遊戯王GXへ、現実より   作:葦束良日

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第80話 覇王Ⅴ

 

遠也 LP:100

手札5 場・なし

 

覇王 LP:1900

手札2 場・《E-HERO ライトニング・ゴーレム》 伏せ2枚

 

 

 

「――手札から魔法カード《調律》を発動!」

 

 このデッキにおいて欠かすことのできない魔法カード。幾度となく使用してきたそのカードを、デュエルディスクに差し込む。

 それによってカードをディスクが読み取り、その効果が発動される。

 

「デッキから「シンクロン」と名のつくチューナー1体を手札に加え、デッキをシャッフル。その後、デッキトップのカードを墓地へ送る! 俺は《モノ・シンクロン》を手札に加える!」

 

 墓地に落ちたのは、モンスターではなく罠カードだった。そのことに俺は一つ頷き、手札に加えたカードをそのままディスクへと移す。

 

「《モノ・シンクロン》を召喚!」

 

 

《モノ・シンクロン》 ATK/0 DEF/0

 

 

 レベル1、闇属性機械族のチューナーモンスター。シンクロンの名を持ち、レベル・属性・種族の全てが恵まれた高性能チューナーであるが、その効果は非常にピーキーである。

 だが上手く使えば、このデッキにおける切り札を召喚するために必要なカードをいとも簡単に場に出すことができるのが、このカードの利点である。

 

「墓地に存在するボルト・ヘッジホッグの効果発動! 俺のフィールド上にチューナーがいる時、墓地から特殊召喚できる! 来い、ボルト・ヘッジホッグ!」

 

 背中からいくつものボルトを生やしたネズミ。名前の通りの姿をしたレベル2のモンスターが短く鳴き声を上げて飛び出してくる。

 

 

《ボルト・ヘッジホッグ》 ATK/800 DEF/800

 

 

 その効果はシンクロ召喚を主軸としたこのデッキにおいてはとびきり優秀なものである。その効果がいかんなく発揮されたことにより、場に素材は揃った。

 その合計レベルは3であり、俺がこの場で呼び出したいモンスターを呼び出すにはレベルの計算が合わない。しかし。

 

「モノ・シンクロンのモンスター効果! このカードをシンクロ素材とする時、他の素材モンスターは戦士族または機械族でなければならず、そのレベルは1として扱う!」

 

 これが、モノ・シンクロンの効果をピーキーと言った理由だ。このカードは二体でシンクロを行う場合はレベル2のシンクロモンスターしかシンクロ召喚できず、応用がきかないのである。

 だが、その効果にも意味がある。ボルト・ヘッジホッグはレベル2。本来レベル2のモンスターをシンクロ召喚することはできないが、機械族であるがゆえにモノ・シンクロンによってその不可能が可能になるのである。

 そして俺の切り札へと繋がるレベル2のシンクロモンスターといえば、一体しかいない。

 

「レベル1となったボルト・ヘッジホッグに、レベル1のモノ・シンクロンをチューニング!」

 

 俺が二体に向けて手を向ければ、ボルト・ヘッジホッグとモノ・シンクロンは心得たとばかりに飛び上がり、その身を光の輪と煌く星へと変えていく。

 

「集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ! シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 輝くリングに星が重なり、その中心から光の柱が立ち昇る。

 そしてその中から現れるのは、カラフルに塗装されたフォーミュラカーを模したモンスター。数少ないシンクロモンスターのチューナーの一体、フォーミュラ・シンクロンだ。

 

 

《フォーミュラ・シンクロン》 ATK/200 DEF/1500

 

 

「フォーミュラ・シンクロンがシンクロ召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローできる!」

 

 シンクロ召喚で消費した手札を回復してくれる優秀な効果。それにより、俺の手札は五枚となる。

 

「更に《星屑のきらめき》を発動! 墓地のドラゴン族シンクロモンスターを選択し、そのレベルと同じになるように墓地のモンスターを除外する! 俺はレベル8のスターダスト・ドラゴンを選択し、レベル3のスチーム・シンクロンとレベル4の暗黒竜 コラプサーペント、レベル1のスターダスト・ファントムを除外!」

 

 墓地にいた三体が時空の渦の中へとその身を隠していく。そして代わりに、俺のフィールドへと集まっていく輝く粒子の群れ。

 

「そして墓地から選択したモンスター、スターダスト・ドラゴンを特殊召喚する! 羽ばたけ――スターダスト!」

 

 集う光の粒たちがやがて一体のドラゴンの姿を象っていく。

 光に色がつき、質感が伴って、フィールド上へと舞い戻ったスターダストは天へ届けとばかりに嘶いた。

 

 

《スターダスト・ドラゴン》 ATK/2500 DEF/2000

 

 

 俺のフィールドにて、覇王十代と向かい合う二体のシンクロモンスター。くるか、と十代の呟きを聞いた気がした。

 ならば当然、俺はこう返す。

 

「いくぞ、十代! 俺はレベル8のシンクロモンスター《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2のシンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

 二体のモンスターが弾かれるように上空へと駆け上っていく。翼を広げ、ただただ上へと突き進んでいくスターダスト。フォーミュラ・シンクロンはタイヤを回転させて加速すると、その前へ飛び出してその身を二つの輝くリングへと変じさせる。

 そして、直後にスターダストがその輪をくぐると、一気にスターダストの速度は上がり、もはや視認するのも難しいほどの高速となって空を駆けていく。

 

「集いし夢の結晶が! 新たな進化の扉を開く! 光差す道となれ!」

 

 スターダストを取り巻く風と光の奔流。そのただ中を突き進むその姿が徐々に光の彼方へと突き抜け、白熱した体が白金の輝きを纏っていく。

 光すらも超えた先。そこにある進化の未来。揺るがなき境地の中で見出したその地へ至るために、スターダストは俺の意志とともに加速していく。

 

「――アクセルシンクロォォオオオオッ!」

 

 掲げたカードが、くすんだ色合いから純白の輝きを取り戻す。そうして浮かび上がったドラゴンの姿を確認するまでもなく、俺の頭上から光の壁を突き破って現れる巨大な気配。

 

「生来せよ! 《シューティング・スター・ドラゴン》!」

 

 その身から降り注ぐ光の雨は光速を超えた名残か。逞しく流麗な肉体が白金色に煌めき、視界を眩い白に染め上げる。未だ止まぬ光雨の中、両の腕を荒々しく振るい、流星の名を冠したドラゴンはその身の威容を示すように咆哮を上げた。

 

 

《シューティング・スター・ドラゴン》 ATK/3300 DEF/2500

 

 

 デュエルディスクから一層強く溢れる七色の輝き。その光に導かれるように、俺はデッキトップに指を置いた。

 

「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! デッキの上からカードを5枚確認し、その中のチューナーの数だけ攻撃できる!」

 

 そして一気に五枚を引き抜く。

 目を通せば、引いたカードは《ライトロード・マジシャン ライラ》《クイック・シンクロン》《ジャンク・シンクロン》《増援》《エフェクト・ヴェーラー》の五枚。

 このうち、チューナーはクイック・シンクロンとジャンク・シンクロン、そしてエフェクト・ヴェーラーの計三体である。

 

