遊戯王GXへ、現実より   作:葦束良日

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2:二年生
第32話 進級


 

『遠也。貴様に用がある。本社に来い』

「は? ちょっと海馬さ――」

 

 ガチャン。ツーツー。

 ……マジかよ。言いたいことだけ言って切ったよあの人。まぁ、らしいっちゃらしいが。

 っていうか、それより。

 

「どうしたの、遠也?」

 

 夏らしい薄着の私服を纏い、大きめのバッグを足元に置いたマナが電話機の前で立ち尽くす俺に近寄ってくる。

 そのマナの顔を見て、その後俺は視線を足元のバッグに移す。

 そして溜め息をこぼして、今の電話の内容を口にした。

 

「……海馬さんから。用があるから、本社に来いってさ」

「え……今から?」

「今からだろ、海馬さんだし」

 

 俺が諦めたような声で言うと、マナは驚きに染めた表情のまま更に言葉を続ける。

 

「でも……新学期はもうすぐだよ?」

「ああ、そうだな」

 

 それはつまり、出来るだけ早く定期便に乗らなければ始業式ギリギリになってしまうことを示す。いや、悪ければ間に合わないかもしれない。

 そうならないために、少し早めに寮に戻ろうとバッグに荷物を詰めて準備をしたというのに、それが無駄になる宣告を受けたのだ。

 海馬さんからの要請とあっては、断ることもできない。恩があるというだけでなく、そもそもアカデミアで最も偉い人はオーナーである海馬さんだ。その人からの勅命に、一生徒である俺が逆らえるはずもない。

 もう一度溜め息をつき、俺は自分に言い聞かせるように言う。

 

「……もし間に合わなかったら、公欠扱いにしてもらえるように直訴しよう」

 

 それぐらいなら、オーナー権限でやってくれてもいいはずだ。

 そんな願望を抱きつつ、俺たちはせっかく纏めた荷物を家に置いたまま、家を出る羽目になるのだった。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 海馬さんの用事とは、極秘に開発しているエクシーズ召喚に関してのものだった。

 ペガサスさん率いるI2社は先日、いずれという前置きがあるもののエクシーズ召喚を導入するとKC社にのみ明かしたため、デュエルディスクを取り扱うKC社は連動してエクシーズ召喚用のソリッドビジョンとそのシステムを作り出さなければならなくなった。

 それを受けて、海馬さんは実際にエクシーズ召喚を唯一知っている俺から、どんなエフェクトで召喚を表現するのがいいのか意見を聞きたかったようだ。

 また、それにあわせてネットワークから外された1個のデュエルディスクで試験的にそれを再現。CG自体はそれほど時間をかけずに作れたため、そのデータをデュエルディスクに引っ張るのも簡単だったようだ。

 これがネットワークを通じて全世界のデュエルディスクを対象に、となると色々とややこしいのだろうが、今回は独立したデュエルディスクだけであるため、手軽に試験導入が出来るらしい。

 そのため、データが出来たらそのディスクにインストール。試験プレイ。細かい点を修正。再度インストール。試験プレイ。修正。インストール……ということをひたすら繰り返し続けた。

 新学期まで時間がないため、俺も一生懸命手伝った。その甲斐あって、α版が完成。更に数日後にβ版も形になり、海馬さんの口からOKが出たのだった。

 新しい召喚法でありながらここまで時間を短縮できたのは、シンクロ召喚のエフェクトを仕込む際に他の新召喚法が出来た時のため用に簡単なプログラムを組んでいたかららしい。

 それに則ってシステムを弄り、あとはグラフィックなどが問題だっただけのようだ。それでも相当に時間はかかるだろうに……。さすがはKC社、仕事も一流である。

 あ、そうそう。余談だが、新学期は既に始まっている。がっくし。

 

「……ふぅん、とりあえずはこんなものか。ご苦労だったな」

 

 いつの間に来ていたのか、海馬さんはそう言ってその場にいたスタッフたちを労う。俺もようやく終わったと安堵の息と共に思わず身体から力が抜けた。

 ここのところ、ずっとKC社にいたからなぁ。

 

「遠也」

「……はい?」

 

 しみじみとここ数日の生活を思い返していると、海馬さんが目の前に立っていた。

 そしてぽいっと俺に向けて何かを放った。

 

「うわっ、とと」

 

 慌てて落とさないように抱えると、それはこの時代の標準的なディスクとは異なる形状のデュエルディスク。要するに、俺のデュエルディスクだった。

 

「一応、今完成したβ版のエクシーズ召喚のデータは入れておいた。報酬だと思っておけ」

「あはは、どうも……」

 

 先んじて新システムのデータが搭載されていることが報酬ですか。まぁ、これは企業機密的にかなり凄いことなのだろうが、俺としてはどうにもありがたさを感じづらかった。

 

