ガンダムビルドファイターズ ダークレイヴン   作:級長

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 なんと今回は挿絵が付くぞ! 記念すべき挿絵第一号は霧間久利夫の『ドム・ホルツメッサー』!
 木こりという名の重モビルスーツ、その活躍を見逃すな!

 提供者の二円さんにはこの場で御礼申し上げます。


勢力戦5.あなたの落とした斧は

久久能智自然専門学校付近 山間部

 

「山だー!」

青々と茂る針葉樹の森で、志帆が叫んだ。ここは山奥。一体何が彼女を山に導いたのか。今現在、志帆、氷霞、アッシュの三人は薪を切っていた。

ここは久久能智自然専門学校。林業などの自然にまつわる技術を学ぶ学校だ。

近年は企業連の自然軽視などにより苦境に立たされてはいるが、数々の体験イベントを立ち上げて挽回を図っている。

「意外と暑くない」

氷霞もインドア派ながら、この環境を気に入ったようだ。

「はーい、こっち視線頂戴。いい画だね」

カメラマンが三人に指示を出す。カメラマンをしているのは、白地に赤いラインの入ったパーカーを着た詩島剛。レフ板を手に手伝っているのは、彼のダチというチェイスだ。

「なぜこの学校を設立したんですか?」

校長を取材しているのは、城戸真司。志帆から見ればちょっとしたライダー大戦だ。

「フハハ! 剛よ! この私も撮るのだ!」

「ゴルドドライブ?」

そこに突然、金色のドライブが現れた。恐らくは単なるコスプレだろう。チェイスが剛に信号機の形をした斧を手渡す。

『シンゴウアックス! 必殺! マッテローヨ!』

「人の仕事場にまできてコスプレすんな!」

『フルスロットル! イッテイーヨ!』

シンゴウアックスがゴルドドライブの頭に直撃する。志帆と氷霞が唖然と見ている中、アッシュは剛からシンゴウアックスを受け取ってボタンを押す。

『モウイッカイ! イッテイーヨ!』

そして追撃を浴びせた。他のスタッフも「なんだいつものことか」と気に留めていない。

「なにあれ」

「いやーゴメンね。ウチの親父心配性でさ」

「心配性がどうなったらゴルドドライブになるんだ?」

剛があまりにサラッと流すため、志帆は混乱した。息子の仕事ぶりを心配した父親が、ゴルドドライブに扮してコッソリ見守りにきた、というのが事の真相だ。

蛮野天十郎は、その面倒な性格から子供が出来た直後辺りで一度妻から三行半を突きつけられている。今は共に暮らしているが、警察の交通課に勤めている姉の霧子と剛が天十郎と苗字が異なるのはそういう事情だ。

『オツカーレ』

シンゴウアックスがアッシュを労う。そもそも、ここに三人が来たのはアッシュがキッカケなのだ。

「ねぇねぇ、志帆ちゃん氷霞ちゃん。うちでモデルやらない?」

アッシュの母、シラコが二人に声をかける。ジャージを着ていてもわかるくらいに良いスタイルに、艶やかな黒髪となかなかの美女だ。アッシュの母親がスターライトプロモーションのモデルで、そのツテで自然学校のパンフ作りに協力することになったのだ。

主に体験学習のページに使う写真の撮影をしているとのこと。

「鉈持ったら画になるかも。昔こういうアニメあったよね」

「なんか物騒」

シラコが志帆に鉈を持たせる。氷霞が後ろに下がった。

「鉈かぁ、そういえば新作のマンロディが使うんだってな」

志帆が鉈を手に、そんな情報を漏らす。

「そうそう、最近ガンプラバトル部ができたんですよ、これもPRしないと!」

校長は志帆の話で思い出したかの様に、新しくできた部活の話を進める。一同は校長連れられ、比較的新しい建物へと向かった。

「おお、バトルシステムがある!」

建物の中には、バトルシステムが置いてあった。それも複数台を繋げたものだ。ヤジマ商事が格安でリースしてくれるとはいえ、これは金が掛かっている。

「おーい、霧間、いるか?」

校長が誰か人を呼ぶと、中から大柄な人物が出てきた。大柄とはいえ常識的な高校生くらいに収まってはいる。ただ、ゴーグルやマスクで出来た日焼けの跡が熊みたいだ。

「……」

「ちょうど、バトルできる奴がこいつしかいなくてな。霧間久利夫。無口だが優秀な生徒だ」

その高校生、霧間は特に口を開かない。そして、無言のまま準備を始めた。志帆達は互いに顔を見合わせる。

「バトルをしたいそうだ。よろしく頼みますぞ」

霧間がドムをシステムにセットすると、校長が翻訳する。それなら、と志帆達もガンプラを用意した。

 

