Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
「イェトスタファ、そういえばフィシャ……じゃなくてファリシーヤの姿が見えないんだけど。」
「そうね、通信で呼び出してみましょう。」
そういって、イェトスタファは通信用のデバイスを取り出す。もう既に襲撃部隊によって通信が出来るように既に整備されていた。イェトスタファはデバイスを操作しながら、一つあることに気づいた。
「どうしたの、イェトスタファ。」
「いや……ファリシーヤのデバイスが認識できてない。」
「え?」
フィッサは何が起きているかさっぱり理解できていなかった。
「つまり、ファリシーヤは殺された……?」
「ま、まさか。」
フィッサがうろたえる。
「そんなはずは無い。ファリシーヤが」
「フィッサ、私たちは不測の事態に備えなければならない。」
そういった、イェトスタファは掛けておいた防弾コートを再度羽織った。
「何処に行くの。」
「安否確認だ。」
「私も行くわ。」
フィッサが顔を強張らせて言った。彼女も防弾コートを羽織ろうとするがイェトスタファがその手を掴む。
「イェトスタファ!」
「駄目だ、感情的に動いてはいけない!私もお前も死んだらあとはどうなる!」
「……。」
フィッサがそっぽを向いて囁いた。
「死んじゃ、だめだから。」
「ああ。」
そういって、イェトスタファは部屋を出て行った。
――
「期待はずれね……」
「くっ……」
教室にめり込みながらも煤、埃を払いファリシーヤは立ち上がった。そして、皮肉気味に言った。
「何が、期待はずれよ。私たちに何を期待するの?」
「何も、私と張り合える人間が居ないもの。」
そう言って、手を掲げる。
「なっ!?」
現れたのは巨大なムカデであった。四肢をうねらせてファリシーヤの後ろに四匹も居る。
「忘れたの?私の能力は、生物操作よ。」
「く、虫ごとき!」
ファリシーヤは腰のホルダーにある拳銃を引き抜きムカデ達に向けて撃つ。しかし、その鋼のような皮によって弾かれる。
「くっ!」
尚もファリシーヤは撃ち続けるが、全く食い込みすらしない。
「残念ね。その銃では多分貫通はしないわ。」
ムカデたちがファリシーヤに近づいてゆく。対抗する術は無い。ムカデ達に四方を囲まれ、指令であるアレスには近づけない。拳銃の引き金を引くと跳弾して自分の肩を掠めた。
「さようなら、“ フィシャ・エレン ”さん」
終わった。ここで死ぬのか。最後に吸ったコーニュスティエは旨かったな。クソ。クソが。敵に、Xelken.alesなんかに殺されてしまう。そうだ、最後に一つだけ希望はある。Xelkenとしての希望。尊厳!尊厳だ!
拳銃を持ち、こめかみに当てる。
" 力在れ!Xelken万歳ィ! "
「待て!!!!」
誰かの声が聞こえた。
「誰かしら。」
「Xelken.valtoal ハルトシェアフィス部隊隊長、ハルトシェアフィス・クラン・イェトスタファだ。」
風が教室内を駆け回った。空気を一新するかのような風が。
ターフはハルトシェアフィスに向きかえる。
「所属を簡単に明かしていいのかしら?」
「ああ、“ Xelken.alesの幹部様 ”はここで死ぬんだから隠す必要も無いだろう。」
ふふっ、とターフは笑う。
そして、怒気で体を包んだかのように威圧感を出す。
「その言葉、そっくりそのまま返してあげるわ。“ Xelken.valtoalの小隊長さん ”」