Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
バッグに食料などを入れたのちに、フィスルクーフェーはティーアを連れて西へ向かった。フェリーサとアルシーは取り残され、建物の前で二人して立ち尽くしていた。
「フェリーサ、俺はXelkenってことになったのか?」
アルシーが問いかけた。戦線離脱できたのはいいものの、アルシーはこれから何をすればいいのかわからなかった。ここから抜け出すこともできるかもしれないが、「ケンソディスナル」という敵対者のタグをつけられたままでは好きにうごくことも簡単ではない。
「そうね。確保の報告も済んでいるはずだから、あとは上が何を言うかどうかよね。正直私はあなたに何をしたらいいのかわからないわね」
「その、上が考えていることって何?俺が一体どうやってあんたらの役に立つんだ?」
「・・・知りたいかしら?私もなぜあなたを捕まえようとしていたのか謎なのよ」
普段垢抜けた表情をしているフェリーサが少し力を込めた。
「・・・どうやって知るんだ?」
「多分あなたは近々正式にXelken.valtoalの協力者になって、WPの研究開発チームか何かにぶち込まれる。"部長"から聞いていているのはそれくらいね」
どういうことなのだろうと、アルシーは疑問に思った。自分は単なる高校生。いきなり組織的な研究に加担できるとは到底思えない。多分そのことをフェリーサも考えているからこそ、謎なのだと思っているのだろう。
リーダとチェッカー部、そしてXelken.alesとXelken.valtoal、このよく似た二者は一体何を考えてあの学園に調査員を送りこみ、何が目的で自分を狙うのだろうか。アルシーの脳内はこのことでいっぱいだった。
「フェリーサ」
「何?」
「この事件の真相を知っているのは、フェリーシャくらいしかいないと思う。いや、あの人がすべてを知っているからこそ、リーダに封印されてしまったのかもしれない。」
「そのフェリーシャさんもあの様なのよ。私はチェッカー部にずっといたわけじゃないし、ただただあなたを捕まえることしか命じられていないわ」
「じゃあ、他に誰がこの戦争に関与しているんだ?」
「私が分かるのは、チェッカー部の人たちが一番真相を理解していたこと、くらいだわ」
チェッカー部にいた人。チェッカー部に体験入学していたアルシーなら、誰がいたかどうか大体覚えていた。というより、今行方を知らない人間の中ではあの三人くらいしかいない。彼女らは、今も生きているのだろうか?
「フェリーサ、チェッカー部にいた三人組は?」
「ハルトシェアフィス部隊のことかしら?」
Xelken.valtoalの、特にチェッカー部の中では当たり前の名称となっていたが、アルシーにとっては初耳である。
「ハルトシェアフィス部隊?」
「そういえば、アルシー君はまだ知らなかったわね。ヴァレス・ファルザー副部長の本名がシェルケン・ヴァルトル・フィスルクーフェーだったように、私たちには本来の名前があるのよ。チェッカー部にいた二年生の女子三人組にもちゃんと本名がある。そのリーダー格の人間のフィシャ・エレンだったかしら?彼女の本名がハルトシェアフィス・クラン・イェトスタファ。名字を取ってハルトシェアフィス部隊と呼ばれているのよ」
陸軍に残してきたキーア、デイシェスに置いてきたエレーナ、いろいろと気がかりだがまずは自分が今何をすべきかだ。
「フェリーサ、頼みがある」
「どうしたのよいきなり。えっ?やだもうアルシー君ったらー、こんな時にぃ」
ニヤニヤしながら何やら見当違いのことを考えている様子。アルシーのスルースキルは伊達じゃない。
「ハルトシェアフィス部隊の三人組に会いたい。そろそろすべてを話してほしいんだ。なんで僕が狙われないといけないのかを」
「なんだそんなこと・・・」
フェリーサは携帯を取り出して連絡を取ろうとした。
「でもそんなことが気になり始めたの?」
「え?」
どういうことかわからない。
「いえ、なんでもないわ」
電話の相手――イェトスタファが応答したらしく、フェリーサが「もしもし」に続いて話し始めた。