夢のないレギオス   作:歯並び悪い

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第七話

朝、教室に入ってくるなり絡んできた女子、どうやら名前はミィフィと言うらしい。

 

 頼んでもいないのに勝手にしてくれた自己紹介によると、彼女は週刊誌の出版社に就労するつもりのようで、レイフォンたちから記事になるネタを引き出して、それを持って採用してもらおうと言う腹積もりらしい。

 

 つまり、まとめてしまえば、うざいパパラッチ見たいなものだな。とレイフォンは酷評を下す。

 彼はよく同じ様な手合いに追いかけられていたのだ。この評価も仕方のないことだろう。

 天剣をしていた頃はまだ周りには遠慮があったが、傭兵時代には随分と面倒を強いられてきた。何しろ酷い時は棲家に24時間体制で張り込んでくるほどだったのだから。

 

 実際、何人か切ろうかと真剣に悩んだほどである。ちなみに、さすがにをれを実行には移していない。ただ、レイフォンの滞在していた都市にある出版社の本社ビルがピンポイントで地盤沈下に見舞われたりすることは有ったが、全て都市の老朽化が原因とされている。

 

 

 それはともかく、相手にするのが面倒だと感じたレイフォンはエドに押し付けることにした。

 

「俺はしらんよ、美味しい店知ってるなら俺も一緒にいくぜぇ~、とか言いながら勝手について来たんだからなぁ。な、エド」

 

 だから適当なことを言いながらもエドに話を振り、ついでにエドに顔を近づけて小声で話しかけ、早口でまくし立てる。

 

『この前聞いた話は機密らしいから黙っとけよ、万が一バラしたらあの腹黒生徒会長になにされんのか分からんねぇぞ。それに、あの子、中々可愛いだろう?適当なことを言って仲良くなってしまえば……、後はキャッキャウフフの花の学園生活だぞ!これはチャンスなんだ!お前ならやれる!応援してるぞエド』

 

 口止めをしながらも、悪魔の囁きでエドを誘惑する。

 今まで女に縁が無かったエドにこの誘惑に抗う術などあろうはずもなく……

 

『ああ、分かったよ!必ずこのチャンスを物にしてみせる!』

 

 ガッツポーズをしながらも、熱い決意を小声で語った。

 しかし、自分の花の学園生活を想像しているのだろうか、鼻の下が随分と伸びていて、いやらしい顔をしていた。

 なんだか単純すぎて申し訳なくなってくるが、一応嘘を言ったわけではない。

 

「ねえねえ、二人して何話てんの?わたしも混ぜてよ」

 

 女の子、ミィフィは待ちきれなくなったのだろう、レイフォンとエドに間に割って入ってきて、それにエドが随分と嬉しそうな顔をする。

 

「な、なな、なんでもないよ。き、君が可愛いなぁって話てただけだから!」

 

 緊張しすぎて、噛みまくっているが、いきなりナンパ師みたいなことをドヤ顔で言うエド。どうやら何か勘違いをしているようでだ、言われた側は間違いなく引くだろう。

 発破をかけ過ぎたかと後悔するが、

 

「え?そ、そうかなぁ、そんな事言われたの初めてだよ。ありがとう!えへへ」

 

 ……どうやら、満更でもなさそうだ。正直今のセリフ、言うのも言われるのも死にたくなるほどに恥ずかしい物だと思っていたが、どうやら自分の価値観が周りとずれているのかもしれない……

 これが、ジェネレーションギャップか、とレイフォンは暫くの間呆然としていた。

 

 

 なにやら盛り上がっているらしい2人をポカーンと眺めるレイフォンを引き戻したのは別の女子の声だった。

 

「すまんな、騒がしいやつで。根は悪いやつじゃないんだ、仲良くしてやってくれ」

 

「ひうっ」

 

 クールな長身美少女が話しかけてきた。鋭角的なフォルムの武芸科の制服見事に着こなしていて、その鋭い顔つきを相まって姉御的な印象を抱かせる。

 

