同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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006. 英雄

  

俺たちはあれからすぐに行動した。まず木の葉と渦隠れの里への連絡。そして二班をそのまま渦の国に残し、俺たちを含む二班は警告と増援をかねて茶の国へ向かうことにした。

 

木の葉は現在、隠れ里を保有していない波の国、茶の国等の同盟国に加え、渦の国の渦潮隠れの里とも同盟を結んでいる。渦潮隠れの里からもそう遠くはない為、一応の警告である。

 

茶の国では木の葉が波の国に対して戦力を割いているため、現在感知タイプの人手が足りていない。既に戦闘が行われている場合でも、追跡にしろ撤退にしろ俺たちの力が必要と考えられた。

 

 

 

海路を利用し茶の国に向かっていたのだが、到着する寸前に陸地で戦闘が始まったようだ。かなり大きな爆発があったのか土煙りが竹林の奥の方から上がっている。

 

「今、この辺りにあんな派手な戦闘が出来る部隊ってありましたっけ?」

「俺が把握している限りはいないな。中忍と下忍が中心のはずだ」

 

シビ先生に確認しても把握していないということは霧隠れの仕業か。ということはかなりマズい状況かもしれない。

 

「どうします、すぐに援軍に向かいますか?それともここで様子を見ますか?」

「あれが敵ならマズいが、どうやらそうではなさそうだ。何故ならば戦闘が徐々に海の国側に移動しているからだ」

 

たしかに徐々にではあるが戦闘地域が、東側へと移動していた。あちら側には海の国の諸島の一つがあったはずだ。まだ内陸部までは攻め込まれていないのであれば、敵の待ち伏せもないだろう。

 

「では敵の側面をつけるように進軍し、邪魔にならない程度まで近づきましょう。俺たちなら離れた状況からでも戦況は確認できます」

「そうだな、しかし陸地にいる他の隊の状況も分からない。……よし、俺たちの班は戦闘地域に向かい、もう一班は茶の国にいる他の隊と合流するんだ。何故ならば他の隊をまとめて攻勢に出る必要もあるからだ」

 

正直この場で人員を割くことには反対だが、今はシビ先生が中隊長だ。判断には従うしかない。

 

「了解しました!では我々は内陸部にむかいます。無理しないで下さいね」

 

そういって他の班は船を降り、海を走って行った。

 

「先生、私たちも早く向かいましょう。負傷者がいれば一刻も早い方が!」

 

シズネは医療忍者としても才能を開花させている。少しでも救いたいのだろう。

 

「そうだな……飛竹!海中に敵の気配はあるか?」

「いえ、進行方向に敵の気配はありません」

「敵は少数精鋭で切り込んで来た可能性もあるな。であれば一刻も早く押し返し防衛体制を整える必要があるな」

「だとすると海の国側に敵が集結している可能性が高いですね。深追いは避けないと」

「よし、すぐに向かうぞ!」

「「「はいっ!」」」

 

それを合図に俺たちも船を降り海面を走り出し、竹林の中に入って行った。

 

隊列は縦一列で前方の警戒をシビ先生、シズネと俺で左右を、トンボが後方といういつものフォーメーションだ。

 

 

 

「全員止まれ!」

 

竹林に入って少しすると先生が全体を止める。どうやら戦闘がこちらに向かって来ているようだ。音が近づいて来ている。

 

「どうしますか?」

「ここからは歩くぞ。敵が少数で背後をつけるようなら戦闘に入る。各自準備しておけ」

 

俺は鉄球を取り出し、念力で身体の周りに十個ほど浮かべ、印を結び何時でも発射できるように準備した。

 

電磁砲は中忍試験が終わった後も改良を繰り返し、スタンバイと発射と二段階に分けること成功した。利点は連射が可能なことと、準備することで発射までの時間短縮が可能な点である。ただし現在では十個が限界であった。

 

「敵がこちらに来るぞ!」

「敵は……四人です!どうやら傷を負っているメンバーがいるようです」

 

それぞれが歩きながら準備していると、先生とトンボが感知したようで声を出す。それと同時に先ほどまで聞こえていた戦闘音が止む。どうやら敵の撤退ルートと被ってしまったようだ。

 

「飛竹は周辺の警戒だ、敵に増援がいないか確認しろ。ここで待ち伏せるぞ、敵が少なければ奇襲をしかける。秘術・蟲邪民具!」

 

