Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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学園の生き残り

第一仮設棟、アルシーは扉を開けては燃えがらを確認する作業を続けていた。祖国を騙り我らを騙した二人。そしてその二人を遣わした隊長なる人物、ターフ・リーダ。とても人間とは思えないようなことをするものだ。

それと同時に、自分の母親があれだけ勘のいい人物だとは思わなかった。自分の記憶を探ってみると、母親とはもっと抜けた人物であった。だが、あの時の我らケンソディスナル家とは、今は変わってしまったのかもしれない。父親は行方不明で、母親は今や追われる身である。

「生きてましたか・・・」

聴き慣れた声がする。同志だと思っていたはずの。

「ティーア…!」

もう安堵の声を漏らしてはいけない。自分は彼女に狙われていると言っても過言ではない。すぐに警戒心を強めた。

「そんなに緊張しないでよ、隊長と同じようなことを言うけれど、私はあなたをXelken.alesに」

「悪いが断る。俺は王国人だ。Xelken何かと仲良くすることなんてできない」

「…フィスルクーフェーさんたちは?」

「あいつらとは仲よくしているわけではない。俺は連邦軍の兵に出願したのに、敵に捕らえられこんなところに送られてきた。いわば、俺はもう捕まっているんだ」

「あなたの事情は知っているわ。メスレネザアファ様からも聞いている…」

ティーアはスカルタンの袖から手を入れた。どこかに隠し持っていたウェールフープ可能化剤を取り出した。それを自分の腕に注射するや否や、目の色を変えてアルシーを見つめた。

「私が彼女に約束したことはただ一つ、あなたをメスレネザアファ様の元へ連れて行く」

目にもとまらぬ速さでアルシーの首を掴みに行った。あっという間にアルシーは捕えられ、地面にねじ伏せられた。アルシーの上に座り、手を構えた。

「・・・あなた、何故ここにいるの?」

アルシーもティーアもその人間の方を見た。その姿は、見るも悍ましい。メスレネザアファの姿であった。

「リーダ…!」

だがそのリーダは何も話さずに凄まじい速さでティーアを蹴りつけ、気絶させた。一時的にケートニアー化した人間でさえも蹴り飛ばすとは、さすがはリーダだと感嘆した。しかし、協力関係にあるリーダがいきなり見方を蹴りつける理由がよくわからない。だが、それくらい冷酷な性格なのだと思い知らされた。

「本物はこんなに鬼畜ではないんだけどね」

唐突にリーダが喋った。だが、その声はリーダとは少し違う気がした。ってことは偽物か?

「お前・・・誰だ?」

アルシーがそう語りかけるとだんだん視界が霞んできて、リーダが見えなくなっていた。リーダがいたはずのそこには、見知った人間が立っていた。

「レヴィア…!?何故ここに?無事だったのか・・・」

「お母さんに言われたのよ、あなたたちを助けなさいって」

ん?お母さん?レヴィアのお母さんってそういえば見たことがない。だが、すぐにレヴィアはアルシーを抱いて、ウェールフープ転送の用意をした。

「ここはもうじきスキ・カラムディアのXelken.alesが駆けつけてきて、あなた達は逃げ場がなくなる」

「ちょっと待て、あの二人は・・・」

「話はあと、お母さんのいる第二拠点にトンズラするわよ!」

 

――

 

四次元移動はやはり体力を使う。アルシーは移動から目が覚めるまでに四時間はかかった。この面子では一番目覚めるのが遅かった。薄暗い部屋でアルシーはベッドに寝かされていた。

目を覚ますと母親――つまりアクリニーと重症のフィスルクーフェー、曇り顔のフェリーサ、そしてレヴィアがいた。しかし、レヴィアの母親と思わしき人物は見当たらない。

「ん…」

「目覚めたわね、アルシー」

「あ、アルシー君」

フィスルクーフェーはアルシーが目覚めたのを確認はしたが、傷を痛むような顔をしながらベッドに寝た。

「お母さん、アルシー君は大丈夫なの?」

ん?お母さん…?

「軽いやけどで済んでいるみたい。この中では一番体が弱いはずなのに、一番傷が浅いのよね。ティーアの拳銃を相手にしたフィスルクーフェーなんてまだ動けないのに」

「ねえ、お母さん」

「何?」

「お母さんはなぜここにいるんだ?何故俺が、フェグラダに留学したって知っているんだ?」

すぐにアクリニーは答えようとはしなかった。アルシーがずっとアクリニーの目を見ていたので、アクリニーは渋々話すことにしたようだ。息子の疑問には答えなければならない。

「……私と父さんは狙われていたの、丁度あなたが姿を消した日だったわ。でも、ただの留学だなんて聞いてなかった。あの時、私たち二人はあなたがXelkenに捕らわれ、人質になっているとか言って脅された。それにも関わらず父さんは彼らの話を聞かずに移住を考えたけれど、ついに暗殺されたわ。それから私は彼らに屈服してデュインに移住した。それでレヴィアをXelkenに任され、彼女を育てるように言われた。この子、ずっと前に両親が戦死してから、ずっと一人だったみたいなの。」

何を話すのかと思えば、衝撃的な事実を幾つも言い放っていった。

「待ってお母さん、お父さんは殺されたのか?」

「Xelken.alesの男にやられたわ。上官だったらしく、部下を何人も率いていた」

「何故レヴィアを育てさせられたんだ?」

「Xelkenの子にしたかったのかもしれない…でもそれだったら私なんかには任せないわよね」

「それ、私にはなんとなくわかるわよ」

口を挟んだのはフェリーサである。壁にもたれて座りながら、腕を組んでいた。

「おそらくは保険よ、保険♪簡単に言うとアルシー君の友人役みたいな感じ?この子を忍ばせておくことで、友人の好でちょっとはXelken.alesに近づけたかもしれないもの…だって相手は友人の女の子でしょ?いくらアルシー君でもそれだけは譲れないんじゃない♪」

「フェリーサ、推測は間違っていないかもしれないが、余計なことを付け加えるのはよせ」

「フィスルクーフェーと言ったかしら?あなたはまだ休んでいなさい」

「いや、大丈夫だ。それよりこれからどうするかだ。ティーアも死んでしまったし、俺はまたしても良心を軽く抉られた気分だ」

フェリーサはフィスルクーフェーを心配する目で見た。

「だが、みんながみんなティーアのような奴ではないんだろう?」

アクリニーは答えた。

「そうね。また祖国に帰れない同志は多数いる」

「…あんな非人道的な作戦を使って俺をハメないと気が済まないんだろう、あいつらは。時機にここも出発してさっさと俺の役目を果たさんとな」

フィスルクーフェーは傷に手を当てた。アクリニーがそれを見て軽い気持ちで警告する。

「くれぐれもアルシーとレヴィアを死なせないように。二人を死なせたら、いよいよ"太陽"が怒り狂ってあなたを殺しに来るから」


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