ガンダムビルドファイターズ ダークレイヴン   作:級長

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 ミッション:ガンプラバトル大会襲撃
 報酬:ガンプラクリスマスツリー
 依頼主:如月葉月
 概要
 冬休みね、戦。クリスマスカップル限定ガンプラバトル大会を襲撃する。付き合わない?
 優勝商品の『ガンプラクリスマスツリー』……中々興味深い。カップルじゃないと出られないから、協力お願いね。


EXミッション1.ポケットの中の戦争

 夕日ヶ丘市 ショッピングモール

 

 羽黒戦はクリスマスの日、夕日ヶ丘市最大のショッピングモールに来ていた。夕日ヶ丘市は暁中学校がある地域の様な田園地帯ばかりではなく、この様に街もあるのだ。

 「ふん、どいつもこいつも男女のペア見たら恋人だと思いやがって。ヘテロセクシャル至上主義の権化共め」

 「別にカップルじゃないのにね」

 戦はクラスメイトにして同じガンプラバトル部の如月葉月と共に、ショッピングモールに来ていた。狙いは『カップル限定クリスマスガンプラバトル大会』を荒らすことだ。戦はバサバサと店員から押し付けられたビラの数々を扇ぐ様に振った。

 葉月は黒髪も艶があって、顔立ちの整った美少女。それを戦の様な地味野郎が連れているので、どうせ彼女がいないから仕事しているだろう男性店員も羨ましそうに見ていた。

 「ねぇ、戦。ガンプラ見てかない? バトル会場もおもちゃ売場だし」

 「お、そうだな」

 葉月の提案で、戦はガンプラを見に行く事にした。5年前はデパートのおもちゃ売場なんぞガンプラの品揃えは貧弱そのものだったが、最近はそうもいかず品揃えが充実していた。

 「あいつら参加するのかな?」

 「しないんじゃない? チーム『サンダーハウス』も、チーム『ハイドシーカー』も野良バトルに出ているところは見たことが無い」

 ふと、戦は春から夏にかけての大会で出会ったチームが来ているのか気になった。ただ大会で対戦しただけでなく、ある出来事から児童養護施設『雷神の家』に所属するサンダーハウスと所謂、特別養護学校である『夕日ヶ丘学園』のガンプラバトル部、ハイドシーカーとは交流が深いのだ。

 「ハイドシーカーの狙撃戦は年明けまでにもう一度見たいな。あれだけ綺麗な狙撃戦はそうそう無い」

 「ガンプラバトルの狙撃で観測手までいるのは珍しいよね。戦も観測手はいらないわけだし」

 戦と葉月はガンプラを見ながら話していた。戦の戦法は専ら狙撃だ。レイヴンとして戦うと隠れる環境少なめ、作品によってはスコープを覗くという概念が無い関係上どうしてもスナイパーライフルは取り回しが悪くなるが、FPSやアーマード・コアⅤのチーム戦ではスナイパーを務めることが多い。

 「やっぱり狙撃機が気になる?」

 「いや、狙撃機じゃないやつを狙撃機に改造するのが一番ロマンだな」

 戦が手にしているのはHGのジェノアス。量産型を改造した狙撃専門機というのは実を言うと少なく、HGで出回っているのはジムスナイパーⅡとザクⅠスナイパー、ゲルググ・イェーガーくらいなものだ。ゲルググに至ってはスナイパーライフルじゃなくてマシンガンを持っている。

 「さて、そろそろ大会受付よ」

 時間が来たので、戦と葉月は大会の受付を済ませる。大会はチーム対抗のバトルロワイヤル戦。どこもかしこもマジカップルだらけ。近寄れないほどラブラブオーラを放つカップルの中に二人がいると違和感がトランザム。

 『これより、クリスマスイベント、カップル限定ガンプラバトル大会を初めます』

 大会開始の時刻になり、カップル達がガンプラを持って集まった。大会の商品はクリスマスプレゼントとしてガンプラ詰め合わせだ。これ狙いで戦と葉月は参戦したというわけだ。

 『Please set your GP-Base. Beginning [Plavsky particle] dispersal』

 「やっぱ熊多いな」

 「そんなものよ」

 カップルの女性はベアッガイⅡをデコったものを多用する傾向にある。中にはガンプラビルダーズのベアッガイもいた。ベアッガイⅡはストライカーに対応しているのでビルドカスタムが使い易いのだが、そういうのにも興味はないみたいだ。