「それと、貴様の口座にここ数日分の給与は振り込んである。ついでだ、これも渡しておこう」

 

 言うと、海馬さんは一枚の紙を俺に寄越した。

 見ると、それは俺の欠席が仕方のないものであったことを証明するKC社お墨付きの証明書だった。海馬さんがアカデミアのオーナーだからこそ可能な裏技である。

 新学期が始まってまだ数日とはいえ、それが公欠扱いになってくれるのは助かる。思わず胸を撫で下ろす俺だった。

 

「ありがとうございます。それじゃ海馬さん、お世話になりました」

「ふん、使えるからといって外部でエクシーズ召喚を使うことは許さんぞ」

「あはは、わかってますよ」

 

 まだシンクロ召喚が登場したばかりのご時世だ。ここで更にエクシーズ召喚まで人目についたら、大混乱になる。それぐらいは俺にもわかることだった。

 このβ版はあくまで、数年以上先に導入する際に不具合がないようにあらかじめテストをする為のものだ。ま、海馬さんの言うように報酬――いわゆる記念品と思っておけばいいだろう。

 

「わかっているならいい。――磯野」

「はい、ここに」

 

 海馬さんの呼びかけに、後ろに控えていた海馬さんお付きの人……磯野さんが恭しく頭を下げて一歩前に出た。

 

「ヘリを手配してやれ」

「かしこまりました」

「はい?」

 

 俺の疑問の声など気にもせず、すぐさま磯野さんは部屋から出ていく。その姿を唖然として見送る俺に、海馬さんが声をかけてきた。

 

「遠也」

 

 その声に、俺は海馬さんの顔を見る。そして、海馬さんは鼻を鳴らした後にくるりと踵を返した。

 

「……ふん、少しはマシなデュエリストの顔つきをするようになったか」

「へ?」

 

 それだけを言うと、海馬さんはそのまま振り返らずに部屋を出ていった。

 その後ろ姿をじっと見つめてから、俺は自分の腕に抱えられたデュエルディスクに目を落とす。

 

「マシなデュエリストの顔になった、か……」

 

 この世界ほどデュエルモンスターズが一般的ではない世界から来た俺。ゆえに根強く残っていたカードに対する“所詮は単なる遊び”という意識。

 それと同時にこの世界にまだ馴染み切れていない……あるいは受け入れ切れていなかった俺自身の心。

 それらに自分なりの答えを出したのは、ごく最近のことだった。それを海馬さんが知っているはずもないのに、しかし海馬さんは俺をデュエリストの顔になったと言った。

 ここ最近の俺の事情を知らないうえでのそれはつまり、海馬さんが素直に抱いた感想に他ならない。あの海馬さんから見て、俺は一人のデュエリストとして認めてもらえたのだ。

 

「やばい、嬉しい……」

 

 思わず、俺は頬が緩む。

 厳しく、デュエルに関しては一切の妥協を許さない海馬さんが、デュエリストとして俺を数えたのだ。それが、嬉しくないはずがなかった。

 

『ふふ、相変わらず、海馬くんは素直じゃないなぁ』

 

 そして、そんなふうに俺が感動する横で、マナが海馬さんの去った方を微笑ましげに見ていた。

 

 ――その後、俺はKC社が用意してくれたヘリに乗り込み、童実野町を出発した。家にあった荷物は、こちらから持ってきてほしいものを指定して運び込んでもらってある。恐縮だが、とても助かる。

 そういうわけで、俺は昨年のような海路ではなく空路によって、一路デュエルアカデミアを目指すのだった。

 

 

 

 

 そしてヘリに揺られること幾許か。

 特に問題も起こらずアカデミアに到着したので、ヘリは俺と荷物を下ろして再び飛び立っていった。

 きちんとお礼を言い、それに対してパイロットの人はぐっと親指を立てて応えてくれた。カッコいい。

 ……ともあれ、久しぶりのアカデミアだ。ここはこれを言わねばなるまいて。

 

「アカデミアよ! 私は――」

『それはもういいから。遠也、早速寮に荷物を置きに行こうよ』

「むぅ……まぁ、それもそうか」

 

 お約束のセリフを去年に続き景気よく叫ぼうとしたのだが、あえなくマナに止められる。

 少々不満だが、マナが言うことも尤もであるのは確かなので、俺は荷物を担いでヘリポートがある港からブルー寮の方へと向かう。

 ちなみにマナも実体化して自分の分の荷物は持っている。ある程度は既に送ってあるが、やはり持っていきたい物はいくらでもあるからな。

 そんなこんなで二人して寮までの道を歩いているわけだが……何かおかしい。

 違和感を感じつつブルー寮にたどり着く。そして中に入るが……やっぱりおかしかった。

 

「……あれ? 誰もいないね?」

「だな」

 