【挿絵表示】

 

「グフ・スカーレットで相手するぜ!」

「やろう」

志帆がグフを取り出し、氷霞もウイングガンダムを出した。グフには『高機動型ザクⅡオルテガ機』の巨大な斧が持たされている。ウイングガンダムもバックパックをビルドブースターに変更し、武器もバスターライフルから一般的なライフルに持ち替えている。シールドだけは変形出来なくなっても、フィット感とビームサーベルラックの機能から引き続き使用している。

「んじゃ、やりますか」

アッシュもガンプラを取り出す。戦闘機乗りの彼が珍しく、変形機構の無いガンプラを持っていた。

「アヴァランチエクシアか。武器はやっぱバズーカなのね」

志帆が確認すると、それは武器をGNバズーカに持ち替えた灰色のアヴァランチエクシアだった。ダッシュユニットは無いが、どうやって使うのだろうか。

「さて、と……」

志帆がバトルを始めようとした時、警報がシステムから鳴る。バトルシステムがフィールドを生成し、警告メッセージを出す。

『エリアが侵攻されています』

「こんな時にか!」

志帆は状況を確認する。大量のガンプラが自然学校のものと思われる拠点を襲撃していた。この自然学校は勢力戦にも、学校単位で参加しているようだ。

「……」

「あ、ちょっとクマさん?」

霧間が黙って出撃する。志帆も追って出撃する。ジャブローめいて森林の内部に作られた自然学校の拠点は、洞窟内部からのスタートになる。

すでに敵は洞窟内に侵入していた。敵は素組のガンプラ軍団。

「哀戦士歌いたい気分だ……シャア来ないよな?」

ジャブローに侵攻してくる敵を赤いグフが斧で斬る。突撃を行うグフに対し、ドムは向かってきた敵を確実に迎撃する。

緑と茶色に塗られたドムはザクのシールドを改造したチェーンソーを右手に装備。左のスカートに取り付けたスモークグレネードやセンサージャマーを投げ、数だけ多い敵を翻弄する。

『煙幕だ! センサー見ろ!』

煙幕を投げられ、センサーに頼ろうとしたところをジャマーで塞ぐ。

『ダメだ! センサーが効かない!』

その隙を突き、チェーンソーで真横に切り裂いた。

「伐採……」

それが志帆達が初めて耳にする、霧間の声だった。

「数が多いよ」

「ボク達も行こう!」

フィールドは広大な森林。氷霞とアッシュは急いでガンプラをセットして救援に向かう。洞窟に出たところで、アッシュは重大なことに気づく。

「あ、ここ飛べない!」

「御愁傷さま」

次々と押し寄せる敵のガンプラ軍団に、氷霞はビルドブースターの砲撃をくわえていく。

「……弾切れしない?」

氷霞はビルドブースターの継戦能力に驚いていた。というのも、普段使っていたバスターライフルが元々弾数少なめで素組、対してビルドブースターは弾数多めで合わせ目消しと部分塗装済み。威力と弾数はビルドブースターの方が上になる。

霧間の快進撃は続いた。シールドチェーンソーで黙々と相手を切る。

『クソ! 視界もセンサーもダメなんて反則だ!』

相手が泣き言を言ってもお構いなし。腹部の隙間にチェーンソーをそれはそれは的確に入れ、切り裂いた。

「あいつらは……ラインアークか」

志帆はコンソールの情報から敵がラインアークであることを知った。ラインアークの規模ならダメージレベルはA、ガンプラの腰関節は切断されているだろう。志帆はとりあえず合唱した。

『囲め! 囲めば勝てる! うちには「ブラックイーグル」の川本姉妹も来てるんだ!』

霧間は囲まれたが、ホバーで回転して横に敵を斬る。真横の斬り方には、拘りがあるのだろうか。

「囲むなら初見さんだけにしときなよっと。それより親方、他にメンバーは?」

志帆が霧間に自然学校の戦力を聞く。霧間のドムがハンドサインを行ったが、改めて通信が入る。

「牛が難産だ」

「ああ……」

志帆は納得した。霧間は見るからに林業畑だし、牛の難産は『主人公が田舎に行った時に特殊イベント起こす鍵ナンバー1』くらいの出来事だ。田舎に帰ったら牛が難産で、家の仕事を手伝うことになる流れはベタ。それくらい牛の難産は大変。

