とある最強の警備員   作:佐藤五十六

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第六話~幻想御手編1~

幻想御手(レベルアッパー) 

その日の夜、詳しく言うとストーカーチックな錬金術師をボコボコにした翌日の夜である。

幻想御手(レベルアッパー)事件自体は、それの使用者の連続昏睡事件じゃん。

そしてその事件の起こりは、先月に起こった 虚空爆破 (グラビトン)事件じゃん。

その事件の被疑者、介旅初矢は無事に確保されたじゃん。

しかし、取り調べ中に原因不明の意識障害を起こし、入院中じゃん。

続いて起こったのが、常盤台中学の生徒を狙った暴行事件、この事件でも被疑者は意識障害で入院中。

どちらの能力のレベルも記録と一致しなかった。

疑われたのが 幻想御手(レベルアッパー)、使用者のレベルを上げるっていう都市伝説の一つだったんじゃん。

無論、警備員(アンチスキル)の方でも注意を呼び掛けてはいるが、効果は薄いじゃん。

正直やってらんないじゃん。」

苦渋というか悩みというか苦虫を噛み砕いたような表情を浮かべる黄泉川であった。

「被疑者の持ち物、全て調べたんですか?」

「ああ、 幻想御手(レベルアッパー)はおろか、共通点の一つも見つからなかったじゃん。」

「音楽プレーヤーやパソコンのデータは、調べましたか?」

「んっ?

プレーヤー?」

その声と表情からは、盲点だったとの感情がありありと見受けられた。

「原理は分かりませんが、能力ではなくプログラムであると考えた場合、視覚、聴覚のどれかに作用させるのが効果的だと思いませんか?」

「確かに、その通りじゃん。

明日、すぐに調べさせるじゃん。」

 

風紀委員(ジャッジメント)第177支部

「取り敢えず、白井さん。

話を聞かせてもらいましょうか?」

修羅と化した自分の上司、に睨まれた白井は逃亡を断念した。

「初春さん、お茶を。

白井さんには、わさび入りの例のやつを。」」

「ひぇ、それだけは、それだけは勘弁してください。」

「じゃあ、話してもらいましょうか?

どうして、警備員(アンチスキル)の隊員の一人をストーキングしていたのかを。」

「それは言えません。」

「そう、仕方ないわね。

そういえば、前に見たアニメでこんな罰があったわね。

ということで、シベリア送り25ルーブルね。」

「どういうことでしょう?」

「今、丁度冷凍倉庫の掃除の手伝いを頼まれてるのよ。

人手がいるから、助かるわ。

ついでに頭も冷やしなさい。」

「分かりましたの。」

 

警備員(アンチスキル)第73支部

「見つけたじゃん。

このサイトじゃん。」

パソコンを弄っていた、上条と黄泉川は声を上げた。

「これが 幻想御手(レベルアッパー)

見たところ音楽ファイルみたいですね。」

「何してるんですか?」

鉄装綴里、黄泉川愛穂の直接の部下にして上条の先輩ではあるが、かなりのドジっ子である。

「凶器の確認じゃん。」

「凶器って何ですか?

っていうか、なに物騒なこと確認してるんですか?」

鉄装の言葉に、黄泉川はやれやれと言った反応を示す。

「言っておくが、これは都市伝説の一端なんじゃん。

現時点では凶器ではなく、その可能性が最も高いものそれがこれなんじゃん。」

 

木山先生との邂逅

それは警備員(アンチスキル)としての実地研修を兼ねて、上条と黄泉川がパトロールに出たときのことである。

周囲をキョロキョロしている白衣の女性に出会った。

「やあ、警備員(アンチスキル)の人だね。

車を停めた駐車場の場所が分からないんだ。」

「そうですか、分かりました。

システムで検索するので、少し待ってください。」

学園都市の全ての駐車場や主要道路に関しては自動制御の交通監視システムが導入されている。

Nシステム以上の精度を誇り、違反車両を自動検出すると持ち主に対し自動で罰金の通知が届くようになっている。

自動尽くしのシステムと言え、このことが警備員(アンチスキル)達の仕事の軽減に繋がっているのだから、馬鹿にできない。

「ん?」

「どうしたんじゃん?」

「これ、ここからかなり遠いんですけど。」

「確かにそうじゃんね。」

二人の顔には、どうやったらこんなところまで迷うんだろうと言った表情が浮かぶ。

「それにしても、暑いな。」

汗をかいている木山先生は、そう言って服を脱ごうとする。

下着姿になったところで、それに気づいた上条達で取り押さえる。

「上条、手錠。

13時50分、迷惑防止条例違反で現行犯逮捕。」

道に迷っていた木山先生は、迷子から変質者にジョブチェンジした。

両手に手錠をかけられ、第73支部に連行される。

「後は取り調べじゃん。」

 