 授業中だからかとも思うが、それでも寮に一人もいないというのはおかしい。成績優秀であれば、ある程度単位にも融通が利くのがこの学園だ。自主休講で寮の中にいる生徒は必ず存在しているのだ。

 それが一人もいないというのは明らかにおかしい。

 

「……まぁ、いいや。それより荷物だけでも置いておかないと。原因はその後に探してみよう」

「そうだね」

 

 というわけで俺達はさっさと自室に向かい、そこに持ってきた荷物をどさりと下ろす。中身をある程度出して一息ついたところで、外から賑やかな声が聞こえてきた。

 なんだろうと思って窓から見下ろすと、そこにはブルー生が団体で寮に帰ってくる姿が見えた。単に仲良しグループというわけではないな。数十人が一斉に移動など、何かあったのは間違いなさそうだ。

 俺は窓を開けてベランダに出る。そしてそこから下を歩く面々に向かって声をかけた。

 

「おーい! 皆してどうしたんだ、何かあったのか?」

 

 すると、その声に気付いた数人が俺を見上げてきた。

 

「皆本、寮に戻ってたのか! 何かも何も、万丈目と中等部成績1位の奴とのデュエルがあったんだよ。なんでも万丈目のブルー復帰を賭けた勝負だったらしいぜ」

「そんなことがあったのか。それで、万丈目はブルーに戻ることになったのか?」

「いや。勝ったけど、辞退したみたいだぞ。レッドが余程気に入ったみたいだな」

「……へぇ、あの万丈目がね」

 

 まさかわざわざブルー昇格の話を蹴ってまでレッドに留まるとは。何か心境の変化でもあったのだろうか。

 万丈目も昔に比べれば、随分と丸くなったものだ。俺がそう思っていると、横からひょこっとマナが顔を出した。

 

「なになに? 万丈目くん?」

 

 知り合いの名前を聞いて、気になったのだろう。マナは顔を出すと階下に目を向けて万丈目の姿を捜しているようだった。

 

 無論、万丈目は話題になっただけでこの場にはいない。ゆえに、いくら下を見たってそこには驚愕の表情を浮かべるブルー生徒がいるだけだ。

 ……驚愕?

 

「なっ、ま、マナさん!? そこは皆本の自室……! いや待て、デュエルを見に来ていなかった……部屋にこもりきり……二人きりで……恋人同士……――まさか!?」

 

 はっとしたその男子生徒は、驚愕から一転、今度はだくだくと涙を流し始めた。思わず俺もマナもぎょっとする。

 

「わかっていても、わかっていても……! 二人がそういう関係だと再認識するのは、辛すぎる! うわぁぁああん!」

 

 そしてそのまま寮の中へと駆けこんでいく。それを呆然と見ていた俺たちだったが、階下の生徒たちはまた違った反応だった。

 

「ああっ、そういえばあいつは学園祭以降マナさんのファンだった……!」

「なのに二人の爛れた現場を見ることになるなんて残酷すぎる……!」

「っていうか、俺たちも普通に羨ましい!」

「それより早く慰めてやらないと!」

「ああ。こんな時こそ、俺秘蔵の品々が火を噴くぜ!」

 

 言って、ドタドタと寮の中へと駆けていく男子勢。

 それを見送った俺たちはと言えば、何とも言えない表情で顔を見合わせていた。

 そして、まずは俺が一言。

 

「……ここって、エリートの寮なんだよな?」

「そのはず、だけど……」

 

 問いに対し、自信なさげに答えるマナだった。

 ブルーは偉ぶってるだの、下を見下すだの他寮から色々言われるが……レッドとかイエローが絡まないあいつらって、本当に普通の高校生男子丸出しだ。

 ブルーに暮らし始め、最初こそ偉ぶった態度や嘲りが目に付いた俺だったが、一度受け入れられればこんなものである。

 とりあえず、今日はマナとそんな行為はしていないぞ。と、そんなことを心のうちで弁明しつつ、俺とマナは部屋の中に戻って開きっぱなしだった窓を閉めるのだった。

 

 

 

 

 

 翌日。

 部屋の整頓などに時間を費やした俺たちは、今日になってようやく授業に復帰と相成った。

 海馬さんからもらった証明書は驚くことにこちらで日にちを書き込むことが出来たため、昨日はまるまるサボった形だ。元々中途半端な時間に島に来ていたこともあったので、そこはまぁ気にしないようにしている。

 とにかく俺は証明書に日付を記入し、先生に提出しようと校内を歩く。KC社直々の証明書なので、一応校長に渡しておこうと校長室に向かった。

 ……だが、いざ校長室について入室すると、その中にいた人物に驚いた。

 

「クロノス先生?」

「にょ? ……あ、シニョーラ皆本! あなた! 遅刻も遅刻、大遅刻なノーネ! 新学期はとっくに始まっているノーネ!」

「す、すみません。今日はそのことを校長に話しに来たんですけど……」

 

