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これまでの話の加筆と修正をしました。
日向ホヘトですが、実は年下でした。会話を全て敬語に変更しています。
四代目が亡くなり、やはり三代目が復帰することになった。それからしばらくして、里が復興し始めた頃に俺は三代目に呼び出された。
「よく来たの、ヨフネや」
「いえ、で一体何の用でしょう?」
「お主がミナトに相談しておった件じゃ。何でも中隊以上を固定して連携を高めるべきだと進言しておったそうじゃの」
「はい、まだ俺が未熟だったのと戦争のすぐ後だったという事もあって先送りになりましたけど」
「うむ、それについては儂も奴から相談を受けておったのじゃが、どうだやってみぬか」
何か厄介事かと警戒していたので驚いた。正直、九尾事件からまだ間もないこのタイミングで言い出されるとは思わなかった。
「ハッハッハ、驚いておるようじゃの。実はのう九尾が襲来した際も各小隊規模での散発的な抵抗が目立ってしまっておった。そういった今までの考えを改善する為にも、一度お主が中隊長となりその班を編成するが良い」
「ありがとうございます」
「但しじゃ、条件がある。上忍はお主のみで他は中忍と下忍で編成し尚且つ下忍は八名以上含む事、そして二十五歳未満で編成する事の二つつじゃ」
お、思ったより条件が厳しい。狸親父め、これは先を見越しての編成にしろという事なのだろう。
「では聞きたいんですが、基本的にその条件さえ満たしていれば、こちらの人員の要望は通ると思っても?」
「そうじゃの、よほどの人材でない限りは認めよう。まず小隊長の候補がおるなら聞いておこう」
「では日向ホヘトは是非お願いします。それに一期上で四代目の護衛小隊にいた不知火ゲンマも出来れば欲しいですね」
ホヘトとは渦の国以降も仲良くしていて、既に中隊の構想も話している。超電磁砲の使用を含め個人的に欠かすことは出来ないと考えている。
不知火ゲンマは一期上ではあるが、ガイと同じ班員であった為、それなりに親交もある。中忍試験では俺の電磁砲を警戒して接近戦を挑んで来たが、強力な火遁も使える。護衛小隊に所属していたぐらいなので実力も折り紙付きだ。
「日向ホヘトに関してはこちらでも予想しておったからの大丈夫じゃ。しかしゲンマか、お主も良い人材を選ぶの」
「ゲンマは難しそうですか?」
「なにあやつも九尾事件では何もできずに悔しい思いをしておる。良いきっかけとなるじゃろう。許可しよう」
とりあえずここまでは要望が通ったが、ここからが一番の山場だ。
「あと希望なのですが、うちは一族の者を一人は入れてもらえませんか?」
「ほう、うちはとな。彼らは基本的に警務部隊に所属しておるからの、そう外に出せる人材は多くないのじゃが」
「九尾事件からうちはと里との関係が急速に悪化しているのは知っています。その状況下で連携を重視した班が編成される以上、余計な軋轢を生まぬためにも、うちはの者を入れておくに越したことはないと思います。それに他の有名な一族についても若手を入れたいと思っているので」
「ふむ、その考えには儂も同感じゃ。そちらも手配しておこう。して他の一族とはどこじゃ?」
「奈良家、山中家、秋道家、油女家この辺りですね。本当はアスマも考えたんですが、俺の下には付きたがらないでしょう」
「本当に有名所は入れるつもりなんじゃな。お主の事じゃ、ただ能力というだけじゃなく、里の結束を高める事も考えておるのじゃろう」
「はい」
三代目の言う通りだ。それにうちはに関しては滅亡が阻止出来なかったとしても、一人くらいは里外に連れ出す機会を作って生存者を増やしておきたかった。生き残りはサスケ一人ではなく、他にもいた方が良いに違いない。
「各小隊の人員に関しては小隊長が決まりしだい、彼らと相談したいと思っています。ただ俺の小隊についてはある程度決まっています」
「そうか、聞いておこう」
「まずは山中一族から山中サンタをそれに医療忍術と封印術の使えるスクイという下忍のくノ一を考えてます」
「なるほどの……お主の小隊は支援部隊とするつもりか」
「そのつもりです。ただ経験のある若手の医療忍者なんて知らないので、それだけは紹介して下さい」
「ふむ、そういう事なら心当たりがない事もない。本人の意思次第じゃがの」
「ではお任せします。ちなみに他の小隊は近・中・遠距離それぞれの攻撃に特化した班をと考えています」
「なるほどの。あとは小隊長が決まり次第、お主が直接各一族に話を通すがよい」
こうして部隊編成へ一歩踏み出した。
あれから三日後、決まった小隊長達と初顔合わせとなった。集合場所で待っているとホヘトと相変わらずバンダナを前後逆に巻いて千本を咥えたゲンマがやってきた。
