Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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夢と希望のゴミ屋敷

「ここが俺たちの部屋さ。」

そういって扉を開ける、そこにはとんでもない光景が広がっていた。

「なんだ…これは…。」

思わず顔を歪めてしまう。

ごみもごみ、ごみだらけなのである。

見るところ、道のようなところしか空いていない。

 

「おーい皆!新入りだぞ!」

キーアはそう中に呼びかけた。

すると二人の人影が見えた。

「ああ、アルシー君か。」

そういったのはチェッカー部部長ヴァレス・ファルザーであった。

「どうも、ファルザーさん。実は男子寮の空きが無くて女子寮に泊まっていたんですよ。それで空きが出来たということでここに。」

「そうだったのか、それは可哀相に。ここでは気兼ねなく休めるから、ゆっくりしていってね。」

「はい、ありがとうございます。」

「おいおい、新入りか。大丈夫か?」

そういう声が聞こえた。

「えっと、、、」

「見ない制服であった、赤、つまりこの人は。」

「戦闘開発科のターフ・エリ・イレーンだ。その顔だとすぐに死にそうだな、外国人。」

「……。」

ターフ・エリ・イレーン。そうあの時の乱闘していた戦闘開発科の優等生だ。しかし、毎度の通り乱闘を起こすから付いた名前は「骨折血塗のイレーン」。名前負けしない威圧感と共に何か、他人を拒絶しているかのような雰囲気を感じられた。

外国人と俺を呼んだ人はこれまでいなかった。皆家族のように呼び入れてくれた。しかし、このイレーンという人物は自分を突き放した。しかし、どこからか誰かを拒絶している。受け入れないでいる。そんな気がした。

 

「アルシー君?」

「あ、えっと、はい。」

そんなことを少し考えたあたりで、ファルザーから声がかかった。心配しているような目つきでアルシーを見る。

「ごめん、彼はいつでも誰でもあんな雰囲気で気難しい奴なんだ。まぁ、気にしないでやってくれ。」

「そうでしょうね。」

「は?」

アルシーの言葉に不意を疲れたかのうように聞き返す。しかし、アルシーは「なんでもないです。」とそれに返した。

 

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「それで、このゴミの山に寝ろ。というのか。」

「そうだ、しょうがないだろ。」

キーアが当然のように言う。しょうがないだろじゃないだろ。

「しょうがなくない、こんなんじゃ寝られないよ。」

その口論は目の前の惨状とキーアの一言からであった。

 

  「ここ、ここらへんに適当に寝て。」

  「どういうことだ。」

  「どうした、寝ないのか?」

  「ゴミの上に寝ろというのか。」

  「気にするな、男だろう。」

  「男だろうと、女だろうと気にするだろう。」

  「じゃあ、適当に払って寝ろ。」

  「はぁ、ブランケットとか無いのか。」

  「無い」

  「は?」

  「無い」

 

というあたりであった。あまりにも非常識すぎる。

「しょうがない、ブランケットはこれを使え。」

「お、おう。」

そういって受け取ったのはところどころ破れており、黒くくすんだぼろ布であった。

もう、堪忍できない。

 

「おい、キーア、掃除するぞ。」

「掃除ぃ?」

キーアがあからさまに嫌がる。

「そんなのめんどくさいじゃないか。」

「やるんだよ。じゃないとこの部屋は汚いままだ。」

「う……ん…?」

キーアの様子がおかしい。

「おいごら、外国人!」

「ちょっと、キーア君を止めないと!」

イレーンとファルザーが焦った様子で駆け寄るが、既に遅かった。

「そうじ……そ、う……」

そういったキーアは手を掲げる。

その手の先に光のようなものが集積していた。

「やばい、止めろ!」

ファルザーがキーアに突っ込もうとしたが、その瞬間何か大きな爆音が聞こえ、意識を失った。

 

----

「あ、あれ、ここは?」

「医療棟ですよ。」

そういった女性は以前、チェッカー部に転がり込んできた男子生徒を手当てしたスカースナ・ハルトシェアフィス・イヴァネであった。

「スカースナ先生……一体……なにが起こったんですか?なんで俺は医療棟のベットに寝てるんですか。って痛てててて」

起き上がろうとすると、全身が痛む。

スカースナはため息をついた。

「キーア君はカフェイン回路症候群という病気なの。」

「カフェイン回路症候群?」

聞いたことの無い病名であった。スカースナはそれに頷き、話を続ける。

「カフェインを定期的に摂取しないと、暴走してしまうケートニアー特有の病気よ。」

そんな変な病気があるのか。いやまぁ、聞いたことも無いから一般的な病気でもないであろう。とすると難病ということか。

「それでそれと今回の件は何の関係があるんですか?」

「いや、それでキーア君が暴走してしまって、君が怪我したわけです。」

「はぁ……。」

なるほど。まぁ、そんな難病ならしょうがないが、ファルザーやイレーンは大丈夫だろうか。

「あの、ヴァレス先輩やターフ先輩はどうなってるんですか?」

「ああ、あの二人はケートニアーだから大丈夫ですよ。すぐ回復しましたし、すぐ戻っていきました。」

そうだったのか。アルシーは胸をなでおろした。そういえば、文化祭の準備が心配だ。

「あの、いつ俺ここから出られるんですか。」

「治療用ウェールフープはもうすでに完了しています。でも、様子見のために今日一日は安静にしていてください。」

「はぁ……」

なんだか、ハッキリしない感じだった。カフェイン回路症候群のキーア、あの部屋の汚さ、そして、エレーナへの執着心。これらが繋がっている。そのように思えてきた。

 

そんなことを考えていると、部屋のドアががらっと開いた。

「失礼します。アルシー君の中央部学級代表のスカースナ・ハルトシェアフィス・レヴィアです。」

「レヴィアさん、なんでここに?」

「それが、そこのアルシー君にちょっと用があって。」

レヴィアがアルシーを一瞥し、病床の隣に座った。


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