Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
「おい、アルシー!起きろあれを見てみろ!」
キーアの声が聞こえる。
「……な、何事だ……?」
「ともかく、こっちに来い!」
キーアにされるがままに、寝床から引き釣り出された。テレビからニュースが流れていた。
『……先日から発生しているデュイン・クランタルを中心とする同時多発テロですか。今先程中央省ターフ首相が会見を開き同テロの犯人グループは古理語過激派であるxelken.alesだと断定しました。テログループは現在クランタル県を占拠しているとのことです。……』
「それで?」
「それで?じゃねぇよ。Xelkenと連邦がぶつかるんだ。こんなこと史上で一回も無かった!」
「それで、俺達に何が出来る。」
「……。」
キーアは黙ってしまった。そんななか、部屋に備え付けられたブザーが鳴る。空襲やゲリラ、ともかく敵の襲撃が予測される時になるそうだ。
「おいおい、ここにまでもうやってきたって言うのかよ……。」
「いや、そうじゃない。」
テレビに映し出されたのは、緊急ニュースのテロップ、そしてシェルタズャートゥンデ上での大規模な空戦であった。
「なんじゃこりゃ、一体何が起こっている。」
横に居るキーアはテレビに釘付けになっていた。言わずもがな、あの忌まわしきxelken.alesの仕業であろうことは間違いない、そしてこの警報もこの緊急事態に即したものであったのだろう。
「xelken.alesだ。今はあの県を空襲しているが、あの分量ではこちらに来るのも時間の問題だ。」
「しかし、どうにも出来ない、か。」
キーアは顔を下げる。さっきの一言は思うより深くキーアに圧し掛かっていたようであった。
「実は昨日の配給後の自由時間、こんなチラシが掲示板に立て掛けてあって」
そういって、アルシーはキーアに鞄から取り出したチラシを取り出して見せた。折りたたんでいたため、多少折り目が付いているがそれほど読みづらくは無いA4サイズ程の白黒プリントだった。
「――志願兵?」
キーアは暗い声を出した。
「今度のユエスレオネ軍とハタ王国などのサニス条約に基づく大規模な遠征が行われるらしい。クランタルの奪還を目指すらしい。」
サニス条約、デュイン戦争でのxelkenとハフリスンターリブに対する連邦と王国の協力体制において連邦で締約された条約、そしてそれを基とする条約である。お互いの有事に対して協力をおこない、そして平和を乱す裏切り者は皆で倒す。なんとも連邦らしいとという条約であった。
「そんなこと言ったって……お前、スカーナ先生の話を聞いていなかったのか。」
スカーナ先生の話――息子、娘が錬度不足で戦死した話。しかし、アルシー自身そうなるとは微塵も思って居なかった。
「あれは昔の話だ、真実であんなことがいっぱい連邦の戦線で起きていたとしてもうすでに連邦軍は対策をしているはずだ。」
「推測で命を投げ出すのか!!」
アルシーはキーアを睨み付ける。
「このまま王国に帰れば、ただ紛争に巻き込まれて可哀相可哀相、だけど王国文化に背いた奴、ウィトイターと変わらない下賎な奴、こんな仕打ちで当然で終わるんだ。父親も母親も行方不明になっているんだ。僕は……戦う。戦って自分の存在意義を証明する。一人でも多くの人を助ける。」
「ま、待て!」
引き止めるがアルシーは足を止めなかった。部屋のドアに手をかけるとドアが独りでに開いた。その先に居たのはエレーナだった。
「あ、あの……クッキー焼いたんだけど二人とも食べる?」
ギスギスした空気は一瞬で柔いだ。