夢のないレギオス   作:歯並び悪い

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更新がずいぶんと遅れてしまい申し訳有りません。
いろいろ展開なんかを考えるとどうにもしっくり来ず、長いこと掛かってしまいました。

文才が、ほしいとです。



それはともかく、
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第十二話

 汚染獣、幼性体による突如の襲撃から一夜明けた朝。ツェルニでは何時も通りの朝が訪れていた。学生たちは些か疲れが残っているものの、皆、己の学び屋へと歩を進めている。

 汚染獣襲撃の翌日では有るが、平常通りに授業を行うと言うのだ。グレンダンのような異常なほどに汚染獣戦慣れした都市ならば納得のいく事であるが、ツェルニのような一般の学園都市の域を出ないところからすれば異常でしかない。

 

 翌日と言っても襲撃が終わった頃に空が白みだしたので、実際はほぼ1日空いているのではあるが……

 

 生徒会の発表によると色々と予定が押しているため、仕方ない事らしいが、実際の所は汚染獣の恐怖から無理やりにでも学生たちを遠ざけたいと言う狙いの方が本音なのだろう。尤も、重軽傷者こそ無数に出たものの、1人も死者が出なかったのも大きな理由だ。これが1人でも戦死者が出ていれば、少なくとも一週間は休校が続いていたに違いない。

 

 そこまで思い至って、今日学校あんのって俺のせいじゃん、とレイフォンはため息をついた。それから、周りを見渡して、1人ぐらい死者出しとけばよかったなぁ、と武芸者というより人間としてあるまじき後悔をする。

 レイフォンの思考がマイナスと言うかダークと言うか、とにかく良く無い方向に向かってる理由は簡単だ。ツェルニ中が祝勝ムード一色だからだ。どうも生徒会が昨夜の戦いの情報を、汚染獣相手に犠牲無しで快勝したとかなんとか誇張して流しまくったからだ。

 理由は分かる。セルニウム鉱山が残り1つしかないことは周知の事実だ。そのため都市全体に不安な空気が漂っていた。言うまでも無く、これは良くない現象だ。モチベーションが下がれば勝てる物も勝てなくなるのは当然で、上級生の中にはツェルニから出て留学しようとする者までいる始末だ。この重苦しい空気を払拭させる意味でも今回の戦いの誇張宣伝は理解できるし納得もするが。ただ、効果が有り過ぎたのだ。

 元々武芸大会で勝てるのかと武芸科の実力を心配していた事も手伝って、登校時間だと言うのに彼方此方の一般人がギャーギャーと騒いでいる。ツェルニ最強!とか、俺たちは無敵だぁぁああああ!など……

 

 要するに、有体に言ってうるさい。

 

 只でさえ登校で早起きしたからだるいと言うのに、彼方此方から耳障りな声で騒いでるのが頭に響いてくるためにレイフォンのテンションはマックススピードで地面に沈んでいく。

 

 とそこで、騒がしい学生の中でも更に一際うるさい一団が声を掛けてきた。正確には騒がしいのはその一団の中でも1名だけなのだが、そんなことは些細な事だ。うるさいことには変わりないのだから。

 

「やっほ~!!!何時にもましてやる気が無さそうだねレイフォンくん!!!!こんなにめでたい日なのに、そんな辛気臭い顔してたら幸せが逃げていくわよー!!!!!」

 

「そうだぞレイフォン!」

 

 ミィフィとエドだ。そしてそのすぐ後ろに所々包帯を巻いた微妙に居心地が悪そうなナルキとおどおどしたメィシェンがいる。が、それも些細なことだ。なぜならうるさいのはミィフィなのだから。

 

 お前らに会っただけで充分不幸だよ、と言ってやりたいレイフォンだった。

 

「お前らに会っただけで充分不幸だよ」

 

 なので願望に任せて言ってみた。

 

「えぇ~、ちょっとちょっと、エドロン!今日のレイフォンおかしいよ!なんだか何時もよりも私への当たりがきつい気がするよ!」

 

 どうやらミィフィはレイフォンが彼女に対して思うところがある事には気付いているらしい。あまり好きなタイプではないが、表に出すつもりは無かったレイフォンは自分の失敗に少々驚き、それでも絡んでくるミィフィに対して少しだけ高感度をあげた。