「しかし親方、ラインアークがここまで攻めてくるのは不自然じゃないですかい?」

志帆が疑念を抱くと、ドムが『そうなの?』と言いたげなハンドサインをする。だいたい言いたいことを志帆は察する。

「ラインアークってのは見てわかりますように、素組のガンプラが多いことからわかる通りに『ゆるい』部類のチームです。徹底的に勝ちに拘るなら、そんな初心者入れない方が効率はいい。つまりラインアークは今まで勝つことにだけに、極端には拘ってこなかったチームなんです。それが出来たてホヤホヤの新参勢力をここまで苛烈に攻めますか?」

「つまり、今までブランド米作ってなかった農家がブランド米の為に利水確保、害虫対策を目的に周りの農家潰しにかかるみたいなものか……」

霧間らしい嚙み砕き方だが、だいたいあっている。楽しくやるのが目的のチームが、楽しくなくなる原因の一つでもある初心者狩りに手を染めるだろうか。

首を傾げる二人に、アッシュが口を挟む。

「トップが変わったんじゃないんですか? それでも不自然ですがね。だって日本はどんなに革命しても一番上のカイザーにだけは滅ぼさないじゃないですか」

考え方の違いか、アッシュは日本がいくら政府を変えてもお上をすげ替えないことに疑問を持っていた。日本は単に、天皇のお墨付きを貰って政治した方がいいと考えいる人が多いだけなのだが。

「そう、でも今の日本は違う。前の社長の功績を徹底的に否定する」

妙に怪しい雰囲気を持って、志帆が語る。霧間は並々ならぬ憎しみを感じていた。

「何かあったのか?」

「ああ、マクド◯ルド……」

志帆は原因を察知した。その憎しみは某ファストフード店の社長に向けられていた。

「去れ、モグモグマックなどメニューに不要だ」

『エグチ!』

『ハムタス!』

氷霞はドスの効いた声で敵を撃ち抜く。確かにあれは不要だ。誰もハンバーガー屋に健康など求めていない。それより敵の断末魔が宣伝になっているような気もする。

「ところで日本ってお店が『Youzinbo』でも雇っているんですか?」

アッシュは突然、そんなことを言い出す。

「突然だな、雇ってないぞ。警備員はさておきマフィアとかは論外だな、暴対法で捕まる」

志帆はそう答えた。暴力団が今時みかじめ料を要求するとマッハで追跡と撲滅をされる。

「え? じゃあ日本のハンバーガーが小さいのは何でですか? てっきり安全の代償かと」

「日本人あんな食えねぇよ」

アッシュはアメリカと比べてハンバーガーが小さいのは、安全にかけるコストのせいだとばかり思っていた。実際は胃袋の都合だ。

「まぁボクも少食なんで助かってますが」

「いや、そんな雑談はさておき、ラインアークのトップは白葉光のままだぞ」

雑談を打ち切り、ラインアークの奇行に話を戻す。志帆の記憶ではラインアークのトップが変わったなんて話を聞いたことがない。

『乱心か?』というハンドサインを霧間のドムが送る。頭をくるくる指で指しているので、三人はだいたいの意図がわかった。

「それの可能性は……どうですかね? ただチーム戦には厄介なシステムがあってですね」

志帆はチームのルールを思い出す。普段少人数のチームしか動かしていない志帆には馴染みの無いルールだが。こんなルールがある。

「ある程度の規模になったチームは、リーダーのワンマンにならない様に『過半数』システムってのがあるんです。チームの過半数の賛成がリーダー一人の意思と同等の権限を持つんです。つまり、リーダーでなくても、チームメイト過半数の賛同を得られればチームを動かせる……」

おそらく、ラインアークはこのシステムで暴走しているのだろう。元々、貴重なフルセイバーを求めて集まった烏合の衆だ。フルセイバーのために何をするかわかったものではない。

かつて付録だった改造キットは度々雑誌や増刊号に再び付録として付けられ、再度入手することが容易となった。しかし、クリアパーツをデフォで使用するフルセイバーは依然として貴重だ。

一同は一旦、洞窟の外に出る。中の敵を粗方倒し終わり、外で迎撃することにしたのだ。外に出ると、森が燃えているではないか。

「あわわ……ベトナムの地獄が……」

アッシュが慌てているのもスルーし、三人は火元を探る。すると、ビルドバーニングを改造した赤い逆脚のガンプラが全身から炎を吹き出し、火炎放射器を持っているではないか。隣には護衛なのか、トランジェントを改造し、両腕にランスビットを使ったパイルバンカーを持つタンク脚の青いガンプラがいた。