 俺が頭を下げてからそう言うと、途端にクロノス先生は機嫌を直した。

 

「ふふふのふーん。なら早速そのお話とヤーラを、この私、クロノス・デ・メディチ校長にお話しするといいノーネ!」

「……はい?」

 

 自慢げに胸を張ってクロノス先生が言った言葉に、俺は疑問符を浮かべるしかなかった。

 クロノス先生は実技指導の最高責任者ではあるが、別に校長じゃないはずだけど。

 そんな風に今の発言について考えていると、クロノス先生の横……の下のほうから聞き慣れない声が耳に入ってきた。

 

「り・ん・じ・校長なのでアール。忘れてはダメなのでアール、クロノス臨時」

「ぐぐぐ、細かいことを気にしちゃいけないノーネ、ナポレオン教頭」

 

 クロノス先生がその指摘を受けて歯ぎしりをする。

 そして指摘した人物を見て、俺は内心で「ちっさ!」と叫んだ。頬肉が見事にたるんだぽっちゃりした男。妙に派手な貴族風の礼服に身を包んだナポレオン教頭の背は、俺の腹ほどまでしかなかったためだ。

 そんなナポレオン教頭は、クロノス先生に向けていた顔を今度はこちらに向け、威圧するようにじろりと睨んできた。……前述した背の関係で、あまり怖くはなかったが。

 

「まったく、オベリスクブルーの生徒ともあろう者が、遅刻とは……嘆かわしいのでアール。勉学に対する意欲に欠けていては、高貴なブルーの制服が泣くのでアール」

 

 やれやれ、とあからさまにこちらを見下す態度に、思わずムッとする。

 それは悪うござんしたね。

 

「ナポレオン教頭。シニョール皆本は真面目な生徒でスーノ。それに、デュエルでも実質この学園で一番の実力者なノーネ。あのカイザー丸藤亮に勝ち越しているほどなノーネ」

「なんと! それは凄いのでアール!」

 

 だが、クロノス先生の話を聞いて一転。見下す態度はこちらにおもねる態度に様変わりした。ニコニコと笑って手まですり合わせている。

 な、なんてわかりやすい人だ。ここまであからさまだと、怒るより先に呆れが来る。まぁ、あれだ。ここは、一昔前のクロノス先生を相手にしていると思うことにしよう、うん。

 それよりもとりあえず、用事を済ませてしまいたい。そう判断した俺は、懐から取り出した紙をクロノス先生に手渡した。

 

「先生、これで一応公欠扱いにしてもらえるはずですけど……」

「どれどーれ? ……な、なな、KC社が発行した遅延証明書でスッテ!? しかも海馬社長直々のサインまであるノーネ!」

「ほ、ホントでアールか!?」

 

 クロノス先生の手元を、椅子によじ登って覗き込むナポレオン教頭。そしてその文面を確認し、クロノス先生同様に驚きの声を上げた。

 さすが海馬さん。海馬さんの名前一つでここまで大きな反応が返ってくると、改めてその存在の凄さが確認できるな。

 俺はそんなことを思いつつ、言葉を続けた。

 

「ちょっと、KC社の方でお手伝いをしていまして。今日から授業には参加しますので、勘弁してください」

「むむ……証明書は本物なノーネ。オーナーの許可があるならこちらに否はないノーネ。ここ数日の欠席は公欠としまスーノ。シニョーラマナと一緒に、授業に戻りなサーイ」

「ありがとうございます、クロノス先生。……えーっと、あー、ナポレオン教頭も。それじゃ、失礼します」

 

 俺は頭を下げて踵を返す。

 その後、背後から小声で。

 

「……いま明らかに我輩の名前を忘れていたのでアール」

「やはーり、校長と教頭の差なノーネ」

「臨時、を忘れちゃダメなのでアール」

「細かいことを気にしているとハゲるノーネ。あ、もう遅かったノーネ」

「うるさいのでアール!」

 

 と、そんな言い合いがされていたが、俺はこの時点で校長室を出たため、その後にどんな会話が続いたのかは知らない。

 ともあれ、どうやら鮫島校長はいま学園にいないらしいな。じゃなければ、臨時なんてものを置いておくはずがない。どこに何をしに行っているかは知らないが、あの二人を見ていると、早く戻ってきてほしいものだ。

 校長室からの帰り、思考しつつ歩いていると、突然俺の腕に重みが加わった。

 何かを思って見てみれば、そこには俺の腕を取って歩くマナの姿がある。無論制服姿で。

 一瞬で実体化し、そのうえ魔法か何かでパッと服装を取り換えたのだろう。もちろんアニメの変身シーンのように途中の裸が披露されるなんて単純ミスは存在しない。便利だな、魔法。

 

「で、急にどうした」

「んー、特に理由はないかな。……って、それより遠也」

「ん?」

 

