦りむいてしまって痛いところじゃねぇ。

 

 

「あっ!? ご、ごめんねイッセーくん。だ、大丈夫?」

 

 

 タックル咬ました謎の人物(女声)が、我に帰ったらしく、うつ伏せてで動けない俺から離れて何か言ってるが、転ばされて痛い思いをさせてくれた時点で全部遅い。

 しかしながら、この二人組に顔を擦りむいてボロクズになってる所はまだ見せてないので、密かに幻実逃否(リアリティーエスケープ)で顔面をすり下ろし大根されて血だらけになったという現実から逃げてダメージを消してゆっくりと立ち上がって見せ、自分からやっといて何故かオロオロしてる変な連中二人に俺は人として当然の疑問をぶつけた。

 

 

「いきなり何だよキミは?」

 

「え……ぁ………ご、ごめんなさい……」

 

 

 ごめんなさい…………ほう、ごめんなさいと来たかオイ。

 

 

「流星タックル咬ました理由を俺は知りたいんだけどねー?」

 

 

 謝られた。うん……まあ許すよ? そんな素直に出られたらこっちはもう何も出来ないしね。

 だから、許すついでに仕返しのつもりで取り出した釘と杭を俯いてる襲撃者の脳天目掛けてぶっ刺してやろうと後ろに回していた手に杭を持つ。

 

「その……イッセーくんが此処に居るって誠八君から聞いて、それで見付けたからつい……」

 

 

 明らかにしょんぼりした声と態度の怪しい人物の片割れ。

 さっきから俺の名前を口にしとるが、おあいにく様こっちは彼女が何者かなぞ知らんし興味なんて無い。

 

 

「あ? さっきから俺の名前を言ってるのは良いが、こちとらアンタみたい人は知らないんだけど?」

 

 

 だから少しだけ可哀想だなとは思うが、俺はこのしょんぼりしとるのとその数歩後ろで様子見てるこの二人のドタマを刺してやろうと後ろに回して持ってた杭を――

 

 

「わ、私よ……イッセーくん……忘れたの?」

 

「はぁ? …………………!?」

 

 

 したが、それは途中で止められた。

 フードが取れて見えた謎の襲撃者の顔に、俺の手は止まってしまったからだ。

 

 

「うそ……?」

 

 

 刺してやろうと腕を振り上げたまま、俺は固まってしまった。目の前の人物の顔を見てしまったせいで。

 もうかなり昔に会ったっきり見る事が無かった……初めてのトモダチに成長したとはいえそっくりだったから……。

 

 

「久しぶりイッセーくん……『私よ。』」

 

「イ、イリナちゃん……?」

 

 

 そして笑顔を見せる目の前の人物は、紛れも無いトモダチだったから、俺は持っていた思わず杭を地面に落としながら、あの頃のトモダチの名前を自然と口にしてしまった。

 

 

「うん……覚えててくれたんだ?」

 

「そ、そりゃ……まあ……」

 

 

 トモダチが居なかった俺に初めて出来たトモダチが、この紫藤イリナって子だった。

 今とは違って昔……あの男が出てくるちょっと前から知り合いで、唯一信用していた子だったから忘れる訳も無かった。

 

 

「そうか…………そうか……真面目に久しぶりだね」

 

 

 てっきり忘れられてると思ってたこの子に覚えて貰えていた……何かやっぱ素直に嬉しく思えてしまう俺は自然と笑ってしまう。

 

 

「うん……イッセーくんも『昔と全然変わって無い』から安心した……」

 

 

 それはイリナちゃんもらしく、互いに覚えていた事に対する安堵で笑い合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「一誠くん?」

 

 

 こっから話がややこしくなるわけだが。

 

 

「む」

 

「え?」

 

「あ、センパイ……用事は終わったんですか?」

 

 

 黒髪に眼鏡というスタイルで紅髪の人やらその他に隠れがちだが、やっぱし美人なセンパイが現れたので、取り敢えず再会の余韻を仕舞い込んでから俺は用事か終わったかどうかの確認をしてみる。

 するとセンパイは黙って首を横に振ってから口を開き……。

 

 

「いえ、まだだったのですが……」

 

「ん?」

 

「「……」」

 

 

 チラリとイリナちゃんと…………もう一人の人に視線を向けると、無言の二人に対してペコリと頭を下げ始める。

 

 

「話はうかがってます。お待ちしてました……」

 

「あぁ……」

 

「えぇ……」

 

「用事って……え、まさか」

 

 

 何か微妙に重苦しい空気が両者から流れる中、俺は何と無しにセンパイの用事とやらが何なのか分かってしまった。

 

