Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
「フィスルクーフェーさん!あれ!まずいですよ!」
フェリーサが朝っぱらからはしゃいでいる。こいつは本当にあいかわらずだと、フィスルクーフェーはずっと無視を続けていた。
「ほらほら!二人が一晩にしてあんなに仲良く・・・」
「ナニィ!?」
オスの本能に任せてフィスルクーフェーは反応してしまった。副部長時代のあの冷静さはどこに行ったのか。恋は病気だとはよく言ったものだ。
実際、本当にヤバい状況だった。二人とも寝ているのだが、いったいどれだけ寝相が悪いのか、ティーアは上段から落ちて仰向けになっており、アルシーは上半身がベッドからはみ出していて、ティーアの上に乗っかりそうだった。
フィスルクーフェーはすぐに部屋にずかずかと入っていき、まずアルシーをベッドの方に押しやった。あまりにも乱暴だったためか、アルシーは目が覚めてしまった。
「あ、フィスルクーフェーさん、アルシー君起きちゃいましたよ」
「構わん。クッソ、柵を付けておくべきだったな・・・」
次にティーアを丁寧に持ち上げて、上段に静かに置いた。ティーアは全く目が覚める気配がなかった。
「ふぅ・・・」
一息をつくフィスルクーフェー。フェリーサはそんなフィスルクーフェーをみて笑っていた。
「何が面白い」
「いや、別に♪」
「別に、俺がどう思ってようと今のはまずかっただろう。アルシーが王国でどんな許嫁を抱えているかどうかわからねえぞ」
「逆ですよ。アルシー君がどこに婿入りするかどうかが決まっているかもしれないんですよ。彼はこれでもシャスティの息子ですからね」
「うう・・・」
ゆっくりとアルシーが起き上がった。さすがにさっきので目覚めたのだろう。
「あ、アルシー君おはよう。どこまで聞いてたの?」
「ああ、おはようフェリーサ。どこまでって?俺がシャスティの息子であるってことくらいしか」
フィスルクーフェーは無表情のまま安心した。表情には出なくても、頬の緩みなどから力が抜けたことは分かったはず。しかし、鈍感な男子が二人もそろっているので、そんなことを察知出来たのはフェリーサくらいだ。
「ティーアはまだ寝ているんですか?」
「上段で寝ているのがティーアだろう。まだ寝ているよ」
「起こした方がいいですか?」
「まあ、起こした方がいいだろうな。ティーアみたいな娘はおそらくこの国にまだいるのだろう」
「はあ、やっぱりやるんですか」
「だが、お前はこれから俺らとは別行動だぞ」
アルシーは少し動揺した。
「お前の本来の使命を忘れるな。お前はこれからこの地でXelken.valtoalとして活躍してもらう。上層部に挨拶に行きすぐに任務に専念していろ。x.aの人間はまだお前のことを見逃したわけではないからな。気を抜くなよ」
フィスルクーフェーはフェリーサの前に立った。
「お前はどうする?ここに居とくか、それとも俺を手伝うのか?」
「うーん、恋する青年も気になるし、闘う青年も気になるわね・・・」
「な、おい誰が恋する青年だ!」
そんなとき、後ろから物音がした。ティーアがベッドから降りた音だった。