 その背後には気の弱そうな女の子がクールさんの背中から顔を半分だけ出してこちらを伺っていて……

 

──さっきから随分とキャラが濃いな。

 などとどうでもいいことが頭に浮かぶ。

 

「ああ、うん大丈夫だ。楽しそうに盛り上がっているからな」

 

 戸惑いながらも疲れが滲み出ている声音で答えるレイフォン。次から次へとやってくるキャラの濃い美少女に、さすがラノベの世界はすごいなぁ、などと内心戦慄しながらも平静をなんとか取り繕う。

 

「私はナルキ・ゲルニ。後ろのがメイシェン・トリンデンだ。同じクラスの武芸者同士よろしくな。」

 

「ょ……ろし……、ひぅっ」

 

 キリッとした雰囲気通り、ナルキはサバサバした性格のようで、それに対してメイシェンは何を怖がっているのか、先ほどから言葉と言えるほどの物を口から発していない。

 

「レイフォンだ、よろしくな」

 

 メイシェンを見て自分のペースに戻ることができたのだろう、レイフォンは何時ものやる気の篭らない声で返事を返した。

 

 

 

 

 その後、会話を適当に続けていると、チャイムが鳴ったため荷物が置いてある席へと戻る女子たち。エドは随分と残念そうな顔をしていたが、レイフォンにとってはそろそろ会話もめんどくさくなって来たため丁度いいタイミングだった。

 夢やら将来の目標やらの話になると、彼女らとレイフォンの温度差が有りすぎて会話があまり弾まなかったのだ。

 

 結局その日も授業は1日中座学で、つまりレイフォンは1日中机に突っ伏して寝ていた。もちろん昼休みには起きて食べていたが、食べ終わるとすぐにまた夢の世界へ旅立っていき、クラスでも武芸者の癖にやる気のない居眠りキャラとして、定着しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 夜。

 寝入りの早い者は既に夢を見始めているだろう時間、人気の全く無い外延部上空で何かが時折光を発しながらも踊っていた。

 否、踊っているわけではない、其れは手に刀を持ち、振るっていた。其れは武芸者だった。彼の動き一つ一つが素人目に見ても完成されており、其の技巧を磨き、積み重ねて来ただろう長い年月を感じさせる。鍛錬をしているのだろうが、其れが蝶のようにヒラヒラと空中を舞っていることと相まって一種の芸術を思わせる。

 

 レイフォンだ。

 

 何かを相手にしているのだろうか、空中を縦横無尽に飛び回り、時折刀から剄がほとばしる。その様が美しく、幻想的で……

 偶然其れを見つけた彼女は我を忘れてただじっと眺め続けていた。

 だからだろうか、其の舞が終わったと気付いた時には思わず、あっと言葉にならない音が口から漏れ出て、やっと、自分が魅せられていたことに気付く。

 そして、改めて納得した。兄が欲しがるわけだと。

 武芸者でもない自分にでも明らかに他の武芸者から逸脱しているのが分かるほどなのだ。実際の実力差は自分が感じている比では無いだろう。それこそ、本当に個人で武芸大会に勝利できるほどなのかもしれない。

 其れほどまでに、すさまじく、美しかった。

 自分もまた、そうでありたいと思うほどに彼は、輝いていた。

 

 しかし、其れは自分の勝手な思い込みなのだろう。彼は言ったのだ、彼にとって武芸とは手段に過ぎないと。ならば、この輝きは私が勝手に付加したものであり、確かに彼は特別だが、それだけだ。

 逆に言えば念移操者として私が全力を出せば周りからは私も同じく輝いているように見えることだろう。別段私がこの力をなんとも思っていなくても、この力を疎ましく思っても、周りにとっては関係の無いことなのだから。

 私が今感じた輝きとは、結局その程度の物なのだと、何だか自分の中にストンと納まり、自分が今まで悩んでいたことの答えにも、少しだけ辿り着けた気がした。

 

 

 

 

「覗き見が趣味なのか?」

 

 不意に声が掛けられる。どうやら気付かれたようです。

 

