ガンダムビルドファイターズ ダークレイヴン   作:級長

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 夕日ヶ丘地区の強豪達

 久々の更新なので忘れている人もいると思うので、戦達の周りにいる強豪校について整理しよう。
 チーム『Gブレイカーズ』
 お馴染み、暁中学のガンプラバトル部。
 チーム『サンダーハウス』
 児童養護施設『雷神の家』に住む子供達で構成されたチーム。学区的に同じ中学に通っているので一緒のチームになれる。ザクⅠを駆使する。
 チーム『ハイドシーカー』
 特別養護学校『夕日ヶ丘学園』のガンプラバトル部。狙撃戦が得意。
 チーム『神代桜』
 深古咲夜の所属するチーム。学校は神道系の神代学園。
 チーム『レッドバロン』
 今回初登場。仙堂中学のチーム。
 チーム『タイラント』
 強豪中学のガンプラバトル部。アクトニウムが決勝に行くと予想。
 チーム『ゾディアック』
 アルカディア学院附属中学のチーム。アクトニウムの予想優勝候補。

 その他
 チーム『カウントカイザー』
 前年度の全国大会準優勝選手。ユニコーン三機のチーム。あのカルロス・カイザーやカリマ・ケイと同じくイニシャルがKK。後はわかるな。


13.グレイズイェーガー

「直近の予定を説明します」

Gブレイカーズの部室で、ホワイトボードに予定を書きながら葉月が説明を始めた。

「実は天城高校との練習試合の前に、仙堂中学のチーム『レッドバロン』との練習試合が決まりました。それまでに、ガンプラを補修しましょう」

「レッドバロン?」

戦がそのチームについて聞く。紅い旗という意味のチーム名だが、赤はガンダム作品だと強敵のイメージがある。ただ、戦にとってはよく広告が新聞に挟まっている地元のバイク屋というイメージが強い。愛知県のある地域出身ならお分かりいただけるだろうか。

それに、レッドバロンはかの『赤い彗星』の元ネタ、ドイツのパイロット、マンフレート・フォン・リヒトフォーフェンの異名でもある。

葉月はレッドバロンについて説明をしておく。

「夕日ヶ丘市の隣、夜鷹市の山奥にある仙堂中学校のチームよ。最近頭角を現した強豪よ。そこと練習試合を取り付けることが出来たってわけ」

「強豪か、面白そうだな」

葉月はレッドバロンがただの強豪でないことを付け加えた。

「レッドバロンは甲子園でも強豪のチーム。選手権しかしないチームとは違う戦法を取ってくる」

「甲子園?」

葉月が解説を続けるも、またも戦がわからないため話が止まる。戦は割と近視的なところがある。背伸びしない、見栄を張らないといえば聞こえはいいが、知らな過ぎも問題だ。

「ガンプラバトル選手権の参加人数は、1校僅か3人。そうした状況を憂いたヤジマ商事のネットワーク研究主任の星影雪菜さんが、選手権の開催と同時に中断していたものを再開した大会よ。大会、というより年中開催のお祭りみたいなものだけど。この前セレモニーをした勢力戦のシステムが、元々中断前の甲子園で使われていたものなの」

「そんなもんがあるんだなぁ」

とりあえず必要な説明が終わったため、葉月は予定の説明に戻る。

「レッドバロンとの練習試合の後に、満を持して天城高校のチーム『ヴァリアントヘブンズ』と練習試合があります。その後、この近くで開かれる大会に参加します。それからようやく地区大会ですね」

「たっぷりバトル出来るな」

忙しそうな予定を、戦はその一言でまとめる。とにかく、今週は忙しくなりそうだ。

 

帰宅後、桜はある場所へ電話した。

彼女の部屋はゲーム関係のグッズに溢れているが、こうなったのも僅か1年未満の話であった。防具は後輩に譲ったが、部屋の隅には竹刀があった。

三日月との練習で、剣道部時代のことを思い出したのだろうか。電話の相手は前の学校の友人だ。実は野崎桜は、最初から暁中学にいたわけではない。

「あ、由ちゃん久しぶり。膝は大丈夫?」

部活は違えど、クラスが同じだったことから友達になった人物で、転校後も連絡を取り合っている。

「うん……じゃあね」

向こうも忙しく、電話は手短だった。その理由はわかっている。膝の心配をしたのと同じだ。元いた学校は運動部に力を入れており、その激しさから桜を始め多くの故障者を出している。