 疑問を返した俺に、マナが小首を傾げて問いかける。

 

「十代くんたちには会わないの? 昨日も会ってないけど」

「あ」

 

 足を止め、思わず立ちすくむ。

 そういえば、昨日は片付けに時間を取られていたこともあって、すっかり忘れていたな。どうせいつでも会えるし、と思って結局今日もまだ顔を見せていない。

 少し考えた俺は、教室に向かおうとしていた足をレッド寮の方へと向けた。

 俺がこれから受けようとしていたのは選択科目であり、十代たちは取っていない講義だ。なら、みんなレッド寮にいるはず。

 というわけで、クロノス先生に言った言葉とは裏腹に早速サボることになった俺だった。ごめん、先生。

 

 

 

 

 さて。そういうわけでオシリスレッドの寮に向かった俺とマナだが、そこで驚くべき光景を見ることになった。

 レッド寮の前、そこで話し込んでいるのは馴染み深い仲間たち。十代、翔、明日香、万丈目、三沢、吹雪さん。

 

 そして……そこに混じって談笑している一人の小さな女の子。

 

 オベリスクブルーの青い制服に身を包んだその少女の姿を見た瞬間、俺とマナは顔を見合わせた後にダッシュ。

 そのまま皆の前まで疾走し、そして俺たちに気付いた皆が何かを言う前に口を開いた。

 

「レイ!? お前、なんでここにいるんだ!?」

「レイちゃん! 久しぶり!」

 

 おい、マナ。何を普通に挨拶しているよ。

 内心で突っ込む俺。そして、そんな二つの声に対して、レイはにこやかに笑った。

 

「えへへ、来ちゃった! 久しぶり、遠也さんとマナさん!」

「あ、ああ。いや、それより、なんでここに? 確かお前まだ11歳だったはずだろ?」

 

 少なくとも、今は小学6年生のはずだ。なのに、なぜこの場にいるのか。

 それに対して、レイは得意げな顔を見せる。

 

「大丈夫だよ、遠也さん。ちゃんと試験を受けて正式に入学したからね!」

「飛び級したそうよ。中等部にね」

 

 レイの言葉に明日香が付け足し、それを受けてレイが満面の笑みでブイサインを決める。

 

「もちろん、お父さんとお母さんも了承済みだよ! ……遠也さんの言葉をしっかり守って頑張った甲斐があったよ」

「俺の言葉?」

 

 どういうことだろうか。

 不思議に思って聞いてみると、曰くあのシンクロのイベント会場で俺が言った「好きなカードで勝てるように努力した方が楽しい」という言葉を実践し続け、ずっと自分のデッキが上手く戦うにはどうすればいいか試行錯誤しつつ勉強してきたらしい。

 その過程で様々なカードの効果などにも詳しくなり、結果としてデュエルアカデミアに入学するレベルの知識を得るに至ったということのようだ。

 ……まさか、あの一言がこんなところにまで影響を及ぼすとは。これがいわゆるバタフライ効果という奴か。

 予想外の再会とその原因に戦慄する俺。そんな棒立ちとなった俺に、レイは近づくといきなりお腹辺りに抱き着いてきた。

 おわっ、と声を上げる俺を、レイは笑みと共に見上げてくる。

 

「これで遠也さんと一緒にいられるよね! これからよろしくね、遠也さん!」

「お、おう」

「レイちゃん、レイちゃん。私は?」

 

 抱き着いているレイに、マナが自分を指さして尋ねる。

 レイはそんなマナに振り返ると、当然とばかりにこう答えた。

 

「もちろん、マナさんも一緒だよ! よろしくね、マナさん!」

 

 そして、今度はマナに抱き着くレイ。そしてそれを受け止めたマナは「こちらこそ!」と言って抱きしめ返している。

 ひしっと抱き合う二人は、容姿こそ似ていないが本当の姉妹のように仲良しである。

 それを横から見ていると、ぽんと肩に手を置かれた。その手の先をたどっていくと、そこにはにこやかに笑う吹雪さん。

 

「やれやれ、恋人を取られてしまったね遠也くん。どうだい、代わりに明日香なんてオススメだよ?」

「はい?」

「兄さんッ!」

 

 思わず上げた俺の声がかき消されるほどの大声で、明日香が吹雪さんを怒鳴りつける。

 そしてズンズンと近づいてきたかと思うと、そのまま吹雪さんの腕を取って俺の傍から引きはがしていく。

 その表情は明らかに怒りが見えているのだが、それでも吹雪さんの軽口は止まらない。

 

「なんだい、明日香。僕は恋の伝道師としての使命をだね……あ、それとも十代くんのほうが良かったかな?」

「~~~ッ! もう黙りなさい、兄さんッ!」

「了解、妹よ」

 