御坂・白井と木山先生との塀の向こうでの対面

留置場の面会室。

「興味深い考えではあるね。

大脳生理学の知識のあるものなら、誰にだって出来そうだ。」

「何でこんなところにいるんですか?」

「暑かったので服を脱いだのだが、側にいた警備員(アンチスキル)に取り押さえられたのだよ。

全く信じられない。」

「信じられないのは、貴女です。」

白井黒子がピシッと木山先生の意見をはねのける。

「何故だ、何故誰も分かってくれない。」

頭を抱える木山先生を白井黒子が追い詰める。

「痴女のいうことなど、酔っ払いの戯れ言と同じですの。

分かっていますの?」

隣にいた御坂の顔には青筋が立っている。

「黒子、アンタの言ってることは立派ねぇ。

でもアンタも人の事言えないでしょうが。」

全力の電撃を浴びせ掛ける。

いや全力というのは語弊があった。

死なない程度に手加減はされている。

多分…

「黒子、帰るわよ。」

黒こげの白井黒子を放置して御坂はそのまま部屋を出て行った。

 

木山先生 護送

「取り敢えず、これ以上の話は裁判所で聞こう。」

黄泉川が宣告し、背を向けてパトカーに乗り込む。

その場に残ったのは、鉄装綴里であった。

警備員と言っても、一治安組織でしかなく、

「その前にこれを花飾りの女の子に渡しておいてくれないか?」

そう言って取り出したのはCD-Rであった。

「分かりました。

上司たちには内緒ですよ。」

受け答えしたのは、鉄装綴里であった。

受け取ったCD-Rを黄泉川達は見て見ぬ振りをしている。

木山先生の乗り込んだ大型の警備員(アンチスキル)の輸送車をクラウンパトカーが前後を挟む。

たかだか露出犯のためにこんな物々しい警備が敷かれる事は無い。

しかし、護送の担当である黄泉川や上条から警備への不安が告げられ、此処まで物々しくなったのだ。

しかし、事件は起こった。

車列が高速道路を走行していたときの事だ。

突然、木山春生が立ち上がったのだ。

揺れる車内でである。

目は赤く血走っていて、何やら叫んでいる。

「私は捕まるわけにはいかないんだ。」

後々の解析にて、こう叫んでいたと分かった。

能力使用の警告(アラーム)とともに、輸送車の後ろ半分が消し飛んだ。

輸送車の停止を受け、前後のパトカーが緊急停止する。

「手を挙げるじゃん。」

車両からM4カービンを取り出し、警告する。

黄泉川達警備員(アンチスキル)は前後を挟んで包囲する。

「私には時間が無い。

時間が無いんだぁ。」

叫ぶごとに風が電撃が吹き荒れる。

「正当防衛射撃。

各自の判断で応戦するじゃん。」

各自の持つM4カービンで発砲する。

的確に頭目掛けて飛んでいた銃弾は一つも当たらなかった。

「木山先生、何やってるんですか?」

木山先生の立っているところに電撃が浴びせ掛けられる。

御坂美琴であった。

 

御坂meet初春

少し前、

「えっ、木山先生に会いたい?

初春さん本気なの?」

「本気です。

遊びなんかで言ってません。」

頑固なところのある初春がそう言うのは予想していた。

だから輸送車のルートと、どうすれば会えるかを考えてあった。

「じゃあ行きましょう。」

 

高速下の結末

高速道路に穴が開いた。

煙りが晴れた時には、木山春生と御坂美琴の姿はなかった。

しかし、下からは轟音が伝わって来る。

その頃、御坂美琴と木山春生の死闘は決着が付こうとしていた。

互いにボロボロであったが、どちらが勝った負けたという問題ではない。

木山春生の身体から白い影が浮かんできたのだ。

恐ろしく巨大なそれは、AIMバーストと呼ばれるものだ。

それの抜け出た身体はぐったりしている。

「初春さん、もう大丈夫よ。」

周囲に油断なく目線を巡らす御坂の声に近くの茂みから、初春が現れる。

「木山先生、御坂さん。

大丈夫ですか?」

「私は大丈夫。

君は上に行け、警備員(アンチスキル)の人が待ってる。」

 




色々あって遅くなりました。

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