Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
"学校ごっこ"
爆風が吹き荒れる。
戦闘開発部棟3階、その様相は酷いものであった。
爆風と共に全てが弾け飛び、生きている者は一人も居ないかのような様相であった。
「……。」
煙と共に一人の男性がそこにうずくまっていた。
「古理のためとは言え、凄惨な喜劇だ。」
埃を払い、地面を蠢くまだ息を止めない死に損ないを見下げる。
「安心しろ、そんなに簡単に死ねるもんじゃない。」
そういって、頭を蹴り上げた。
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「よし、とりあえず演武の対象になる奴と戦闘開発科で待ち合わせているんだ。」
「そうなのか。」
キーアの言葉に頷く。
「ところで誰と待ち合わせてるんだ?」
「それが、」
先を言おうとした瞬間、目の前にあった戦闘開発科棟が、いきなり爆発した。
「な、なんだ?」
「よくある事だろう、戦闘開発科の奴らがなんかWPでもしたんだろう。」
「そ、そうか。」
乱闘といい、爆破といい、本当に元気な人たちだと。
そう思っていた。
その時が来るまでは。
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爆発が、見えた。
そこに居た二人はそれを眺めていた。
「戦闘開発棟の爆破、情報どおりのようね。」
「それにしても、こんな早くから始めるなんて。いささか準備が、整っていないんじゃないか上層部も。」
一人は振り返って、その声の主に言った。
「だから私たちが派遣されたのでしょう?ヴァレス・ファルザーとヴァレス・ユミーレとして。」
「……。」
声の主―ファルザー―は黙ってしまった。
ユミーレのポケットにある携帯が着信音を鳴らす。
「あら、本部のお達しが来たようね。」
ユミーレは文を読みながら、そう言った。
「どういうことだ、詳しく説明してくれ。」
ユミーレは携帯をファルザーに押し付けるように見せる。
「Xelken.alesが侵攻を開始したのよ。拠点のひとつとして、この学校の制御も開始される。」
「……どうする。」
ユミーレは、何事も無いように窓の外を覗く。
「無論、アルシー=ケンソディスナルを保護、とりあえずは本県から脱出する。」
「その後はどうするんだ。」
ファルザーが睨む。
「近隣県の支部にかくまってもらう。それしか方法は無いわ。」
「とりあえずは、アルシー=ケンソディスナルを探すしかないか。」
ユミーレは手を合わせて、ファルザーに振り向く。
「めんどくさいのでアルケンと呼ぶことにしましょう。」
「馬鹿なこと言ってないで早く行きますよ。『姉貴』様」
「はっ、最近の『弟』君はきついや。」
そう言い捨て、二人は表の学生より裏の仕事人となった。
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「一体何が起こったんだ……。」
爆破が起きた部屋を眺めるアルシーとキーア、その予想外の惨状に二人は絶句していた。
これは個人のWPによる爆発ではない。爆弾によるものだった。死体が散乱し、割れた窓ガラスに引っかかった肉片とへばり付いた血が、爆発の衝撃の強さを表していた。
どういうことかと、混乱していると近くの教室で銃声が聞こえた。アルシーとキーアはその方向へ、近づき小窓から見る。
生徒数人がWP拳銃をもって他の生徒を制圧している。殺してないにしても、一瞬でも動けば撃ち殺されるような状況だ。リーダー格のような人間が電話で誰かと連絡を取っている。
「……アルシー……。」
そういい、キーアが階段側を指す。
”””戻ろう、何かがおかしい”””そういっているように解釈できた。
一旦、アルシーたちは階段の踊り場に出てきた。
「一体なんだったんだ……。」
「良く分からない。でも、」
銃声が色々な場所から聞こえる。各地で制圧が行われている。そんな雰囲気を察知した。階段を上ってくる人の音が聞こえる。キーアが確認すると、「エレーナだ。」と声を漏らした。
エレーナは息を切らしながら、うずくまる。エレーナの制服には血がペンキのようについていた。
「エレーナ、一体何が在ったんだ。」
「分からない、いきなり奴らが銃を乱射して。それでここまで逃げてきたの。」
「どういうことだ。」
だから、分からないとエレーナは繰り返した。
その瞬間、人影と共に何者かが現れた。
「みぃつけた。」
そういったのはユミーレであった。良かった。この人なら、安心できる。
「先輩、助けてください!一体何が在ったか分からなくてそr」
そういい終わる前にエレーナは何かで吹き飛ばされた。
「エレーナ!?」
「ユミーレ先輩、なんてことを!?」
ユミーレは異様な顔であった。顔がゆがみながらも笑っているそのように表現できるような顔であった。キーアたちの前に立つ、その『先輩』は今までの先輩ではなかった。
キーアがエレーナに駆け寄る。アルシーは眼前で何が起こっているのか、理解が一向に進まなかった。
「悪いわね、あなたたちがxelken.alesとは知らなかったわ。アルシー=ケンソディスナルは私たちxelken.valtoalのモノよ。」
「xelken.....valtoal......、ヴァレス・ユミーレ……貴方はやはり……」
苦悶の表情を浮かべ、エレーナが言う。
「違いますよ!俺たちは、xelkenなんかじゃありません!」
「苦し紛れの弁明としては、不敬な発言ね。xelkenとしては、正しくないわ。ここで貴方たちを殺して、xelken.alesからケンソディスナル家の息子であるそいつを持って来いというのがうちの上の命令なんでね。済まないが死んでもらう。」
高速で形成される氷塊と共に耳を塞ぎたくなるような高音が鳴り響く。
「さようなら、また会いましょう。無の世界で。」
そういった瞬間、ユミーレの手が掲げられる。
死ぬと思った。
その瞬間。
「ぐはっ!?」
ショートしたような音、ユミーレはその紫光によって左腕を吹き飛ばされた。その正体は。
「やっぱりか、ヴァレス・ユミーレ、またの名をシェルケン・ヴァルトル・フェリーシャ。名前こそ、知っていたが。まさか貴様だったとはな。」
「ふっ、この野郎。良いだろう、先に殺してやるよ。その方が、うれしいだろ。反逆者め。」
「古理の再生のため、今までの方針は間違っていると多くのxelkenが思っている、それに従っているまでだ。」
ラツがアルシーと三人を見る。
「お前らは早く逃げろ。」
そう言うとキーアたちは横の階段を行こうとする。
ユミーレが止めようとするが、ラツがユミーレを電撃で吹き飛ばす。
「どこ見ているんだ、お前の相手は俺だろ?」
「速く死んでもらおう、学校ごっこは終わりだ。」
ユミーレもラツもにやりと笑みを利かせて、戦いを始めた。
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「くっそ、どうなっているんだ。」
「分からない、それが正直な感想だろ。」
アルシーが言う。
「xelken.alesがどうとか言ってたけど。」
「多分、xelken.alesが侵攻してきたのよ。前々から、特別警察で言われていたもの。」
「特別警察?」
エレーナは強く被りを振って「いやなんでもない」と言った。
「これからどうするか。」
キーアが言う。
「とりあえず、近くの軍事務所か警察事務局によるべきよ。そこで保護してもらいましょう。」
「そうしよう。」
そういって、アルシー、エレーナ、キーアの三人は学校を脱出することにした。