Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
強く風が吹いている。このヘルメットをかぶる前であれば、自分たちの髪が多少なりともなびいていたかもしれない。過酷な訓練を受けて、初めて実践に投下された新兵たちは初めての任務を前に緊張していたものも多かった。アルシーの表情は変わらない。
「アルシー、そういえば」
「貴様、作戦中に私語をするな」
ものすごい速さで上官からの注意が入った。
「はいっ、すみません」
「新兵、貴様らはもはや基礎訓練を終え、いよいよ兵士として作戦に関わるのだ。だが、一人前の兵士になれたわけではない。余裕をぶっこくなよ。集中が切れれば死に、集中が切れても死ぬ可能性があるのだ!」
この説教も慣れた。キーアは、比較的上官には怒られていた。
ふとその時、通信が入った。
「第一部隊が上陸を開始した。これに後続し、我々の部隊も上陸する」
いよいよ同じ作戦に従事する兵士たちが上陸した。アルシーとキーアはいよいよかという気持ちでいっぱいになった。この部隊も順次上陸を開始していく。
「待ち伏せ兵にやられていないといいがな」
「そんなことがあるのか・・・」
名前も知らないリパラオネ人の見た目をした兵士が話しかけてきた。
「王国では策略というものが存在しないのか?」
「作戦ぐらいはあるさ、失礼な」
「語弊があった、『ズル』というものが存在しないのか?」
アルシーはヘルメットをかぶりなおして、機関銃を持った。まもなく上陸だ。
「そんなことはない。ズルをしたハタ王国の戦士もいた」
揚陸艦が止まり、次々と兵士たちがボートに乗り込む。
「よし!早く乗れ!突撃するんだ!」
迷彩柄の服が次々とボートに乗り込んでいく。アルシーやキーアにとってもそれ以外の新兵にとっても、その光景は新鮮なものだ。自らも見知らぬ兵たちに紛れてボートに乗り込んだ。キーアのすぐ後ろにアルシーも乗り込んだ。
「いいな?上陸したらとにかく進め!どんどん攻めていくんだ!」
ついにボートがビーチにたどり着いた。しかし、その光景を見た新米兵士たちは衝撃的な光景を見る。
「これは・・・一体」
アルシーがその光景を見て呆然としているのを見て、仲間の兵士が急かせた。
「王国人!何をしているんだ!」
何人もの迷彩柄の男たちが血を流して倒れている。
「なあ、こいつらはネートニアーなのか?」
「さあな、それは分からねえ。造発モーニ体をやられれば、ケートニアーだってこんなもんだ!」
捨て台詞のようにキーアは言った。海をちらりと見てみると倒れていた兵士たちの血が混じって海が赤くなっていた。
「各自小隊長の指示通りに動け。もしものときは持たせたブツを使え!ただしそれは最終手段だ」
隊長の言葉が聞こえ、各自が散っていった。アルシーとキーアも指示通りに内部へ侵入していった。
しかし、その道中はとてつもなく不気味である。四星三蒼の旗が刺繍された服を着た兵士ばかりが倒れているのが不気味である。
そう思っていると、銃撃が聞こえた。
「伏せr」
指示を出した人間も途端に血をまき散らして倒れた。小隊長だ。
「見つけたぞ、アルシー=ケンソディスナル」
アルシーとキーアが何かを喋ろうとすると、再び銃弾が飛ぶ。
草原から何人もの黒服が出てきた。反連邦派の、しかもXelken.alesの兵士数人だ。自分の名前を知っていることに、アルシー自身も味方の兵士たちも驚いた。
「お、お前は・・・誰だ!」
「ほう、あの学園にいた時のアルシー=ケンソディスナルとはだいぶ変わったわね」
フードを取ると、それは見慣れた顔。ターフ・リーダだった。