日本に存在する、民間企業の連合。5年前、『ガンダムビルドファイターズ』の時代、前作『模型戦士ガンプラビルダーズビギニングR』において会長が撃破されたが、団体は残った。
強い力を持ち、組織票で政治をも思い通りに出来る。老人ホームを経営して、そこの入居者をバスで選挙に連れていって、自分達に都合のいい政治家に票を入れさせるくらいは平気でやる。
企業連に属しながら、実質従わない『キサラギ』や『有澤重工』の様な企業もいる。
暁中学校 弓道場
突然で申し訳ないが、暁中学弓道場に電流走る。
「高崎先輩がやめる?」
「なんでまた……」
「まさかあの事件のことで?」
男女問わず部員がざわめく。朝練の時間だが、顧問はいないし混乱が広がり過ぎて収縮が付かない。あの事件とは、当然戦を誤射したあの事故のことだ。
「あの事件?」
「箝口令が敷かれてるから言えない」
当時を知らない後輩が先輩に聞いてみるも、顧問が口止めしているため話すことが出来ない。
「先生は?」
「高崎先輩のうち。どうやら今日は学校来ないらしいよ」
それ以前に、この事態を収縮すべき顧問がいないことが問題なのだ。一応、菊乃が退部届けを書いたことを伝え、弓の稽古を指示して顧問は彼女の自宅に向かった。だが、その指示がかえって混乱を招いた。
やめる理由の無い菊乃の退部、そして顧問無しで弓使うのはマズイだろという事故があったからこその警戒が原因だ。
「よっす、なんか先生が車出してると思ったら、まあそうなるな」
そこに現れたのは、卓球部の顧問である遠藤だった。練習をキャプテンに任せ、混乱渦巻く弓道部をまとめるために来たというわけだ。
「おう、弓道部、今日は朝練出来ないぞ。弓道部は顧問無しで弓使えないからな。顧問から基礎トレーニングの指示があるならそれを続けても構わないが、弓は射るなよ」
かつて部員だった戦が弓の事故で負傷したことから、多少神経質になっているようだ。弓道部の面々は、トレーニングの指示など受けていないので解散せざるをえなかった。
前日 企業連レセプションパーティー会場
葉月は戦と菊乃が激闘を繰り広げた夜、父親の経営する会社の関係でレセプションパーティーに参加していた。『機動戦士ガンダム』でガルマがパーティーしていた様な場所で、企業連の重役が今後の方針を話し合うのだ。
「では、その方向で」
葉月はベランダに出て、今度練習試合をする学校の生徒と連絡を取り合っていた。天城学園のガンプラバトル部、チーム『ヴァリアントヘブンズ』との練習試合だ。
スティック型端末にホログラム画面を映し、部長同士で打ち合わせする。葉月は黒いドレスを着て、パーティーに出席している。男女問わず、中学生とは思えない彼女の美貌に目を奪われる。制服姿でも隠せない美しさであるが、戦達は特に魅了されることなく普通に接していた。
単に慣れたのか、戦と辰摩がそういうものに興味無いのかは不明だ。葉月はベランダから室内に戻る。扉の近くには有澤重工の社長令嬢姉妹である三人がいた。
「あ、葉月さん。こんばんわなのです」
「あら、電ちゃん。来てたの?」
有澤重工の社長、有澤隆文の娘は暁、雷、電の姉妹。見る人が見れば、某駆逐艦のそっくりさんである。『駆逐艦をハイエースしてダンケする』もそうだが、『駆逐艦のそっくりさん』もわけわかんねぇなもうこれ。
彼女達が着ているのは、通っている水雷学園初等部の制服であるセーラー服。校章が入っていればなんでもいいので、デザインも相まって駆逐艦のそっくりさん度が増している。
「響ちゃんは?」
「ロシアに留学なのです」
葉月はもう一人の姉妹の居場所を聞いた。彼女は今、ロシアに留学している。響がなにを思ってそうしたのかは、姉妹にもよくわかってないところだ。
「あの子、昔から姉妹とは独立してたね」
響は割と自由人の気があり、姉妹から離れて行動することも多い。それにしても、何故留学先にロシアを選んだのかは不明だ。
「それにしてもお父様ったら、なんでドレス着せてくれないのかしら? こっちの方が似合うって、まぁベタ誉めされたら悪い気はしないけど……」
「お父さんは成長した暁ちゃんのドレスを楽しみにしているのです。楽しみはとっておいてあげたいのです」
「あの人らしいですね」
父親である有澤はこだわりの強い人物だ。お世辞などではなくガチで言っているだろうことを葉月は察する。