友人の由はサッカーが好きで、部活も女子サッカーをしている。その学校の何が厄介かといえば、公立の中学であるという点だ。

公立の学校ながら異様なまでにスポーツに力を入れ、故障者を生む。その地区に生まれてスポーツをするということが選手生命の危機を招く。異常な事態ではある。

進学してもそこからは逃れられない。その中学の意思を強く継ぐ高校もある。そんな学校に大半の支援金をつぎ込む街が、戦達の過ごす街の隣にあるのだ。

ただ、そんな狂った教育制度に子供達は対応する術が無い。せいぜい怪我しない様に気をつけることしか出来ない。

桜のいた学校はこの2年後、公立校ながら生徒数以外の理由で廃校に追い込まれることになる。それはまた、別の話。

 

「ジゲンハオウリュウ?」

一方、戦は菊乃から電話を受けていた。なんでも、先日助けてくれた人を探しているらしく、その唯一の手掛かりらしい。

『うん。インターネットで検索しても出ないし、今知恵袋に質問投げてるけど、まだ答えが返ってこなくて……。多分、マイナーな格闘ゲーム辺りに出てくる流派だと思うけど』

「マイナーな格闘ゲームか……ストIIの後だと雨後のタケノコって勢いで出たしなぁ」

ゲームに詳しい戦でも、さすがに全ては把握し切れない。マイナーならマイナーで愛好家もいるが、ググっても出ないとなるとかなりの強敵だ。

「それ以外の特徴は? 多分流派で絞るのはキツイ」

『それ以外……美人だった』

戦は流派以外の特徴を探るが、菊乃もフラッと助けられただけなのでそうとしか言えないのだ。

「ま、世の中広いし、知恵袋に質問出してるなら知ってる人くらいいるでしょ。美人なら、もしかして芸能人かもな」

菊乃が新たに目標らしき物を見つけたようで、戦も安心していた。恩人探しが果たして人生の目標になるかどうかは不明だが、何も無いよりはマシである。

「それより、そのドリンクだ。レイモンドさんに聞いたけど、どうもヤバイもんが市場に出回っているらしい」

『ヤバイもん、ですか?』

戦にとっては、その恩人よりもドリンクのことが気になった。葉月のメイド、レイモンドによると市販されているエナジードリンクの内、麻薬と大差ない肉体依存、精神依存をもたらす物があるらしい。

「とにかく、新発売の怪しげなドリンクは飲んじゃダメです。トランス脂肪酸とか食べ物の発ガン物質みたいな気のせいレベルじゃないみたいだ」

『うん、わかった』

戦は菊乃に忠告だけしておく。せっかく自由になったのだ。変なお薬で人生台無しにしてほしくはない。

 

数日後 夜鷹市立仙堂中学校

 

Gブレイカーズの面々は作業を終え、練習試合の日を迎えた。夜鷹市立仙堂中学校は、戦達の通う暁中学がある夕日ヶ丘市の隣にある。

山奥という共通点もあり、戦はなんだかこの学校が他人とは思えなかった。校舎の構造が似通っているのだ。

レッドバロンの練習場は体育館に隣接した建物の3階。2階は剣道場になっていて、1階は元々そこが学校とは別の建物だったのか、なんかの受付か事務室みたいになっている。仙堂中学の生徒もそこの詳細を知らないのは内緒だ。