戦闘は避けられそうもない。ならばこちらの方が優れているであろう探知範囲を有効に活かすため、待ち伏せという形をとったのだ。さらに先生が感知を邪魔する蟲をばら撒き、俺たちを感知されにくくしてくれる。

 

「トンボ、敵がヨフネの射程に入ればすぐに撃たせろ。続けて援護する」

「はい」

「俺は撃ち尽くして構いませんか?」

「いや、一応数発は残しておけ」

「分かりました」

 

戦術を確認し終わってからは息を殺し、待ち伏せる。俺の感知外のためトンボの指示通りの方向に向けて構える。そしてハンドシグナルでのカウントダウンが始まった。

 

ーーー5、4、3、2、

 

「避けろっ!」

 

トンボの叫び声で後ろに飛び退きながら俺も撃つ。それと同時に先ほどまでいた所に雷撃が直撃した。どうやら敵にはこちら以上の感知タイプがいるようだ。

 

「構えろ!」

 

現れた三人の姿を見て固まる。というよりも持っている物を見て固まった。

 

「霧の忍刀七人衆か!?」

「本当に俺たちも有名になったもんだな」

「それよりも早く退くぞ。こいつら程度、雷牙お前一人で充分だろ。満月と刀は俺が持って行く。お前も早く海まで来い」

「おう」

 

こいつら舐めやがって。敵の前でベラベラと会話してんじゃねえよ。でも、どうやら予想通り海の国に本隊が入るのだろう。ということはすぐには敵に援軍は来ないということだ。

 

七人衆でも有名な西瓜山河豚鬼が大刀“鮫肌”と断刀“首切り包丁”を背負い、鬼灯満月に肩を貸していた。双刀“ヒラメカレイ”は満月が背負って撤退していった。

 

攻撃に参加してこないということは、それだけ深手を負ったのだろうが深追いする必要はない。しかし問題は目の前の男である。

 

雷牙と呼ばれた男は何となく雷をイメージさせられる変わった短刀を二本持っていた。おそらくあれが雷刀“牙”だろう。そして電気を鎧の様にして身に纏っていた。そして、ふと思い出す。

 

「そういえば敵は四人だったはずだ!トンボ、もう一人はどこにいった?!」

「あいつが背負ってる包みの中に反応があるよ。多分子供だよ」

「クソっ誘拐かよ」

「違う、チガウ!蘭丸は、俺の相棒だァ!」

 

いきなり怒った雷牙はこちらに突っ込んで刀を振り下ろして来た。全員が避け射線上にいないことを確認して反撃に出る。

 

「雷遁・電磁砲、三連!」

 

バチィッと音がして敵が後ろに飛ばされるのが見えた。

 

「ヨフネ、ナイスだ!やったか?」

「まだです!信じられない、ヨフネ君の攻撃は全部命中したはずなのに」

 

雷牙が土埃の向こうで立ち上がる。

 

「あーいてて、蘭丸大丈夫か?」

「うん、僕は少し擦りむいただけだよ。大丈夫、ありがとう雷牙」

「擦りむいただって?!大変じゃないか、後で絶対治してやるから死ぬんじゃないぞ。お、おおお前ら許さん!」

 

いまいち精神が不安定なのかもしれない。可哀想だが後ろの子供を狙って隙を作るか。でも、どうする。この班で一番威力のある電磁砲が弾かれたとなると何か考えないと。しかし、なぜ弾かれたんだ?

 

「雷球!」

 

雷牙が俺に向かって雷撃を飛ばしてきた。最初に撃ってきた術もこれだろう。躱しきれないと思い、当たる瞬間前方に雷遁を展開して耐える。

 

「うらァっ!」

 

雷牙の気合いと共に奴が纏っていた雷が強くなる。そして一瞬にして間合い詰められた。

 

「ちぃっ!早くなった?!」

 

雷で神経を活性化させているのか、先ほどよりも速度が上がっていた。そして俺は思いっきり蹴飛ばされ、打ち付けられてしまう。

 

「ヨフネ!クソっ!秘術・蟲玉!」

 

先生は敵めがけて蟲を一気に集約させるが、バチィッ!っと、またあの音がして蟲たちが地面に落ちていった。それと同時に雷牙は雷球を先生に放ち感電させてしまう。

 

「お前らは殺してやる。まずはうじゃうじゃと気持ち悪いお前から!」

 

そして雷牙は先生の元へ間合いを詰めようとするが、二人一緒にいたトンボとシズネが阻止しようと手裏剣を飛ばすが、それらはあっさりと撃ち落とされる。

 

「お前ら……面倒くさいぃ!雷葬・雷の宴!」

 

雷牙は雷刀を地面に突き刺すと、地面に電撃を走らせた。電撃は分散して襲いかかり、三人はビクッと体を引き攣らせながら気絶させられてしまった。

 

まずい、まずいまずい。身体が震える。このままだと三人が殺されてしまう。何か奴にダメージを与えられる方法はないか?考えろ!何のための知識だ!

