Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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太陽の子

「ふーっ、今日も疲れたわね。」

暗がりの中、ユミーレは学校外に出ていた。

もちろん、外出許可は取っている。

名目上「家庭の事情」であるが、実際の理由は違った。

 

---

「失礼、客人を待たせているの。」

「どうぞ。」

薄暗い部屋にテーブルがあり、数人がリウスニータを片手に賭博をしている。この喫茶店の一角にユミーレの目的の人物はいた。ユミーレはその正面に座る。

 

「"ターゲット"の様子はどうだ。ちゃんと、組み入れられるんだろうな。」

「お任せください。そのための今回の布陣でしょう。」

ユミーレに男性ににやりと笑みを利かせる。

「体調や境遇は知っているのか。」

「貴方様はお知りでないのですね。」

「ん、まぁしょうがない。上層部は秘密主義者の集まりだからな。」

男は既に減っていたコーヒーの残りを呷る。

 

「アルシー=ケンソディスナル、ハタ王国のケンソディスナル家出身のようです。王国の暮らしに嫌気が挿し、専門のWP学を学ぶため両親に無言で家を出て留学。と、そんなところですかね。学校生活についてはとりあえず正常に動いています。」

「そうか。それにしてもケンソディスナル家か、あのデュイン戦争の主要高級シャスティではないか。」

「そうですわね。しかし、彼にその自負があるとは思いません。」

「というと。」

ユミーレは男から目を逸らして言う。

「彼は、王国に就く人間では元々ないだろうと言うことです。」

「イレギュラーだな、王国民はもっとスカルムレイ万歳、ハタ王国の風習最高、xelkenは死ねという感じかと思っていたが。」

「だからこその"ターゲット"ですよ。」

ふうと男がため息を漏らす。

「こちらに引き込めそうか。」

「単刀直入ですね。とりあえず、もうちょっと様子見ですね。何かあれば、拉致を。」

「おい、ユミーレ。前回のような面倒事は起こすなよ。丁寧にやれ、当局に潜入が知れれば、一巻の終わりだ。」

ウェイターが伝票を持ってくる。

「以上だ。次の報告までに成果を挙げられるよう頑張ってくれ。」

「承知しております。」

男が喫茶店を出ようとするのでユミーレもそれを見送った。

男は振り返って、こう言った。

「そういえば、これは噂だが、上層部が紛争を起こしてデュインを占拠する計画があるらしい。」

「はい?」

「まぁ、噂だが。くれぐれも気を抜かないように、任務に当たってくれ。」

「はい。」

そういってユミーレは学校への道を急いだ。

 

「・・・?姉さん?」

ポケットに手を突っ込んで夜道を歩いていたら、声をかけられた。聞き覚えはあった。

「ファルザー、部室で待っててなさいって言ったでしょう?」

「いや、俺も今の任務と並行してこの時間に呼び出された。」

本人も、いまいちなぜ呼び出されたのかわかっていない様子。とりあえず上からの指令なので行くしかないと思って不安げになりながらも道を急いでいるという様子だ。

「内容は聞いてないの?」

「姉さんなら大丈夫かな・・・これを見てほしいんだ」

そういいながら、ファルザーは八つ折りの黒い紙を渡した。ユミーレは開けるのに少々手間取りつつ、やっと内容を見ることができた。中には白いインクでこう書いてあった。

「・・・なるほど、支部長が言っていたことね」

「バカホワ玉・・・いや、ファリーア・カーナ・ドヴィエダフィスが考えていることは分ってはいたんだが。いよいよ奴らも我々の敵へとなり下がった。それで、俺が呼ばれたわけだ。」

上層部の「デュインで紛争を開始して占拠する」といううわさが本当だとしたら、それはまるで・・・

「ビーチ・フラッグというわけね」

 

――

 

ここは男子寮。下心とかを抜きにして、一週間以上前までいたエレーナの部屋にまた戻って寝たいという心境が強まっていった。このゴミの山を見るたびにそう思う。だが、それを口に出すとまた保健部のお世話になる。だが今ならメシェーラがあるので多少の犠牲を気にしなければ大丈夫そうなのは大丈夫そうなのだが。

「王国人、そろそろ消灯時間だ。メシェーラで遊ばないでくれよ」

「ああ、分かった。みんなおやすみ」

 


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