『燃やしちまうぜぇ! 早く灰色の疾風を出しなぁ!』

『このガンプラさえあれば、俺たちは本物を超えられるんだぁ!』

「あれもラインアーク? AC臭くはあるけど……」

志帆はデータを確認する。ファイター名は赤いガンプラの方が『カミキ・セカイ』、青い方が『キジマ・ウルフリッド』となっていた。

それには流石の霧間も驚いて声を上げる。

「選手権のか?」

「いや、成りすましです親方」

志帆が訂正しつつ、相手を確認する。灰色の疾風、つまりアッシュを理由は知らないが狙っているのか。おそらく大した因縁もあるまい。有名人がそこにいるから売名のために倒すつもりだろう。

ラインアークというアーマードコアに因んだチーム名に、ACのような改造を施したガンプラ。

「だがなんだあのアセンは……とっつきなら機動力がいるだろ?」

志帆はそれに不自然さを禁じえなかった。火炎放射器は確かに機動力を確保すれば一方的に相手を焼けるが、重い武器なので逆脚では重量に耐え難い。重量型の逆脚もあるが、ビルドバーニングのそれは軽量型の細さだ。

さらに、逆脚は跳躍性能に勝るも、旋回力は低い。敵に張り付いて動き回るには不向きだ。

とっつきとタンク脚に関しては言わずもがな。パイルバンカーや射凸型ブレードはトリガーを引いてから発射までのタイムラグがあるため、タンクの様な重鈍な脚では敵に追いつくのが困難で、ダメージになる前に逃げられてしまう。

「なんつーか、形を真似ましたって感じだ」

ビルドバーニングは肩や背中につけた火炎放射器からも炎を吹き出す。そこに付ける火炎放射器はACに無い。

『増援だ! 俺たちラインアークにひれ伏せ!』

志帆が考えている間にも、増援が現れる。ラインアークは大幅に人数を増やしたといえ、ここまでの人数がいたのか。

「ここなら使えるね!」

アッシュはアヴァランチエクシアで上空へ飛び上がる。そして、急降下爆撃の様に敵へ迫って至近でバズーカを放つ。そして、再び飛び上がる。

「うーん、やっぱり急降下爆撃自体使えるシュチュエーションが限られるのかな?」

アッシュは戦闘機乗り、急降下爆撃の名手として『灰色の疾風』という異名を持つ。しかし、若さ故にまだ自分の『型』を探している最中なのだという。

「しかしキリがねぇぞ?」

「弾切れ」

普段の戦法が取れずに戦えてなかったアッシュはともかく、志帆と氷霞は弾切れを起こしていた。

霧間もスモークグレネードとジャマーを使い切っていた。シュツルムファウストに似た武器を放ち、戦闘を続ける。

『なんだ? ミサイルか?』

それを撃たれた素組のライトニングガンダムとその他大勢は、立ち止まって確認する。弾頭の先端から砂の様なものが撒かれ、次いでネットのようなものも発射される。

『ネットランチャーか!』

弾頭から放たれたネットに、数機のガンプラが絡まる。弾頭はネットに繋がったままだ。そして、その弾頭から電磁波が出た。

『熱ダメージか?』

『なんかダメージ受けてる!』

それはアッザムファウストという代物だ。簡単に言えば、アッザムリーダーを手持ち火器に収めたもの。電磁波による高熱でダメージを与える。

素組のガンダムジエンドがライトニングを助けようとしていた。

『今助け……な、なんだ?』

高熱によるダメージなので、迂闊に近寄ると高熱の餌食。素組レベルのラジエーターでは、すぐ熱暴走を起こしてしまう。

『耐久値が減ってる!』

ジエンドは撤退するも、途中で耐久が限界になり爆発四散。

「いくら素組でも余波で撃墜できるか?」

志帆はラインアークの素組ガンプラが妙に弱いことが気になっていた。普通に組んでも、あれくらいの攻撃の余波で撃墜は出来ないはずだ。

完璧に作り込んでいないからといって、2年前に暁中学校で羽黒戦が部分塗装と一部改造程度のデュナメスで暴れまわったことからわかる通り、一概に弱いわけではない。

特に初めて組んだガンプラなら、不出来でも『思い入れ補正』が働いて、それなりの強さにはなるはずだ。

今年の選手権中高生の部、東京の地区予選にて素組のガンプラを用いて圧倒的戦闘力を発揮したイヅナ・シモンというファイターがいた。シモンが素組故の低い火力を補うためにライフルとビーム砲を同時発射するなどよくディスティニーガンダムを使いこなしたこともあったが、あれは病気の弟が作ったガンプラという思い入れ補正もあってのことだ。