「こんにちは」

葉月が先頭を切って練習場に入る。中には多数のバトルシステムが稼働しており、既に激しいバトルが始まっていた。

それなりの人数がいるチームの様だ。やはり強豪と呼ばれるだけあり、選手層は厚い。

「お、やってるやってる」

葉月達に気づくと、レッドバロンのメンバーはバトルを中断する。戦はレッドバロンのガンプラが皆機体の一部が赤く染まっていることに気づいた。

そして、ガンプラには傷がある。まだ新しい傷だ。おそらく、ダメージレベルAで練習しているのだろう。

「チームカラーは赤か。差し詰め、赤い悪魔だな」

戦はそんな感想を呟く。赤い悪魔。レッドバロンの練習は実弾を用いて行われる演習といったところだ。

「練習をダメージレベルAで?」

葉月がその大胆な練習に息を呑む。その後ろから、声をかける人物がいた。

「やぁ、君らがGブレイカーズだね」

その人物はジャージを着た背の高い男性教師であった。彼がレッドバロンの顧問なのだろう。

「あ、よろしくお願いします」

不意打ちにも葉月は冷静に対処し、挨拶をする。そして、即座に気になっていたことを聞いた。

「練習をダメージレベルAでやるんですね」

「まぁね。本戦はレベルAだし、傷付いた場所を補修していけば弱点も見えてくる」

この顧問は考えがあってダメージレベルをAにしていた。戦闘後のガンプラに残った傷から攻撃を受けやすい場所を割り出し、それを補うための改造も出来る。傷がマーカーの役割をしているのだ。

「これを思い付いた奴は、実戦で傷付けてダメージ加工してたな」

それに、傷を利用して実戦でのダメージをそのままダメージ加工に使える。手を加えたガンプラが強くなるのは自明で、人数が多く万一ガンプラが大破しても大会に補欠を出せるチームならではの発想だ。

「じゃ、早速バトルするか」

顧問の呼びかけでバトルが始まる。Gブレイカーズが四人のため、レッドバロンも二年生レギュラー三人に加えて一人出すことになった。

残りのメンバーはバトルシステムを繋げ、大きなシステムにしていた。これで大人数のバトルも可能だ。

「まずは4対4だ!」

戦達にとっては、これが新型の初陣となる。各々、ガンプラをシステムにセットしておく。

『野崎桜、ナイトアルケイン!』

桜は今まで使っていたアルケインに装甲を加え、ロングソードを持たせていた。騎士の如き姿だが、剣道少女として武士のモチーフを避けたのは意図してなのか。

『権堂辰摩、グライヴァーチェ改!』

辰摩のグライヴァーチェは外見からしてミサイルポッドやスラスターの増設のみかと思われたが、どうやら隠し玉もありそうだ。葉月はグライヴァーチェを見てその隠し玉を感じた。頭部は折れたアンテナを補うのではなく、装甲を固めてデザインを変えている。右手には巨大な迫撃砲、左手には大型ガトリングが装備されていた

『如月葉月、ザク・エアリアル、出る!』

葉月のザクは大きなバックパックを背負っており、各ハードポイントにスラスターやミサイルを装備していた。

「羽黒戦、グレイズ・イェーガー、ミッション開始!」

そして、戦のグレイズ。グレイズ改の白かった部分と一部が黒くなり、両肩にバズーカを装備している。ライフルもダブルトリガーで装備。外見も含め、よりACの戦法に近づけてきた。

特徴的なのが、太腿に配置されたミサイルポッド。火器が牽制にしかならない鉄血の世界では考えられないカスタマイズである。

腰には通常グレイズの地上用ブースターを付けている。

全機出撃し、フィールドに出る。今回のフィールドは廃墟の並ぶ荒野だ。

『相手は?』

葉月が相手の機体を確認しようとする。戦のグレイズがセンサーを展開し、赤い瞳で相手を見据えた。

「画像送るぞ」

敵は赤いフルアーマーガンダム、エゥーゴカラーで一部が赤いガンダムmkⅡ、真紅のゴッドガンダム、そして最後に出てきたのが灰色のカラミティガンダムだ。

『どうする?』

辰摩が作戦を聞いた。葉月が相手の単体での強さを察知し、ある提案をする。

『じゃ、私と戦くんで撹乱するから辰摩くんと桜さんで、複数で一人を叩いてください』

「よし、やるぞ!」

戦と葉月の機体が先陣を切る。葉月のザクは飛翔して仰向けに寝そべり、バックパックが分離してザクを下敷きにする形で合体した。

『バックウエポンシステム!』

ザクでザクらしからぬことをする、如月葉月の『ザク・プレリュード』。新たに開発されたバックウエポンシステム、『ジオンブースター』によって変形機能を得たのだ。

単にバックパックを追加しただけではない。変形のために本体にも細部へ改良が加えられている。

変形したザクが敵軍に向かって突っ込んでいく。脚部に装備したミサイルポッドからミサイルをばら撒き、敵の視線を空に向ける。レッドバロンの赤いガンプラ達がバルカンを上空に向けた瞬間、戦もミサイルとバズーカを放った。

