Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
フィスルクーフェーは自分なりに彼女の発言の意図を読み取った。同時に何とも言えない感情に覆われた。自分の「人を助けたい」という慈善活動を逆撫でされたような気分だ。
最後にアクリニーは忠告する。
「あなたも早く逃げたほうがいい」
「おい!それはどういう・・・」
そういうころにはアクリニーはすでに姿を消していた。フィスルクーフェーは舌打ちをしながら後を追うが、順路は瓦礫によって既に閉ざされている。だんだんと焦げ臭いにおいが近づいてきた。煙の濃度も段々と上がってきた気がする。
すると、塞がったはずの瓦礫がどかされる音が聞こえた。誰かが近づいてくる。
「ティーア…?」
そこに立っていたのはティーアだった。無事だったのかと、フィスルクーフェーは安心した。しかし、不思議なことに火災元の建物にいたはずなのに目立った傷は見当たらない。
「フィーウは多分死んだわ。アクリニーさんはしぶといからこの程度では死なないけれど、とにかくまたスキ・カラムディアにおけるユーゲ人問題の解決はさらに遠のいた」
「フィーウが死んだ・・・?じゃあ、アルシーは?」
「アルシー君はアクリニー――お母さんが心配だって言ってここに行こうとしてたはずよ。合流できたかどうかは知らない」
唐突に語り口を変えてくるティーアが何となく違和感満載だった。何故彼女はここに来たのかも、謎だ。
「でも最後に、私の役目を果たさないとね。あの程度の自害で死にきれなかった不憫な私への報復も含めて」
そういって拳銃を取り出した。それも、単にこちらに構えるだけではなく。腰のあたりを狙ってきている。造発モーニ体を打ち抜くつもりだ。だが、そう簡単にあてられるとは思えない。そんなことよりも、あのティーアが今していることを疑った。
――いや、疑ってはいたが、アクリニーはすでに警告していた。俺が助けたのはティーアとフィーウ。こいつらは何かの手先なのだろう。もしかしたらどちらかだけなのかもしれないが、そのために俺のところまで来て、この施設を爆破し、アクリニーを追いやって…
「そんなに険しい顔しないで。私はあなたに助けてもらってうれしかったのよ。でも、アクリニーをXelken.alesに引き戻すのが私と彼の任務だったの。でも、作戦には失敗して、あんな目にあっちゃった。もともと私はユーゲ人と縁が深くて、先祖にもユーゲ人がいるらしいのよ。困ったわね」
「本物のティーアはどこにいる…?死んだのか?」
「私も詳しく知らないけれど、死んだんだわ。聞きたいことはそれだけかしら?」
「いや、もう一つある。お前らはアクリニーも引き込もうとしているのか?」
「もともとの本命はアクリニー=ケンソディスナルとその夫…二人はネートニアーだから、次世代の研究者としてその子供も必要だったってわけ。すべては"隊長"の指示よ」
「隊長…ターフ・リーダのことか?」
「メスレネザアファ様よ。アクリニーを引き込もうとし、アルシーを勝手に連れまわすあなたたち"学園勢"はもうとっくに殺しの許可が出ているわ」
その途端に発砲した。火の手は二人のいる部屋にまですでに及んでいた。