 ちなみにエドロンというネットリしてそうな響きの固有名詞はエドの愛称である。ミィフィは人に愛称をつけるのが好きらしくエドもその被害者の内の1人なのだが、本人は最近寧ろ呼ばれて喜んでいるようだ。きっとMだ、一緒にはなりたくないと思うレイフォン。

 ともかく、レイフォンに付けてない所からしてもレイフォンが距離を置いていることに気付いている証拠であると言えるだろう。このまま距離を縮めてしまえば自分もエドの様な恥ずかしい愛称を付けられる可能性が否めないこともあって、ミィフィとはこのまま一定の距離を置こうと思うのだった。

 

「きっとミィちゃんの可愛さに照れてるんだよ!男は好きな子をいじめたくなる物だからね!でも、ミィちゃんは渡さないぞレイフォン!」

 

「ちょっ、やだエドロン、私たちまだ付き合って無いんだから、そんなこと恥ずかしいわよ……」

 

「それでもだよ、ミィちゃんは僕が守るからね!」

 

「エドロン……」

 

 見詰め合う2人……

 だんだん縮まっていく距離……

 

 いつの間にか寸劇を開始した2人を呆れた目で眺めながら、はぁ、とため息をつく。ただでさえ面倒だと言うのにレイフォンは疲れが倍になった気分だった。

 

「おはようレイフォン」

「お、おはよ……っひぅ!」

 

 そうこうしてると、一団の残りメンバーが声をかけてきた。ナルキは覇気が無さそうで、何故か知り合ってそれなりのメィシェンが未だに怯えているが、見ていて先までの疲れが癒されていくので特に気にならない。寧ろレイフォンとしてはもっと怯えさせたい所だが……

 

「大丈夫だとは思っていたが、無事だったんだな、レイフォン。見当たらないとかで、昨日ミィたちが心配てたぞ」

 

 開口一番にミィフィが心配していたと告げられる。本当に何時の間にミィフィにこんなに好感を持てれたのか疑問であるが、

 

「そうよ!見当たらないと思って調べてみたら、何処のシェルターにもいないし、端末も通じないしで……、汚染獣に特攻しにいったのかと思って心配したよ!」

 

 ほぼ正解である。

 勿論真っ正直に、汚染獣に特攻しに行ったんだ、なんて教えても何も得をすることはないし、寧ろ面倒なため、レイフォンはとぼけるために口を開く。

 

「ああ、昨日はな、生徒会塔に居たんだよ」

 

「シェルターでいいじゃない、なんでまたそんな所に居たのよ?」

 

「簡単な話だろ、災害に際して一番安全な場所ははるか昔っから政治家の近くだって決まってるからな。だからずっと生徒会塔で隠れてたのさ」

 

 先ほどまでとは打って変わって、しれっと胸を張って嘘をつくレイフォン。その姿は何故か自信満々で、理由は分からないが生気に満ちていた。

 事前に用意してあった答えだ。端末に残る着信履歴をみた時から考えていた言い訳である。

 

「うわぁ~、一番安全な所に1人で隠れてたのね。なんか心配して損したわ」

「まあレイフォンらしいと言えばらしいが……。だから言ったろ、レイフォンが汚染獣に特攻などするわけないと。残念だが、レイフォンほど武芸者らしくない武芸者も中々いないからな」

 

 それを聞いて一気に呆れた顔になったミィフィ。

 そしてナルキはなにやら予想通りだ、とでも言うような顔をしている。実際は汚染獣に単身特攻をかました訳ではあるが、ナルキの評価自体は正しいのだ。レイフォンのことをやる気の無い武芸者と思っているのだから。

 

「まあ、とにかく早く教室に行きましょ!遅刻するわよ!」

「あ!ミィちゃん待ってよぉ」

 

 レイフォンの裏切り(?)行為からのショックからさっさと立ち直ってミィフィは学校に向かって独りで走り出す。それを追いかけてエドも走り出す。何処までも自由なミィフィを見て苦笑しながら3人は校舎に向かうのだった。

 

 

 

 こうしてまた平和な一日が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 日も落ち、街灯が付き始めた時間。レイフォンはツェルニで二番目に高い場所にあるレストランで一人料理に舌鼓を打っていた。レイフォン自身も料理はできるし、そこらの店よりは美味いものを作れるという自信は有ったのだが、さすがにこのレベルには届かない。