 

慌てて周りを見渡す。何か、何か使える物はないのか…………あっ、あるじゃないか!こんなにいっぱい!

 

俺は手元にあった折れた竹を手に取り、クナイで先端を尖らせて竹槍を作る。しかし、既に雷牙は三人へと迫っていた。

 

このままじゃ間に合わない!

 

ーーー自分の大切なものを死んでも守り抜くと決めた時だ!

 

そうだ、今使わなくていつ使う!全門解放出来るとは思わない。だけどせめて、せめて……八門遁甲、第一開門……開!

 

瞬間、普段よりも圧倒的に早いスピードを手に入れ、一気に雷牙の元まで行く。

 

「雷牙、危ない!さっきの一人が来るよ!」

 

どうやら後ろの包みに入った子供が感知タイプだったようだ。しかし、もうここまで来れば関係ない!俺は竹槍を雷牙に対し突き出した!

 

「そんなもんでこの鎧が破れるかよ!」

 

雷牙は雷を強めてガードしながら叫ぶが、そんなもんじゃこいつは防げない!

 

ドスッ!

 

雷の鎧だけではなく、後ろの子供まで一緒に貫通させるために胸におもいっきり竹槍を突き立てた。

 

「な、なんでこんな竹ごときで」

「竹は絶縁体といってな電気を通さない。さらにただの竹槍じゃないぜ。俺は使えるのは雷遁だけじゃなくてね、風遁で強化させたのさ」

「それだけのことで……」

 

そこまで言って雷牙が黙ったので、しっかりと死亡を確認する。後ろの子供も確認したが竹槍に貫かれており即死だったようだ。

 

急いで三人も確認するが、ただ気絶していただけだった。ほっと胸を撫で下ろして、まずはシズネを掌仙術で回復させる。

 

「んん〜ヨフネか。ヨフネ!あいつは?!」

「そんないきなり起き上がんなよ。雷牙とかいうあいつは殺したよ」

「えっ!?よくできたわね」

「それよりも二人を回復させてよ。二人も感電して気絶してるから」

「わかった、ありがとうね」

 

シズネに気にすんな、とひらひら手を振りながら立ち上がろうとすると筋肉痛が襲って来た。

 

ヤバいな八門遁甲。あれだけの一瞬だったのにもう筋肉が悲鳴をあげるのか。それよりも八門全部を感知できなくても開くじゃないですかダイさん。でも、ありがとうございます。おかげでみんなを守れました。

 

ダイさんに感謝しながら再度、雷牙の元へと行き雷刀“牙”を拾い上げる。思わぬ所で良い拾い物をした。相性は良いはずだと思い、左の腰にバンテージで二本とも固定する。帰ったら色々と試そう。

 

「よし!ヨフネ、みんな起きたわよ」

 

シズネが二人を起こし、教えてくれる。シビ先生とトンボもまだ若干の痺れが残っているようだが大事無いようだ、シズネの医療忍術は凄い。

 

「ヨフネすまない。上忍ともあろうものが、ああも簡単にやられてしまって」

「しょうがないですよ。相性最悪だったんですから」

 

正直、蟲がまとめて落とされるのを見たときは、夏のコンビニの外で紫外線ライトに落とされる虫を思い出してしまった。

 

「とにかく、よくやってくれた。それと早速だが元の作戦に戻って、戦闘があった所まで行くぞ」

 

先生の言葉で林のさらに奥に進んで行く。一歩進むごとに酷い筋肉痛が襲うが、みんなには気取られないよう振舞う。どうせ無茶したと怒られる。なんでそんなことしたのかって言われても恥ずかしくて言えないしね。

 

進んで行くと突然そこだけ、隕石でも落ちたかのように開けていた。中心には見覚えのある緑の全身タイツがいた。

 

「っ!ダイさん!」

 

(ガイを守るために死ぬ事は分かっていたけど、まさかこんなに早く!)