「ぶっ飛べー!」

牽制という名の一斉射撃にレッドバロンはバルカンが足りないと思われた。しかし、ゴッドガンダムが拳を振るい、炎の塊を放った。

「なにぃ?」

炎の塊は地上のミサイルを全て破壊し、その余波で戦のグレイズを襲った。戦はグレイズの高い運動性能で回避したが、フィールドの砂がガラス化するレベルの高温であった。

「なんて奴らだ。これで二年生かよ!」

ガンプラバトルの経験でいえば、戦は彼らより下だ。だが、だからこそレイヴンとしての戦闘経験を引き出す必要がある。

一方、葉月は飛翔したカラミティと対面していた。灰色のカラミティは背中のキャノンがアメイジングウェポンバインダーに換装され、単独飛行が可能になっていた。モノアイが不気味に葉月を視認する。

『来ましたね』

葉月はザクを変形させ、両手にマシンガンを持たせる。それを見た戦は、少し疑問を感じた。

「葉月が銃を?」

葉月といえば、鋭い剣戟。現にサイコガンダムをアーマーシュナイダーで解体、ソードストライカーの大剣を切っ先だけ使って敵機撃墜など剣士としての才覚を見せている。そういうイメージがあった戦としては、彼女が銃をメインに使う姿は想像出来なかった。

一方、辰摩も戦闘を開始していた。選んだのは赤のフルアーマーガンダム。重量感のある対戦だ。遠くから互いの火器を撃ち合い、周りに流れ弾をばら撒いている。

フルアーマーは左利きの様で、左にビームライフルを持っていた。それ故に避け難いが、辰摩は当たる瞬間のみGNフィールドを展開して直撃を防ぐ。

『要塞かよこいつ!』

フルアーマーのファイターがボヤく。元々GNフィールドのみにエネルギーを集中させる為の実弾装備、実際にMSV企画でもフィジカル装備として提案される王道の改造でさらにフィールドの使用を絞っている。徹底的に長期戦へ向けた改造だ。グライヴァーチェ改と同タイプに見えるフルアーマーガンダムだが、ここまで極端に振り切っていない上に同じ土俵では部が悪い。

『だったら俺が!』

だがこれはチーム戦。ゴッドガンダムが躍り出て、グライヴァーチェ改に攻撃を仕掛ける。相手が悪ければ交代すればいい。

『させない!』

それを防ぐのもチーム戦。ゴッドガンダムにアルケインが斬りかかる。

『待てよ!』

それをさらにさせないのもチーム戦。mkⅡがアルケインにライフルを向ける。だが、横からバズーカが飛んで来てそれを止める。

『チィ!』

mkⅡはそれをシールドで防ぐ。そして少し左に動く。動かなければ相手が漫然と引き金を引いても、連続で攻撃が当たる。少しでも動けば相手も標準の補正が必要となり、外す確率が増える。それを知っての行動だ。

そこにまたバズーカが叩き込まれ、シールドは破壊された。そのバズーカを放ったのは、戦のグレイズだ。

「やったぜ」

戦のグレイズはバズーカの有効射程外、直線に飛ばず、榴弾の勢いが死んで下に落ちていくほどの遠距離から撃っていた。放物線を自分で計算し、シールドに二回連続で当てている。それも、次弾では相手が動いているので計算し直す必要がある。

シールド破壊の煙でmkⅡの視界は遮られた、かに思われた。戦のグレイズは脊髄反射の反撃を避ける為に少し攻撃したポイントから機体を動かしていた。だが、mkⅡは煙の中からビームライフルをグレイズに向けて撃つ。