「俺が確認した5枚の中に、チューナーは3体! よって3回の攻撃を行うことが出来る! ――《スターダスト・ミラージュ》!」

 

 俺の宣言に合わせてシューティング・スターの姿がにわかにブレる。

 そして直後、シューティング・スターは微かに色合いの異なる分身を二体作り出し、三体となってフィールドの上空にて滞空した。

 それを確認し、俺は十代のフィールドに向かって勢いよく指を突きつける。

 

「1回目のバトル! シューティング・スター・ドラゴンで、ライトニング・ゴーレムに攻撃!」

 

 上空から三体の内の一体が高速で滑空してくる。このままいけばライトニング・ゴーレムに直撃というところで、シューティング・スターの眼前に半透明の壁が現れる。そのままその壁に激突して破壊したシューティング・スターの分身は、その身を大気の中へと溶け込ませて消えてしまった。

 

「罠発動、《ドレイン・シールド》。その攻撃を無効にし、攻撃力分のライフを回復する!」

 

 

覇王 LP:1900→5200

 

 

 ドレイン・シールド。そういえば十代はそんなカードも持っていたなと思い返す。

 これで、十代のライフは5200という大きな値になった。だが、ドレイン・シールドがなくなったことで、十代のフィールドにこちらの攻撃を止めるカードはなくなった。

 ゆえに、一気にたたみ込む!

 

「2回目のバトル! 再びライトニング・ゴーレムに攻撃!」

「く……」

 

 

覇王 LP:5200→4300

 

 

「そして3回目、最後のバトル! ゆけ、シューティング・スター・ドラゴン! 十代にダイレクトアタック!」

「……ぐ、ッ!」

 

 

覇王 LP:4300→1000

 

 

 次々と地上へ向けて突撃してくる姿はまさに流星。その高速突撃は十代を掠めていき、その体を吹き飛ばし地面に叩きつけた。

 しかし、十代のライフを削り切ることは出来なかった。

 ライフ1000を残して十代は持ち堪えたのである。倒れ込みはしたものの、それもこの時だけ。鎧が擦れる金属音と共に立ち上がった十代は、変わらず冷たい瞳をこちらに向けてきたのだった。

 俺は切り札の攻撃をことごとく防がれたわけだ。だが、それを見ても俺に動揺はなかった。十代ならば、あるいは耐えるかもしれない。そんな予感があったからだ。

 いや、これは予感というよりは経験則に近いかもしれない。十代という男はそういう男なのだと、二年以上共に過ごした時間が俺に教えてくれるのだ。

 ピンチからの大逆転。それは十代が持つ天性のドロー運とデュエルセンス、そしてここぞという時に応えてくれるデッキとの固い絆によって生まれる奇跡だ。

 三位一体。これら全てが揃って初めて十代本来の強さが発揮される。味方であればこれほど頼りになるものはない。しかし、敵であるならば恐ろしい。……その三つの要素が揃っていれば。

 だが、今はそうではない。今の十代には決定的に欠けているものがあるからだ。

 そう、デッキとの絆である。

 確かにE-HEROは今の十代に協力的だろう。だが、E・HEROはどうだろうか。そして、ネオスペーシアンは。

 彼らは今の十代のことを嘆き、悲しんでいる。そんな彼らの気持ちに気付かず、ただその力を利用している十代に、俺は負ける気がしなかった。

 そして、俺には背負う仲間たちの思いがある。ならば、俺が負ける道理はどこにもない。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド! ――十代! お前は気づいていない! お前が捨ててしまった大切なものに!」

 

 指を突きつけ言った言葉に、十代は小さく鼻を鳴らすだけだった。

 

「何を言うかと思えば。くだらない」

「くだらないもんか! 孤独は強さじゃない! 思い出せ十代! 俺たちの強さとは友との、仲間との繋がりの中にある! お前の仲間の声が聞こえないのか、十代!」

 

 デッキから聞こえる、これまで十代が信を置いてきたカードたちの嘆き。その声はマナだけではなく、俺にも微かに届くほどだ。それに、持ち主である十代が気付かぬはずがない。

 十代はデッキに視線を落とす。しかし、突如暗い色のエネルギーがデッキを包む。それによってか、十代は何も聞こえないとばかりにすぐ視線を戻した。

 デッキに侵食した十代の闇が深すぎるのだ。気づけば微かに聞こえた声が、俺も聞こえなくなっていた。

 

「遠也、もう私にも聞こえない。ひょっとしたら、心の闇に完全に……」

「く……」

 

 マナからの知らせに、俺は呻くしかない。

 そうだとすれば、もはやカードたちも助けるためには時間がない。闇に侵食されたカードがどうなってしまうかはわからないが、しかし良い結果になるとは到底思えなかった。

 ならば、やはり勝つしかない。

 俺の手札、デッキ、墓地、エクストラデッキ。その全てに対して呼びかける。頼む、力を貸してくれと。

 そして、十代のターンが始まる。

 

「……ドロー」

 

 直後、十代は自身のフィールドに手を向けた。

 

「このスタンバイフェイズ、除外されていたヘル・ゲイナーが戻ってくる」

 

 その手の先で、一体のモンスターが徐々に空間から沁み出るようにして姿を現す。

 ついさっき、ダーク・ガイアに二回攻撃の能力を与えたE-HEROの一体である。

 

 

《E-HERO ヘル・ゲイナー》 ATK/1600 DEF/0

 

 

 続けて、十代の手が一枚のカードを掴む。

 

「魔法カード《ダーク・コーリング》。墓地の《ダーク・フュージョン》を除外し、その効果と同じ、悪魔族の融合召喚を行う!」

 

 いわばE-HERO版ミラクル・フュージョンか。墓地のダーク・フュージョンを除外する必要があったり、融合先が悪魔族全般と広いことを除けば、墓地融合という点でやはりミラクル・フュージョンに近い。

 そして十代の前にやや体が薄れた二体のモンスターが姿を現す。片や両手の三本爪をエモノとする最上級モンスター、片や非常に体格のいい大柄なモンスター。

 二体はやがて混ざり合うようにして一つになっていく。

 

「墓地の《E-HERO マリシャス・エッジ》とレベル6の悪魔族《E-HERO ライトニング・ゴーレム》を除外する!」

 

 体が更に薄らいでいく。同時に濃紫の霧に包まれた二体はその姿を捉えることが完全に出来なくなる。

 そしてその濃い霧が一瞬膨張した、その時。その中心に現れた黒い影を認めるのと同時に十代の口が開かれていた。

 

「出でよ――《E-HERO マリシャス・デビル》!」

 

 濃く満ちる闇の衣を切り裂いて、現れたのはマリシャス・エッジの姿を色濃く残した融合モンスター。

 ただしその逞しかった肉体はよりシャープになっている。余分な肉を削ぎ落とした結果洗練された体は細身であるが、それに反比例して手の甲から生える計六本の爪は長く分厚くなっていた。