 同種の中から稀にしか発見されない変異種の高級素材、緻密な計算に基づき口だけではなく目でも楽しめるよう配慮された盛り付け、見栄っ張りな男性のサイフを中身ごと掻っ攫っていくような値段、この店はあらゆる面においてツェルニ最高なのだが、レイフォンはまるでファミレスにでも居るかのごとく次から次へと料理を注文し、そのまま飲み込んでいるとしか思えないようなスピードで胃に収めていく。

 レイフォンは大いに浪費をしていた。

 

 周りの席に着いているのは全てカップル客だ。男性はバラつきがあるが、女性は全員が容姿端麗の見目麗しい美人である。楽しそうに談笑する男女もいるが、女性を口説き落とすためだろうか、男性がしきりに話しかけ、それをあしらわれる光景も良く見て取れる。かわいそうなものだ。

 

 そんなロマンチックな雰囲気漂う店内で唯一男2人で座っている席があった。片方は次から次へと高級料理を惜しげもなく飲み込んでいくレイフォン、もう片方の男は巨漢の美丈夫で、銀髪を短く刈り、強面ながらも若干の愛嬌が感じられる顔を青ざめさせながらレイフォンを見ている。ツェルニが誇る第5小隊の隊長、ゴルネオ・ルッケンスだ。

 

「あの、……卿、お代を持つと言った手前大変申し訳ないのですが、それ以上ですと流石に持ち合わせが……」

 

 その屈強な外見に似合わず、かなり弱々しく切り出すゴルネオ。もしこの会話をツェルニの学生聞いているのならば、耳を疑うだろうほどの低姿勢だ。

 

「その呼び方はやめてくれと言っただろ、もう天剣はやめたんだ。それに此処じゃあんたの方が立場が上なんだから呼び捨てでいい。にしても、意外と小隊員って貰って無いんだなぁ、やんなくて良かった。」

 

 武芸者として到底有り得ない言葉がレイフォンから飛び出し、一瞬眉をしかめるも直ぐに思い直す。もう天剣ではないとは言え、あの兄と同じく常識外のバケモノだ。自分たちの常識を当てはめるほうが間違いなのだろう、と自分に言い聞かせる。

 

「ですが、呼び捨てにするのは恐れ多いと言いますか……」

 

 自分もその一員である小隊を貶められたと言うのに怒る所か未だ低姿勢のゴルネオ。ここに来る前からもレイフォンはずっとやめろと言い続けてきたが、どうやらかなり真面目なようだ。こういう所からもグレンダン住民の天剣に対する絶対視が見て取れる。力こそ全てである武芸者の中ではそれが特に頸著に現れる。ゴルネオにとってレイフォンに意見することは単身で老性体と相対するほどの暴挙なのだから。

 

「はぁ、もう好きにしろ。とにかく人前でこんな態度とるなよ、面倒にしかならんからな」

 

「はい。善処いたします」

 

 その頑なさに呆れたのか、ため息を一つついてレイフォンは取りあえず妥協することにした。どの道会うことは少ないのだから、面倒さえ持ってこなければあとは何でもいいという判断である。

 

 そのままゴルネオが会計を済ませ2人で店をでる。レイフォンは人目につかないように気をつけながらだ。

 

 そもそも、男2人で此処にくる事になったのは、いきなりゴルネオがレイフォンを訪ねてきたからである。

 挨拶が遅れて申し訳ないとか、汚染獣戦で手を煩わせて申し訳ないとか、とにかく謝るばかりだった。

 前半はともかく後半は確かに頷ける内容でもあったのでメシを奢れとレイフォンは言ったのだ。

 初対面相手にそんな事を言える面の皮の厚さこそ彼の一番の才能だろう。が、ゴルネオが道中も頑なに低姿勢を貫くのは予想外だったらしく、ここに来るまで細心の注意を払っていたのだ。

 

 

 だからいつかのように話が広まったり、ミィフィまで伝わることは絶対に無いのである。

 

 

 

 

 

 

 ちなみにゴルネオはほとんど空になったサイフを時折眺めながら、とぼとぼ帰って行ったという。

 やはり人に奢ってもらう飯より美味いものは無いね、と再確認するレイフォンだった。




正直この話はツェルニが平和になったよ!ってだけの話です。

正直2巻部分って原作から持ってくるものがあまり無いんですよね……
小隊が成長する話だけど、小隊自体入ってないわけですからね……

多分オリジナルの堕で駄な展開(?)かさらっと老性体まで行くかのどっちかになっちゃいますね。

ともかくエタったりはしないようにしますのでよろしくお願いします!

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