 

思わず中心に向かって飛び降りた。胸に耳を当てると、まだわずかにだか息がある!

 

「シズネ!早く来てくれ!まだかすかに息がある!」

 

そこまで叫んで、ダイさんが手を出してきた。

 

「……ヨ、ヨフネ君。もう無理だ。死門まで開いた」

「なんでそんなこと!」

「自分の大切なもの、ガイを死んでも守り抜くと決めた時が来たのさ」

「そう、貴方もですか。ダイさん、いや師匠。俺も開門を開けましたよ。おかげで仲間を守れました。ありがとうございました」

「後悔のなく生きろ、初めてにして唯一の弟子よ」

「……はい」

「ヨフネ、残念だけどもう……」

 

あの人にとって息子ではなく、純粋な弟子は俺だけだった。その意思は受け継ぎます。師匠の笑顔に向かって俺は誓った。

 

「シビ先生、マイト・ダイが命と引き換えの術を使って、忍刀七人衆を退けたようです。それとどうやら撤退させた部隊がいるようです」

「わかった、すぐに合流しよう!」

「先生!近くに忍刀七人衆の遺体があれば何か情報が得られるかもしれません。少し探してみたいのですが」

「おい、一人でか?危険だ!」

「俺なら大丈夫です。それにシビ先生達はまだ痺れが完全には取れてないじゃないですか。敵が来ても俺一人の方が逃げやすいです。三十分だけです」

「……わかった。約束だぞ」

「すみません」

「よし、この人は俺が運ぶ。二人とも行くぞ」

 

そう言うと先生はダイさんを担いで行った。トンボとシズネもチラチラとこっちを見ていたが、シッシッと手振ったら先生を追いかけていった。

 

時間も無いため、コン平にフルに分身してもらい捜索するとすぐに見つかった。

 

遺体は四体。通草野餌人、栗霰串丸、無梨甚八、琵琶十蔵の四名だ。それに目的の物も見つかった。鈍刀“兜割”、長刀“縫い針”、爆刀“飛沫”の三丁だ。

 

後々の大戦で多くの戦死者を出すこの三丁、俺は巻物に封印しベストのポケットにしまった。

 

使いにくいのばかりあってもね。河豚鬼、首切り包丁だけ回収しやがって、あれが一番欲しかったのに。怪力に耐えられる刀なんてあれぐらいだぞ。鮫肌はいらないってか持たせてくれない気がする。

 

「クォン!」

 

そこでコン平が人が近づいて来たことを知らせてくれた。すぐに警戒するがやって来たのは木の葉の有名人だった。

 

「ねえ、貴方。ここで何があったのかしら?」 

 

やって来たのは大蛇丸でした。なるほど原作だとここで死体と忍刀を回収して、これ以降は忍刀は行方不明となったのだろう。

 

とりあえずは波の国からここでダイを看取ったことまでを話した。下手に嘘はつかないほうが良さそうだ。敵よりも嫌な空気を感じる。

 

「そうだったのね。ところで死体はあるけど忍刀七人衆というなら刀はどこかしら?」

 

やっぱり聞いて来るのか。ボカすしかないな。

 

「私が戦闘し一丁は戦利品として確保しました。他の刀は戦闘の前に西瓜山河豚鬼が複数持っていたのを確認しています」

「貴方が勝ち取った刀はなに?」

「……雷刀“牙”です」

「そう、私が欲しかったのは大刀“鮫肌”だったんだけど残念ね」

 

何この人、鮫肌やったら奪うつもりやったのか。とりあえず、雷刀は取られずに済みそうだ。

 

「あの、何故ここにいらしたのですか?」

「極秘よ」

 

はあ、そうですか。なんと言うか……やっぱ嫌いだ、この人。

 

「貴方、死体の処理はしといてあげるから仲間と合流しなさい」

「はい、ありがとうございます。では!」

 

感謝したふりをして逃げ出した。何がやっといてあげるだ。邪魔だっただけじゃないか、変態め。

 

 

 

最後の大蛇丸が一番精神的に疲れた。





刀の数え方ですが、原作にて丁と数えていたので合わせてみました。
丁は本来短刀などに使うらしいです。原作ではヒラメカレイに対して使われていました。

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