Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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「利用・恐れ・欺き」

 

クラディアと名乗った特別警察官は氷塊を瞬時に形成して、自分の周りに展開する。

「ふっ、その程度で俺を倒せるとでも?」

「Xelken.ales、あなたたちは連邦、いいえ影響圏民全ての敵です。ここで決着をつけます。」

クラディアが手を翳し、狙いを定める。しかし、攻撃の対象であるリーダは薄笑いしていた。アルシーにとっては不気味以外の何者でもなかった。防衛行為を何一つしていないのである。しかし、そんなことも鑑みられず氷塊は撃たれた。

 

「!?」

目の前が血しぶきで見えなくなった。

「あぁ……あが……ぁ」

そんな声とも言いようが無い『音』が聞こえてくる。呻きですらない音である。

何が起きたのか、目を凝らしてみてみるとリーダの前には倒されてのびていたxelken.ales兵が体中に氷片を受け、おびただしい量の血液が吹き出していた。リーダは仲間を利用して、防壁を作り、同志を利用して氷塊を受け止めた?そんな悲惨なことまでして、このxelkenとやらは存続したいのか。アルシーには分からなかった。

「忘れたのか、俺の能力は生物操作だって。」

「……知ってましたよ。しかし、仲間を利用した代償はしっかりと払ってもらう必要がありますね。」

リーダの横に居たのは、先程小型WP拳銃で応戦していたシェルケン・スカーナであった。拳銃をリーダに向けていた。

 

「動くな。」

「ふっ、シェルケン・スカーナだな?」

スカーナは目を逸らさずじっとリーダを見ていた。

「そうだが。」

「Xelkenの裏切り者は消しておく必要があるな。」

そういってリーダがクラディアに手を翳す。スカーナはすかさず拳銃を構えなおす。クラディアは氷塊を生成しリーダに向ける。がしかし、クラディアの様子が何かおかしい。

「さあ、レシェール・クラディア。シェルケン・スカーナを標的にせよ。」

「!?」

クラディアの様子がおかしいと思ったらその手をスカーナに向けていた。周りに浮かぶ氷塊もその手に追従する。目が閉じられ誰かに操られているような様子であった。

「君、彼女に何をした。」

「生物操作、誰が死んでたり、弱っている奴だけ操作できると言ったんだ?裏切り者君。」

 

スカーナは額に汗を浮かべ、表情を硬くしていた。アルシーは一歩も動けなかった。

「裏切り者よ、我等の崇高な古理語の保守という神に最も近い概念を忘れたか?我々は友であったはずだろう?貴様が取れる選択肢は二つだ。」

顔を傾け、煽るように二本の指をスカーナの前で振る。

「一つ、そこの特別警察官を撃ち殺して、我々とXelken.alesに戻って崇高な古理語保守任務に戻ること

二つ、そこの特別警察官と共に撃ち合って死ぬかだ。さあ、決めろ。一分やる。」

リーダが腕時計を見て言う。スカーナは黙ったまま、クラディアはスカーナに手を向けたままだ。リーダは半分この状況をおもしろがっているかのように見えた。しかし、スカーナはそれに反して難しい顔で反駁する。

「決められるわけ……ないだろ。」

「ならば、死ね。」

クラディアの手の周りが一瞬揺らぐ、氷塊を発射する準備段階のようだ。スカーナは黙ったままクラディアに向き合って物怖じしない様子であった。スカーナはリーダに向き直して真剣な顔になる。

「どうした、裏切り者死ぬ前に何か言いたいのか。」

「……。お前等のやっていることは非道で、アレフィス様に背いている。私の家族の末を知っているか?」

リーダは少し考えるフリをして直ぐに「知るか」と言う。

「なら教えてやろう、俺の息子はデュイン戦争で初期に借り出された。何も知らないで連邦軍に組み込まれた。当時17歳だった彼は、戦闘もさっぱりだったはずだ。WPライフルを持たされて、そのまま前線に配置された。他の多くの連邦兵と共にだ。引けば敵前逃亡として射殺され、進めばxelken兵に虫けらのように殺されていった。私の息子も、そうやって死んだ。本土に帰ってきたのは、彼の死を知らせる一枚の紙だけだった。娘は正規の連邦軍に所属していた。だから、直ぐにデュインに行って前線病院に借り出された。彼女は19だった。連邦軍の作戦ミスで敵に回りこまれ前線病院諸共補給線と基地を破壊された。爆撃で病院は焼け野原になった。彼女の死も直ぐに私に伝えられた。本土に彼女の遺体が届けられた。確認をするなどと私と妻は呼ばれたが、それは見るも無残に肉体の一つも残されていなかった。妻は数ヵ月後に自殺した。親は二人ともxelkenにデュイン戦争時に殺害されていた。」