「ヨフネ隊長、今回はどんな任務なんです?」
「もう一人来るからその時説明するよ」
「おいおい勘弁してくれよ。この三人でも駄目なんて厄介な任務じゃないだろうな」
「厄介っちゃ厄介なのかな?もうちょい待ってよ」
ホヘトはどうやら気付いたようだが、三代目からは何も聞いていないみたいだ。さほど待たずにもう一人が到着した。
「あれ、お待たせしちゃいましたか?うちはシスイです」
「いいや、みんな今来たところだ。俺は隊長のうたたねヨフネだ」
「不知火ゲンマだ」
「残り一人が同期でトップだったシスイとはね。凄いメンバーが揃いましたね、ヨフネ隊長」
「そうだな、うちはを希望したがまさかシスイが来るとはね」
一応それぞれ軽く自己紹介したが、本当に驚かされた。うちはを希望したのは滅亡阻止に失敗しても生き残る忍を増やしたかったからなんだが、まさかキーマンとなるシスイがくるとは。しかしこれで滅亡阻止にまた一歩近づけた。とりあえずはこの中隊について説明するか。
「実は忍界大戦が終わってから中隊以上の連携を深めるよう進言してたんだけど、ようやく認められたんだ。なのでこれからは基本的に中隊で任務にあたることになる。小隊で任務に当たらなければならない場合、その時も中隊の人員から小隊を編成することになる。つまりどんな任務でもある程度対応出来る部隊を作る必要があるんだ」
「なら今ここにいるメンバーは小隊長ってことですか?」
「そうだ、ちなみに俺が中隊長となる。シスイは中距離と奇襲に特化した小隊を作ってくれ」
「班員は自分に任せて貰えるんですか?」
「一応みんなで相談したうえで、三代目にお願いする形になると思う」
「分かりました。推薦とかあります?」
「そうだな、奈良家の者は入れて欲しい。この小隊のもう一つの目的は、木の葉が一枚岩であると敵はもちろんだが、里にもアピールすることにあるんだ」
俺は小隊長のみんなにはとりあえずの目的だけを話しておく事にした。シスイが来たという事はうちは滅亡回避の大きなチャンスだ。いざとなれば本当の目的も話すつもりでいる。
「なら俺はどんな小隊にするんだ?」
「ゲンマは遠距離部隊を率いてくれ。あと風遁使いを一人は入れて欲しいのと油女一族を入れて欲しい」
「ん、まあ問題ないだろう」
木の葉には少ない風遁使いだがいないわけではない。多い火遁使いとの相性も良いから必ず役に立ってくれるだろう。油女一族は攻撃よりも部隊の中で探索と敵感知タイプの妨害として役に立ってくれる筈である。
「ヨフネ隊長、俺は近距離ですかね?」
「ああ、ホヘトには前線を任せる」
「ええ、分かりました」
ホヘトにはあらかじめ話をしてあるので特に説明はしなかった。ちなみにこの小隊には秋道一族を入れるつもりだ。
「ちなみに俺の部隊は、結界や封印、医療忍術といったサポートがメインとなる。あと山中一族を加えて心伝身の術を使って指揮をとることにもなる。あ、言い忘れていたけど小隊の編成には条件があって下忍を二名は含むのと、歳は二十五歳未満の忍で構成しないといけないから。あともちろんだけど上忍は無しで」
「本当ですか?!」
「うわ、やっぱり面倒ごとじゃねえか」
「はあ、三代目から条件を付けられましたか」
「まあこれは三代目が若い世代に希望を持ってるってことだと信じてる……というか信じたい。今からみんなにはお互いに班員候補の情報交換をして欲しい」
「ヨフネ、お前はどうすんだ?」
「俺は各名家に行って人を出してもらえるよう話をしてくる」
そうしてみんなが素案を練っている間に俺は奈良家に来ていた。ここには奈良家との繋がりが深い山中家と秋道家の当主にも集まってもらっている。
「どうも、うたたねヨフネです。今日お三方に集まって頂いたのは、今度作られる部隊にそちらの若手を出して頂きたくお願いしにあがりました」
当主はすでにシカクさんにチョウザさん、いのいちさんへと変わっていた。俺はなるべく誤解を与えないよう部隊について説明する。
「なるほど、そういうことなら奈良家からは人を出そう。二人はどうする」
「俺も異存はない。というよりも俺はサンタから先に話を少し聞いていたんだけどな。普段から世話になっているようだし、あいつを出すさ」
「奈良家からは日向やうちはの小隊長と同期のダエンを出そう」
「二人が賛成なら秋道家からはシトウを出そう。棒術の才能があるからそう役立たずとはならないだろう」
「ありがとうございます」
こちらは構えていたのだが、話せばすんなりと許可を出してもらえた。しかしサンタ以外は二人とも中忍との事だからホヘトやシスイには早く伝えてやらないといけないな。
「ところでお前さん将棋は打てるかい?」
「得意ではないですがそれなりには」
「よし、それならちょっと一局相手してくれ」