 さすがに今の明日香をさらに刺激するのはまずいと思ったのだろう。吹雪さんはそこでようやく軽口をやめた。

 明日香の奴、吹雪さんが行方不明だった時、それはそれで精神的にかなり負担になっていたんだろうけど……見つかったら見つかったで精神がダメージを受けることに変わりはなさそうだった。

 苦労しているなぁ、明日香。不機嫌そうに腕を組んで押し黙った明日香に、俺はついつい同情的な視線を送ってしまうのだった。

 と。

 

「えいっ」

「とりゃっ」

「のわっ!?」

 

 俺は唐突に後ろから両腕に加わった体重に、驚いて変な声を漏らす。

 見れば、そこには右腕にレイ。左腕にマナが掴まっていて、そのどちらもが作戦成功とばかりに意地の悪い笑みを浮かべていた。

 どううやら二人で協力して俺を驚かせようと言う魂胆だったらしい。だとしたら、大成功である。

 

「お前らなぁ……」

「ごめんね、遠也さん。会うの久しぶりだったから、つい」

 

 えへへ、と笑うレイは可愛い。確かに久しぶりに会ったのだ。兄貴分として、妹分のお茶目ぐらい広い心を持って許そうじゃないか。

 

「ごめんね、遠也。ちょっとレイちゃんに付き合って、つい」

 

 てへ、と笑うマナ。もちろん、俺が返す言葉など決まっている。

 

「許さん」

「なんで私だけ!?」

 

 驚愕に目を見開くマナだったが、俺はひとまずそれをスルーする。

 そして二人を腕に引っ付けたまま、十代と翔、万丈目と三沢の前へと移動した。

 

「よ、久しぶりだな皆」

 

 そんなふうに話しかけた俺に対する、皆の返答は以下の通りである。

 

「夏休みに遊びに来て以来だな、遠也! 待ってたぜ!

「ぐぎぎ……妬ましいっす……」

「ふん、てっきりもう来ないと思ったぞ」

「やれやれ。相変わらずだな、遠也。数日の遅刻には驚いたが」

 

 それぞれしっかり対応してくれたが、一人明らかにおかしい奴がいた。まぁ、気にしないようにしよう。恨めしげにハンカチを噛んで小さな眼鏡越しに覗く視線から目を逸らす。

 

「どうにか、これぐらいの誤差で済んで良かったよ。ちょっと用事があってな」

 

 ホント、これぐらいで済んで良かった。頑張ってくれたKC社の研究者の皆さん、ありがとう。

 

「そういえば、万丈目」

「なんだ」

「昨日、デュエルしたんだってな中等部あがりの奴と。ブルーに上がれたのにレッドに残るなんて、よほど気に入ったんだなここが」

 

 口ではなんだかんだ言いつつ、オシリスレッドに愛着を持っていたんじゃないか。

 そう微笑ましげに万丈目を見ると、万丈目は焦ったように迫ってきた。

 

「ち、違う! 俺はこんなボロ寮からおさらばしてブルーに上がりたかったんだ!」

「またまたぁ。わかってるぜ、万丈目。お前の気持ちは!」

「兄貴の言う通りっす。素直じゃないね、万丈目くん」

「人の話を聞け、貴様らー!」

 

 万丈目ががーっと叫ぶが、それに十代と翔は生温かい目を向けるだけだった。わかってるぜ、気恥ずかしくって本音を言えないだけなんだろ? 

 そう言外に語るその視線に、もはや何を言っても無駄だと悟ったのか、万丈目はがっくりと膝をつくのだった。

 そしてその様子を、俺と三沢が苦笑して見る。

 

「ところで、遠也。知っているか、十代があのエド・フェニックスと対戦したというのを」

「エド・フェニックス? ……ああ、確かプロデュエリストだっけ」

 

 カイザーの試合をチェックしている時に、そんな名前を見かけた気がする。それと、確かメインキャラクターの一人……だったような。

 俺が記憶を思い返していると、先の言葉に三沢が頷いていた。

 

「そうだ。そして十代は勝ったんだが……」

 

 歯切れが悪そうに三沢が口ごもる。

 何かあったのかと思うが、その先の言葉を三沢の口から聞くことはなかった。なぜなら、三沢の肩に手を置き、代わりに十代が俺の前に出てきたからだ。

 

「そっからは俺が言うぜ。まったく、まいっちまったよ」

 

 そんなふうに溜め息交じりの言葉から始まり、十代はその時の様子を俺に話して聞かせてくれるのだった。

 

 

 

 

「適当に買った8パックで作ったデッキ?」

「そうなんだよ。それで40枚のデッキ作って俺と戦ったんだぜ。なのに俺結構ピンチになっちゃってさぁ。ホント自信なくしそうだったぜ」

 

 その時のことを思い出しているのか、十代は悔しそうな顔をする。

 十代から聞いたエドの話はとんでもないものだった。確かにカードのパックは1パックに5枚入っているから、8パック買えばデッキの規定枚数には届く。

 だが、それは40枚になるというだけであって、決してデッキが完成したわけではない。

 デッキとは持ち主が試行錯誤を繰り返し、そのデッキのテーマに沿ったカードを膨大なカードの中から選びぬいて作り上げていくものだ。

 その行程を経ていないそれは、デッキではなくただの“40枚のカード”にすぎない。だというのに十代に喰らいつくとか……どんなテクニックしているんだ。いや、もしくはものすごいドロー力で必要なカードばかり入ったパックを当てた、とか?