 意外とSDが少ない。SDガンダムの世界は本編ガンダム以上に広がり、初心者が把握するのは困難という背景もある。

 後はちらほらノーベルガンダムやファルシアがいるくらい。

 『GUNPLA BATTLE Combat Mode.Damage Level,Set to B』

 さすがにダメージレベルはB。ガンプラの破壊は少ないが性能は制限される。

 『Field5,City.Please set your GUNPLA』

 フィールドはコロニー内の町。なんとあの一年戦争のクリスマスの時期に起きた出来事を描いた『ポケットの中の戦争』の舞台、サイド6だ。

 『BATTLE START』

 「羽黒戦、ガンダムデュナメスイェーガー! 目標を狙い撃つ!」

 「如月葉月、ケンプファー・スノーホワイト、出る!」

 出現したのは改造が施されたデュナメスと白いケンプファーアメイジング。

 デュナメスは頭部に装甲とアンテナを追加。目の部分はゴーグルで覆われている。脚部と腕、肩にハードポイントを追加し、肩のシールドを付けていた部分と膝にミサイルを取り付けていた。腕にはシールドの様に付けるレーザーブレードが装備された。

 ケンプファー・スノーホワイトは単なるアメイジングのカラー変更ではない。背中には大型のヒートソードを二本背負っていた。

 『戦闘システム、起動』

 戦のデュナメスは頭部COMで喋るのだ。

 『敵ガンプラ確認、ベアッガイⅡです。両腕にビームサーベルを装備、遠距離からの射撃が有効でしょう』

 「わかってるって」

 戦はデュナメスを森に移動させた。スナイパーライフルを構え、混戦状態のコロニーをスコープで見る。

 「狙い撃つ」

 そこから狙撃を開始する。ベアッガイⅡの脚部をビームで吹き飛ばした。すると、カップルの内男の方のものなのか、ユニコーンガンダムが駆け付けた。

 それのコクピットを撃ち抜いてから、ベアッガイⅡも頭部を狙撃する。2機のガンプラが早速撃破された。やっとやっとの素組ならこんなものか。大掛かりな塗装が無くても、合わせ目消しや艶消しを丁寧にやればガンプラの性能は上がる。

 狙撃の時、戦は必ずベアッガイⅡを中破させてもう片方をおびき出してから始末する。『わざと怪我で済ませて、助けに来た奴を狙う』という狙撃の基本戦術をやったというわけだ。救護所とかがあればそこに負担をかけるため全員わざと怪我で済ませることもあるが。一人の治療に必ず人材を一人以上費やすことになるし、物資も消費する。

 『そこだ!』

 狙撃ポイントを割り出して接近する機体もいた。だが、戦は芋と呼ばれる様なスナイパーではない。既にデュナメスは移動していた。

 『いない?』

 『どこにいるの?』

 フォースインパルスガンダムとベアッガイⅡが狙撃ポイントに辿り着くも、当然デュナメスはいない。

 「ここだよ!」

 遠くに行ったかと思えば、割と近くの森に潜伏していた。木の影から飛び出し、狙撃手があろうことか接近戦を仕掛けて来た。

 レーザーブレードでインパルスとベアッガイを不意打ちする。不意打ちなので迎撃も出来ず、インパルスはブレードに貫かれて爆散した。残るベアッガイⅡはタイマンでも厄介にはならない。ベアッガイを軽く撃破してから次の狙撃ポイントへ向かう。

 「滅びゆく者のために……」

 ケンプファー・スノーホワイトは両手のヒートソードで次々に敵を切り裂いていた。こちらは完全塗装なのでデュナメスイェーガーとも性能が段違いだ。素組ばかりの参加者は相手にならない。

 すれ違い様にベアッガイⅡを真っ二つにしていく。元々、紙装甲と引き換えに高い機動力を持つケンプファー。故に、『当たらなければ、どうということはない』を地で行く戦法が有効なのだ。

 「さてと、他に敵は……」

 後ろから来るガンプラは戦が狙撃して援護する。大体敵が片付いたところで、まだ残っているガンプラが葉月達の他にいた。

 「あれは……アレックスにザクⅡ改? なんて完成度……」

 唯一残った敵は、『ポケットの中の戦争』に登場するガンダムNT-1とザクⅡ改だった。今までのカップル達と違い、チョイスもさることながら完成度が違う。

 合わせ目消し、艶消し、部分塗装という基本工作を施し、バーニアをメタリックにしてある。

 アレックスはチョバムアーマーを装備、なんとその上からシールドが装備出来る様になっている。

 ザクⅡ改は両肩をシールドに換装。シュトゥルム・ファウストを懸架している。ハンドグレネードも両腰に装備して数が増加。手持ち火器はグレネードランチャー付き90ミリマシンガンだ。

 『オオッと、最後に残ったのはバーニィ、クリスチームと羽黒、如月チーム! 最後に立っているのは誰だ?』

 司会もラストバトルを煽る。

 「こいつは今までの奴らと違う! 連携だ!」

 「ええ!」

 ケンプファーが横に動くと、後ろからビームが飛んで来る。味方を影にした狙撃など、狙撃手の腕が良くないと出来ない。

 「さぁ来い、戦い方を教えてやる」

 チョバムアーマーで重鈍なアレックスには狙撃を避けられ無いだろう。ザクⅡ改が戦の迎撃に向かったのは葉月の予想通りだった。

 「まずはチョバムアーマーを剥がす!」

 脚部のコンテナから、チェーンマインを取り出す。それをアレックスに巻き付けて爆発させた。アーマーが破壊されたと同時に、ガトリングを放って来るので、しっかり回避した。

