Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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いざ教室の中へ

校門が開いていた。俺の学園生活はここから始まるんだ。ずっと憧れていた、リパライン語の生活。父さん、母さん、何も言わずに離れてしまって悪かった。もし、生きて帰ってこれたら・・・

生徒たちに紛れるため、校門を通る。周りはほとんどがリパラオネ系。ラネーメと思われるものも数人混じっているので、そんなに怪しまれはしないが、ちょっと気になる。

 

「あああああそれとってそこの人!」

すると誰かに話しかけられた。たしかに「それをとって」と聞こえた。それってどれだろう。周りを見渡す。そして下を見る。

「そ、それって、どれだ・・・」

ボールが飛んでくる。なるほどと思いキャッチする。するとなぜだろう。何故か知らないが暖かい。しかももふもふだ。でも、あの人が急いでいるようなので投げて渡そうとする。

「あ、ありがとう・・・ってそれ投げないで!」

「え?」

ボールが動き始めた。なにかそわそわしている。なんだこれは。生き物なのか?

「とりゃああああ」

さっきの人が飛んでくる。遠目だったから分からなかったがスカートをはいている。女子のようだ。見た目はかわいい。

その人はなんと飛び蹴りをしようとこちらに襲いかかってきた。

「え?え?えええええ」

 

なんと、蹴ったのはそのボールみたいな何かだった。ボールみたいな何かは蹴られるとどうやら正体を露わにした。よく見ると黒い瞳も口もある。これは生き物だったようだ。しかし何の種類だ?

そしてその人を見る。やはり女の子だ。

「ふう、ありがとう。初めてなのにいきなりごめんなさい・・・おらぁ!さっさと戻るぞ!このバカほわ玉ァ!」

女の子は去ろうとした。

「まって、あなたは・・・何て名前なの?」

女の子はこちらを横目で見るように振り向いて名乗った。

「・・・え?」

「お、俺はアルシ=ケンソディスナル・・・留学生だ。」

女の子は少し表情が変わったように見えた。どんな心境なのかはいまいち読み取れなかったが、友好的なように見えた。

「・・・ターフ・リーダ(Tarf.lirda)・・・サニス出身よ。」

やっぱりリパラオネか。デュイン育ちらしい。

「あの・・・学科は何?」

「学科・・・」

女の子――リーダは黙り込んでしまった。なにかまずいのだろうか?

「あ、ごめん。なにかいけないこと聞いちゃった?」

「・・いえ、なんでもないわ・・・じゃあね」

女の子はさっきの丸い何かをもって去って言った。さっきの女の子はいったいなんなんだろう。Tarf.lirda・・・初めてリパライン語を話すリパラオネ人とお話をした気がする。また縁があったら会えるのだろうか。

 

道を正し、教室を目指す。だが、道が分からない。その辺の人に聞こう。

「あの、すいません。」

話しかけたのはその辺に立っていた制服を着た男。見た感じ生徒だ。

「ん、なんだ?始めて見る顔だな。転校生か?」

「そ、そうです。あ、あの、化学科なんですけれど化学科の教室はどのあたりにありますか?」

制服の男は親切に答えてくれた。

「ああ、化学科の子かい。西校舎の4階だったはずだよ。」

「あ、ありがとうございます。」

なるほど、西校舎の4階か。って西校舎はどこだ?

一人さびしく校庭を歩き回った。

よくわからない建物に着いた。看板を見るが違う。それを横にとおると体育館と思われるものがあった。これも違う。引き返して反対側。「北校舎」と書いてあった。ここの右側かと考えて右側に見えた校舎に走る。

「西校舎」と書いてあった。近くには女子が数人立ち話をしていた。

 

急いで階段を上って3階を目指す。1階、2階、3階。

ここにあるらしい。そこで案内をもう一度見てみる。

「えっ・・・」

校庭の見取り図、教室の場所まできれいに説明してあった。

図によればこのフロアの一番端らしい。さっそく向かってみる。するとリパーシェで「化学科2組」と書かれてある。

たぶん、ここだ。

よし、乗り込もう。

ガラッと扉を開ける。中にいた人たちが一斉にこちらを向いた。

「失礼します。ここの担任はいませんか?」

教卓の方を見ると誰も立っていない。すると生徒の一人が答えた。

「スカースナ先生はまだ来てないよ。これから授業が始まるから多分準備してると思うよ」

どうやら次の授業で出てくるらしい。

すると後ろから足音が聞こえた。近づいてくる。やがて止まる。その足音の人間は私の肩に手を置いた。

「あ、君、その人がスカースナ先生だよ」

やはりか、と思い振り向く。すると男が立っていた。

「はじめまして、アルシ=ケンソディスナル君・・・」

男は話し始めた。

「私はスカースナ・エレン。化学科教師であり2組の担任だ。」

担任・・・やはり。

「君のことならヴィオク・ラツ先生から聞いている。まあ教室に入りたまえ。席は用意してある。」

どうやら転校のことは学校側にも連絡は入っているようだ。だがこちらから教室に赴くことになるとは。

先生は私を中に入れて私の紹介をする。

「みんな、紹介しよう。アルシ=ケンソディスナル君、ハタ王国から来た転校生だ。」

周りがざわめいた。


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