それが働いていないと思えるような性能。フルセイバーが目当てなら、ガンプラが好きであることが疑いようもないのだが、志帆の疑念は募る。

「伐採……あ」

霧間が戦っていたら、シールドチェーンソーが折れてしまった。それを見て、とっつきトランジェントが霧間のドムに飛びかかる。左の射凸型ブレードを突き出す。

『ヒャッハーッ! 今だ!』

「伐採」

しかし、霧間は腰からヒートマチェットを抜いてとっつきを腕ごと切断する。

『なんだと? これでは直してもらうしかないではないか!』

「直してもらう? どういうことだ?」

とっつきトランジェントのファイター、偽キジマの口走った言葉が志帆の耳に引っかかる。自分では直せないのか。

「そのガンプラはお前の作ったものじゃないのか?」

『そうだ! 俺たちには崇高な目的がある』

「フルセイバーが目当てじゃないのか?」

志帆は偽キジマの口から、今までの予想を覆す発言を聞いた。

『フルセイバーが何だか知らんが、そんなものより大事な目的だ!』

偽セカイも口を挟む。大事な目的、そのために彼らは動いているというのか。どうも、この偽セカイと偽キジマは単に有名人の名前を模倣した子供というわけではないらしい。

「不気味な奴らだ、何が目的だ!」

『俺たちの目的はアバーッ!』

偽キジマが目的を明かそうとした瞬間、霧間がマチェットを振るう。頭部パーツを縦に切り裂かれたが、何とか生きている。

『な、何をする!』

「伐採」

『そうじゃない!』

ピンチの偽キジマに対し、偽セカイが救援に向かう。その時だった。

「これでどうだ!」

アッシュのエクシアが大ジャンプをし、偽セカイのビルドバーニングに向かって急降下してきた。そして、手にしたバズーカを放つ。

『な、待てブッ!』

急に上から攻撃が来たので、偽セカイは回避できずに直撃弾を至近で受けてしまう。そのままビルドバーニングは爆散した。

『バカな!』

動揺した偽キジマは目の前の霧間に向かって、とっつきを放つ。しかし、霧間はそれを簡単に回避した。

それどころか、霧間のドムはタンクトランジェントの周囲をホバーで旋回、緻密に背後を取った。

『何?』

足の遅いタンクでは後ろを振り向くにも時間が掛かる。タンクで回転している間に、霧間のマチェットがトランジェントを上から叩いた。

「伐採」

頭部という壁を失ったトランジェントは、コクピットのある胴体を切り裂かれて爆発。強敵臭いのはこれで全滅しただろうか。

『まだだ、まだ増援はいる!』

「この人数、一体どうなってんだ!」

ただ、通信によるとまだ増援が来るらしい。どこからこんな人数を集めたのか、まったく理解出来ずに志帆は戸惑う。単にフルセイバーを勝ち馬に乗って手に入れたいだけの連中とは思えない、執念深さがあった。

『ぎゃああ!』

『何故だ! 何故お前達が……グワーッ!』

その時、通信に悲鳴が混じる。

「なんだ?」

『よくも私たちを騙してくれましたね。ラインアークの意思でないなら私は協力しません』

志帆達の前に降りたのは、ヘイズルであった。川本華の扱う機体で、氷霞は戦ったことがある。

「誰?」

ただ、氷霞は記念すべき初戦の相手を認識出来なかった。まだ機体の違いが微妙にわからないのだ。ヘイズルがガンダムmkⅡに似てるのもある。

「さっきの通信、聞いてたのか」

『ええ、詳しく問い詰めたら面白いことが聞けました』

志帆は川本が先ほどの通信を聞いていたのだと判断する。彼女もそれを受け、事情を聞いたらしい。

『マズイ、撤退だ!』

ブラックイーグルが反旗を翻し、ラインアークは弱腰になる。あっという間に逃げていったのだ。

アッシュが上空から降りて話に加わる。

「面白いこと?」

『灰色の疾風ですか? 可変機乗ってないとわかりませんね。……ラインアークに大量加入した新参者の本当の目的ですよ』

川本は直に、ラインアーク新参チームの目的を聞いたらしい。

『彼らの目的は、企業連の復活です』

 彼女の口から飛び出したのは、二年前に滅んだ企業連の名前だった。




 ラインアークお茶会

 白葉「最近、新入りが多いと思ったらそういう理由か」
 ロイ「そういうことだ。なんとか奴らを片付けないと、チームが立ちいかないだろう?」
 白葉「だったら、こちらから奴らにちょうどいいミッションを与えてやるまでだ。これが、最後のチャンスという意味でな」

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