 より悪魔らしく生物的になった巨大な黒翼を広げ、マリシャス・デビルは嗜虐的な笑みを浮かべて両の爪を胸の前で交差させた。

 

 

《E-HERO マリシャス・デビル》 ATK/3500 DEF/2100

 

 

「シューティング・スターの攻撃力より上か……!」

 

 元々の攻撃力3500はレベル8の融合モンスターとしても最大のものだ。そしてシューティング・スターの攻撃力を200ポイント上回っている。

 だが、それだけならばシューティング・スターの能力で防ぐことが出来る。問題は……。

 

「そして再びヘル・ゲイナーの効果発動。このカードを2ターン後まで除外することで、マリシャス・デビルは2回攻撃の能力を得る!」

 

 そう、ヘル・ゲイナーの効果だ。永続的に連続攻撃の能力を与える効果は、高攻撃力のモンスターに対して抜群の相性を誇る。

 再びその姿をフィールドより消したヘル・ゲイナー。それによって、マリシャス・デビルは二度の攻撃権を得た。

 そして、シューティング・スターが持つ攻撃回避能力は一度だけである。

 無論そのことを十代も知っている。だからだろう、俺を見る眼には勝利を確信した色があった。

 

「これで終わりだ、遠也。絆など所詮偽りの力。真の強さの前に儚く散るのみ!」

 

 あくまでもその主張を曲げない十代。

 頑固者め、と内心で呟きつつ、しかし俺の口から出た言葉はそれとは異なるものだった。

 

「それはどうかな」

 

 気負いなく笑い、俺は十代を見る。

 十代は一瞬怪訝な顔つきになるが、それも僅かな間だけのことだ。すぐにその表情は元の鉄仮面に戻っていた。

 

「強がりを……。バトル! マリシャス・デビルでシューティング・スター・ドラゴンを攻撃! 《エッジ・ストリーム》!」

 

 マリシャス・デビルが右腕を勢いよく振り抜き、鋭く尖った爪状のエネルギーが風を切り疾駆する。

 だが――!

 

「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! シューティング・スターを除外することで、その攻撃を無効にする!」

 

 翼を広げ、シューティング・スターはその身を薄れさせてフィールド上から姿を消す。マリシャス・デビルの攻撃は誰もいない空間を通過していくだけだった。

 これでシューティング・スターが破壊されることもなく、攻撃はかわした。

 

「だが、その効果は1度のみ! マリシャス・デビルは2度攻撃が出来る! ダイレクトアタックを受けるがいい! 《エッジ・ストリーム》!」

「まだだ! 罠発動、《ロスト・スター・ディセント》! 墓地のシンクロモンスター1体を守備表示で特殊召喚する! ただしその効果は無効化され、守備力は0となり、表示形式の変更はできず、レベルは1下がる! 頼む、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》!」

 

 

《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》 Level/7→6 DEF/3000→0

 

 

 墓地より復活する美しく青い輝きを見せるドラゴン。体を丸めて防御を固めるそのモンスターに、十代は指を突き出した。

 

「……ならば、エンシェント・フェアリー・ドラゴンを攻撃!」

 

 マリシャス・デビルが残った左腕を振り抜き、再び放たれた鋭いエネルギーがエンシェント・フェアリー・ドラゴンを直撃する。

 今のエンシェント・フェアリーの守備力は0。たとえ元の値であったとしても耐えきれるものではない。当然のようにエンシェント・フェアリーは倒される。

 

「助かった、エンシェント・フェアリー」

『いえ……よいのです。――遠也』

「なんだ?」

『必ず勝つのですよ』

 

 優しくも毅然とした声で言われ、俺は反射的に問い返す。

 

「それは十代に?」

 

 普通ならば、当たり前だと返ってくるだろう。敵に勝たずしてどうするのかと。

 しかし、エンシェント・フェアリーの答えは異なっていた。

 

『いいえ、あなたが望む勝利を』

 

 エンシェント・フェアリーがそこまで口にしたところで、その姿は墓地へと再び戻って消えていく。

 ただ単にこの勝負に勝て、ということではない。エンシェント・フェアリーの優しさが滲むようなそれに、俺は墓地へも聞こえるように声を大にして返事をした。

 

「ああ!」

 

 必ず、俺は勝つ。

 そう決意を新たにしたところで、十代は手札の一枚に指をかけた。

 

「……カードを1枚伏せる」

 

 そのカードをデュエルディスクに差しこむ。

 そして。

 

「ターンエンド」

 

 エンド宣言。

 それを聴いた瞬間、俺はすぐにフィールドへと手を向けて口を開いた。

 

「このエンドフェイズ、《好敵手(とも)の記憶》の効果発動! この前のお前のターンに除外された対象モンスターを俺のフィールドに呼び戻す!」

 

 俺の頭上にて歪む空間。やがて開かれるだろう異次元からの出口を待ちきれないとばかりに蹴り破り、光を纏った戦士が俺のフィールド上に降り立つ。

 その後ろ姿を前にして、俺は口角を持ち上げ、高らかにその名前を告げた。

 

「特殊召喚! ――《E・HERO ネオス》!」

 

 

《E・HERO ネオス》 ATK/2500 DEF/2000

 

 

 その体を蝕んでいた闇の瘴気は既に存在していない。除外を介し、更にこちらのフィールドに姿を現したことで完全にその脅威は取り除かれたのだ。

 銀色に光を反射する屈強な肉体を誇示するネオス。その横にて、巨大なドラゴンもまた徐々にその姿を取り戻していく。

 

「更に! 除外されていたシューティング・スター・ドラゴンもこのタイミングで帰還する!」

 

 

《シューティング・スター・ドラゴン》 ATK/3300 DEF/2500

 

 

 甲高い咆哮を上げつつ、光の中から姿を現すシューティング・スター・ドラゴン。これで俺のフィールドには攻撃力2500と攻撃力3300の大型モンスターが並んだことになる。

 だが、それだけではない。

 

「ネオス」

 

 俺が思わず零したその名に、フィールド上にて背中を見せていたネオス自身が振り返った。

 

『遠也……ありがとう。私に十代を助けるチャンスをくれて』

「礼はいらないぜ、ネオス。俺たちの気持ちは一つだ。なら、必要なのはそうじゃない」

『ああ! 共に戦おう、友よ!』

 

 ネオスは力強く拳を握り、シューティング・スターの横で十代に向かい合う。シューティング・スターも隣に立つ仲間に感じ入ることがあるのか、その鳴き声には決意のような響きが灯る。

 その声に含まれる希望の光。好敵手ともの記憶によって生まれたこのチャンスを、必ず俺はものにしてみせる!

