Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
「クソッ!クランタル海軍に先を越されたッ!」
フェリーシャはXelken.valtoal支部で広報の言葉を聞いて地団駄踏んだ。彼らの狙っていたアルケンは、軍にすでに保護されてしまったのだ。先を越された。
「今彼らはどこにいるんだい?」
フィスルクーフェーは比較的姉よりは落ち着いて部下のスパイに話した。
「クランタル海軍とともにデイシェス側へ避難する予定のようです。海を渡って」
じゃあ、クランタル港でXelken.valtoalで奇襲をかければいいじゃない。という発想に至った。
「クランタル港からデイシェスに行くんでしょう?クランタル港の兵士の守りはどんな感じ?」
「相当厳重です。その場で一騒動起こせるでしょう」
「むう・・・」
「どうしますか?」
「・・・三人組を派遣して潜らせましょう」
横で並んで座っていた女子三人組ははっとした。
――
「クランタル区庁のみなさん。この後は、クランタル港よりデイシェスへ移動します。」
車内で、迷彩柄の男は声を上げていた。声にはとても安心感があった。アルシー、キーア、エレーナもその中におり、共に男の声を聞いていた。
「すごい豪雨だ。あまり外が見えない。いつのまにかさっきよりもきつくなっていないか?」
「そうかもしれんな。こうも視界が悪いと、なにかあったとき大変かもしれない。」
しかもだんだんと日が沈んできた。これは何があっても俺たちじゃどうにもできないと確信した。
車内の裏では、クランタル海兵数名が話し合っていた。
「市民をデイシェスに避難させたところで、彼らの安全は保たれるか?」
「分からない。デイシェスやその近海もXelken.alesに占拠されているかもしれない。」
「デュイン総合府からのわけのわからない連絡にも困っているところだ。こんな状況なのに総合府は軍も出さないし、諜報機関も派遣しない。」
「代わりに俺らが任務に従事する始末だ。連邦政府のせいでな」
迷彩柄を着た運転手が車を旋回させる。ハンドルを回しながら、兵士たちの話を聞いていた。曲ったことによって兵士たちが若干揺られた。
「おい!9時の方向にXelken.ales兵が待ち伏せしているぞ!」
「どうする!?振り切るか!?」
「その方がいい。こちとらただの車なんだ。向こうは戦車もあったぞ!」
運転室に走る緊迫感。運転手は必死に攻撃を避けつつクランタルの町を爆走していった。そんな兵士たちの奮闘をよそに、クランタル区庁にいた区民や、アルシー達はついつい安心感から睡眠に入ってしまいそうになっていた。
「みんな、起きて!私たちはまだ助かってないわ!」
リラックスを始めようとするアルシーやキーア、そのほか大勢に喚起する。
「銃声がいっぱい聞こえるじゃない!狙われているわ!」
激しく声を上げるエレーナを見て、アルシーを含めてみんなが起き上がった。たしかに、銃声は聞こえる。しかしそれが車に被弾しているような音は一切聴こえない。
エレーナは運転室へ向かおうとした。すると、途端に車ががくんと揺れる。運転室からもそれに反応するような声が聞こえた。
「何が起きたぁ!?」
「分かりません!どこかを命中されたようです!」
「んなことは分かっている!」
「連邦クランタル海軍の奴らか。さっき人質を乗せて区庁から抜け出してきた奴は!軍用車だけあって大砲一発じゃただの鉄屑にはならないか。」
乗組員の兵士たちは大砲の角度を合わせる。
「エレーナ何をしているんだ!?」
エレーナはおもむろに運転室への扉を開けようとしていた。
「誰だ!?」
そう聞こえて運転室の扉があいた。出てきたのは男が一人。だが、その男からは今までにあまり感じたことのないような雰囲気が漂っていた。
「ケートニアー・・・か」
キーアは言った。アルシーはそれに気にかかったが、それよりも男と大きな声で話しているうちに納得して中から出てきた男数名と共に外に出ていったことの方が気になった。
「あ、エレーナ!」
「アルシー君、あれを私が食い止める。貴方達は、先にデイシェスに行っていて。すぐに私たちも合流する」
エレーナは男と共に車外に飛び出した。