 どっちにせよ、現実的じゃない出来事だってのは確かだ。なら、それを為したエド・フェニックスは、かなり凄い奴ということになる。

 そんな超絶技を披露されたのだ。十代が悔しそうにするのも分かる。自分が心血注いで組み上げたデッキが、そんな手抜きもいい所のデッキ相手に苦戦したら、そりゃ自信もなくなるってものだ。

 だが……。

 

「なるほどね。けど、お前のことだ。それよりもエド本来のデッキが気になって仕方ないってところだろ」

「あ、わかる? そうなんだよな、あれだけスゲぇことが出来るんだから、本来のデッキならもっとスゲぇに違いないぜ! 次はそのデッキとデュエルしたいよなぁ」

 

 若干興奮気味に、しかししみじみと話す十代に、隣の翔ががくっと肩を落とした。

 

「もう、兄貴。そこは普通、馬鹿にされたことに怒るところっすよ」

「まぁ、そうしないところが十代らしいじゃないか」

 

 不満げな翔を、三沢が苦笑して宥める。

 まぁ、三沢の言う通りだ。こういう奴だからこそ、これだけ皆が慕って集まってくるのだろう。裏がない真っ直ぐな性格は、間違いなく十代の長所だ。

 

「しかし、エド・フェニックスか。これまたクセの強い奴が入ってきたもんだな」

「ああ。けど、ライバルが増えるのは大歓迎だぜ!」

 

 俺の言葉に、十代が好戦的な笑みを浮かべて言う。

 だが、それには同意である。強い相手が身近に増えるというのは、デュエリストとしては歓迎すべき事柄だ。うんうんと頷きを返していると、隣にいたレイがこっそりとマナの下へと移動していた。

 そして「遠也さんと十代さんって……」と煮え切らない問いを発し、マナが「うん、二人ともかなりのデュエル馬鹿かな。いい意味でね」と答えていた。

 いい意味での馬鹿ってなんだ。マナには後で話をしなければなるまい。

 

「ふん、エド・フェニックスなどおそるるに足らん! 貴様らを倒すのはこの万丈目サンダーだということを忘れるな!」

 

 その時、耐えかねたとばかりに突然ぐっと拳を握りこみ、胸を張って宣言する万丈目。

 その自信に満ちた姿に、十代と俺は当然とばかりに口の端を上げて笑う。

 

「それはこっちの台詞だぜ万丈目! そうだな、エドの前にお前がいるぜ!」

「カイザーがいなくなった以上、この学園で一番のライバルは十代とお前だからな。そう簡単には倒させてやらないぞ」

「ふん! この俺を舐めるなよ、十代、遠也!」

『兄貴、カッコいい~ん』

 

 万丈目の肩でおジャマ・イエローが煽っている。

 堂々とライバル宣言を行った万丈目の姿は、確かにカッコいいものだった。だからこそ、俺たちもそれに応えなければなるまい。万丈目のライバルとして、全力でこいつの前に立ち塞がってやる。

 それでこそ、ライバルというものだろう。

 

「よっしゃあ、燃えてきたぜ! 万丈目、早速デュエルだ! 白黒はっきりつけようぜ!」

「望むところだ、十代! 吠え面をかく準備をするがいい!」

 

 二人はそんなことを最後に言い合うと、ドタドタと自室にデュエルディスクを取りに行った。流れ的に俺も参加したかったが……いかんせんブルー寮は遠く、俺のディスクを取りに行く時間がない。

 三人同時のデュエルとなると色々と複雑化するし……今回は観戦側に回るとしますかね。

 そんな風に俺だけその場に留まっていると、三沢が怪訝な顔をして近づいてきた。

 

「遠也。お前はデュエルしないのか?」

「ディスクはブルー寮に置きっぱなしだし、三人だとルールとか面倒になるだろ。今回は大人しく見ているさ」

 

 そう言うと、三沢は納得したように頷いた。

 

「なるほど。だが、遠也。お前と十代をライバルと思っているのは俺も同じだ。あの二人にばかり目を向けて、足をすくわれても知らないぞ」

 

 冷静な三沢にしては珍しく挑発するようなその言葉に、俺は少々驚きつつも小さく笑う。

 

