とある最強の警備員   作:佐藤五十六

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第五話 ~三沢塾編決着~

黄泉川side

「あの馬鹿、連絡もとらずにどこ行きやがった。」

携帯を見ながら、そうつぶやいた。

そこに着信が入る。

上条当麻からだと期待しつつも、その期待は裏切られる。

「黄泉川じゃん。」

『倉石だ。』

黄泉川の直接の上司、倉石満だったようだ。

「何ですか?」

警備員(アンチスキル)全支部に非常呼集が、発令された。

黄泉川第七十三支部第三班班長は、直ぐに出頭せよ。』

「しかし、上条が………」

『彼女の事なら、出動先にいるらしい。

おそらく、心配は要らないと思われる。』

黄泉川side out

 

上条当麻meet死体

特に現場は、凄惨という事もなかった。

ただ単に、死体がたくさん置いてあるだけ、そう感じるほどである。

血が流れた跡が無いからかもしれない。

だからと言って、恐怖心が芽生えないはずも無い。

血が無いからこそ、このように苦しんで倒れている死体に不気味さを感じてしまう。

早々に上条はこの部屋から立ち去った。

 

ステイル=マグヌスVSアウレオルス=イザード

「君は遅かったんだ。

インデックス(彼女)は、とうの昔に救われている。」

「お前に私の何が分かる?

知ったような口を聞くな。」

怒気を強めた声で怒鳴る。

心なしか、力も強まっている。

「分かるさ。

去年は俺だったのだから。」

「誰が救ったと言うのだ。」

「この街に住むとある高校生だ。

そのことが原因で死んだがな。」

「うるさい、うるさい。」

その話を聞いた途端、癇癪を起こしたようだ。

「気に入らん、消えてしまえ。」

黄金錬成(アルスマグナ)の効力は、無敵である。

そのまま、ステイル=マグヌスの姿は消えた。

 

真実を追う者達

幻想御手(レベルアッパー)事件ですの?

初春、その事件は忘れなさい。」

『しかし、それが私たち風紀委員(ジャッジメント)の会議で決まったことなんですよ。』

「今は、上条当麻の追跡を最優先になさい。

これは、私からの最優先命令ですのよ。」

 

上条side

「ステイルさんですか?」

「・・・・」

反応は無い。

まあ、そこの話しかけた場所には何も無いので、反応がなくて当然である。

「治しますから、安心してください。」

そう言うと、ステイルの姿を意識して右目を発動させる。

これらの使い方は入院しているときに、冥土帰し(ヘウ゛ンキャンセラー)より説明を受けていたので、何とかなる。

説明の際に、まだまだわからない部分があるので、いろいろな使い方が出来るそうだとも言っていた。

「ああ、ありがとう。

で、ここは何処かな?」

「三沢塾の中ですよ。

詳しくは分かりませんが。」

「そうか、君は帰りなさい。

こちらの問題は、こちらで片付ける。」

「お断りします。

この問題は、警備員(アンチスキル)の一員として、見過ごせません。

それにあなた方が誰かは知りませんが、もうすぐにでも、我々は介入するでしょう。」

窓の外を見た上条の目線を追って、ステイルも外を見る。

外には、警備員(アンチスキル)のパトカーの群れである。

「無茶だ。

銃器で魔術に勝てるわけが無い。」

「じゃあ、彼らが突入して来る前に私達でけりを付けますか?」

「うん、そうだね。

そうするしかないか。」

 

上条VSアウレオルス=イザード

「君は?」

アウレオルス=イザードは、突如部屋に入ってきた上条に問う。

「何処のどなたかは、知りませんが。」

そう前置きしたうえで、こう言った。

「ここは科学の街(学園都市)です。

好き勝手できると思わないでください。」

「ほざくな、女。

ここで、骸になるがいい。

死ね。」

魔術の効果が来る前に、上条は右目の能力を発動させる。

間に合ったのか、効果は打ち消される。

「ほう。

女、面白いものを持っておるな。

聖域の秘術か?

黄金錬成(アルスマグナ)の効果を消すとは。 」

生憎上条は勤務中ではない為に、拳銃の類は持ってはいない。

最終的にはグーパンチで、決着を付けなくてはならない。

「よろしい。

私も本気でお相手しよう。」

そう言うなり、アウレオルス=イザードは、呟く。

「暗器銃をこの手に、弾丸は魔弾、用途は射出、数は一つで十二分。

人の動体視力を超える速度にて射出せよ。」

アウレオルス=イザードの手に暗器銃が現れたと思った瞬間には、上条の身体が横に吹き飛ばされていた。

「先の手順を量産せよ、10の暗器銃にて連続射出の用意。

準備は万端、10の暗器銃、同時射出を開始せよ。」

10の弾丸が空中で動けない上条に命中する。

その一つ一つには、上条当麻を殺すほどの威力は無い。

精々が痛め付ける程度でしかない。

「それの何処が本気なんだい?

錬金術師(アウレオルス=イザード)

女の子を痛め付けるのは、紳士のすることではないよ。

分かっているのかい?」

何処にいたのか、ステイル=マグヌスが姿を表す。

「来たか。」

何かを待っていたかのような余裕を持ったアウレオルス=イザードであった。

それに感づいた上条が叫ぶ。

「逃げてください。」

しかし、それは遅すぎた。

「内から弾けよ、ルーンの魔術師。」

言い終わると、ステイル=マグヌスの身体は破裂した。

血と肉とが、360度全てに撒き散らされる。

「何をしてるんですか?」

「何って、邪魔者を消しただけだ。

君もああなりたいかね?

