Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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異邦の海戦

船内を歩き回るアルシー。途中で何人かの同じ避難民に遭遇したが気にしない。エレーナを見つける、その一心だった。

アルシーはある部屋にたどり着いた。特別警察だか何だかわからないが、きっと彼女は中枢に近い部屋で待機しているのだろう。そう思ってこの扉を開けた。

「おいおいアルシー、エレーナはちゃんとここにいるって。ついたらきっとゆっくり話せるからここは落ち着いて・・・」

「・・・アルシー君?」

その落ち着いた声に反応した。振り返るとそこにはエレーナがいた。少し髪が乱れていて、疲れ切ったような表情をしていた。

「え、エレーナ!」

「俺のエレーナ!よかった」

アルシーとエレーナがエレーナに近づこうとすると、男が横から介入し、止められた。

「君らはエレーナ君の友達かな?彼女は今仕事中なんだ。気を逸らさないで上げてくれ」

 

――

「司令、照準を合わせました」

「全艦、砲撃準備が整いました」

その大きな筒は、陥落したあの町を狙っていた。

 

「「「撃て」」」

 

すさまじい轟音と共にウェールフープ砲が放たれる。やがて海岸へ弾着すると、ものすごい量の砂埃のあとに荒廃した街並みが見えてきた。

――

 

「!?!?」

突然波が揺らぎ、転覆しそうになった。大きく波がゆれ、まるで巨人が犬かきをしているような荒れようをした。

ところどころで高波が発生し、遠目から見るデイシェス港にある小舟が飲みこまれたのが確認できた。

「一体何が起こっている!」

「Xelken.alesです!数隻の巡洋艦が確認できます!」

アルシーもキーアも混乱の中訳も分からずそこにいた。いったい何が起こっているというのか。

「アルシー、あれを見てみろ・・・」

キーアが人差し指で刺した方角には、かすかながら肉眼で軍艦が窓越しに確認できた。それも一隻だけではない。その時、アルシーは全身に気持ち悪い感覚を覚えた。

「ウェールフープ波を検出!ウェールフープ砲撃をされたようです!」

誰かの声が聞こえた。ウェールフープ波?そんなものも学校で習った気がする。

「そこそこ指数が高い…ネートニアーであればすぐに体に被害が出てくるぞ!」

そうこうしている間にまた砲撃が一撃。続いてもう一発。さらにもう一発。いたるところで砲撃が聞こえる。

忙しない船内を見て立ち尽くしていた二人は同じように急いでいた軍人に声をかけられた。

「な、フェグラダ生たち?こんなところをうろついてはダメだ。敵船が見つかった。すぐに客室に戻って隙があれば脱出できるように準備をしておくんだ」

二人は連れ戻された。

 

そのとき、運転室では迷彩柄の軍人たちがまたもや極限状態の中、決断を迫られていた。船を進めるべきか、否か。応戦したところで向こうの方が相変わらず戦力的に勝っているので、砲撃戦は難しいであろうことは誰もが思っていた。ならどうするのかという話であるが、今回こそは逃げるしかなさそうである。

「一体Xelken.alesはどのあたりまで戦況を展開しているんだ・・・とにかく偵察隊を送るとともに、速やかにこの海域からの脱出を図るんだ。この船も完全に狙われており、何度も砲撃されている。時間はないぞ!早くするんだ!」

 


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