Tail of Twin 作:グラコ口
プロローグなので短いです。また、一時間後にもう1話投稿予定です。
プロローグ
「――――テイル、オン!」
唱えると同時に身につけたブレスレットを基点に身体が光に包まれ、次の瞬間には見慣れた自宅がやけに大きく感じる。――――つまり、背が縮んだ。“正常に”変身できたことを確認して、俺は真剣にパソコンを見つめるリィリアに声をかける。
「……ん。……ノープロ?」
「はい、とりあえず
と、いうわけで。
ドラグギルディ戦で新造した方が早いレベルでほぼ全壊してしまったテイルリングはリィリアの師匠であるらしいトゥアールさんの全面協力でリングより安定性の高いテイルブレス(の予備)にその機能のほとんどを移転。リィリアによる細かいカスタマイズと調整を終えて試験稼働中だった。
「………無理。(仕方ないだろ、こっちは普通に話してるつもりなんだし)」
「やっぱり、葵さん用に調節したからでしょうか……」
なんかダメ出しされた。言語自動変換も調整したらしいのである。俺にはイマイチ違いがわからないのだが。と、ここで自分の身体を見下ろして、あることに気づいた。
「……上着?」
これまではほぼ装甲つきの水着だったテイルギアに、どことなく陣羽織?みたいな感じの上着が追加されている。これで元々レッドより少なめだった露出が更に減ったわけだが、やっぱり防御力も上がったのだろうか。
「一応、ドラグギルディのようなフォトンアブソーバーを突破できる相手と戦うための装備です。可能な限りの強化はしていますけれどアブソーバーを突破するほどの攻撃にはさほど意味がないかもしれませんが……生身よりはマシかと」
「……ん。見せないのはいいこと。」
絶対防御って、破られるためにある気がするからな。
ヒーローとしては邪道なのかもしれないが、見た目より防御を優先したい。
「更に、上着を瞬時に変換する
「……リィリアじゃ、ないの?」
てっきりリィリアが造ったのかと思ったのだが、その言い方だと違うのだろうか。
そんな疑問を口にすると、リィリアは少しだけ嬉しそうに首を横に振った。
「いえ、これはトゥアールさんとの共同開発です」
「………へー」
じゃあやっぱりこの上着も凄いのかなーと思いつつ触ってやけにツルツルした服の感触を確かめていると、リィリアから追加で説明が入った。
「そんなパージ機能ですが、上着を攻撃に転化してしまう関係から1日1回が限度で、使うとその日は上着なしです。属性玉変換機構も既に出力関係に“
当然のように暴走の危険がありますから、絶対に使わないで下さいね。
と、真剣な顔で念押しされて、俺もゆっくりと頷く。サムズアップ付きで。
「………もち(グッ」
「す、すごい不安です…っ! いいですか、ツインテールを賭けた自爆スイッチみたいなものなんですよ!?」
それは大変だ。男としては自爆スイッチと言われると凄い使ってみたいが、ツインテールは賭けられない。ただ―――…。
「……リィリアがつけたなら、きっと意味がある」
「それ、は――――…」
困ったように視線を逸らしたリィリアは、少し言いにくそうにしながら呟く。
「葵さんなら、きっと使いこなせる…―――そんな気がしたんです。……でも! 勝手に使ったりしたら、当分はわたしはツインテールにしませんからね…っ!?」
「……それは、困る。」
俺、いつかリィリアのツインテールを好き勝手に触らせてもらうのが夢なんだ…。
そんなことを考えながら、なんとなく自分のツインテールを手繰り寄せて触ってみる。
……うん、落ち着く。さらさらと流れるツインテールが、不安や焦りを優しく包んで流してくれるかのようだ。ただ、リィリアは不満気だったが。
「葵さん、なんだかヘンタイっぽいです…」
「……!? ち、ちがう。ツインテールの具合を見てるだけ…!」
しかしなんというか、俺にもちょっとマズいかな、という自覚はあった。
「……でも、そこにツインテールがあるから。」
「でもじゃないです。そんな幼い女の子に何をしてるのですか」
リィリアに言われるとは…。
とはいえ、確かに変身してないリィリアよりはホワイトの方がやや背が低い。自分のツインテールならいいじゃん、という気もするがリィリアからすれば危ないヘンタイにしか見えないのだろう。
「……じゃあ、レッド?」
「余計にダメですっ!」
「……ブルー?」
「……命は大事にした方がいいと思います」
リィリアにもそう言われるなんて……ブルーェ…。
遠い目で仲間(?)のことを考えていると、リィリアがパソコンの画面に何かの一覧表のような物を出して見せてきた。
「とりあえずブルーは置いておいて、これはちゃんと覚えてくださいね」
「……?」
「暫定的ですがトゥアールさんとの協力体制の確立と、テイルブレスへの移行による規格統一によってわたしたちもこれまでの属性玉が使用可能になりました。ドラグギルディを倒した以上、もし敵が撤退しないのであればさらなる大物が投入されることも考えられますし」
レッドはツインテール属性にこだわるみたいですけど、葵さんは……ホワイトはどうしますか? とそう問いかけてくるリィリア。
なるほど確かにツインテール以外の属性を使うのはあまり乗り気にはなれない。なんというか浮気でもしているかのような気分になるし。
「……やっぱり、ツインテールがいい」
「そう言うと思っていましたけど……はぁ。それじゃあこっちは受けてくださいね」
なんとなくツインテールが某アンテナよろしく嫌な気配を察知した気がして思わず身構えると、画面に表示されるのは装甲に身を包んだ見慣れない黄色のテイルギア。
……新型だろうか?