あまりオススメはせんが。」

ステイル=マグヌスの死を、眺めている間に立ち上がっていた上条に視線を移しながら、問いかける。

「殺人罪の現行犯で貴方を逮捕します。」

「我を、捕まえるというか、女。

フハハ」

何かが可笑しいとでも言いたげに、笑みを零す。

「捕まえられる物なら、やって見せろ。」

それは、安っぽい挑発であった。

今の上条は、それに乗るほど熱くなっている訳ではない。

「この銃を止めてから、そんな戯言を言え。

先の手順を量産せよ、10の暗器銃にて連続射出の用意。

準備は万端、10の暗器銃、同時射出を開始せよ。」

またも、上条は目に捕らえられない弾丸を受けて床に横たわる。

「ハァ、ハァ。

貴方の攻撃のパターンは、今ので大体見切りました。」

息を切らしながらも、そう自信を持って告げる。

「お生憎だが、攻撃パターンはこれだけではない。

それは、女、お前も見ただろう?

あの魔術師の最期を。

お前もああなりたいかね?

前にも言った通りオススメはせんが。」

「自己暗示って、ご存知ですか?

そういえば、あなた、攻撃するとき毎回口に出してますよね。

こんな話知ってます?

催眠術の時、何回も何回も同じ事を聞かされるのは、暗示の効果を高めるためなんですて。

言い換えましょうか、あなたは自分の事すらも信用できていない。

ただのかわいそうな人です。」

「な、何を言っている。

そんなことあるはずもない。」

言葉では否定を返しても、行動までは否定を返せない。

つまり、明らかに動揺しているのだ。

顔には冷や汗が浮かび、体は震え、手に持っていた針を落とす。

「動揺してますね。

どうしたんですか?

あなた、人一人殺してるんですよ。

そんなあなたがこんなことで動揺するなんてねぇ。

何処のボンボンかしら。

そんなことで、人様に迷惑をかけて恥ずかしくないのかしら。

殺人犯なのに、何が人のためかしら?」

「やめてくれ、頼むからやめてくれ。」

「人のためとか言うのなら、死になさい。

今すぐにここで。

だって、あなた生きてても価値なんてないんですもの。」

アウレオルス=イザードの懇願を無視して、上条はまくし立てる。

「ううわぁぁぁーーー。」

何やら、うめき声と絶叫の織り混ざった声を上げながら、アウレオルス=イザードは前のめりに倒れ込む。

術者が倒れたことで、黄金錬成(アルスマグナ)は解除されたようだ。

ドタドタと足音がする。

「上条先生か?」

踏み込んできたのは、警備員(アンチスキル)の隊員だった。

 

第七学区、いつもの病院。

「うんうん、特に体調も問題ないから、今日には退院できるね。」

お馴染みのカエル顔の医者がそう言った。

「お世話になりました。」

「じゃあ、僕は失礼するよ。」

カエル顔の医者は、病室を出て行った。

入れ違いに、髪の長い少女が入ってきた。

「上条当麻さんでしょうか?」

「そうですよ。」

「私は、姫神秋沙といいます。

今回は助けていただいてありがとうございました。」

「お礼を言われるようなことはしていませんよ。

それよりも、これからの生活はどうするつもりか、決まっていますか?」

「黄泉川先生が、うちの高校に来いと言ってくれました。」

「そうですか、決まってるなら安心しました。

そこには、私もいますので、よろしくお願いします。

新学期にまた、会いましょう。」

「はい。」

少女が出て行くと、入れ替わりに赤毛の男が入って来た。

「今回の件、ありがとうと伝えておくよ。

それに、今は君に紹介したい人がいる。

入って来ていいぞ。」

「はいなんだよ。

私はインデックスっていうんだよ。

よろしくなんだよ。」

「上条当麻です。

よろしくお願いします。」

「ステイル、もうそろそろ飛行機の時間ですよ。

あっ、話をしていたのですね。

失礼しました。」

「構わない。

彼女が、神裂火織だ。」

「紹介にあった神裂火織です。

よろしくお願いします。」

「またここに来ることもあるかも知れん。

そうなったらよろしく頼む。」

「いいですよ。」

「インデックス、行くよ。

じゃあ失礼する。」

「バイバイなんだよ。」

三人が出て行ったあとの病室で、上条は一人お茶を飲んでいた。

黄泉川が来ないのである。

その黄泉川は、カエル顔の医者と話をしていた。

 

カエル顔の医者と黄泉川の会話

「何が聞きたいのかな?」

「この事件の始まりから終わりまでじゃん。」

「そう言うと思っていたよ。

その件だが、統括理事長の方からも、くれぐれもよろしくと言われているからね。

君達に特別機密接触資格を与えるよ。

これからの話を静かに聞いてほしい。」

そして、カエル顔の医者は語る。

魔術のことを、

10万3000冊もの魔道書を記憶している禁書目録(インデックス)を助けたことを、

そして、何らかの魔術によって、記憶を破壊されたことそして女のからだになったこと、

インデックスに固執する錬金術を使う魔術師と対決したことを、

今までの彼女の身に起こったことを、嘘も誇張もなく全て話した。

「そんなことになってたじゃん。

最後のは、ストーカーじゃんね。

罪に追加しておくじゃん。」

アウレオルス=イザードは、警備員(アンチスキル)に無事逮捕された。

しかし、精神が崩壊しており、裁判が開かれるかどうかはこれからの回復次第である。

「このことは、一切他言無用でお願いするよ。」

「分かったじゃん。」

 

        続く




もうちょっと早めに投稿するつもりだったのですが、遅くなりました。
三沢塾編堂々?と決着しました。
オリキャラがでました。
できる限りとあるに登場するキャラを出していきたいと思いますが、警備員関係者に関してはどうしてもオリキャラになってしまいそうです。

一部抜けていたところがあったので追加しました。

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