 

「俺のターンッ!!」

 

 これで手札は四枚。その中に俺が求めるカードは存在していない。

 しかし、取れる手はまだある。

 

「魔法カード《調律》を発動! デッキから「シンクロン」と名のつくチューナー1体を手札に加え、デッキをシャッフルした後デッキの一番上のカードを墓地へ送る! 俺が選ぶのは、《ジャンク・シンクロン》!」

 

 そしてデッキの上から一枚のカードを墓地へ送る。

 更に。

 

「《貪欲な壺》を発動! 墓地の《スターダスト・ドラゴン》《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》《TG ハイパー・ライブラリアン》《モノ・シンクロン》《ターボ・シンクロン》をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

 手札を一枚ずつ確認し、俺は一拍置いて息を吐き出す。

 そして調律によって手札に加わったチューナーモンスターを手に取った。

 

「俺は《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

 

《ジャンク・シンクロン》 ATK/1300 DEF/500

 

 

 再び現れるレベル3の戦士族チューナー。その効果を早速発動させる。

 

「ジャンク・シンクロンの効果! このカードが召喚に成功した時、墓地に存在するレベル2以下のモンスター1体の効果を無効にし、表側守備表示で特殊召喚できる! 《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 

《チューニング・サポーター》 ATK/100 DEF/300

 

 

 レベルを2に変更できる効果は無効となっている今使うことはできない。

しかし何も問題はない。俺はただフィールドの二体に向けて手をかざした。

 

「レベル1チューニング・サポーターにレベル3ジャンク・シンクロンをチューニング! 集いし勇気が、勝利を掴む力となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 出でよ、《アームズ・エイド》!」

 

 シンクロ召喚のエフェクトによる光の中から、赤く鋭い爪を持つ機械的な片腕がフィールドに降り立つ。

 それは腕というよりは手甲に近く、守備的にも優れた見た目でありながらアームズ武器の名が示すように高い攻撃力を有していた。

 

 

《アームズ・エイド》 ATK/1800 DEF/1200

 

 

 下級モンスターとしても、アタッカーレベルの攻撃力。しかし、今はその攻撃力ではなくその効果こそが重要であった。

 

「チューニング・サポーターの効果で1枚ドロー! 更にアームズ・エイドの効果発動! このカードをシューティング・スター・ドラゴンに装備する! それによってシューティング・スター・ドラゴンの攻撃力は1000ポイントアップする!」

 

 アームズ・エイドが宙に浮かび、その身を徐々に赤く輝く光の玉へと変じさせていく。やがてその光はシューティング・スターの胸へと吸い込まれていき、シューティング・スターの体を淡く赤い光が包みこんだ。

 

 

《シューティング・スター・ドラゴン》 ATK/3300→4300

 

 

 力強い雄叫びを上げるシューティング・スター。その姿と変化したステータスに、オブライエン達も色めき立つ。

 

「攻撃力4300!」

「マリシャス・デビルを上回った!」

 

 二人の声に頷き、俺は改めて十代に向き合った。

 

「十代、これが絆の力だ! モンスターたちはその手を取り合い、俺に力を貸してくれる! お前も……お前のHEROたちの声が聞こえないのか!」

 

 しかし俺の呼びかけに対して、十代が返したのは不快だと言わんばかりに歪んだ表情だった。

 

「くだらん、何が絆だ。そんなものでは何も守れはしない!」

「そんなことはない! 想いの力は、お前が思っているよりもずっと強い!」

 

 俺はそう断言するが、十代は一層その表情を厳しくするだけだった。

 先ほどまでの無感情だった姿はどこにもない。俺の目に映るのはおぼろげながら怒りを見せる十代。今の自分の根幹を否定する存在に対する苛立ちを隠せない姿だけだった。

 

「遠也、何を言おうとお前にはわからない。俺が失ったもの、その絶望を。――失ったことのないお前には」

「――十代くんッ!」

 

 首を振り、わかりあえることはないと否定する十代。しかしそれに反応を返したのは、俺よりもマナのほうが早かった。

 思わずといった様子で勢い込み、前に出てきたマナ。その肩に手を置いて無言で宥めれば、マナは若干躊躇を見せたが、一歩下がる。

 素直に俺に譲ってくれたマナに感謝しつつ、俺は一言だけ口にした。

 

「――あるさ、俺にも」

 

 失ったことなら、ある。

 それは万丈目や明日香たちのような具体的な人間ばかりではなかったけれど。確かに俺もまた、失ったことがある。

 しかし、それを今更どうこう言うつもりなどなかった。そのことで悲しみ、嘆く時は終わったのだ。そして前を向くことを知った。遊戯さんが、それを俺に教えてくれた。

 ならば、今こうして絶望に沈んだ十代に答えを出すのは、きっと俺の役目なのだろう。

 遊戯さんが俺にしてくれたように。俺も俺なりのやり方で、俺の友達を助けてみせる。

 

「――バトル! シューティング・スター・ドラゴンでマリシャス・デビルを攻撃!」

 

 このデュエルを制し、この心を、思いを、お前に届ける。

 それこそが、今の俺のやるべきことだ!

 シューティング・スターが上空へと羽ばたき、そして一気にマリシャス・デビルに向かって滑空していく。俺の発言に怪訝な顔を見せていた十代ではあったが、バトルに入ったことでその表情は引き締められている。

 そして、向かい来るシューティング・スターを前にしながらも一切の動揺もなくフィールド上のカードを起き上がらせる。

 

「無駄だ! 罠発動、《レスポンシビリティ》! 俺の墓地にレベル5以上の「HERO」が存在する時、攻撃してきた相手モンスター1体を破壊する!」

「この瞬間、シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! フィールド上のカードを破壊する効果を無効にし、破壊する! 《スターブライト・サンクチュアリ》!」

 

 スターダストに連なるモンスターに破壊は意味を為さない。そのことは十代も百も承知のはず。

 一体どうして、と思ったその時。十代は更にもう一枚の伏せカードを発動させていた。

 

「その効果も1ターンに1度のみ! カウンター罠《天罰》! 手札を1枚捨て、効果モンスターの効果の発動を無効にし、そのモンスターを破壊する!」

 

 天空より雷鳴が轟き、やがてそこから下界へ向けて奔る一筋の閃光がシューティング・スターを襲う。

 いかなアクセルシンクロモンスターといえど、天の裁きに抗う術はない。苦痛の声を響かせながらシューティング・スターは破壊され、その際に起こった爆発による暴風が地上に巻き起こされた。

 

「くっ……そういうことか……!」

 

 腕を顔の前に掲げて風を防ぎながら、俺はやられたと内心で声を漏らす。

 先に発動させた《レスポンシビリティ》はシューティング・スターに効果を使わせるための囮だったというわけだ。

 まんまと俺はその囮に引っかかったわけか。しかしどのみち効果を使っていなければ、シューティング・スターは破壊されていた。二段構えの罠が仕掛けられていたわけだ。

 もしこの攻撃が決まっていれば、アームズ・エイドが持つ効果により、十代はマリシャス・デビルの攻撃力分のダメージを受けて負けていた。それだけに、十代も確実にシューティング・スターに対処してきたのだ。

 そしてその結果、俺の場にマリシャス・デビルの攻撃力を上回るモンスターはいなくなってしまった。

 

「お前の切り札であるシューティング・スター・ドラゴンは消えた! 絆の力など、所詮は戯言。孤独の中にこそ、真の強さがある!」

 

