Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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再来

「州境警備隊……ですか?」

フェリーサが怪訝な顔で問いかける。

フィスルクーフェーは、自分の席の前にあるテーブルに置かれたパンにバタークリームを塗りつけながら窓の外の雲を数えながら、聞いていた。

「既に上からの命令に一応違反しているんだろ?これ以上反抗したら逆に怪しまれるだろ。」

アルシーがフェリーサにそう返すと、訊いていないと言う顔で一瞥してきた。アルシーはおどろおどろ目をそらし、自分のプレートに手をつけた。

「まあ、落ち着けよ。もうウェールフープ機に乗ったわけだし、帰れる旅じゃないぞ。」

フィスルクーフェーは、パンを上品にちぎって食べながら言う。

 

フィスルクーフェーを機軸とするxelken部隊はADKで再編成を受け、デュイン・パニアル州にウェールフープ機で向っていた。何時もなら、すぐに到着するウェールフープ転送システムであったが、ADKのウェールフープ機はいずれも一つ昔の型式の機体しかなかった。アルシーも外から機体を見ては、「もしや自分はファイクレオネの独立国家戦争時代にタイムスリップしたのではないか」と思うくらいに心配なものであった。

 機内は非常に閑散としていた。乗っているのは自分たちくらいではないかと思うくらいに乗客が少ない。そんな中、フェリーサ、アルシー、フィスルクーフェーの三人はxelkenの再編成部隊とは別行動で民間機にまぎれて搭乗していた。Xelken上層部は、どうやら部隊の命令部であるフィスルクーフェーたちはアルシーを警護していくべきであるとの考えで、分けさせて輸送したらしい。

 それにしても古そうな機体だとアルシーは思った。

 機内は暗いし、座席は軋むし、さっきなんか近くの民間客のシートベルトが根元から外れていた。幸いブッキングが閑散であったこともあって、その客は違う席に移れたが、その様子を見てフィスルクーフェーは「連邦国際航空顔負けの装備だな?」と皮肉っていた。まあ、彼らしいが、自分等がそんな目にあったら最悪のまた最悪である。アルシー=ケンソディスナル志果たせず航空事故で死亡、なんて一報が親戚のケンソディルナル家の方々に伝えられたら、自分はただの馬鹿か精神病質者と受け取られかねない。

 アルシーはかぶりをふって、パンにかぶり付いた。

(こんなことばっか気にしていてもしょうがないしなあ……)

 実際、これから一応とはいえ戦地に向うのだから旅客機が軋む音が聞こえたりするごときのことで怖がっている事は出来ないのである。横に座るフェリーサやフィスルクーフェーの二人は何食わぬ顔で自分の食事を楽しんでいた。

「ちょっとごめん、道あけてくれる?トイレに行って来る。」

「はいはーい。」

 フェリーサがイスから退いて、通路を空けてくれた。アルシーは身支度をして席を立った。

 

 この機体、古い事は古いのだが、無駄に機体が広い。トイレが途中に設置されていなく、一々トイレに行くには、端から端までいく必要があり、不便極まりなかった。アルシーは何も考えず、トイレに向っていると後ろに人影を感じた。一瞬、後ろを振り向いても、そこには誰もいなかった。

 手洗いを済まし、外に出てくる。アルシーは早く食事を済ませて寝てしまいたいと考えていた。デュイン、つまり連邦影響圏に到着すれば様々なごだごだが始まることだし、今からちゃんと休んでおくべきだろうと思ったからだ。

 瞬間後ろから口を塞がれ、拳銃を突きつけられる。

 パニックになり勝手に動こうとする体を理性が制する。こういった場合もっとも何もしないのであればすぐに殺されている。今は暴れず、相手が何を望んでいるのかを見極めるべきであった。

「静かにしろ、抵抗せず一緒についてくれば危害は加えない。」

 そう、相手の正体は。

 

「ティーア……。死んだはずじゃ……。」

ティーアは、拳銃をアルシーに向けたまま座席につく。

「残念だったね。手品(イェンダ)だよ。」

そのしぶとさにアルシーは、笑いかけたが押さえ込む。一つ皮肉を言ってやろうと思った。

「やあやあ、リーダの手下。フィスルクーフェーを誘惑しておいて、物足りずについて来たのか?他の男に目移りしていていいのか?」

言ってな(イェーイェー)。私の目的はあなた、アルシー=ケンソディスナルだもの。」

「あっそう、俺はお前には興味は無いけどな。馴れ合うつもりは無いが頭蓋骨は大丈夫か?リーダによほど、嫌われてたみたいだが、なんでお前はそんな奴に協力するんだ?親の敵でもあるのか?」

 ティーアは、少し寂しそうな表情で顔を背けた。拳銃を向けたままだったので、どうにも変な体勢になっている。体を戻してアルシーに向きかえった。

「いい機会だから、教えてあげるよ。私の大切な人は、xelken.valtoalに殺された。」

「は?」

アルシーは呆気に取られた。ティーアの母親がxelken.valtoalに殺された?

「Xelken.valtoalに拉致された彼は、そのまま必要ないと切り捨てられ兵器実験に使われたそうね。アルシー=ケンソディスナル。私があなたのようなウィトイターもどきと同じように祖国を裏切ってxelkenにつくと思う?」

「貴様……元からそのつもりで……。」

ティーアはにやりと嘲るように笑う。

「xelken.alesにも、xelken.valtoalにも手放しで協力するわけ無いでしょ?大切な人が居ない世界になって私は居る必要が無いもの、良い?私は志を果たして死ぬ。」

ティーアは携帯を取り出して、アルシーに見せた。

 

「この機体は爆弾を積んでいる。あなたたちには、ここで死んでもらうわ。」


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