Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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謎の設計技師

キーアは企画者でありながら頭の中身がよくわからず、アルシー自身もそんなに細かいリパライン語は話せるような気がしないので、エレーナが一番まともだとアルシーは心の中で判断し、エレーナが注文をした。

 

「おっけー、なんか鉄骨とか多くないかーい?」

「今年は私たちの学級やたらと大がかりですからね。」

「ふーん、分かった、明後日までには用意しておくよ」

「ありがとうございます」

「毎度―」

 

「さて、帰ろうか」

「キーア、お前は何もしてないだろう」

「お前もだろ、アルシー。俺の愛しきエレーナに仕事をすべて任せやがって」

また堂々とそんなことを。だがほぼ毎日、いや毎日こんなことを言うのでさすがにこちらもこの空気になれてしまい、適当に受け流せばいいという感覚が生まれてしまった。その点アルシーよりも長くこの空気を吸ってきたエレーナのこのキーアの扱い方はお手の物である。エレーナは少し顔を赤くするだけで注文用紙を持って学園に向かって歩いているだけだった。

「懲りないなお前は。どんだけエレーナのこと好きなんだよ」

「どんだけ・・・か」

キーアは黙り込んだ。冗談で言っているんじゃないのかってくらい考え込んでいた。

「妹にできるなら、いっそ妹にしたいくらいかな」

「またそんなことを」

 

――

 

学園正門。公安部が監視をしているのが見えていた。フィシャさんがまた手を振っていたので振り返し中へ三人並んで歩いて行った。

「ちょっとちょっとちょっとー!無視しないでよアルシー君!」

「え、なななんですか」

「ちょっと話があるから。美術室の横に来て。あ、ヴァレス先生ちょっと用事有るんで抜けますね」

「ちょ、フィシャ君?どうしたんだ?」

アルシーは連れて行かれた。二人もチェッカー部だが黙って様子を見ていた。

 

教室へ着くと第二グループのメンバーが何かを取り囲んでいた。第二グループは設計を任されているからそれに関する話し合いだろう。

「あ、第一グループじゃん。材料はどう?」

「注文は完了した。明日までには届くそうだ」

「キーア君。届くのは明後日よ」

「キーア相変わらずだなーwwwwww」

「文化祭までには一か月以上あるんだ。そんなに大きいものを作ろうとは考えていない」

エレーナは注文用紙を見た。

「ところで、皆どんな設計のジェットコースターにしたの?」

「それは私がみんなの意見をまとめてある程度の設計を担当したじゃ」

「だ、誰だ?」

奥から現れたのはそんなに背の高くないというかエレーナとあんまり変わらない割と小柄の女性。さっきの第二グループの人だかりに完全に埋まって多様でこちらからでは一切確認できなかった。

「あ、貴方は?」

「私はスカースナ・ハルトシェアフィス・アクリニー。レヴィアの母であるぞ。」

「え、学級代表の母?」

「そうだとも。参観とかであんまり顔を出さないのは普段忙しいからじゃよ」

レヴィアの母であると名乗るアクリニーという女性は、服装こそ一般的だったが頭にヘルメットをかぶっており、S.H.Akrinirと書いてあった。アクリニーか。変わった名前だ。それにしても口調に癖がありすぎる。これは忙しいから来なかったというより特徴的な母親であるからレヴィアの方が参観を拒否しているのではあるまいか。

「申し遅れたが、遊園地やテーマパークなどの設計技師もやっている。というかそっちが本職なんじゃがね。趣味は有字書道でメシェーラ検定9段を持っておる。他にウェールフープ理論も大学時代にやったことがあって・・・」

「あの、話を進めてもらえますか?」

「おお、すまんねえ。まあ、娘のレヴィアが文化祭で力が必要になるかもしれないというメッセージカードが朝起きたら口の中に入れられててな。はっはっは。いやー飲みこみそうになったわ」

「なるほど、ご協力ありがとうございます。」

「で、ジェットコースターの大まかな外観じゃな。まず範囲はこの学園のグラウンド全域を使うとして・・・」

そのあと彼女によるジェットコースターの説明の後、今日の学活は終了となった。

 

ここは美術室。チェッカー部が美術室の一部を物置として利用しているため端っこにはボードや駒の入ったケースが窮屈に仕舞われている

「フィシャさん、一体どんな用ですか?」

「・・・ちょっと待ってて。今からユミーレ先輩呼ぶから。」

そういうと部長引き籠り室、もとい美術準備室のドアを開けて中に入っていった。少し話し声が聞こえた後再び呼び出された。

「さ、アルシー君入って。」

中に入ると椅子に偉そうに座る部長の姿があった。横には弟の副部長ファルザーも立っている。二人は笑いもせず怒りもせず平然とアルシーの目を見ていた。

「文化祭準備中に呼び出して申し訳ないねー。何が何でも君に聞きたいことがあって」

話し始めたのは副部長ファルザー。不敵な笑いを浮かべていた。おおよそ彼の人格に似合わない笑い方である。

「私の方から聞かせてもらうわ。アルシー君。」

「は、はい」

「あなたの実家はハタ王国にあるのよね?」

「そうです」

「ハタ王国のどこにあるの?」

「手続するとき学園にも住所を書いたはずですけど、ネステル市郊外です。」

「なるほど、ありがとう。ご両親はどんな感じなの?」

「俺の父さんと母さん・・・」

「やっぱり行き詰るわね。私たちチェッカー部が調べたんだけれど、あなたの両親はあなたがこの学園に来た時に行方をくらましている・・・」

アルシーは耳を疑った。


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