Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
Xelken.alesの占領する基地内。応接室のようなところである。ドアの周りには武装をしたと思われる黒服の男二人。そしてテーブルにはアルシー、キーアとリーダ、奇妙なホワ玉が座っていた。奇妙なホワ玉は座っていたというより、テーブルに置いてあったのだ。
別に、警備なんてつけなくても、リーダ一人の実力で彼ら二人くらい抑えられるだろうに。
「さて、ようやく話をすることができるね。私のことは覚えているかい?」
キーアは喋ろうとした。
「フェグラダ・ヴェイユファイト・ア・デュアンの」
「そりゃ君は知っているだろうよ、キーアとやら。私はアルシー=ケンソディスナルがどうかについて聞いているんだよ」
それを聞いて、キーアは口を慎んだ。
「分かったが、俺の名前はレシェール・キーアだ」
「そう、覚えておくわ」
リーダはアルシーの方に向き直った。
「で、どうなの?」
「フェグラダ・ヴェイユファイト・ア・デュアンの戦闘開発科生徒1年生」
「あら、それだけ?」
「成績は女子の中で学年トップで、最強の女子高生だとか」
リーダは笑った。
「なんだあ、君意外と冗談を言うのが好きなんだねえ。『最強の女子高生』とは今まで一度も言われたことなかったなあ」
アルシーは知らぬふりをした。たしかに、言われていたはずなのにと。
「改めて自己紹介しておくけれど、私はターフ・リーダ。フェグラダの一年生というのは裏の顔で、本当はXelken.alesのメンバーよ」
「・・・え?」
と、アルシーは驚いて見せたが、アルシーは以前からターフ・リーダがXelken.alesの一人なのではないかという推測はついていた。なので、改めて知って納得し驚いているといったところだろう。
「この事件で、私達が目標としているのは人材の確保。古リパライン語の新興国を作るにあたって、特にウェールフープのスペシャリストが必要なのよ」
「そ、それで俺が選ばれたというのか?何故俺なんだ?俺はまだウェールフープ学を数か月ほどしかやっていないし、とてもそんな重い役割を担えるほどには・・・」
「落ち着きなさい、大丈夫よ。ちゃんと教育係もつけて、一人前のXelkenのウェールフープ学者に仕立て上げるから」
「じゃあ、その教育係の人に研究をやらせたらいいじゃないか」
「こちらの采配はこちらの話よ。口出しはやめておいた方がいいわ。で、受けるの?」
突然決断を強いられた。わざわざ指名されてここまで連れて行かれたのだから、何かされることは予想していたが、まさか勧誘とは。
「それは・・・無理だ。俺はXelkenになろうとは考えていない」
「そう、残念ね」
意外とあっさり終わってしまった。
と思ったら、リーダは片腕を上げて指を鳴らした。途端にリーダの目つきが変わり、口元の締りが激しくなった。
「王国人を殺しなさい」
後ろから銃を構えるような独特の鉄の音がした。後ろを見ると、ドアの横に立っていた武装した黒服の男二人組がアルシー向けて銃を構えていた。操られているようだ。
「危ない!」
キーアがすぐさま身代わりとなろうと椅子から立ち上がろうとする。しかし、彼もまた、リーダに操作されて椅子から立ち上がることができない。それはアルシーも同じだった。
パァン・・・と乾いた音がした。アルシーは目もとじず、ただ自分の人生を悟ってここまでだと思っていた。
「・・・え?」
「ギィィィィィィィイイイイヤアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
今の状況が分からない上に、リーダの全身が燃えだし、叫びながら椅子から転げ落ちた。
「や、やばい!自然発火か?」
キーアが驚いて叫ぶが、数秒で火が消えた。いったいなんだったのか。
「リーダ、殺すにはまだ早い。お前こそ落ち着くんだ」
「!?」
喋ったのはホワ玉だ。
「は、はい、太陽様」
リーダはすぐに立ち上がって、姿勢を持ちなおした。
「じゃあ、君たちには私についてきてもらおうか」
リーダは二人の拘束を解いて、どこかへ誘導した。
「おい、何所に行くんだ?」
「君のことを報告して、約束通りラファンカから撤退するんだ」
――
アルシーの保護から約一時間、その圧倒的兵力差から、連邦艦隊は壊滅状態であった。
「報告します。王国人の新兵とリパラオネ人の新兵がXelken.alesに捕えられました。こちらの部隊は僕以外全滅です!」
Xelken.alesからのラファンカ歓迎銃撃が止まない中で、アルシー、キーアと一緒にいて唯一生き残った連邦兵が無線機に口を近づけて話していた。
「あの二人か?くそ・・・何してんだあいつらは。まあいい。聞け。本隊はラファンカを撤退する。この状況でNZWPなどの奪還は不可能だ。お前も早急に撤退しろ。Xelken.alesの狙撃に気を付けろよ」
「了解しました」
「ご苦労だった」