 それが絶対の真理であるかのように語る十代。

 それを甘んじて聴く俺の前で、ネオスが不意にその体に力を込めはじめた。明らかに攻撃へ移ろうとしている。そのことに誰よりも驚いているのはネオス自身だった。

 

『くっ……これは……!?』

「マリシャス・デビルの効果。相手のバトルフェイズ、相手モンスターは全てマリシャス・デビルを攻撃しなければならない!」

 

 自分の意思と関係なく攻撃の準備を整える肉体に呻くネオスに向けて、十代がその理由を明かす。

 それは自身への攻撃を強制する永続効果。同じような効果を持つモンスターは他にもいる。しかし、攻撃力3500を誇るマリシャス・デビルが持てば、それは単体で相手の自滅を引き起こす凶悪な能力と化す。

 

「まずいぞ! 遠也のライフは残り100! ネオスが攻撃を行えば一巻の終わりだ!」

「だが、遠也のフィールドに伏せカードはない……!」

 

 オブライエンとジムの声。そして同じような不安を抱いているのか、マナの瞳も僅かに心配の色を帯びる。

 確かに俺のフィールドに伏せカードはなく、手札にもこの状況を打開できるカードはない。ともすれば絶体絶命のピンチだろう。

 だが、何も問題はない。フィールドと手札に打開するカードがないなら、それ以外の場所に存在するカードを使えばいい!

 

「俺は墓地の罠カード《ブレイクスルー・スキル》の効果を発動!」

「墓地から罠……!」

「このカードを除外することで、相手モンスター1体の効果をエンドフェイズまで無効にする! よって、マリシャス・デビルの攻撃強制効果はこのターンのみ無効となる!」

 

 墓地から光が溢れ、それがマリシャス・デビルの体を覆う。マリシャス・デビルは苦悶の表情を浮かべ、それによって姿勢を低くして今にも飛び出そうとしていたネオスはその強制力から解放されて体勢を立て直した。

 

『すまない、遠也』

「気にするな。ネオスを守備表示に変更! 更にカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 片膝をついて腕を交差させ、守備の態勢へと移るネオス。更にその後ろに現れる二枚の伏せカード。

 こちらのエースは倒され、対してあちらの場には攻撃力3500を誇る切り札が万全の状態で立っている。いや、二回攻撃能力を付与されている今、強化されていると言った方がいいだろう。

 故にこのターンを凌げなければ俺に未来はなく、そして十代を助けることも出来ない。

 そのため、ジム、オブライエン、マナの三人は固唾を呑んでデュエルを見ていた。そして俺たちが見つめる先で、ついに十代がデッキからカードを引いた。

 

「……ドロー!」

 

 ドローしたカードはそのまま手札に。そして、十代は鎧についたマントを揺らしながら、その指をこちらに突き付けた。

 

「バトル! マリシャス・デビルでネオスを攻撃! 《エッジ・ストリーム》!」

 

 きたか!

 しかしネオスは今守備表示。マリシャス・デビルのこの攻撃はネオスによって防ぐことが出来る。だが……。

 

「リバースカードオープン! 《くず鉄のかかし》! 相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 

 今ネオスを破壊されるわけにはいかない。

 ネオスの眼前にうらぶれた鉄製のかかしが現れ、ネオスへ向かっていた攻撃をすべて受け止める。これによってネオスは破壊から守られた。そしてくず鉄のかかしの効果により、再びセット状態に戻る。

 これでくず鉄のかかしは次のターンにもう一度発動が可能だ。反面、このターンにはもう使えない。

 しかし、覇王の攻撃はこれで終わりではなかった。

 

「攻撃はもう一度残されている! マリシャス・デビルよ! 再びネオスに攻撃! 《エッジ・ストリーム》!」

 

 再びマリシャス・デビルが攻撃を行おうと両腕を構える。

 その瞬間、俺は手をフィールドに向けてかざした。

 

「リバースカードオープン! 罠カード《ピンポイント・ガード》! 相手モンスターの攻撃宣言時に発動! 墓地のレベル4以下のモンスターを表側守備表示で特殊召喚する! そしてそのモンスターはこのターン戦闘と効果によって破壊されない! 来い、《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 

《フォーミュラ・シンクロン》 ATK/200 DEF/1500

 

 

 フォーミュラカーを象ったシンクロチューナーモンスター。墓地から光と共に復活したフォーミュラ・シンクロンはそのまま守備の態勢を取って体を丸める。

 マリシャス・デビルは二度の攻撃権を持つ。だが、たとえ攻撃してきたとしてもピンポイント・ガードの効果によりこのターンフォーミュラ・シンクロンを破壊することはどうあっても出来ない。

 しかしだからこそ、覇王はフォーミュラ・シンクロンを攻撃対象に選ぶことはないだろう。モンスターの数に変動があったことによる攻撃の巻き戻しがあろうと、再びネオスを選ぶはずだ。

 そしてその予想は正しかった。

 

「それがどうした! マリシャス・デビルよ! 構わずネオスを攻撃しろ! 《エッジ・ストリーム》!」

 

 しかしこれもまた、通すわけにはいかない。

 

「墓地の《シールド・ウォリアー》を除外して効果発動! 俺のモンスターをこの戦闘による破壊から守る!」

 

 くず鉄のかかしに次いで、再びネオスの前に彼を守る存在が現れる。

 堅牢な盾を構えたその戦士にマリシャス・デビルの攻撃が直撃。それによってシールド・ウォリアーの姿は消えてしまうが、代わりにネオスは依然無事な姿でそこにある。

 仲間が協力して仲間を守る。その絆の前に、マリシャス・デビルは一度もその攻撃を成功させることなく十代のフィールドへと戻っていった。

 その十代の顔は、どことなく渋面になっているようだった。

 

「……カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 どうにかマリシャス・デビルの攻撃をしのぎ切り、生き残った。

 そしてフィールド上にネオスを残すことに成功し、そのうえレベル2のチューナーモンスターを出すことにも成功している。

 そして今、俺の手札にキーカードは揃いつつある。だが、あと一枚。あと一枚が足りない。

 このターンにそのカードを引かなければ、次のターンではヘル・ゲイナーが戻り、そして恐らくは十代も攻勢に出てくることだろう。

 俺はデッキトップのカードに指を乗せた。その指に、知らず力がこもる。

 だがそれは、決して恐怖から力が入ったのではない。そして、勝利しなければという気負いがあるわけでもなかった。

 何故ならそんな必要はない。デッキとの絆、仲間との誓い。その積み重ねてきた想いが、俺に教えてくれている。

 きっと応えてくれると。俺の、皆の、十代を助けたいという想いに。カードたちは必ず応えてくれるのだと。

 そして俺もまたそんなカードの想いに応えるために、思わず力がこもるのだ。

 

「――俺のッ……タァアアアンッ!!」

 

 デッキからカードを引く。

 そして引いたカードを挟んだ指を少しずつ傾けていき、その表面が視界に映りこんだ時。

 俺の口元には自然と笑みが浮かんでいた。

 そしてそのカードを手札に加えると、俺はデュエルディスクの墓地ゾーンに視線を落とした。

 

