Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
「スカースナ・ハルトシェアフィス・フィッサ少佐だ。」
腕を前に真っ直ぐに伸ばし、手のひらを前に見せ、指先を伸ばすファイクレオネ式敬礼をしながらフェリーサに挨拶する。
フェリーサといえば満面の笑みを崩さずに、待ってましたとばかりにフィッサを事務所に迎え入れる。
「前線は、連邦の援護に入りました。それで現在の戦闘状況ですが、」
「ああ、ああ、戦況を説明するために読んだわけじゃないから~ほら座ってフィッサちゃん。」
フェリーサはフィッサに着席を指示する。フィッサはといえば「フィッサちゃん……?」と困惑の極みのような表情をしていた。
「今回呼んだ理由は、ここにいるアルシー=ケンソディスナル君が何故自分が狙われているのか知りたいんだって。」
「知りたいんだって……って、そのために僕をここまで?フェリーサ少将同志、xelken.valtoalデュイン支部は連邦とx.a.の二つの勢力に挟まれている状態です。こんなことで呼び出されるとはもっと重大なことかと思いましたが……」
フィッサはなだれ込むように座った。
「でも、この人は、フィシャ・エレンさんじゃない。他の二人は?説明するなら人が多い方が良い。」
軍事修練の時に教わっていた。もし敵方に捕まったなら、出来るだけ人を集めて言葉を聞きだすこと。人々の中身の端々から、その違和感や真実を読み取ることが自分の生存に繋がると。
「奴は死んだよ。」
「は?」
アルシーは驚愕の事実に驚きを隠せていなかった。フェリーサも少し驚きの表情を顔に出していた。
「二人と僕は、フェグラダであなたを確保するために乗り込み、x.a.の幹部であるターフ・リーダに接触して、戦闘の後爆弾による爆破によって四肢を損傷、モーニ体も非常に損傷を受けた状態でxelkenの医療組織に運ばれたが、つい一昨日、アレフィス様の元に旅立ったとの報告を受けた。」
フィッサの表情は苦難を乗り越え、それを超えても苦という表情が刻みついて離れないような言い表しがたい表情であった。
“アレフィス様の元に旅立った” アレフィスはリパラオネ教の唯一神で死亡した善き信者はアレフィスの統治する世界である神国に逝くと言う。つまり、フィシャ・エレンもアレス・ノアファも死んだ。ということだ。何の変哲も無い自分を取り合う馬鹿のような戦争によって。
「なんで……なんでそんなことが……俺は、俺はただの何の特徴すら持ち合わせない学生だっていうのに!」
「知らないわよ。でも、上層部があなたをこれほど欲しがっているのはあなたに何らかのxelkenの力を増大させるような何かを持っているから。」
フィッサは真顔で続ける。
「それに僕の戦友同志を殺したのはあなたよ。何も罪を犯していないとしてもあなたの存在自体が、罪なのよ。」
自分の存在を否定された。しかし、xelken.valtoalは僕を追ってくるのを守ってくれる。
「でも、僕たちはあなたを守る。xelkenのために、それに同志が目指したxelken道徳と古理語拡大の理念に近づくためにね。勘違いしないで、少なくとも僕は貴方を死ぬまで許さない。」
酷い剣幕だった、さっきの苦の表情とは打って変わって自分を殺しに着ているかの表情である。
そういってフィッサが部屋を発とうとしていたころ、フェリーサがその顔を珍しく深刻にして「待って」と言う。
「どうしたんだ、フェリーサ少将。僕はこんな“ガキ”に構っている時間はない。」
「とにかく説明は後、フィスルクーフェー中将のところに向うわよ。アルシー、フィッサは命令あるまでここで待機。」
「しかし、フェリーサ少将!」
フィッサの叫びも空しく、アルシーを引っ張りドアを閉めて行ったフェリーサには届かなかった。
「……あんなやつ、へまでもして下士官に転落すれば良いのに。」
フィッサは一人部屋の中でそうぼやいていた。