Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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自分の正しさ

ツィムケイに向って、車はどんどんと近づいていた。隣の町とはいえ、周りが砂しかないところをずっと進んでゆくのはどうにも心細いものがあった。

 

「おい、ドライバー。この通路であっているのか?」

フィスルクーフェーはドライバーに尋ねる。

「あってますよ。地図と磁針を確かめてますし、こっちであっているはずです。」

そうドライバーが返すと、フィスルクーフェーは席に戻った。

「さて、フィーウ=テリーン。その派遣組の実質的指導者であるアクリルーの話だが。」

「ぷっ、ふふ、中将殿、アクリルーじゃなくてアクリニーでござりますよ。ふふっ」

フェリーサはいつもの調子でフィスルクーフェーの言葉を訂正する。フィスルクーフェーはというといつものことなのでフェリーサを無視していた。

 

「勘違いするな、何でもかんでもxelkenの奴等に話すと思ったら大間違いだ。俺はハタ王国でもパンシャスティという肩身の狭い役職でやってきたんだ、お前のようなウィトイターでユーゲ人を虐げたような人間と同等な奴等と親しく話すと思って」

瞬間、体が勝手に動いて言葉を遮って頬を張る。

アルシーとて、このように混乱してしまった人間を見て思うことは哀れみだったが、ともかくxelkenも何も関係なく動いているフィスルクーフェーの本心を今混乱して理解できないのなら、暴力を振るって口を閉じさせる他無い、そう思ったのだ。

「は、はは、お前もユーゲ顔だな。陛下とアルムレイ様への信仰を忘れて、ユーゲ民族への服従から古理派に転落した脱落者め。」

「な、なんだとこのもう一回言ってみろ!」

殴ってしまう。脱落者?信仰を忘れた?馬鹿な。幾らユーゲコミュニティの文化や風習、精神性を好まないアルシーにとってもそれはさすがに暴言だと聞こえた。

「貴様はユーゲ人を助けたいのか、自分の狂信的な信念を貫いて人を殺していきたいのかどっちなんだ!いい加減にしろ!」

「ふ、ふざけてんじゃねえよ、粋がるなよウィトイターの癖して!」

アルシーは押さえきれず、だがこのままではフィーウを殺してしまうのではないかと思って、殴るのをやめた。車内は微妙な空気であったが、そんなときトラックが突然停止した。

「ツィムケイに着いたか?」

「いえ、前のほうに人が。」

検問か、と思ったかフィスルクーフェーが面倒そうな顔をしている。

 

 

「何の用だ。xelken.valtoalスキ・カラムディア方面事務局長シェルケン・ヴァレス・ユターターフィス。我々は任務のためにツィムケイに向っているところだ。道を開けて欲しい。」

ADK方面事務局長という言葉を聞いた途端、一緒に車の中で待っていたフェリーサの顔が曇る。小声だが、言った言葉が聞こえた。

「こんなに早く気付かれるなんて。」

 

「積荷を見せてもらえるかなァ、フィスルクーフェー中将。我々はx.v.の本来の任務から外れて、ハタ王国民を保護している離反者が居ると聞いたんだ。」

ユターターフィスの顔はやったかという顔であった。車の中で待機しているフィーウの顔が見る見るうちに恐怖で淀んでゆく。

「だ、だめだ。こんなところで捕まって、xelkenの奴等に利用さ、されてたまるかあああ、うわあああああああああああ!」

アルシーもフェリーサも、もちろんティーアも予期できなかったことが起こった。フィーウは、怖れのあまり車を出て、逃げ出そうとしたのだ。

「逃がすな!撃て!」

ユターターフィスの号令と共にxelken兵が銃撃を始める。何だ、と振り返ったフィーウに銃撃の雨が降りかかる。WPライフル弾で周りの粉塵が巻き上げられる。もう駄目かと思ったティーアは目を見開いて、嘘だ、嘘だと自分に言い聞かせている。アルシーはよく目に焼き付けておいた。その姿を、そこに立っていたのは。

 

「何!?」

ウェールフープで防護壁を張ったフィスルクーフェーがフィーウの前で勇猛に立っていた。先程の銃撃など無かったかのように防護壁を張っていた。

「何故我々の仇敵である純ユーゲ人を守る。フィスルクーフェーよ、それがxelkenへの謀反と知ってのことか!」

ユターターフィスが叫ぶ。

「死を恐れざりて、彼らこそアレフィスの敵、彼らはドルムと成り口がきけなくなり目も見えなくなる。」

そうフィスルクーフェーは小声で言い、ユターターフィスは鳩が豆鉄砲食らったかのような表情をしていた。

「アレフィス様は自らの志を果たせとフィアンシャン教典で言われている。今の俺の志は、無関係で差別のためで排除されたコンガーだけがまだしもそれと誤認させられやりたい放題され蹂躙されているハタ人をも説いた場所に返すだけだ。」

「それがxelkenに何の利益をもたらすというんだ?アレフィス様、アレフィス様とほざいていれば現実に何か助けられたか?愚信者よ。」

車内で待っているアルシーの隣のフェリーサが小声でいう。

「思い出した。あいつ、フィスルクーフェー中将の同期でxelkenに配属されて先輩の宗教主義と世俗主義で反発してきた奴じゃない。」

 

「xelkenへの利益もある。スカルムレイの影響力をハタ人と考えるとハタ人を王国に送るのはスキ・カラムディアにおけるスカルムレイの影響力の排除に繋がる。」

「ほざけ、いずれにしろお前は証拠を捕まれて終わりだ。それに、ここで死ぬんだからな。」

フィスルクーフェーが厳しい顔を見せる。

「お前の防御ウェールフープは毎秒25回の更新が必要になる。大規模なウェールフープ防御を展開したなら、もうお前は終わりだ。帯WPoももはや無いに等しい、防御できずに撃たれて死n」

そう言い終わる前に、騒々しい銃撃音と共にユターターフィスとその衛兵は倒れた。銃撃音の方向を見るとそこには見覚えのある顔があった。

「フィッサ……。」

「こうなったら、死なば諸ともですよ。私はもう既にxelkenの上部構造に不満を持っていましたし、アルシー=ケンソディスナルを守る事は、我等の同志の意思を継ぐことになりますし。」

 

フィスルクーフェーは再び車に乗る。ツィムケイを目指して、自分の正義を信じて。

 

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死体が転がる砂漠、その中を一人で歩く男が居た。

自分の身代わりの死体を確認し、車が行った方向を探る。

「待ってろ、フィスルクーフェー。お前のような宗教主義XelkenがXelkenを壊したのだ。お前とその部下を皆殺しにして、絶対に俺がXelkenを純古理主義に変革してやる。」


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