言葉を聞く度にアルシーはスカーナのあの平和であった学園での言葉を思い出していた。

 

『私もここデュインへは亡命した身なんだが、職を求めてここに来た。教師という立場だが、決して君たちにウェールフープ化学者という道を絶対に歩んでほしいわけではないんだ。むしろ、さっき言ったように勧めたくはない』

 

『私がウェールフープのことを論理だった科学であると論文に書いたときは、私も命を狙われた。』

 

『私がxelkenにいたころ、王国文化が好きだった部下からもらったメシェーラだ。デュイン戦争より前くらいのものかな。』

彼は今まで警告していたのだ。『こちらへ来るな、戻れ、もしお前が望まないのであれば。』と。それを自分たちは軽視しすぎた。何時何が起こっても良いような準備などしていなかった。

 

アルシーが呆然とする傍でスカーナはリーダを睨み付け話を続けた。

「いいか、それでも俺はここまでフェグラダで教育してきた。平和とウェールフープとは何かをだ。お前等はそれを素足で踏みつける。何かと言えば古理、古理と。俺たちを邪魔してきたんだ。」

スカーナは話の勢いをいきなり失って、下を向く。

「だけど、もういい。今までやってきたこともこれからやることも無駄になるのであれば、いっそ殺してくれ。今まで積み上げてきたものもこれから積み上げるものも無駄になるのであれば、いっそぶっ壊してくれ。もういいから、早く楽にしてくれ!」

スカーナが膝から崩れ落ちる。両手で顔を押さえて、嗚咽している。アルシーには非常に残念に感じられた。彼はそもそものところ、自分の平和に対する行動も、他人の行動も既に信じなくなっていたのだ。

リーダがスカーナを見下ろして言う。

「ふっ、無様だな。裏切りの末に、自らの信念すらも裏切ったのか。」

リーダはクラディアに向けて指示を出す。一瞬で氷塊が菱形に整形され、スカーナに向けられる。

「武士の情けだ。一瞬で殺してやる。」

クラディアの手から不快な摩擦音がする。氷塊がアルシーの前を一瞬で通り過ぎ、スカーナの前が赤い霧で染まった。

「ッ……。貴様。」

「あ、あれ。」

しかし、スカーナは全く傷つけられていなかった。クラディアは顔を上げて、リーダに向き直る。霧が晴れたところに居たのは右腕を吹き飛ばされたリーダであった。

「今まで私が貴方に操られていた。そう思っていましたね?」

クラディアが表情を変えずに言う、しかしその声音にはしてやったりという感情があった。リーダはケートニアーのようだったが右腕は回復していない。もしかしたら今の一瞬で右腕と造発モーニ体を撃ったというのだろうか。

「くッ、どういうことか教えてもらおうか。腐れ警察もどき」

リーダはふらふらして後ろの壁によっかかりながら、息を荒くしている。

「これですよ。」

クラディアが小さい箱を取り出す。リーダはなんだそれはという表情でまじまじと見つめていた。

「貴方のような高級将校であれば知っているでしょうが、これはイールド装置です。」

「ば、バカな。イールドは未開拓技術、このような小型の装置でどうこうできるわけが無い!しかも、貴様は途中までウェールフープを使っていた!最初から掛けてあれば内外のウェールフープ状態は変化しないはずだ!」

「特別警察研究所はリパコール氏から研究結果を譲渡してもらい独自に開発を進めました。それがこれです。役立ちましたね。」

「くっ、ふふふはははははは!」

鈍い銃撃音と共にクラディアの手の上にあったイールド装置は破壊された。

「鈍いんだよ馬鹿が!ご自慢の装置は、これで終わりだ。」

撃ったのはスカーナであった。そう。スカーナは無防備、リーダは操ることが可能だ。

「さあ、お互い仲良く撃ち合って死ね。」

リーダが手を掲げた瞬間、もう片手が吹き飛んだ。両足も打たれ、膝を折って前のめりになる。

 

「そうはいかないよ。」

スナイパーライフルのスコープを覗きながら答えたのは特別警察のブレザーを着た少女であった。一機のヘリが上空にとどまっていた。

「プリエ、ここは一旦離脱します。デイシェスで合流しましょう。」

「了解。」

 

そういって、アルシー、クラディア、スカーナは避難ボートに乗り込んだ。

 

---

 

「ふっ、これくらいか。」

白い毛に包まれた人間とも言いがたい『ほわ玉』が喋る。

「いえ、遊んでいたのです。奴は逃がさせません」

リーダは倒れたままそう返す。大量の戦闘機と爆撃機が自分たちの頭上を通り抜けていったのを確認して、リーダは内心勝ちを確信していた。

 


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