Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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ショレゼスコ

装甲車から降りた兵士たちは、近辺に居るXelken.ales兵士を暗闇ながら即座に撃ち殺した。彼等はデュイン陸軍特殊中隊である。特殊中隊はデュイン陸軍の中でもエリート、そんなのと行動しているエレーナは思わず身震いした。

 

いかんいかん、これではダメだ。今は出来るだけ、多くの人を救うために行動しなければならない。本能的な震えを理性で押さえ込む、部隊は森の奥に見えた東南クランタル港を偵察しようとしていた。

 

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私が特別警察に入ったのは、そんなに前ではない。

そもそも、何故特別警察に入ったかは兄の影響があるだろう。

 

私の兄、ドヴィェダフィスは数年前にXelken.valtoalに捕らえられた。

 

ショレゼスコ以降、連邦とデュインの経済は最悪のシナリオを影響圏にたどらせることとなった。所詮、共倒れである。

ユエスレオネ共産党の党首ターフ・ヴィール・イェスカは、何を思ったのやら独裁制を解き、民主化を進めた。これだけならまだしも、イェスカは段階を踏まない貿易自由化や関税緩和を進め、結果外資ヘッジファンドの空売りによる打撃を受け、連邦は経済恐慌に陥った。

 

それだけならよかった。

まだ地獄は続いたのであった。

 

経済恐慌に陥った連邦は失業者を大量に作り上げた。その結果、私の兄は会社で真っ先に切られた。レイオフの対象にその年のスキルも無い新入社員が切られるのは当然だろう。

 

ただ、兄は会社内で相当なポストを保持していたそうであった。そんな兄が真っ先にレイオフの対象となった。兄は仕事に熱心であった、それは兄の自尊心を満たすためであった。もっと上に、もっと先へ、誰も届かない場所へ。それが兄の口癖であった。

 

しかし、突然首を切られた。兄の誇っていた地位、名声はすぐに消え去った。兄は実家であるクランタルからは離れた連邦のカヴィーナに住んでいたから、いつも手書きの手紙を送ってくれていた。

 

だが、兄はある時を境に手紙を出さないようになっていた。レイオフされてから直ぐに手紙が途切れたのかというとそういうわけではない。それはレイオフされてから数日経ってからであった。手紙が来るはずの日に手紙が来ていないのである。あの真面目な兄のことだから、なにやら今回は忙しかったのであろうと。私たち、『兄』の家族は、そう考えていた。

 

しかし、それ以降手紙は一通も来なかった。異様に感じた父親は兄のカヴィーナの家に行ってみたが、そこはもぬけの殻であったという。連邦に問い合わせてみるとなんと、兄は行方不明という扱いになっていた。何があったのか、調べてみるとどうやら兄はXelken関係に狙われていたようであった。行方不明、といってもこんなに年数が経っては生死の別が決まるものであろう。それからというもの我が家を襲ったのは兄の記憶であった。Xelkenへの言文に表し難き憎しみと恨みが目の前を全部覆った。母は自殺した。兄の失踪後から母は精神的に不安定になり、体調崩していた。心療内科にも通院中であり、気さくでいつも笑顔のような人であったが「兄のもとへ向かって叱ってくる」との遺書を残して、WP爆弾と共に下の世界で自爆した。連邦はぐちゃぐちゃになった遺体を持ってきて遺体確認などとほざいた。

 

父と二人の生活が続いた。

遂に私はフェデラル・ボードを履修し、家は金欠であったため、仕事を探さなくてはならない潮時となった。だが、兄の件から全くもってさまざまな仕事に興味はもてなかった。そのころWP開発援助のためにハタ王国やラネーメ国などの諸国を回っていた叔父が帰ってきた。叔父は苦虫を噛み潰したような顔をして、何が起こったのかを察してくれた。そうして、私が仕事を見つけられないと話すと「いいところがあるよ」といってくれた。

 

特別警察である。もう連邦には与したくないと思っていた私だったが、連邦は当時から不安定であったXelken過激派を叩きのめすために特別警察を利用しているとの話であった。乗り気ではなかったが膨大な力の塊であるXelkenを合法的に虐殺できるのなら、入る価値はあると思った。

 

そうして、諜報部特別警察職員となった。今まで何人ものXelkenテロリストを殺してきただろうか、分からない。そんな任務に配属され続けた。

そして、つい数週間前、新たな任務を受託した。

 

「これは、またへんちくりんな作戦で君には合わないとは思うが、特別警察としても人員が少なくてな。」

「そうでしょうか、まあいいです。」

 

作戦内容はフェグラダ・ヴェイユファイト・ア・デュアンにおけるXelken過激派のオルグの監視であった。全く、この私が、Xelkenを抹殺するのが楽しみであった私が、オルグの監視という生やさしい任務を命じられるとは。そんなことを思いながら、ただ逆らえない事情に身を任せることにした。

 

フェグラダには、多くの何も知らない市民が居た。連邦や総合府にとっての健全な一般市民。キーア、アルシー、エレーナ、うんぬんかんぬんとよくもこのような馬鹿が集まったものと思った。だが、私はその学校で一生徒を演じながらもそのXelken分子を監視していた。上官に報告するも対処が遅れて今の様だ。

 

そんなことを考えていたら、面前の兵士たちが装甲車を見つける。

「これは使えるな。」

「爆弾とかが取り付けられた痕は無いようです。」

「よし、すぐに港まで着けるぞ。」

そういって兵士が乗り込み、キーを入れる。

エレーナも直ぐに乗り込み、回りを警戒することにした。

 


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