Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
医療棟の医療等に、ズュラファと戦闘開発科の男子生徒、アルシー、ノアファ、エレーナが集まっていた。
医療室の人が言う。
「突然、黒い服を着た男がこの子を襲ったの?」
名札をちらっと見る。スカースナ・ハルトシェアフィス・イヴァネと書いてある。医療科の先生であると名札に書いてあった。
「はい、突然轟音が聞こえて窓が割れてその人が部室に倒れ込んできたんです。」
ズュラファが眼鏡の位置を修正しながら事情を説明した。ノアファの顔を見ると少しおびえている様子だった。エレーナは少し不安げ。アルシーはぼーっとしていた。
イヴァネは包帯やそのほかもろもろを棚から取り出して手当てを始めた。
「とりあえず、出血と打撲で済んだので、今日から医療棟で入院ですね。二週間で治ります。」
「あ、ありがとうございました。」
男子生徒が礼を言い、杖を携えて奥に引っ込んだ。奥にはもう一人先生がおり、男子生徒を連れてどこかへ去っていった。
「ところで・・・」
イヴァネが顔をアルシーのほうに向きなおす。
「ラツ先生から聞いたんだけれど、君はハタ王国から来た留学生なんですね?」
「は、はい。そうです。」
「どういう経緯なの?どうやって入学したの?」
「・・・ハタ王国のネステルで留学制度がありまして、ここに試験無しで入ることができました。」
エレーナが少し驚く。
「なにか、奨学金制度とかないの?」
「何も聞いてない。だから、容易に成績を落としたりはできないな」
「容易でなくても成績は落とさないでくださいね?」
少し話した後、アルシー達は医療棟を後にし部室に戻る。さっき、部室は例の件で窓の破片が飛び散っているはず。あとで掃除をするという話を、歩いている間にしていた。部室に戻ると、キーアとフィシャがいた。
「やっと帰ってきたか・・・ん?お前はアルシー君じゃないか。お前もチェッカー部希望なのか?」
「キーアか。そうだけれど。いや、エレーナについていったんだ。」
「エレーナについていった?何度も言うが、エレーナは俺のものだ」
エレーナを見る。少し下を向いていた。
「エレンちゃん、大丈夫だったんだね!」
ノアファがエレンに抱き付いた。ズュラファは少しだけ笑みを浮かべて二人を眺めていた。
「フィシャさんから聞いたぜ。エレーナ。黒服の男が襲ってきて男子生徒が怪我したんだってな。俺が後を追いかけたんだが、音もなく消えた。」
出た。デュイン・ユエスレオネではよくあることだ。若干その場に居合わせたかったという感じもする。
そこに、エレーナが発言をした。
「一面に黒い服と言うと・・・古理過激派しか思いつかないわ。」
「エレーナちゃんもそう思う?」
フィシャが少しかがんでエレーナの顔を見た。キーアも腕を組む。
「あの登場の仕方と去り方・・・奴らがよくやりそうだよな」
「そんなのあるのか?」
「ああ、王国にはあんまりシェルケンは襲撃してこないんだな。奴らはよく一人で偵察に来ては去っていったり、たまに一つの場所で大規模なテロをしたりと、いろいろとよくわからないんだ。ラメスト遠征の時なんかはラネーメ人を狙ったんじゃないかと、俺のジジイも思ったらしいが。そのあとすぐにリパラオネの方向を狙った」
場の空気がテロの話しで重くなる。だが、フィシャがその空気をぶった切る。
「ねえ、ガラスの破片投げて遊ばない?」
「駄目だよ。死人が出るよ」
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あれから数回対局したがやはり勝てない。とはいえ、俺の初めての仮入部がまさかあんなことになるとは。何ともハードだった。これがユエスレオネなのだろうか。だが、一日目でどの部に入りたいかが決まってきた。というかもうほぼ確定した。夜が近づき、ある者は寮に入り、ある者は校門を出てそれぞれの家に帰った。エレーナはここに泊まり込みらしい。
下校のチャイムが鳴り、しばらくするとアルシーは職員室に呼ばれ、ラツと話し合いになった。
「まさかチェッカー部に入ってくるとは思わなかったぞ。留学生よ。まあいいだろう。わが学園には学生寮が設置してある。近くに住む者は通っているがここら一体は居住区などほとんどないので、多くが寮に泊まり込みだ。君の友達のエレーナ君もそうだな。アルシー君は留学生でホームステイ先も決まっていないから、寮に泊まってもらうことになるんだが・・・なんせ場所を正式に取れていない。」
なんだと。
「だから、しばらく誰かに部屋を借りる。誰がいい。エレーナか?」
アルシーは考える。そんな男女で相部屋なんて、しかも初対面でできるはずがない。とはいえ、他に一緒にしてもらうような友達もまだいない。
「いやまて、キーアの奴がいたな。でもあいつはやめておけ。字が汚いうえに部屋も汚い。普通一つの部屋に4人止まるんだが、あいつが一人いるせいであの部屋は他の4倍に増して汚いぞ」
「マジですか」
清潔さを狙って、エレーナのところに頼むか。しかし、それ以外の3人が俺を受け入れてくれるかどうか。
「まあものは試しだ。実際に交渉しに行こう。」
ラツ先生に連れられて、アルシーは化学科女子寮へ向かった。