Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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レヴィアと王国人

「それにしても、アルシー君大丈夫?王国人のケートニアーとネートニアーの比率ってどんな感じなんだろう?」

レヴィアが僕の様態を見て放った疑問。どうだったであろうか。ネステルには、連邦ほどではないが小競り合い程度のウェールフープ争いは耳にしていたような気がする。にもかかわらずそんなに住人が減った気もしないので、少ないわけではなさそうである。とはいえ、2割程度だろう。僕がネートニアーであることは、流石にずっと前から知っていた。

 

「話しっていうのは、文化祭の話なんだけれど、私の母の協力でもうほとんどの計画は固まっている。タリエさん曰く、建材も問題ないらしいしあとは作業要員だけなの。担任にも手伝ってもらって埋め合わせているのだけれど、流石に人手が足りなくて・・・」

思ったよりも身近なことについての話だった。今日聞いた話が自分の両親の行方についてだったからか。

「君のお母さんが、僕たちのクラスの作品に協力してくれているの?」

「うん。そうなの。私の母、スカースナ・ハルトシェアフィス・アクリニー。設計士らしくて、昔はアトラクションとかの設計も担当していたらしいの。アルシー君の調子はどう?」

「今日一日安静らしい。もう夜だし、朝になったら多分回復しているだろう。僕については心配しないでくれ。キーアはバカな奴で部屋の掃除もしない、寝床さえも適当な奴だが、安全確認の時は身を張ってやってくれるだろう。」

レヴィアはほおを緩めて、了解のサインをした。

「・・・エレーナちゃんとはうまくいってる?」

「うまく・・・?」

上手くいっているってどういうことだろう。今のところは、小さな争い事もない。自分の中ではうまくやれていると思っている。

「私は、昔からエレーナちゃんと知り合いだったの。幼馴染ってこと。小学校に入ってお勉強を始めたころにはもうそばにエレーナちゃんがいた気がするの。私は孤児で、ある恩人に育てられたんだけれど、なぜかあの人は私がエレーナと仲良くやることに反対したの」

「そう・・・なのか。じゃあ、今の君のお母さんは?」

「つい最近、引き取られたばかり。まだお母さんの内面は全然わからないの」

ちょっとまだ事情が呑み込めなかった。その人に引き取られていたのになぜ突然、今の母親に引き取られたのだろうか。謎が謎を呼ぶ。アクリニーという、まるで王国人みたいな名前。

「・・・エレーナと仲良くする僕に焼いているのか?」

ずいぶんと率直に聞いてしまった。今から思っても、流石に相手の心が分かっていない。だが、彼女は冷静で真面目。そんな直球な質問に、素直に回答した。

「全然。アルシー君も大切なお友達だから・・・」

 

「いやあー、お似合いですよ君たちは。」

横から口を挟んできたのはイヴァネだ。白衣をまといながら少しにやけている。

「べっ、別にそういうわけじゃ・・・」

「それにしても君たちって、なんていうかキリッとした顔立ちが似ているんですよねー。二人ともエレーナさんが好きってことはわかるけれど、まずは二人の間の」

「だぁぁぁぁああああっっっ!!」

酷く顔を赤らめながらイヴァネの言葉を制そうとするレヴィア。珍しく取り乱している様子であった。

「アルシー君も、ずいぶんポカーンとしてレヴィアさんを見ていますよね?」

「えっ・・・?」

「ち、ちがっ、アルシー君はエレーナちゃんが本命なんだって!」

ずいぶんと真面目な話をしていたのはいいが、隣りで聴いている奴がいたということは、レヴィアの誤算だろうか。この部屋に入ってきたときと出てきたときではまったく表情が違っていた。

「あーあ、レヴィアさん帰っちゃったか」

「ほとんどイヴァネ先生のせいだと思います」

そんなことないよ、という雰囲気をかましだしてクスッと笑い、再び事務に戻った。

 

フェグラダ・ヴァイユファイト・ア・デュアンの文化祭は近い。そしてはかなく消えていく夢のようだ。何故なら、もう二週間もすれば文化祭が開かれて、残り一週間で俺のデュインでの学園生活は幕を閉じ王国に帰還せねばならない。あのラツ先生が言っていたことだ。


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