Kranteerl y io dyin   作:witoitaa

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スカースナ・ハルトシェアフィス・レヴィア

来たね、アルシー君」

「来たよ」

屋上まで上ると確かにレヴィアが屋上で立ち私に背中を見せつけていた。風は微量に吹いており、彼女の黒のショートカットを揺らす。

「参考までに、私はスカースナ・ハルトシェアフィス・レヴィアっていうの。貴方のフルネームは?」

唐突に、彼女は名乗り出た。まあその前までに彼女の立場上、名前だけは知っていた。なんてことを考えていたが今は、自身の名前を聞かれているんだった。

「アルシー=ケンソディスナルだよ」

「あれ?トイター名は?」

トイター名?そんな名前もあったなと思い、ふと記憶がよみがえった。

トイター名はトイター教共同体内で同姓のものがいた時、それらを区別するために使われ始めたことが始まり、それをシャスティが付与するようになってやがてトイター教独自の名前という立ち位置となったものだ。トイター名は名字だけでは受け継げないその家系の特色を表しているとされる。たとえばUrokaasyaTeriin一族のSuryaazaはまさに本土スリャーザにいたウロカーシャテリーン一族の末裔であるという風に。俺からすれば、割とどうでもいい概念ではあった。でも、あの家に生まれた以上俺にもそれに当たる名前があったはずだが、思い出せない。

「それは覚えてないな。最近は自分の家に伝わるトイター名を覚えてなかったりそもそもトイター名がないってパターンもあるんじゃないか?」

「へー、そうなのね。まあ、自己紹介はこのくらいにして、なぜこの学校に来れたの?」

「俺が住んでいたのはネステルっていう、まあ首都なんだけれどそこでデュインへの留学サービスがあってそこに滑り込んだって感じ。でも、学費

 

の話しとかその辺何も聞いていないんだよ。昨晩は寮の一部を借りて寝させてもらったし」

本当に、入学手続きや入学金、授業料の話は何も聞いていないのだ。

レヴィアは少し沈黙し、考えるような動作を始めた。が、数秒立ってその表情は緩み、話し始める。

「後、言い忘れていたけれど文化祭の件、実行はあなたとキーア君でやってもらうから。」

「え?」

驚いて声が裏返る。それと同時にドアに何かが当たるような音がした。

「誰かいるの?」

レヴィアは気になってドアに近づいてゆっくりとドアを開ける。俺も近づいて様子を見ることにした。

「あ、キーア」

「お、おうアルシーか。エレーナは俺のものだ・・・っとそうじゃなくてレヴィア。なんで俺たちがやるんだ?」

「提案者と、賛成者だからよ。安全性の問題をどうやって切り抜けるのか、何か策があるんじゃないかと思って指名したんだけれど。」

策か。一応俺なりには考えたが、これが実際に成功して彼女を満足させられるかどうか。エレーナに顔向けできるかどうか。

「策なんだが、やはりテストは大事だな。考案者が責任もって試すというところから始めよう」

「は!?」

キーアがかなり驚いた顔をして声を裏返す。レヴィアが目線をキーアに移して口を開いた。

「レシェール君、なにを驚いているの。ケートニアーでしょ?ただの転落くらいじゃ死なないはずよ。よろしくお願いしますね。本部にはそう言って

 

おきます」

「え、あ、はい」

何とかうまく言ったか。チャイムが鳴る前に、俺はエレーナに会いに行こうと考えた。二人を後にして。――しようとしたのだ。二人は去ろうとする

 

私に気付くのにそこまで時間がかからなかった。

 

「おい、俺がレヴィアと口論している間にエレーナを口説くつもりだな?そうはさせん。」

「待ってください。私の話が終わっていませんしエレーナは貴方に興味のかけらもありません」

彼女がキーアのことをどう思っているのかどうか、俺には察することはできないが少なくとも大好きレベルではないだろうなとは予想がつく。キーア

 

の言葉を聞こえないふりをして教室に戻ってエレーナを見つけた。

「あ・・・」

教室へ着きドアを開けるとそこにはエレーナが立っていた。彼女の眼を見るために少し下を向いた。

「あ、アルシー君。やっと戻ってきた。今屋上まで行こうとしていたんだけれど・・・」

何かを言いかけて彼女は黙り込んで下を向いてしまった。

「それより、俺に何か用があったんだろ?」

「ああ、そうなの。レヴィアちゃんと、なにを話していたの?」

「多分キーアが盗み聞きしていたと思うけれど、」

そう言っていると廊下を走る音が聞こえた。後ろのドアに誰かの手がかかりはっと振り向いた。キーアが息を切らしながら立っていた。

「あー、やっとまけた。あの学級代表戦闘開発科でもないくせに脚速すぎんだよ・・・あ、エレーナ!」

エレーナが露骨に嫌そうな顔・・・ではないが困り顔から呆れているような表情がうかがえた。

「あ、あの、キーア。あの文化祭の話」

「ああ、そうだったな。それがどうしたんだ?」

「キーア君、レヴィアちゃんとアルシー君が何を話していたのか知ってる?」

うーん、と上を向いて考えるような動作を始めた。

「文化祭のこととか、アルシーの出自とかそんなんだったな。ていうかなんで俺が実際に乗るんだよ」

「学級代表曰く、考案者だかららしいな」

「そりゃお前が言ったんだろ。あとエレーナは俺のものだ」

あいかわらず、よくわからない発言をしている。こんなことを聞いて普通でいられるこの学級の生徒、エレーナの心もすごいものだ。

「あの、よくわからないんだけれど、ジェットコースターを作ったらキーア君が試乗するってことで安全性を試すってことでOK?」

凄いな。今の話だけでどういう結論に至ったかを察せられるとは。

そう考えていると予鈴が鳴った。すぐに席に戻ろうとする。その時学級代表のレヴィアも入ってきた。


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