 

「ええ、天使陣営の彼女達がやって来て話をする……それが私の用事でした」

 

「は、天使陣営?」

 

 

 天使って天使か? あの? と首を傾げる俺にセンパイは頷く。

 詳しく聞けば、どうも教会所属だったらしい……イリナちゃんも。

 

 

「ちょっと待て、彼は一般人だろう? それなのにその話をするのは……」

 

「構いません。彼は人間ですが、我々の事は知ってますので」

 

「む…………なら良いが……」

 

 

 イリナちゃんと一緒に居たもう一人の人がフードを取る。

 目を引く青髪に少し緑のメッシュが入ってる……………ってだけで思うところは無かった。

 

 

「悪魔とイッセーくんが知り合い…………セーヤくんもだけどイッセーくんも……」

 

 

 そんな中、イリナちゃんはショックを受けた顔をしながら小さく呟くのを俺は聞き逃さなかった。

 聞けば天使陣営って悪魔の天敵みたいなもんだしね…………って。

 

「何ですか? 一誠くんが誰と親しくしようが貴女に何の関係も無いと思いますが?」

 

 グイっと俺の腕を引っ張り、そのまま組んでイリナちゃんに対して淡々とした声を出すセンパイにイリナちゃんの目付きが鋭くなる。

 

 

「……………。離れなさいよこの悪魔」

 

「何故貴女に命令されなくてはならないのですか?」

 

「イッセーくんが嫌がってるわ」

 

「そうは見えませんが……ね?」

 

「え?」

 

 

 え、あれ……何だこの空気? え、あ、そうか……イリナちゃんにとっては敵対してる相手と仲良くなってるのがアレなの、か?

 まあ、でも……うん。

 

 

「センパイは悪魔だけどいい人だからさ。 好きだし」

 

「なっ……!」

 

「……………フッ」

 

 

 悪魔は別にどうでも良いけど、センパイは言った通りに好きだ。

 そう伝えるとイリナちゃんはまたショックを受けた表情になり、センパイは何でか勝ち誇った顔になる。

 

 

「そんな…………そこまで洗脳されて……」

 

「は? 洗脳?」

 

 そしてブツブツと変な事を言い始めるイリナちゃんに、かなり不穏な空気が見え…………………あら。

 

 

「うん、きっとそうどうせその悪魔がイッセーくんを洗脳して良いように利用しようとしてるに決まってるそうよそうに決まってるわだって昔イッセーくんと結婚する約束したもの大きな白いお家に猫3匹と子供四人と幸せに暮らすって約束したもん

それなのにあの悪魔が洗脳したせいでイッセーくんは忘れてるみたいだし私が即滅してから思い出させなきゃそしてそのままイッセーくんを本部に連れてって……ふ、ふふふ……出来るわ私なら……やってやる……消してやる……連れ出してやる……愛でてやる……フォーリンラヴでパッピーエンド相思相愛純愛ゴールイン……!!」

 

 

 真顔でブツブツと良く噛まずに言いきれるなと感心する早口で呟くイリナちゃん。

 

 

「おわ……出た。やっぱり変わってねぇなイリナちゃん」

 

 

 俺はその姿を見て、あぁ、昔もこんなんだったな……兄者が現れ、イリナちゃんと知り合いになった時もこんな感じな事を見せたせいで、兄者に敬遠されてしまったのが今では懐かしい想い出だ。

 

 

「すいません」

 

「何だ?」

 

「彼女から邪気が見えるのですが、本当に教会所属なんですか?」

 

「一応な……。どうも幼馴染みである彼と再会したせいでタガが外れたらしい……はぁ仕方無い」

 

 

 その姿に何か思うところでもあるのか、センパイが隣で頭を抱えていた青髪の人に質問すると、疲れたように肯定しながらイリナちゃんの背後に回って首に一撃入れて気絶させた。

 

 

「きゅう……」

 

「うむ……取り敢えずこれで大丈夫だ。

さてソーナ・シトリーよ……話をしたいのだが」

 

「ええ、生徒会室に案内します……此方へ」

 

「行ってらっしゃーい」

 

 

 気絶したイリナちゃんを抱えた青髪の人を案内するセンパイを見送る。

 うーん…………しかし、イリナちゃんは相変わらず妄想癖が強いな。

 結婚の約束なんて一切してねーし。




理由。

つまり、兄者が現れてからも少しだけ付き合いがあり、その時点で過負荷の素養が生まれて、地味にイリナちゃんは塗り潰されてました!

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