「墓地の《アマリリース》の効果発動! 1ターンに1度、墓地のこのカードを除外することで、モンスターの召喚に必要なリリースを1体減らすことができる!」

 

 このデュエルの途中、調律の効果により墓地に送られていたこのカード。レベル1の植物族モンスター、アマリリース。その低いレベルもさることながら、その効果は俺のデッキにとって大きな助けとなる。

 手札から一枚を選び取る。それは、レベル6の上級モンスターである。

 

「出番だぜ、相棒! 《ブラック・マジシャン・ガール》!」

「うん!」

 

 隣に浮かんでいたマナが一瞬姿を消し、そして次の瞬間には俺のフィールド上にてフォーミュラ・シンクロンの隣に並んでいた。

 

 

《ブラック・マジシャン・ガール》 ATK/2000 DEF/1700

 

 

 その攻撃力は2000と決して高くはなく、この状況ではマナ個人として活躍させてやることは出来ない。だが、レベル6であるということは思いのほか応用が利くものなのだ。

 最上級ではなく、上級である。その利点が如実に表れるシステムこそが、シンクロ召喚だ。

 そしてマナもそのことを理解しているのだろう。俺が視線を向ければ、ただマナは頷いて応える。

 俺もそれに首肯を返すと、マナはふっと笑った。そして、こう口にする。

 

『いこう、遠也!』

「ああ! ――レベル6ブラック・マジシャン・ガールに、レベル2フォーミュラ・シンクロンをチューニング!」

 

 フォーミュラ・シンクロンが飛び上がって光の輪と化し、その中心を同じく空へとその身を飛ばしたマナが潜り抜けていく。

 二つの輪に六つの星。それらが重なり合う幻想的な光景の下、俺の手には一枚のカードが握られていた。

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ!」

 

 目を灼くほどの閃光。その中から白銀の翼をはためかせて、星屑の名を与えられたドラゴンが光を纏ったまま上空へと駆け上がっていく。

 

「シンクロ召喚! 飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》ッ!」

 

 天空にて身を翻したスターダストは翼を体ごと一気に広げ、それによって散らされた光が星の雨のように地上へと舞い降りる。

 甲高い咆哮が轟き、スターダストは星雨の中を滑りながら俺のフィールド上へと戻ってくる。ネオスの隣に並び立ち、スターダストはもう一度高く嘶いた。

 

 

《スターダスト・ドラゴン》 ATK/2500 DEF/2000

 

 

 E・HERO ネオスと、スターダスト・ドラゴン。俺のフィールドに揃った二体のモンスターに目を向けて、しかし十代の表情に変化はない。

 

「今更スターダストを出したところで、何になる」

 

 それがどうしたと十代は言う。

 確かに、二体の攻撃力はともに2500。マリシャス・デビルには届かない。とてもではないが、十代にダメージを与えることなど出来ないだろう。

 だが、それはネオスとスターダストを単体として見た強さだ。人間がそうであるように、モンスターだってそのカード一枚でその真価を判断することは出来ない。

 どんなカードにも、必要とされる力がある。そして必要とする限り、カードは俺たちの声に応えてくれる。

 

「十代……見せてやる」

 

 それは、俺だけじゃない。十代もまた知っていて、何より実践してきたことだ。

 誰もがそのことを信じて、自分だけのデッキを組みあげるのだから。

 

「これが……!」

 

 二年前のことを思い出す。

 一年生の時、まだ十代と出会って間もない頃。レッド寮の十代の部屋で、俺は十代に二枚のHEROを渡し、そして十代からは一枚のカードをもらった。

 その時に交わした言葉を。

 

「これが、俺たちの絆だ!」

 

 

 

 ――なぁ、遠也。やっぱりそのカードだけじゃ釣り合わないって。だって、誰だって持ってるカードだぜ、それ。やっぱり他のカードを……。

 ――いや、俺はこれがいい。だってこれは、お前を象徴するカードだからな。

 

 

 あのとき十代は俺の言葉に、なんだよそれと首を傾げていた。けれど、これは紛れもなく十代を象徴するカードだと俺は思う。

 たとえ誰もが持っているカードでも。たとえ金銭的な価値がないカードでも。このカードの力を誰よりも引き出した男は、きっと十代だ。

 だからこそ、俺はこのカードを選んだ。遊城十代を語るうえで決して欠かすことが出来ないこのカードを、使用する本人から受け取る。そのことがなんだか嬉しいような可笑しいような、そんな気分になって笑っていたあの日のことを、思い出す。

 

「手札から魔法カード発動!」

 

 そして、あの時十代から受け取ったこのカードこそが、十代を取り戻すための――このデュエルの、真の切り札となる!

 

「――《融合》! 手札またはフィールド上から融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する!」

 

 俺がかざしたカードとそのカード名。それを確認したことにより、ざわりと背後の空気が揺れた。

 

「融合だと!? 遠也が!?」

「シンクロ召喚以外の、遠也の切り札が《融合》……!」

 

 オブライエンとジムの声が聞こえた直後、俺のフィールド上空に現れる渦巻き状の空間。二体のモンスターの力を一つに合わせる特殊な空間へと誘うその光景を前に、十代が一歩後ずさった。

 視線の先には、目を大きく見開いて俺のフィールドを見つめる十代の姿。

 これまでにないほど大きな動揺を見せる十代に、ジムたちは驚きを隠せないようだ。だが、俺はそんな十代の状態を静かに受け止めて、ただその姿を見ていた。

 

「……――ッ、まさか……! その、カードは……!」

 

 ようやく絞り出したとばかりに幾分掠れた声。問いかけつつも、どこか確信を感じさせるその言葉に、俺はただ頷いた。

 

「そうだ! これは一年生の時、お前と交換したカード! 俺はエアーマンとアブソルートZeroをお前に渡し、俺はお前からこのカードをもらった!」

 

 元々俺は《ミラクルシンクロフュージョン》を持ってはいても、単なる《融合》は持っていなかった。互いに持っていないカードだったのだから、互いに無いものを補い合うトレードの本質に則れば等価といえる。

 《融合》。恐らくは遊戯王史上最もこのカードを使いこなした男、遊城十代。しかしこのカード自体は一般に溢れ、子供でさえも持っている一山幾らのカードでしかない。

 だがそれでも、俺にとってこのカードは特別だった。十代という男と切っても切り離せない関係にあるこのカードが、特別でないわけがない。

 そう考えて十代からもらうカードにこのカードを指定した二年前。大切に持っていたこのカードを今、こうして使うことになるとは思ってもみなかったが……。

 だが、使うならば今を除いて他にない。俺と十代の思い出、互いのカードを渡し合った日の友情。そうして積み上げてきた想いが全て詰まったこのカードの、今がその力を発揮する時だ。

 

「俺はフィールド上の戦士族モンスター《E・HERO ネオス》と! ドラゴン族のシンクロモンスター《スターダスト・ドラゴン》を融合!」

 

