Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
「アルシー君?ずいぶんと険しい顔しているみたいだけれど、キーア君と何をしたの?」
クッキーの袋をもって、エレーナはアルシーの顔をじっと見つめていた。
アルシーは考える。ポスターに、今すぐ集まれ的なことが書いてあったかどうか。どうにもそんな記述はなかったみたいだ。明日でも志願兵は受け付けている。今はこの三人で、いつものメンバーでクッキーを嗜もう。
「あとで事情を話すから、クッキー食べよう?」
「あ、うん、そこに座って」
「エレーナ、俺も食べる」
部屋の真ん中にエレーナが座る。手元でクッキーの袋を広げ始めたので、他三人もそれを取り囲むようにしてしゃがんだ。
「12枚焼いたから、一人4枚ずつね」
「へぇ~計算早いね」
「キーア、大丈夫か?」
「何、冗談さ」
エレーナは料理ができそうなイメージがあるが、本当に料理はできるようだ。
そんなキーアとアルシーの和みたい気分を無視して、エレーナはアルシーの持つ紙を指摘してきた。
「その紙は?」
キーアはどうしてもこの空気を壊したくないので先にカバーをしようとした。
「ああ、この紙はさっき俺らが絵しりとりを・・・」
「連邦と王国が兵士を募集しているんだ。俺もそこに参加する。兵士になって、連邦と王国の安全を守って、人を助けるんだ」
アルシーの目は本気だった。
キーアはアルシーの目を見つめる。友人として、こいつを止めるべきなのか止めてはいけないのか、その判断がつかない。自分にとって、数少ない友人。失うよりかは、無理にも抑えたほうがいいかもしれない。
「アルシー、やっぱり俺はお前が兵士になるのを認めたくはない」
「どうしてだ?」
「・・・死ぬかもしれないんだぞ。ハタ王国とは違って、俺らは集団で戦うんだ」
「俺が死ぬかどうかは、もう問題じゃないんだ」
キーアは、その言葉を聞いて、吹っ切れた。
目を見開いて、アルシーの愚行を悔やんだ。こいつは、こんなやつではない、と思い込んだ。どうしてこうなったんだ。
何があっても生き抜こうとする、そのために危ない道は歩かない。これは思い込みだろうか。
「キーア君、彼にはもう未練がないのよ」
エレーナが口をはさんだ。
「いや、今本心を明かしてくれていればの話だけれど・・・もしそうでないなら、これは私とキーア君の願望だけれど・・・」
よほど重要なことを口にしようとしているのだろうか。エレーナは唇が震えていた。
「アルシー君に・・・離れてほしくない、アルシー君を放したくないの。キーア君もそう思ってきっと・・・」
アルシーははっとしてキーアを見た。
「じゃあ、俺は必ず戻ってくると信じていてくれ。必ず生きて帰ってきてみせると」
一斉に、そんなことできるわけがないという表情を二人ともした。ほとんど命を国に預けるのだ。自分が預かっている普段の生活とは違う。
何かを腹に決めたキーアは、少し大きな声でアルシーに言った。
「それなら、俺も志願兵になるぞ。お前と運命を共にする。お前のことを忘れてこれから今まで通りに生き延びることなんて、できないからな」
「私は、特別警察として、誰かの役に立ちたい。みんな条件はそろったよ?アルシー君、キーア君、志願兵の集合に行かないの?」
「ははっ、君ら二人が足止めしてたんだろう。今から行くさ」
食べかけのクッキーを置いて、外に出た。紙に書かれている集合場所を見ながら、走った。