Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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副部長との再会

「あら・・・よく少佐を振り切って」

衝撃音と共に、白煙が舞う。アルシーは目の前が良く見えなかった。

だが、聞こえた音はどう聞いても殴りつけた音であった。これほどの鈍い音、フェリーサも死んだであろう。

目の前で何人人がこれから死んでいくのだろうか。アルシーはそもそもトイター教の生死感が身についていなかった感じがあったが、さらに自分の主客が急速に混ざり合っているのを感じていた。

 

「死んだわね。」

リーダがそういった瞬間、リーダは顎から拳を食らわされ後ろに吹き飛んだ。誰が殴ったのか、アルシーは分からないで居たがその声によってそれを認識させられた。

「ふぇりーさあっぱー!!どうだっ!」

「……。」

殴り飛ばされたリーダは口の周りが血塗れになっていたが肩で口の端を拭いフェリーサを再び目に捉えた。

「あなた、小柄なくせに力があるのね。」

「ネートニアーの時代じゃないですよ。ましてや、xelkenの中でその発言は頭が悪いんですかね。」

言った瞬間にはフェリーサは後ろを取られていた。

「誰が頭が悪いですってッ!」

非常に重い、もし連邦のイェスカ首相がここに居れば側近にイールド・フェンテルヴェンス付き防護ヘルメットを配らせるような恐ろしい音が鳴り響いた。今度こそ隙を取られたフェリーサは攻撃を受けてしまったように思えたがその攻撃はフェリーサの片手によって受け止められていた。

「ば、馬鹿な身体強度が受け止められるわけが」

瞬間もう一回フェリーサの拳がリーダの腹に捻り込められる。リーダは大きく吹き飛んで、壁に打ち付けられた。

「さあ、アルシー君?こっちに来て楽しい生活を過ごそうね。」

事の顛末も何も良く分からなくなってきたアルシーはフェリーサが渡した手にすがりつくほか方法は無かった。

 

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「どうも、アレス・フェリーサ今帰還しました。」

フェリーサは敬礼をしてファルザーに自分を認知させる。

「よくもやってくれたな、おかげでスカースナ・ハルトシェアフィス少佐すら使い物にならなくなったし、x.a.のクソッタレ姫は未だに殺せたか良く分かってない。今すぐ貴様を撃ち殺したい。」

「ですが、ケンソディスナル家のご子息は連れてきてやりましたよ~。」

アルシーはフェリーサに連れられてファルザーの目の前に引きずり出された。

「ようこそ、xelken.valtoal要塞へ。どうやら無事で来たようだけど、お友達は何人死んだんだろうな。」

「ファ、ファルザー先輩……ですよね……?」

アルシーはそうであると願いながら、問いかけた。

「そうだ。と言いたいところだが俺の本当の名前はシェルケン・ヴァルトル・フィスルクーフェーだ。Xelken.valtoalの王国人拉致担当だ。」

「王国人拉致担当?それより、Xelken達はなんでこんなに執拗に俺を追いかけて!」

「黙れ。」

否応言わせない声色でファルザーが言う。いや、もう既に彼は“ファルザーからフィスルクーフェー”になってしまったのだ。

「こっちこそこんなクソッタレの情勢でお前を連れてきたくなかった。でも上層部は何故かお前を欲しているんだ。xelkenの派閥抗争も関係して、本当に面倒なことになっていんだよ。全部お前の存在のせいだ。」

そんなことを言われても、とアルシーは思った。自分の存在は自分だけで決まるものではないし、他人が勝手に決めた色眼鏡の貸し借りの責任をこちらに押し付けられても困ると言うものだ。

「ともかく、面倒ごとになる前に俺らはお前を連れてADKに逃げる。」

「俺は、これからどうなるんでしょうか。」

アルシーは聞いてみた。もはや正義も何も目の前に残る小さい塵のようになって無駄になると思った。

「Xelken.valtoalの上層部は喜んでお前を迎え入れるそうだ。x.v.の研究所に所属して研究をすればそれだけで上流武官待遇を受けられるとか。まあ羨ましいもんだが、それよりも俺はお前を早くADKに連れて行きたいのさ。」

フィスルクーフェーはくるくると手を回しながら言う。

「この支部にはヘリコプターと呼ばれる乗り物が準備されている。ここのウェールフープ転送装置が脆いから、全然使えないらしいから、ヘリコプターで飛んでウェールフープ転送を行なう。」

ヘリコプターと言う乗り物はどういうものなのか良く知らなかったが、とりあえず待遇も対処も良いらしいのでフィスルクーフェーの元についていくことにした。ここで殺されては元も子もない。

そういった瞬間、何かが高速で接近する音が聞こえた。

「ぐっ。」

吹き飛ばされる音。良く確認すると、フェリーサにフィスルクーフェーが被さっていた。

「フェリーサ、逃げろ!」

「!?」

血飛沫が見えた。フィスルクーフェーの上から剣を下していたのは紛れも無くリーダであった。

「ふっ、雑魚が。」

「お前が、お前がこの戦争を始めたんだな。」

フェリーサを残して、フィスルクーフェーが後ろに回りこむ。

「お前等は、早くヘリと共にADKに向うんだ!」

フェリーサはアルシーの手を引っ張って走り出した。

 

----

 

「あら、逃がさないわ。」

剣を持ってアルシーに追いつこうとするリーダにフィスルクーフェーが後ろから殴りかかる。

「お前の今の相手は俺だ!」

しかし、リーダはすばやく避けてフィスルクーフェーに狙いを定める。

「モーニ体をひとつ失った状態で何が出来ると言うの?」

「くっ。」

先程刺された傷が疼く。丁度モーニ体を目標にしていたのだろう、綺麗に当たってケートニアーとしての能力を半減させていた。

「さて、xelken.valtoalの幹部一人を討伐できただけでも良い土産になるわ。もう片方を抉ってあげる。」

リーダは剣を構えて切りかかろうとする。もはや、逃げ出すことも出来ないとフィスルクーフェーは覚悟を決めた。

 

「――私を忘れているようね?」

その瞬間、リーダの腕が凍る。

「これは……。」

足音が近づく。

「シェルケン・ヴァルトル・フェリーシャね。」

「あらあら、お久しぶりね。ターフ・リーダちゃん。」

フェリーシャの顔は不気味に笑っていた。


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