 二体が共に頷き合って飛び上がり、頭上に展開された渦の中へと飛び込んでいく。

 融合素材の指定は、ドラゴン族のシンクロモンスターと、戦士族モンスター。この素材で特殊召喚されるモンスターは一体のみ。

 二体を呑みこんだ渦がぼうっと光る。直後、渦の中心から光が溢れた。

 

「――集いし二つの魂よ! 今ここに友を救う力となって現れろ!」

 

 光の中心で徐々に重なり合って生まれる一体のモンスター。二体が一つになったその姿が、いよいよ明らかになるその時。

 そのモンスターは手に持つ巨大な槍を一振りし、満ちる光を切り裂いた。

 

「融合召喚! 絆の勇者――《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!」

 

 手に持った巨大な突撃槍を提げ、人型ではあるが竜の面影を残した竜人とでも呼ぶべき姿のモンスター。その身は青く清廉な鎧に包まれ、金で縁取られたそれが光を反射して輝きを放つ。

 銀の兜から生える暖色の角と、背で広がる翼。そして自在に動く尻尾が竜として強く表れている要素だろう。

 ドラゴエクィテスはその尻尾で地面を叩くと、一層高く飛び上がる。そして地面に向かって下げていた腕を上げて突撃槍を肩に担ぐと、首を小さく回して十代と視線を合わせた。

 

 

《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》 ATK/3200 DEF/2000

 

 

「これこそが、俺とお前の友情の証! 俺たちの絆が紡ぎだした答えだ! ――十代!」

 

 その俺の言葉に合わせて、ドラゴエクィテスが肩に担いだ槍でトントンと軽く肩を叩く。そうして佇むドラゴエクィテスに、十代はらしくもなく怯んだようだった。

 だが、それも無理からぬことだろう。このモンスターは、ネオスとスターダスト。十代のエースと、俺のエース。この二体を素材に《融合》した存在だ。

 今の十代はジムが言うように俺が現れたからか、あるいは他の要因によって幾らか情緒が安定していない節がある。最初は垣間見える程度だった感情も、今ではかなり表出していた。

 ジムとオブライエン、マナ。三人によるデュエル。そして俺とのデュエルや、ネオスやあの融合を用いてドラゴエクィテスを召喚したこと。

 それらが積み重なり、ついに覇王が作り出した十代の心へと繋がる壁が崩れようとしているのだ。

 それを確信して拳に力を込めた俺の前で、十代は声を荒げて先程までの自身にはなかった変調を振り払うように腕を横に振った。

 

「だが……それがどうした! ドラゴエクィテスの攻撃力は3200! マリシャス・デビルには届かない!」

「いいや、届かせる! 十代、お前と俺の力を合わせたカードの力で!」

 

 俺は手札のカードに指をかけ、そのカードをすかさず発動させた。

 

「装備魔法《シンクロ・ヒーロー》を発動し、ドラゴエクィテスに装備! 装備モンスターのレベルを1つ上げ、攻撃力を500ポイントアップする!」

 

 

《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》 Level/10→11 ATK/3200→3700

 

 

 槍を担いで佇んだ状態のまま、ドラゴエクィテスを光が包んでその攻撃力を上昇させていく。

 シンクロとHERO。二つの要素を合わせたようなこのカードの効果により、ドラゴエクィテスの攻撃力は3700となり、ついにマリシャス・デビルを上回った。

 

「く……!」

 

 十代が呻く。これでマリシャス・デビルが倒されることはほぼ確定したからだろう。

 だが、まだだ。これではマリシャス・デビルを倒すことが出来ても十代を……覇王を倒すことは出来ない。

 だからこそ、ここだ。ここでドラゴエクィテスの力を……いや、墓地に眠る仲間の力を貸してもらう!

 

「波動竜騎士 ドラゴエクィテスの効果発動! 1ターンに1度、墓地のドラゴン族シンクロモンスターを除外することで、そのモンスターの同名カードとして扱い、同じ効果を得る!」

「なに……!?」

「俺は墓地の《シューティング・スター・ドラゴン》を除外する! そしてシューティング・スター・ドラゴンの効果! デッキの上から5枚のカードを確認し、その中に存在するチューナーの数だけ攻撃することができる!」

 

 効果の発動を宣言し、俺はデッキトップから五枚のカードを抜き取る。

 そのカードは、《エフェクト・ヴェーラー》《戦士の生還》《ライトロード・ハンター ライコウ》《ドッペル・ウォリアー》《ターボ・シンクロン》の計五枚。

 

「この中にチューナーモンスターは、エフェクト・ヴェーラーとターボ・シンクロンの2枚! よってドラゴエクィテスはこのターン、2回の攻撃を行うことが出来る!」

 

 ドラゴエクィテスが担いでいた槍を降ろし、その穂先を十代へ突きつけ、その位置で固定する。

 そして背中の翼が限界まで広がり、その姿勢は徐々に前傾へと移ろいでいった。

 

「ネオスの心、スターダストの力、そして――皆の想いを込めた一撃だ!」

 

 ジムとオブライエンに振り向き、次いで精霊状態となって俺の側に戻ってきたマナに目を向け、そして墓地へと送られていったモンスターたちと、十代の闇に染められたE・HEROやネオスペーシアンたちを思い浮かべる。

 そして、この異世界で失われてしまった仲間たち。彼ら全員の想いを乗せて、今この一撃が十代へと届く。

 全てを貫く槍は、必ず十代の心の前に立ち塞がる壁をも粉砕する。

 決意を込めて、俺はその手をフィールドに向けて突き出した。

 

「バトルッ! 波動竜騎士 ドラゴエクィテスでマリシャス・デビルを攻撃! 《スパイラル・ジャベリン》!」

 

 自身の身長ほどもある巨大な槍を片手で軽々と回転させ、ドラゴエクィテスは振りかぶってその槍を一思いに投擲した。

 その速度は尋常ではなく、まるでレーザー光線のように突き進む。回避する暇など与えることもなく、マリシャス・デビルは槍に貫かれてその身を散らせることとなった。

 

「ぐ、ぅうッ……!」

 

 

覇王 LP:1000→800

 

 

 破壊による爆風の余波が十代を襲う。しかしそんな中にありながらも、十代はその手をフィールドに向け、それによって伏せられていたカードが発動された。

 

「ッだがこの瞬間、罠発動ッ! 《ダメージ・インタレスト》! 受けた戦闘ダメージの倍のダメージをお前に与える!」

 

 ダメージ・インタレストのカードから赤い雷が空間を奔り向かってくる。

 十代に与えたダメージは200ポイント。その倍ということは、400ポイントのダメージ。

 通常であれば大したことのないダメージだが、俺の残りライフは僅かに100。400ポイントであろうと十分に致命的だ。

 

『――遠也っ!』

 

 不安げに俺の名を呼ぶマナに、俺は小さく笑んで応える。

 そして、ドラゴエクィテスに向けて俺は手をかざした。

 

「俺たちの絆は、決して揺らぐことはない! ドラゴエクィテス第二の効果!」

 

 俺自身へと向かって来た赤い雷は、唐突に進路を変える。そしてその矛先は俺ではなく、ドラゴエクィテスへと向かっていた。

 

