Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
どんどん人が死んでいった。同時に、自分の存在の重さを感じさせられた。自分は多くの犠牲の上に立っている。ハタ王国も、かつての戦争によって出した犠牲者の上に成り立っている。アルシーはそんな重たいことを考えながら、フェリーサに連れて行かれていた。
「ねえ、フィスルクーフェーさんのところに行って何をするの?」
アルシーはフェリーサに尋ねた。フィスルクーフェーが今やっている活動は、てっきりこっちには関係のない話だと考えていた。
「あら、別に手伝うわけじゃないわよ?あの人も知っているかもしれないもの」
今度こそ教えてくれるらしい。当然だ。よくよく考えたらフェリーサの方が上官で、その上官がアルシーが狙われる理由を知らないらしいのだ。ならその上に尋ねてみようというわけか。チェッカー部がもしも部活と言う体裁を取りながらあの学園に侵入していたとすれば、その副部長が事情を知らないわけがない。
「ていっても、フィスルクーフェーさんは今どこに?」
「アラクム地域ってところよ。私もどこなのかさっぱりわからないから、今から車を出して地図を見ながら向かうのよ」
「免許もってるの?」
「ふふっ、当たり前でしょう?これでもXelkenの上官なのよ」
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二人はアラクム地方についていた。意外とすんなり行けたものだ。安心するのはまだ早く、ここでフィーウ=テリーンという人物を探さなければならない。第二の救助者だ。
「ティーア、フィーウは一体どこで何をしているんだ?」
「私と同じくアパートに住んでいたはずです。あまりうまくいった話は聞いていませんが・・・」
だろうな、とフィスルクーフェーは思った。こんな土地では、シャスティが脱ごうにも脱げないスカルタンを脱いで、黒服にでも着替えないと安心して暮らせないだろう。
本当は人探しを行っているのに、単純に男女で歩いているようにしか見えない。このままではまずいと思って、偶然通りかかったスキ・カラムディア人に声をかけた。
「なあ、このあたりでフィーウ=テリーンという・・・」
ここまで言いかけてティーアからの突然のシャスティストップ。フィーウがそこまで悪名高いとかそういうわけではない。彼はもしかしたらここでティーアと同じように差別を受けているかもしれない。実は味方だとか思われたらまずいだろう。
「なんだ?Xelkenの人間か?よくぞ来てくれた。フィーウ=テリーンがどうしたんだ?」
「ああ、そのフィーウ=テリーンなんだが。Xelkenからの召集がかかっている。すぐに俺の下にまで連れてくるんだ」
「はあ、あいつ、今度は一体どんなことをしたんだ」
話しかけられた男はすぐにフィーウ=テリーンを連れてくると言って走り去っていった。
演技だけでも威厳を失わないように、ずっと突っ立っていた。ティーアは外敵に狙われるのを避けるため、一応の変装をしてあるが、やはり忙しなかった。
「おい、落ち着けよティーア」
「しかし・・・」
「命がかかっているんだ。頼むぞ。それと、フィーウが来ても平常心を保つように」
数分ほどたって、若い男の叫び声が聞こえた。爽やかな青年と言ったところか。ティーアは利口なようで、久々に知り合いを見ても平常心を保っているかのようにおとなしく横に突っ立っている。
「まだ叫ぶ元気はあるみたいだぞ」
フィスルクーフェーは遠目からこちらに連れて行かれるフィーウを眺めていた。
「待たせましたな。こいつがフィーウ=テリーンです。しかし、一体何をなさるんですかい?」
「こいつには罪状が出ている。とにかくこいつは引き取らせてもらうぞ」
なんとも不明瞭な回答で噂を呼び起こしそうな雰囲気だ。
「おい!放せ!お前何者だ!」
まだ元気なようだ。フィスルクーフェーの目には、確保される直前のティーアの姿が思い浮かんでいた。あの時のティーアはもうすでに自我を失っているというか、諦めきっている様子だった。そんな彼女の同胞を一人でも多く祖国に帰さなければならない。彼女の為にも。それがXelkenであるフィスルクーフェーに芽生えた使命感である。
かなり抵抗してきたが何とか車に乗せることに成功した。
「フィーウ=テリーンだな?」
「はあ、そうだが。なぜティーアまでいるんだ?こいつに何をしたんだ?」
「そう警戒するな。俺はお前らを祖国に帰そうと思っている。別に何もしない。お前のような境遇に立たされている他の同胞の居場所を知っているのなら教えてくれ。そいつも助けてやる」
フィーウは初めはフィスルクーフェーの行っていることを理解できないし、信用もできないだろう。
「・・・は?」
「早く、仲間の場所を教えるんだ」
「あ、あいつらに何をする気だ。俺はXelkenだけはまっぴらごめんだぞ。王国の最大の敵であることを知っておいてそんなことを聞いているのか?」
ティーアがフィーウの前に立った。
「違うの。フィーウ。彼の言っていることはきっと本当。私のことも、もちろんあなたのことも、他の同胞たちも、祖国に帰してくれるって、彼は約束したの」
「・・・・ティーア、お前は簡単に騙されるような人間じゃない。あいつらの言うことは信じてはならないし、このスキ・カラムディアにトイター教徒が生存できるとも思えない。陛下は一体何を考えていらっしゃるのか」
「フィーウ、私もウィトイターの人たちに暴行をされていたところを、彼に助けられたの」
フィーウはその話を聞いて、一瞬だけフィスルクーフェーの目を見た。すでに車は発車しており、戻ることもできないが、フィーウがこれ以上反抗することはなくなった。
運転しながらフィスルクーフェーがタイミングを見計らってフィーウに聞いた。
「そういうわけで、フィーウ=テリーン。お前の知っている同胞の名前と居場所を全部言ってみろ」
フィーウは戸惑いながらも、必死に名前を上げていった。こうなったら、このXelkenの男に頼ってみるしかない。どのみち、自分がこれ以上生きようにも任務を果たせないであろうことは分かっていた。
「ここの隣のツィムケイという町にアクリニーという人がいる。我らスキ・カラムディア派遣組の実質的指導者だ。彼女の元を尋ねるといい」
「ツィムケイ・・・だな?」
フィーウは頷いた。