「……なに?」
「これは、ドラグギルディの属性玉を使用した新しいテイルギア――――その設計図みたいなものです。今までは騙し騙しやってきましたけど、葵さんの日常生活での属性力を制限してまで戦ってもらうのは……その、なんといいいますか。正直、追い出されても仕方のないくらいのことなので……」
申し訳無さそうと言うか、ここで俺が怒ったら泣いてしまうのではと思うほど消え入りそうな声で言うリィリアだが。
「……べつに、気にしなくていい」
「――――ーっ、そこで『じゃあツインテールを』って発想が出てこない時点で凄い影響が出てるのですっ! リングを外したらぜったいそう言います!」
そうなのだろうか?
でも思うに、お詫びのツインテールよりもお礼のツインテールがいいというか…。こうして自分のツインテールを手に入れてツインテールに飢えなくなったから前よりも余裕が出たのかもしれないが、とにかくそう思う。それも“影響”なのだとリィリアは気にしそうだが。
何にしても、無理矢理はよくないよねという。
「……それに、このツインテールは落ち着く。」
リィリアが属性力を込めているからなのか、あの日――――初めて出会った日に見たリィリアのツインテールに似たこのホワイトのツインテールは、良い物だと思う。
それこそ、心の力で戦うテイルギアが俺の
「……でも、リィリアが使うなら返す。」
しかし半ば忘れかけてたけど、これは元々リィリアのものだった。
できれば返したくないけど、返してほしいなら……仕方ない…。
「ど、どうしてそんな残念そうに言うのですか…っ!? というかわたしのツインテール属性は不安定すぎてテイルギアは使えませんっ! 後悔や、後ろめたさがあっては変身できたとしても十全な力は発揮できないのです…!」
「……そうなの?」
その割にはリィリアがテイルリングに属性力をチャージしてくれてたり、ドラグギルディと激しく戦ってた気がするのだが。
「……ですから、チャージはちょっとした濾過をしてからしてるのです。最近はその、葵さんの――――…じゃなくてっ、テイルホワイトのツインテールのお陰で! 気持ちが楽になったので普通にチャージできますけどそれはそれですっ!」
「……おー」
なんかよくわからないが、俺のツインテールが役に立ってくれたなら嬉しい。「ツインテールって言っておけば何でも騙されちゃうのではないです…?」とリィリアが呟いたのもよく聞かずに喜んでいると、リィリアもどこか嬉しそうに呟いた。
「………ありがとうございます、葵さん」
そんなこんなで、結局新型のテイルギアは受け取らないことに決まり。
新たな日々は始まる――――…。
テイルブレス(ホワイト)
基本的な機能はレッドたちのものと同じだが、テイルリングとの同時使用を考慮したチューニングが施されている。相変わらず核になっているツインテール属性がどこから出たのか詳細は不明ながら、葵とリィリアの日常生活での属性力の高まりを犠牲にレッドのテイルギアとほぼ同等の出力を誇る。……が、実は持続時間に難がある模様。
テイルリング弐式
全壊したテイルリングをリィリアがトゥアールの協力の下で新造したもの。
グレイシスサーコート
テイルホワイトに追加された上着装備。リィリアの熱い要望で実現したとか。
とりあえず主目的としては露出の減少、そして
なお余談だが、上着の下の露出度はむしろ上がっているらしい。それと陣羽織っぽい何かであり、あくまで陣羽織なのかどうかは不明。長袖。薄水色。和風っぽい。