「驚きました。それにしても翼が無くても飛べるものなのですね。」

 

「別にたいしたことじゃねえよ。念威端子が浮いてるのと原理はかわらん、浮くぐらい、ある程度の武芸者なら誰でもできるだろ」

 

本当に何でもなさそうに言うが、実際にやっている武芸者を見たことが無いのだから、言葉通り簡単な物でも無いでしょうね。

 気付かれたことと言い、やはり彼は他の武芸者とは隔絶した強者なのでしょうか。

 普通の武芸者では至近距離に端子を漂わせていても、誰も気付いたような素振りもしなかったのに、随分離れて見ていた彼にはあっさり気付かれてしまったのだから。

 

「そうですか、それにしても、いつから気が付いていたのですか?」

 

 興味本位で、聞く。なんだかんだで、自分の念威操者としての技量には自信があったのだろう、と自己分析。少しだけ悔しいですね。こんな気持ちを覚えるのも、私が念威に対して前向きになれた、ということなのでしょうけど。

 

「いつかって聞かれると……、入学初日からかなぁ」

 

 やる気、元気、覇気が全く感じられない声で、しかし驚きの回答が帰ってくる。その時は兄に言われて細心の注意を払って監視していたのだが、気付いた素振りなど全く見せなかったでしたから。

 

 それにしてもあれ程やる気の篭らない声で言われると少々ムカついて来ます。

 だから返す言葉にはトゲが多分に含まれていても仕方が無い事でしょう。

 

「そうですか、その割には嫌がる素振りが見えなかったので、気付いていないと思っていたのですが……。見られたがりの変態さんなのですね」

 

「まあ、それでもいいが。そういうフェリ様は身長の割にはドS女王様が似合いそうだな」

 

 

 どうやらやる気が全く見られない癖に負けず嫌いみたいですね。

 返って来た言葉にも皮肉が一杯です。

 むしろ女性に対して失礼すぎると思います。

 だから、さすがの寛大な私でも少々手が出たりしても其れは仕方の無いことなのです。

 

「どうやら爆死したいようですね」

 

 そう言って彼のすぐ近くで念威爆雷を多重起動する。

 前後左右上下斜めからなる爆撃の檻だ。一般武芸者どころか、たとえ小隊員だろうと殺れる自信がある一撃。しかしレイフォンを本気でどうにかできるとも思えない、だからこそできた行動ですが。

 予想通り避けられた様だが、服にさえ汚れが全く付いていないのが悔しいです。

 

「ま、まあ、ちょっと待てよ、てか念威使いたくないんじゃ無かったのか?ちょっと積極的過ぎると思うんだがなぁ」

 

 完璧に避けきった割には少し驚いているようですね。私がためらいも無く攻撃したことに、でしょう。いい気味です。

 

「最近、念威に対して少しはやる気が湧いてきたのですよ。あなたのお陰です。

なので、今日の所ははこれぐらいで許してあげましょう。

……でも、覚えていて下さい。

それでは、失礼します。」

 

 

 

 

 

そう言い残して、桜の花びらのような念威端子はヒラヒラとどこかへ漂って行った。




突然ですが、
この作品のレイフォン君は空を飛べます!
前々から思っていたのです
鋼糸が浮かせられて、石が浮かせられて、何故レイフォン自身は浮かないのだろうかと

そもそも物を浮かせること自体ディンくんでも出来ていたと言うのに!
鋼子で汚染獣切ったりするぐらい出力の出るレイフォン君なら浮かないはずが無いではないか!

と言うわけでこの矛盾を解消(え?)するためにも、レイフォンは空を飛べることとします!
皆様の脳内では舞空術みたいなイメージで飛ばしてあげてください。

ちなみに反対意見などは受け付けます。



それはともかく、
最近レイフォンのキャラが中々定まりません
もう少しニートっぽさを出したいのですが、難しいものです。

そしてまともな戦闘も有りません

課題だらけですね……



まあ、おいおい解決できたらいいなあ……

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