あろうことか、戦が既に動いているのに直撃コースだ。

「あぶね!」

戦はそれを完全に反射神経だけで回避する。油断していたところへの攻撃、戦の反応速度がいかに早いかわかる。

mkⅡもバズーカの軌道を頼りに、かつレーダーを見て修正しながら当てにいっている。バズーカの軌道は直線ではなく、放物線であった。それでも直撃コースを射抜いてみせた。

「だったら!」

戦は一気に距離を詰める。両手のライフルが使える距離まで行き、本格的に攻撃する腹積もりだった。

だが、相手もライフルで牽制してくる。咄嗟に左右どちらかへ避けようとする戦だったが、なんとライフルは3点バーストで左右に回避しても当たる様にばら撒かれていた。

「上だ!」

戦はグレイズの足を止め、上に跳んで避ける。だが、それもmkⅡの狙い通り。左右に振った弾を避けるなら、上に跳ぶはず。そういう予想はしてあった。そのため、ライフルを迷わず向けてくる。

『自由落下とは、言うほど自由ではないんだよ!』

空中では動きが制御できないため、回避は困難。これが真の狙いだ。

「ひと筋縄ではいかんか」

戦は相手の力量を実感した。今までの相手が弱過ぎたのだ。そして、なんと左側の武装をライフル除いてパージした。

外したのはバズーカとミサイルポッド。まだ残弾はある。そして、誰しも彼の常識を疑うだろう。地上用ブースターは武装を排した方とは逆、右側をパージしている。

『なんだ?』

mkⅡのファイターは不審に思う。だが、とりあえずライフルは撃つ。すると、グレイズは空中でパージした影響でバランスを崩し、右へ傾いて落ちていく。

『何?』

わざとバランスを崩し、攻撃を回避した。だが、このままでは着地も難しい。それでも戦は、残ったバーニアで姿勢を整えて降り立つ。

『着地の隙が!』

mkⅡのファイターは攻撃を躱されても、着地の硬直を狙い直す。戦は着地する瞬間にバーニアを蒸し、レイヴン伝統の小ジャンプを出した。

だが、相手の攻撃は例の左右3点バースト。普通の小ジャンプでは避け切れない。

「オラよ!」

戦は二度目のジャンプで思い切りバーニアを蒸す。機体重量とバーニアの配置が偏っているため、グレイズは思い切り右に側転してしまう。これが戦の目的だ。

『ガンプラが側転した?』

側転でグレイズはライフルを避ける。普通に機動するより、機体重量を偏らせてバランスを崩す勢いを利用した方が早く動ける。このセッティングはリカルド・フェリーニなどの熟練したトップファイターが行うものだが、それを即座に出来る戦のセンスが超越しているのだ。

この戦い、生徒会なんぞとは次元が違う。

 

一方、上空でのぶつかり合いも別次元であった。

『貰った!』

葉月が銃口を向けると、それを押し退けてカラミティが銃口を彼女に向ける。

『させるか!』

『チィ!』

常識では考えられない切り抜け方であったが、さらにそれを葉月が押し退けられた方と逆の銃で押し退ける。まるでクリスチャンベール主演の『リベリオン』の決戦シーンみたいな銃口の押し付け合いであった。

もう銃器での戦闘ではない。剣での戦いに等しい。

『こいつで!』

しばらくの応酬の後、葉月はカラミティを蹴り飛ばした。

『しまった!』

大きく体勢を崩したカラミティは距離も離され、葉月の銃口に狙われる。空中での急制動は不可能。このまま撃ちぬけば彼女の勝ちだ。

予定通りら葉月はカラミティに向かってマシンガンを放つ。

『そうはいくか!』

瞬間、カラミティのモノアイが激しく輝く。そして、急にスラスターを蒸して体勢を立て直す。銃を捨て、ナイフを取り出し両手に持つ。

『レッドバロン、三十六計!』

そのままナイフでマシンガンを弾き、直撃を避ける。流石に右手はマニュピレーターごとナイフを吹き飛ばされていたが、左手のナイフで葉月に斬りかかる。

『その十七……激ムズナイフクリア!』

『この人、急に!』

思わず葉月は動揺した。あまりにも急に、カラミティの動きが変わった。あの銃はフェイクだとでもいうのか。

『でやぁぁぁッ!』

カラミティはナイフを掬い上げる様に、葉月へ下から突き出す。

「燕返し?」

だが、既に彼女は平静を取り戻している。ただマシンガンを放てば、勝てるのだ。この急な動きに惑わされてはいけない。

そのままカラミティは、葉月に撃ち抜かれる。

まずは1機撃破。新生Gブレイカーズの強さを示したのは、リーダーの葉月だった。

 

