Kranteerl y io dyin 作:witoitaa
学園中に予鈴が鳴り響いた。すでに生徒たちは目が覚め、各自で支度をして教室で待機していた。いつも通り、アルシーは化学科教室の一番後ろに座り、その隣にはエレーナが、前方にはキーアがいた。文化祭一週間前を切った学園内は活気にあふれていて、いろいろな学級からさまざまな作品が見受けられた。もちろん、化学科2組も負けてはいない。2組の敷地内にはそれはそれは立派なレールが展開されていた。校内の誰もがあれを目撃していた。
「アルシー、聞いてくれよ。今日は医療科の女の子にジェットコースターのあのインパクトをべた褒めされたんだよ。これはエレーナが俺のものになるのなんて確定したようなもんだな。そう思うだろ?」
「エレーナ、今日の一時限目のWP物理の宿題ってあったっけ?」(スルースキルLv.2)
「えっと、たしかこれ。アルシー君やってないの?」
「やってあるよ。念のため確認したんだ。キーアのやつはいつも宿題を提出する直前に高速で解いているからな」
そういいながらアルシーはエレーナが見せたものを確認した。答えも大体あっていることを確認した。キーアはまだ懲りずにエレーナを私有しようと発言していた。エレーナはそれを見てもほとんど目つきも表情も変わらないので本当は内心ではひいているのか、変わらないなと日常的目線で見ているのか今でもわからなかった。
――
今日の文化祭の作業は二手に分かれた。メシェーラの演技を担当する演技班と、ジェットコースターの仕上げと安全確認をする仕上げ班である。無論、アルシーは演技班である。結局戦闘を披露するとは言っても誰と戦うかどうかは決まってはいないので、とりあえず学級代表のレヴィアが同行した。エレーナとキーアは仕上げ班に入り、特にキーアは最終安全確認を任された。学級代表の提案通りである。
先にアルシーとレヴィアは実際に戦闘をしてもいいのか、スカーナ先生に聞きに行くことにした。あの先生にとりあえず提案し、戦闘開発科学科長の許可が下りれば実践は可能となるが、それまでにアルシー自身の体力なども危惧されるが、それは心配がいらないだろう。なんせ、アルシーはこれでもゼースニャル・ウドゥミトの使い手でもあるのだから。
「じゃあ、俺らはスカーナ先生のところにメシェーラ演技の相談に行ってくる」
「学級代表もついていくの?いってらっしゃい」
クラスメイトの誰かがそういって送ってくれた。キーアとエレーナも負けじと見送ってくれていた。
それから数分後のことだった。工具の音と共に足音が聞こえた。
「よう、2組のみんな。儂じゃ。レヴィアの母親のS.H.アクリニーじゃ。最終安全確認もしてしまうと聞いて、念のため駆けつけたぞ?」
おばあさん口調と共にアクリニーが参上した。安全確認なので確かになにか修正などがあれば工具などを用いていろいろと修正する必要があるだろう。だが、彼女がもっている工具箱にそんな金属を加工できそうな大層な機械は入っていなかった。
「レヴィアのお母さん?まずはジェットコースターを稼働させるんですけれど、誰から乗りますか?」
「いきなり人はのせられんよ。まずは人形を乗せるかするんじゃ。いいものがあるぞ」
中くらいの大きさの工具箱からエレーナと同じくらいの身長を持つ人形を取り出し、エレーナに渡した。
「これを使って運転してみたまえ。儂設計だから、よっぽど儂の設計書から逸脱したレールを作っていない限り少なくとも人形が全焼するなんて事態は避けられるはずじゃ。」
受け取ったエレーナは重たそうにその人形を運んで座席に載せようとした。その様子を見た数々のクラスメイトが重すぎて倒れそうになるエレーナを支えようと近づいた。結局人形を最終的に担いでいたのはキーアであった。
シートへ着席させ、棒をセットする。運転版をアクリニーが操作し、まずは上昇を始めた。
――
アルシーとレヴィアは職員室の一角、面談席でスカーナと話し合っていた。
「・・・ほう、それは名案かもしれんな」
「そう思いますか?」
光るメシェーラを持ちながら、アルシーは目を輝かせた。
「ああ、大丈夫だろう。あとは戦闘許可を戦闘開発科の学科長にとって、まわりの設備が壊れないようにイールド幕や結界などを張って対策をするんだ。そうすれば、あと心配なのは一つだけになる。」
心配なのは一つだけ。スカーナは落ち着いた目つきで人差し指を立てて「一つ」を表すジェスチャーをしていた。
レヴィアは机に若干乗り出して顔を近づけて質問を投げた。
「・・・先生、その、一つ心配なこととは・・・?」
スカーナはアルシーの顔つきを見て目をつぶった。再び見開いてレヴィアの方を見た。
「それは、アルシー君の戦闘相手だよ」