「返り討ちにしてやるさ」

「僕も忘れてもらっちゃ困るっす、遠也くん!」

「おうとも。なら、あとでデュエルするか」

 

 そんな俺の言葉に、三沢と翔はにっと笑って「望むところだ」と返してくる。十代、万丈目、三沢、翔。全員同学年であり、だからこそ互いを意識し合っている俺たちは、まさに好敵手と呼ぶにふさわしい間柄だ。

 こうして友人と思う存分デュエルできるというところが、アカデミアのいいところである。本土での生活もよかったが、やはり友人とこういうやり取りをすると、帰ってきたんだなぁと実感する。

 すっかりアカデミアでの生活が骨身に染みついていることに苦笑しつつ、俺は二人とのデュエルに思いを馳せる。とはいえ、まずはディスクを持って戻ってきた二人に注目か。

 互いにそれを左腕に装着し、構えあう姿。果たしてどんなデュエルになるのか、心を躍らせつつ俺はそんな二人を見据えるのだった。

 

 

 

 

 そして、そんな遠也たちを少し離れて見ているのは、レイ、マナ、明日香、吹雪の四人である。

 

「えっと……熱いんだね皆」

「デュエルが好きなだけじゃなくて、対抗意識もあるんだろうねー」

「男同士だからってことかしら?」

 

 明日香の言葉に、マナがそうそうと頷く。

 それを受けて、レイが再び口を開いた。

 

「はー、男の友情ってやつですかぁ」

 

 なんかいいなぁ、そういうの。更にそう続けられるが、マナと明日香は曖昧に笑うだけで同意はしなかった。

 そしてそれらを受けて、吹雪がうんうんと頷いて満足げに笑った。

 

「青春、青春だねぇ。恋のみならず友情もまた青春の醍醐味だよ」

「兄さんだって、たまには青春を満喫したら?」

「僕はいいんだよ。それより妹の恋愛の行く末がどうなるのかの方が気になるからね。ところで明日香、本命は遠也くんと十代くんのどっちなんだい?」

「ええ!? 明日香さん、それってどういうことですか!?」

 

 吹雪の言葉に盛大に驚きの声を上げたレイ。そんな二人に、明日香は焦ったように言葉を返す。

 

「ど、どっちでもないわよ! 兄さんも適当なことを言わないで!」

「ふむ……顔が赤いよ、明日香」

「兄さんッ!!」

 

 怒りの形相になった明日香が吹雪に近づき、さすがにまずいと判断したのか吹雪はすぐさま走り出して逃亡を図る。

 無論それを明日香が許すはずもなく、逃げ出した吹雪を追いかけて明日香もまた駆け出して行った。

 そんな二人を見送り、急展開に呆然としていたレイは、困惑した様子で隣に立つマナに話しかける。

 

「その……いつもこんな感じなの?」

「うん、まあね。でも、楽しそうでいいでしょ?」

 

 騒がしくも、しかし笑顔になれる、そんなバカ騒ぎ。

 確かに、この輪の中に入っていくとすれば、退屈することだけはなさそうだ。

 そんなことを思い、レイは困惑していた表情を徐々に笑顔へと変じさせる。

 そして、それを見るマナも笑みを浮かべてレイの手を取った。

 

「それじゃ、私たちも二人のデュエルを見に行こうか」

「あ、うん!」

 

 レイはその言葉に頷き、二人は遠也の下へと向かう。二人とも表情は笑顔であり、それはこの新学期の開始を彩るにはふさわしいものと言えた。

 新しい仲間、新しい未来。そこに何があるのかはわからないが、それでもこうして笑い合う仲間がいれば、きっと何があっても乗り越えられる。

 去年に巻き込まれた数々の騒動を思い起こしながら、今年も色々ありそうだと考えるマナは苦笑い。

 けれど、それも遠也と一緒に、そして皆と一緒にいれば大丈夫だと思える。

 レイの手を引きながら、マナは遠也の隣へと合流する。「お、二人とも見に来たのか」と軽く返してくるその声に、心地よいものを感じながら、マナはその腕に自らの腕をからめた。

 そのことに対して、今更遠也も何も言わない。そのまま、マナは遠也の視線の先へと目を移した。

 そこにいるのは、向かい合う十代と万丈目。互いに浮かべた不敵な笑みには、隠しきれない喜びもまた見え隠れしている。

 アカデミアの新学期。それが始まったことを実感しながら、マナは二人が楽しそうに向かい合う姿を見る。そして、自分の隣には遠也がいて、レイもいる。更に、三沢や翔といった仲間たちも。

 こういう楽しい生活が送れますように、とマナは心の中で祈りつつ、遠也の腕をぎゅっと抱く。

 それに対して、微かに遠也が身を寄せてくることに喜びを感じる。

 そして、「デュエル!」という掛け声が辺りに響き渡ったのだった。

 

 

 

 


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