「相手による俺自身への効果ダメージが発生した時に発動! そのダメージを俺は受けず、代わりに十代――お前がそのダメージを受ける!」

「な、なんだと……ッ」

 

 十代の手札はなく、モンスターもいない。そして伏せカードは今発動させたダメージ・インタレストの一枚のみ。

 今の罠は真実起死回生の一手だったのだろう。

 だがそれも、ドラゴエクィテスによって生み出された波動の壁によって阻まれ、俺に届くことはなかった。

 

「――《ウェーブ・フォース》!」

 

 ドラゴエクィテスの眼前にて差し止められていた雷が、反転して十代へと向かう。

 

「ぐ、ぁああッ……!」

 

 

覇王 LP:800→400

 

 

 赤い雷は十代へと直撃し、そのライフを更に削り取った。

 連続しての衝撃に覇王十代も耐えきることは出来なかったのか、鎧の金属が擦れる音を響かせつつ、十代は膝をついた。

 

「……こんなことが……」

 

 信じられないとばかりに呟かれた言葉。それに俺は答える術を持たず、ただ最後の指示を下すべくその手を高く掲げるのみだった。

 

「ドラゴエクィテス!」

 

 呼びかけに応え、再び槍を構えるドラゴエクィテス。

 その姿を膝をついた状態で見上げながら、十代の口からは懺悔のような言葉が零れていく。

 

「……俺は……皆を守る……強さを……」

 

 ひょっとしたら、方法が間違っていただけで、覇王の皆を守りたいという想いは本物だったのかもしれない。

 圧倒的な力で他を押し付ければ、敵がいなくなることで皆を守ることが出来る。それこそが覇王の方法論であり、それだけが本当に行動理由だったのだとしたら。

 十代が願った皆を守る強さ。それを、覇王は叶えようとしていただけなのかもしれない。

 だが、それでも。その行為によって傷つき、泣いた人が大勢いる。ならば、俺はそれを止める他ない。

 一度目を伏せる。そして、迷いを振り切り、瞼を開けた。

 

「――今は倒れろ……覇王!」

 

 だから、せめて全力で、お前の強さに敬意を表する。

 そう決断すると、俺は高く掲げた手を一気に振り下ろした。

 

「波動竜騎士 ドラゴエクィテスで、プレイヤーへダイレクトアタック! ――《スパイラル・ジャベリン》ッ!!」

「……――ッ!!」

 

 高速で解き放たれた突撃槍が十代自身へと向かい、その絶大な威力による衝撃が十代の体を吹き飛ばした。

 

 

覇王 LP:400→0

 

 

 ライフがゼロを刻み、そして地面に叩きつけられたことで兜が外れ、大きな音を立てて地面を転がる。

 砂煙が巻き起こり、十代の体を覆い隠していく。デュエルが終了したことで消えていくドラゴエクィテスの向こうで倒れ伏す十代に向かって俺は駆け出し、マナもまた実体化してそれに続いた。

 

「十代!」

「十代くん!」

 

 二人で大きく呼びかけるも、反応はない。

 砂煙を払いつつ駆けよれば、そこにはうつ伏せに倒れる十代の姿があった。黒い鎧は土に汚れ、兜は離れたところにぽつんと残されている。

 俺は十代の体を仰向けに変えると、抱き起こした。兜がなくなり顔の全体が露わになったせいか、なんだか久しぶりに感じる十代の顔。「十代」ともう一度呼びかけるが、十代はやはり目を覚まさなかった。

 しかし体が消滅することもなく呼吸をしていることから考えて、どうやらデュエルで負けたものの生きているようだった。俺は隣で同じく気を揉んでいたマナと顔を見合わせ、お互い同時にほっと一息つく。

 もしかしたらエンシェント・フェアリーやセイヴァー・スターといったドラゴンたちの力を貸してもらうことになるかもしれないと思っていたが、見た限り大きな影響はないようで一安心だった。

 もしかしたら、直前までデュエルをしていたジムが持つオリハルコンの眼の力か。あるいは覇王にも自我があったとするなら、十代の中には二つの心があったことになる。そしてデュエルで消滅したのが十代のほうではなく、覇王のほうだったというだけなのか。

 真実はわからないが、とりあえず。

 今はただ、友がこうして生きていてくれることを喜ぼう。そう思った。

 

「遠也、十代は!?」

「無事なのか!?」

 

 そして俺と同じく走り寄ってきたジムとオブライエン。心配の念が強く見える二人に、俺は腕の中で眠る十代の顔が見えるように体をずらした。

 

「よく寝てるよ。まぁ、色々あっただろうからな……」

 

 俺の言葉に二人は十代に顔を寄せ、その胸が上下していることを確認すると、あからさまに安堵して大きく息を吐き出した。

 

「……ったく、言葉が見つからないぜ」

「ああ。だが……良かった」

 

 二人はそう言って小さく笑うと、座り込む。

 俺もまた同じく小さく笑い、そんな二人を見ていると、不意にマナが俺の肩を叩いた。

 

「遠也」

「ああ、わかってる」

 

 俺はマナが何を言いたいのかを即座に察すると、十代が纏っていた鎧を手早く剥ぎ取っていく。その下から出てくる見慣れたオシリスレッドの制服に身を包んだ十代。その体を背中に背負い、俺は立ち上がった。

 

「じゃあ、行こうか二人とも」

 

 しかし俺の言葉に、ジムとオブライエンは一瞬呆けるだけだった。

 だがさすがというべきか、オブライエンはすぐに俺の言葉の意味に気付き、ハッとして立ち上がった。

 

「そうだな。ここは敵地だ。ボスである覇王が倒れたとはいえ、安穏とできる場所ではない」

「……I see。そういうことなら、すぐに出発しよう」

 

 俺たちの意図を知ったジムもまた立ち上がり、オブライエンと共にデュエルをする際に放っておいた手荷物を取りに行く。

 一方、俺は少し遠くに転がっていっていた兜を回収していた。

 

「……何をやってるんだ、遠也?」

 

 荷物を手に戻ってきたジムが、俺が兜を拾っているのを見て疑問を口にする。

 俺はそれに、兜を軽くコンコンと叩きながら答えた。

 

「いや、これからすぐにここを離れるわけだけどさ」

 

 言いつつ、兜を顔の前に掲げた。

 

「……“覇王討たれる”ってのだけは、知らせとかないとな」

 

 土に塗れた、覇王しか纏う者がいなかった鎧の一部。覇王による恐怖の支配の終わりを告げるには十分な説得力を持ったそれを手に、俺たちはこの場を離れるべく動き出した。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 そして、翌日。

 明けなかった夜が終わり、白んでいく空の下。この世界の各地から喜びの声が上がった。

 “覇王軍崩壊”の報が流れだした、直後のことである――。

 

 

 

 

 




覇王編終了です。
「覇王」から「覇王Ⅴ」までだけで10万文字超えてて変な声出ました。
それだけ覇王が強く、大きな存在だったという事ですね。

交換したカードとかいうめちゃくちゃ前の伏線もようやく回収し、エクィテスも活躍させられたので満足です。

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