 『当たってくれよ……!』

 ザクⅡ改が戦に接近する。戦のデュナメスは小ジャンプで左右に動き、弾を散らす。対するザクⅡ改もホバーで左右に動き、デュナメスが持ち替えたサブマシンガンを回避する。

 「近接射撃戦なら、レイヴンの腕が活きる!」

 互いに弾切れとなり、ブレードとヒートホークがぶつかる。ガンプラの出来映えからか、ザクⅡ改の方がパワーは上だ。

 「残念だけど、格闘戦なら克服した!」

 鍔ぜり合いの状態でデュナメスが浮上、上の位置を取ってガンプラの性能差を補う。重力と機体重量でパワーを互角にした。

 『そんな手が!』

 「あるんだよ!」

 一旦戦は葉月と合流して、連携を取り直すことにした。これで再び2対2。ケンプファーとアレックスはサーベルでの戦闘になっていた。

 デュナメスとケンプファーは背中を合わせて留まる。そこを挟み撃ちにするかの様にアレックスとザクⅡ改が切り掛かる。

 デュナメスは腕のレーザーブレードを盾の様にしてコクピットを防御する。頭ががら空きだったので、ザクⅡ改は頭を狙ってヒートホークを水平に振る。

 一方、ケンプファーはビームサーベルを頭上で交差して防御姿勢を取る。アレックスはそれを見抜いて突きを放った。

 『何?』

 『これは……!』

 その瞬間、デュナメスとケンプファーはクルッと180°ターンして位置を入れ替えた。アレックスの突きはデュナメスのレーザーブレードのシールド部に、ザクⅡ改のヒートホークはケンプファーのビームサーベルに防がれた。

 「これで!」

 ヒートホークを弾いたケンプファーはビームサーベルでザクⅡ改の頭を斬り飛ばす。

 「How do you like me now?」

 そしてデュナメスはアレックスのコクピットをレーザーブレードで貫いた。

 『BATTLE ENDED!』

 『優勝決まりました! 羽黒戦&如月葉月チームが優勝です!』

 戦闘が終わり、バトルシステムが停止する。優勝は戦達に決まった。

 「それでは優勝賞品どうぞ。ガンプラクリスマスツリーです!」

 「これは……」

 賞品として渡されたのは、PGユニコーンガンダムとLEDユニット。そしてツリーのオーナメントセット。

 「これがガンプラクリスマスツリーだ! 準優勝のチームにはネオジオングだ!」

 大盤振る舞いと言えば聞こえはいいが、単に置場が困るため売れ残り易い商品の在庫処分であった。

 「おーい、優勝のお二人さん! ネオジオングあげるよ!」

 「いえいえ、こちらこそガンプラクリスマスツリーを……」

 最終的に準優勝チームの金髪のお兄さんと戦の譲り合い。うれしいけど置場に困る。せめてそこは HGが欲しかったとさ。 「いえ、ガンプラクリスマスツリーは私が貰います。ネオジオングはもう持っているので。戦、帰りましょう。流石に……綾部に連絡して迎えに来てもらいます」

 ガンプラクリスマスツリーを欲しがったのは葉月なので、それだけはキッチリ貰っていく。

 後日、如月邸で行われたクリスマスパーティーには、このガンプラクリスマスツリーがそびえることとなった。




 スカイプ内:ライバルチームお茶会
 レア『我が雷神の家も、今年の年末はぬくぬく暮らせそうだな。お前も年末年始はグータラしてろよ』
 伊達『いや、シスター。なんかその。こう、掻き入れ時に働かないと落ち着かなくてな』
 レア『ま、働き者なのは悪いことじゃないさ。だが、学生の本分は勉強だし、市長も変わったからちゃんと福祉政策も敷かれるし、多少緩くてもいいんじゃないか?』
 伊達『そんなもんかね。土日は』
 白雪『日曜日は休息日なんですから、休んであげて下さいよ』
 レア『これはこれは、ハイドシーカーのスナイパーくん。よく勉強してるね。日曜日はキリスト教の休息日だぞ。そう五月蝿く言うつもりも無いがな。そうそう、君ならこの時期にどんなラブソングを聞くんだ?』
 白雪『ラブソングですか……クリスマスは多いですから……』
 クリム『おお、みんないるか? 諸君をアメリアインターナショナルスクールのパーティーに招待したいのだが、いいかな?』
 伊達『相変わらずテンション高いな。だがダメだ。雷神の家のパーティーが……』
 クリム『そう言うと思って、日にちはクリスマスから少しずらした』
 白雪『抜かり無いですね』
 クリム『私は天才だからな』

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