『隙が無いな』

『落ち着いて、弱らせていこう』

グライヴァーチェと一進一退の戦闘を続けていたゴッドとフルアーマー。敵の堅い防御を突き崩すために、集中して隙を探す。

グライヴァーチェはふと、GNフィールドを切った。

『今だ!』

今こそ、とゴッドガンダムが斬りこむ。だが、グライヴァーチェの後ろからアルケインが飛び出してそれを防いだ。

フルアーマーがアルケインに向かってライフルを構えた。だが、グライヴァーチェも黙ってはいない。ミサイルを飛ばして牽制し、攻撃を中断させる。

『見えたぞ、隙が!』

『いくら防御に特化しても、無限にフィールドは出せまい!』

二人はフィールド切れを待つ作戦にし、今まで通り攻撃していくことにした。前と同じ様に、二人でグライヴァーチェに攻撃を仕掛ける。

『そうはさせない!』

だが、急に辰摩がグライヴァーチェを前進させたため、タックルを受けてしまう。

『なんだ?』

『こいつ、急に!』

タックルによって姿勢を崩されたところを、アルケインが切り裂く。急に動きが変わったため、回避が間に合わない。

ゴッドとフルアーマーは起きた出来事を把握する前に、撃破された。

『勝った!』

『やったね!』

長期戦に持ち込んで急速に攻撃する。緩急の付いた戦闘で勝利を収めた。

 

mkⅡは戦のグレイズのライフルを破壊、ビームサーベルで接近戦に持ち込んでいた。一本のサーベルを、逆手で持って掬い上げる様な攻撃を仕掛けてくる。

非常にやり難い。

『接近戦ならこっちが有利!』

戦はアックスを抜き、サーベルを防いだ。その瞬間、グレイズでmkⅡを蹴飛ばす。

『何?』

「接近が苦手なのは、わかってるさ!」

そして、急速に機動して落ちているミサイルポッドを拾う。先ほどパージしたものだ。そのままミサイルを放ち、mkⅡに当てる。

『しまった!』

接近戦を考えていたmkⅡは反応が遅れ、ミサイルの直撃を受けてしまう。そして、そのまま撃墜された。

『BATTLE ENDED!』

練習試合は、Gブレイカーズの勝利で終わった。

 

@

 

「君達は、本当にガンプラバトルを楽しんでいるんだね」

試合後、レッドバロンの顧問がそう言った。葉月は、自分に真っ向勝負を挑んだカラミティ、逆手ビームサーベルなど独特な戦法を見せたmkⅡはともかくゴッドとフルアーマーの戦法があまりに教科書通り過ぎた様な気がした。

「レッドバロンは、私が二年前に創設したチームだ。本気の遊びをやってみないか、そう言ってみんなを誘った」

ガンプラバトルは本気の遊び、それは葉月もよく分かっていた。遊びだから勝ち負けで遺恨が残らないし、何も考えず本気になれる。

それを忘れたスポーツがどうなったかは言うまでもあるまい。野球にはエゲツない方法でドラフト会議を潜り抜けようとする巨人軍がおり、運動部も勝利重視になり体罰などの問題に繋がっている。

「だが、ガンプラバトルにも勝利にこだわり、本来の楽しさを忘れてしまうチームが現れた。新しいチームである君達には、それを忘れないでほしい」

顧問の言葉は、まるでレッドバロンがそうではないかの様にも聞こえた。




 次回予告
 戦「お待たせしました! ついにあの学校と練習試合!」
 葉月「結構前から調整してましたから」
 劫夜「よろしくな!」
 葉月「次回、『ヴァリアント・ヘブンズ』」
 劫夜「レイヴンの力、学ばせてもらう!」

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