早く帰りたかったのだが、何故かシカクさんが将棋を持ち出して相手をすることになった。とても勝てるはずもないが、対局することで俺の事を知ろうとしているのだろう。
パチッと駒が盤上を打つ音だけが響く。チョウザさんやいのいちさんも将棋盤を囲むようにして座り、時々唸りながら対局を眺めている。しかし二人は唸っているが終始押されていて、俺は躱すので必死だ。ここらで仕掛けないともうチャンスもない気がする。
「棒銀か、お前さんは“玉”とはなんだと思う」
ずっと黙っていたシカクが唐突に口を開いた。そういえば原作でアスマとシカマルの時もこんな話をしてたな。
「そうですね、この盤面が世界を現すのだとしたら、里や子供達ですかね」
「なるほど、お前さんはいくつになる?」
「今年で十六になります」
「そうか、若けえのにしっかりしてる」
「ありがとうございます。でも俺は将棋が現すのは一戦場にすぎないと考えています。そうなると“玉”は任務でしょうね」
「部隊長ではなく任務か」
棒銀もどうやら通りそうにない。というよりも誘われたのかもしれない。既に局面は終盤へと差し掛かっている。
「そうです。どうやら俺は勝てそうにありませんが、こうするとどうでしょう」
そう言って俺は勝利を度外視して駒を進める。
「ふむ、そういうことか。お前さんが負けようとその後も戦いは続く。その上で相手の全滅を匂わせるか」
「そうです。将棋では撤退という選択肢はありませんが、実戦なら相手にそう思わせることも重要です」
「ルールは完全に無視してるがな」
「どうも、ただ負けるのが悔しいもんで」
「そうか、これからも上手くやれよ。それとたまには打ちに来い」
「ありがとうございます、是非」
どうやらシカクさんには認められたらしい。その結果、俺はたまに相手をさせられ次回以降は完璧な勝ち方をされるようになってしまうのはまた別のお話。
こうして部隊の編成は着々と進んでいった。俺の小隊にはサンタに加えて、封印術も使える医療忍者の下忍のくノ一であるスクイを加えた。戦闘面では期待できないが有望な若手だ。実は彼女は渦の国で倒れた俺を介抱してくれたくノ一だ。あれから任務で一緒になることがあり、信用出来ると判断し今回スカウトした。
そこで三代目に相談して紹介してもらったのは、タシという元暗部のくノ一だった。医療忍術はもとより結界忍術も使えると紹介状には書いてある。
「うたたねヨフネです、よろしく」
「タシと申します。このような機会を頂きありがとうございます」
「……固いですね。もっとフランクな感じでも大丈夫ですよ?」
「いえ、これで慣れているので。それに先の九尾事件の時に私は何者かに背後から気絶させられ、クシナ様をお守りする事が出来ませんでした。あの時、三代目様の直轄暗部といえど組織だっての反撃は出来ませんでした。そこにヨフネ様が中隊規模での常時編成を進言されていたと三代目様より教えて頂いたのです。そのお歳でこの様な事を考えられるとは、このタシ感激した次第です。さらに聞けば出産に際し警備の必要性を説いて強化させたと言うではありませんか。あの場にいた者の生き残りは私だけとなってしまいましたが、貴方のおかげで私は生き残ることが出来たのです。直轄暗部としては事件の責任を取る意味も込め抜けさせて頂いたうえで、この部隊に所属させて頂いけるよう三代目様に逆にお願いしたのです。それなのに何故フランクに話せましょうか、無理です」
「……お、おう」
あまりの怒涛の喋りに思わずたじろいでしまう。この人は忠誠心がMAXで暴走するタイプな気がしてきた。
それにしてもあの事件の時に俺が人を救えていたという事は嬉しかった。しかしその反面警備にあたっていた人が増員された事により死者も増えたということである。自分の行動次第で生者の数も死者の数も変化することを改めて思い知らされる。
何はともあれ俺にサンタ、タシとスクイ、これが俺の小隊となった。どうやら他の小隊も上手い具合に班編成が出来たようだ。
ホヘトは秋道シトウを含む近距離タイプに武器を使う中遠距離タイプの忍の小隊。索敵はホヘトが担ってくれるだろう。
シスイは奈良ダエンや索敵が出来る中距離タイプを含む三名を揃えた。今はまだ“瞬身のシスイ”とは呼ばれていないが、得意の瞬身ですぐにでもその異名は広がるだろう。
ゲンマは結局、火・水・風と得意属性がバラバラとなるように編成したようだ。お互いに得意属性でフォローしあえるだろうし、協力する事でより術の威力を上げる事が出来るだろう。これにまだ下忍になって一年の油女ムタを加えた小隊となった。ムタはシビ先生に相談し配属して貰った。女の子の様な容姿をしているが、油女一族から期待されている子らしい。
これで中隊全てのメンバーは揃った。