Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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再開

 海面がギラギラと光り、太陽の光を反射している。飛行場のくせにカモメがのどかにそこらを飛び回っている。戦時中のそれでもって前線の割には、如何せんのどか過ぎるのではないかとアルシーは思った。しかしながら、フィスルクーフェーはその厳格なxelkenの戦士としての双眸を崩さずに自分が連邦と手を組む、ということに未だに納得できていなかった様子であった。何せ、xelken.valtoalと連邦はつい六年前に起こったばかりの戦争で激しくしのぎを削り合い、敗北しているのだ。彼自身、デュインの出身ではないそうだが、あまり受け入れられるものでもなかったのであろう。

 

「xelken.valtoalのシェルケン・ヴァルトル・フィスルクーフェーだ。ADKから本部の要請で派遣された。以下、アレス・フェリーサ、ティーア・クントイタクテイ、アルシー・ケンソディスナル三名が連れだ。」

「アルシー……ケンソディスナル?」

 フィスルクーフェーと話す連邦兵の出迎えの後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。アルシーは身を乗り出して声の主を探す。

 

「お、お前!生きていたのか!」

 背が高く、リパラオネ人には余り居ない金髪を揃えて連邦軍の軍服を纏ったその風貌は、死ぬまで忘れることは出来ない。

 

「レシェール……キーアなのか……?」

 お互いに目を見開いて確認しあう。その動作から雰囲気から、声の調子まで懐かしい。紛うことも無い親友、勇ましく戦い分かれた戦友であった。

 キーアは突っ立ったまま涙を流していた。予期せぬ再開は相当に感動を沸き起こしたことだろう。アルシーがキーアの肩を持つとキーアもアルシーの肩を持った。

 

「xelkenはただのドルムだと思っていたが――違うようだな?シェルヴァルフィス氏。」

「ええ、我々はデュイン戦争からは変わりましたからね。ヴェフィサイト・ヴェルガナーフィス・イレー長官。」

連邦兵の長官らしい堅物男はいかにもという感じで相好を崩した。

 

----

 

「本当にエレーナが俺のものになるとは思わなかったよ。」

 微笑しながらキーアが言う。作戦のブリーフィング時間までには数時間の空きがあった。各地から集結したxelken.valtoal兵は、どうやら連邦兵たちとも打ち解けあって順調に信頼関係を構築している様子であった。

 

「まだ、そんなことを言っているとはお前は何にも変わってなさそうでなによりだ。」

 キーアの言葉にアルシーは少々皮肉気味に返した。そんなところで知らない連邦兵が飲み物を持って近寄ってきた。アルシーが王国人である事に気付くと少々悩んだような顔になっていた。

「君、ルーテンリウスニータはお好きかな?」

「ルーテンリウスニータ?」

 キーアはアルシーの目の前に注がれた飲料を見て、素っ頓狂な声を出した。どうやら彼はこれを余り好きではないようだ。

「頂くよ。」

 そういってアルシーはルーテンリウスニータを男から受け取った。一口飲むとその強い甘さの後に炭酸と薬草っぽい香りで鼻腔が満たされた。ハタ王国やデュイン本土ですらあまり味わったことのない飲料であった。炭酸飲料の割には精神が落ち着き、いつの間にか喉や体の調子がよくなっていた。

「どうだい?長旅の疲れは取れたかな。」

「凄い即効性だな、一体これはなんなんだ?」

 飲み物を差し出した連邦兵は嬉しそうに相好を崩しながらアルシーのとなりに座った。

「ユエスレオネにいるアレス・エナファという人が体調と精神の安定のために作った飲料らしいんだ。連邦軍の中では凄い広まりを見せてるんだが、ところどころでハーブのブレンドが違う。」

「これは君がブレンドした物だってことか?」

 連邦兵はアルシーの質問に頷く。キーアはその連邦兵の続きを遮って言った。

「気をつけろアルシー、奴のブレンドしたルーテンリウスニータには麻薬(ファーク)が――」

「おい、キーアそれは言わない約束だぞ。」

 

 何か変なことを聞いた気がしなくも無いが、アルシーは聞き流すことにした。アルシーはキーアに再び問いかける。

「そういえば、俺等は何の話をしていたんだっけ。」

「エレーナが俺のものになったって話だ。」

 

 アルシーは頭を抱えた。


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