Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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ハルトシェアフィス部隊

「早く準備しなさい。ファリシーヤ、フィッサ。」

武器を車両に詰め込みながら、言う。

私、ハルトシェアフィス・クラン・イェトスタファは正真正銘のxelkenである。生まれた頃から、xelken家としての知識を学習し、ここまで来た。全ては古理語のため、そしてxelken.valtoalの存続のために尽くしてきた。そんな私の初めての任務が、フェグラダ潜入であった。

 

ハルトシェアフィス・クラン・イェトスタファ、シェルケン・ファリシーヤ、スカースナ・シェルケン・フィッサ、この三人には「ハルトシェアフィス部隊」通称、HA部隊という名前が付けられた。Xelken.valtoal自体はXelken.alesの蜂起を事前に察知していたために、HA部隊にはこれらに対して上層部が望む人材であるケンソディスナル家の息子、アルシー=ケンソディスナルの保護、および奪取が任務として託された。そして、任務のために仮の名前を与えられた。アレス・ノアファ、フィシャ・エレン、ファリーア・ズュラファと。

 

しかし、蓋を開けてみればこの様だ。

 

---

嘔吐のような色の土砂が車両のタイヤに掻き出されて、勢い良く道脇に撥ねてゆく。灰色の車両は大雨の中を猛スピードで走っていた。

出発前、ハルトシェアフィスたちは、とりあえずアルシーの状態について考えを巡らせた。

まず、連邦軍に保護されたのであればあとは大丈夫であろうと考えた。諸地域のクランタル残存部隊に連絡して、今は連邦軍の行き先を調べさせている状況である。となると、次はフェグラダの開放である。同志がxelken,alesの統制下で何をされるかは猿でも犬でも想像が出来る。拷問と再教育だ。であれば、直ぐに助け出さなくてはなるまい。

 

ファリシーヤが懐から何かを取り出す。アイボリー色の板を咥えて先に火をつける。

「なんだそれ、タバコか?」

フィッサが怪訝な様相でファリシーヤの方を覗き込んだ。

「コーニュスティエだよ。タバコなんか吸うわけ無いだろ。」

コーニュスティエ、タバコの代用として使われる咥え吸うお香である。依存性があり、xelken内でも禁止されているが、生死の間に置かれる兵士たちのことだ。とやかくは言わない。

雨の中を掻き分けていくと大きな建造物が見えた。

 

「あれが、フェグラダでしたかねえ。随分崩れちゃってますね。」

フィッサが言う。フェグラダはその様相をさっぱり変えていた。出入り口付近には数人xelken.alesと見られる兵士が居た。車を門に近づける。ハルトシェアフィスは、被っていたフードをさらに深く被った。あとは何事もなく門に進むだけ。

 

"止まれ!お前は何もn"

車内に潜んでいたフィッサとファリシーヤが即座に立ち上がり門番の兵士を射殺する。

「お見事。」

そういい、私たちはフェグラダの内部に入り込んで行った。

全ては同士の解放のために。


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