「せっかくだから、本物のレディになるために参考にできる人探したら?」
雷がパーティに来ている女性陣を見る。各企業の社長夫人、令嬢も一同に会している。老人の隣に、二人の美女がいた。
「BFFワークスチームの女王、リリウム・ウィルコットさんに先代女王、メアリー・シェリーさんね。隣にいるのはワークスチームのコーチ、王小龍。ストリクス・クアドロを駆る、戦場の政治屋ね」
葉月はワークスチームのこともあり、彼らをより強く把握していた。企業連にも細かい勢力は存在する。BFFは有澤工業と同じ『GAグループ』の企業だ。ちなみに葉月の父親が経営している『キサラギ』は『クレスト』、『ミラージュ』と同盟関係にあるがGAほど強固な繋がりではない。
お手本を探していた有澤姉妹の元に、一人の女性が声をかける。
「おや、有澤さんの娘さん達も来ていたか。存外、有澤社長の自慢も間違ってはないというわけか」
インテリオルのワークスチーム、そのエース、ウィン・D・ファンション。インテリオルを去った霞スミカの後続にして、高機動力に大出力のエネルギー兵器を扱う彼女の愛機『レイテルパラッシュ』はGAのガンプラにとって苦手な相手なのだ。
現に、暁らは緊張している。ワークスチーム同士は強いライバル関係にあるインテリオルとGA。インテリオルユニオンが企業の名前で、アルドラ、トーラスを含めたグループ名はインテリオルグループなので混ざらないように注意。
ウィン・Dとしては褒めたつもりだったが、あまり暁たちには伝わっていないようだ。葉月は、存外言葉というのは難しい、と思ったのだった。
翌日 夕暮市道中
菊乃の家に向かうのは、黒のレクサス。それを運転するのは弓道部顧問の牟田口だ。難読なので生徒にはあまり一発で読んでもらえないが、読みはインパール作戦なんて考えてちゃった無能と同じ『ムタクチ』なので覚えておこう。難読苗字シリーズだ。
初老の男性であるが、外で会えばレクサスに乗っていることはおろか教師であるとも思えないような小汚いハゲダルマである。
担当教科は社会だが、小学生程度の知識しかない。教育委員会から押し付けられたお荷物である。というか生徒以下の成績でどうやって教室になったというのか、よく採用されたものだ。
生徒からはインパールというあだ名を付けられているが、その由来に気づかないほど知識が無い。
「ここだな」
牟田口は菊乃の自宅を知っている。突然、退部届けだけを出して消えた菊乃を連れ戻しにきたのだ。菊乃の自宅はごく普通の一戸建て。普通、というのはデザインの話であり、サイズは十分大きい。親子三人暮らしには大き過ぎるほどだ。
「なんだこの人混みは?」
牟田口がそこで見たのは、やけに柄の悪い高校生と中学生の群れだった。全員男子で、青い法被を羽織っている。ただ、牟田口には制服に見覚えがあった。
「水雷学園だと? なんであいつらが……」
ベーシックな学ランは、旧海軍の士官学校の流れを汲む『水雷学園』のもの。弓道の大会では菊乃の登場まで牟田口に辛酸を舐めさせ続けた学校だ。
法被には『加賀』と、ある正規空母の名前が書かれている。この加賀という名前、牟田口にとっては単なる正規空母の名前ではない。
牟田口の登場を二階の窓から見ていたのは、橙の胴着を着て深い緑の袴を穿いている女の子だった。
「む、来ましたよ、多聞丸」
「そうか、飛龍」
牟田口の出現を受け、監視チームは行動を開始する。窓から様子を伺っていたのは戦と女の子、そして一人の老人だった。
女の子は『艦隊これくしょん』に登場する飛龍のそっくりさん、老人は飛龍の祖父で水雷学園の弓道部顧問、山口多聞だ。
「よし、出撃だ!」
「まぁ待て戦。加賀の親衛隊がいれば奴も迂闊に手は出せまい」
一階へ降りる戦に、多聞が声をかける。この落ち着きぶりから、戦は多聞の戦歴を感じた。
水雷学園の生徒が菊乃の家にいるのには理由がある。菊乃が弓道部をやめたいと思っても、戦の事故を隠蔽までして彼女を留めた牟田口が何をするかわからない。そこでその旨を菊乃の知り合いであった加賀に話したら、出陣してくれたというわけだ。
そして牟田口の人格を知る多聞丸がその話を聞き、ついてきた。牟田口と多聞丸は弓道部の指導者同士で、悪い意味で知らない仲ではない。
加賀が行くならと、その親衛隊もついてきた。加賀親衛隊は柄が悪いが、彼女には頭が上がらない。ある意味加賀が制御装置になっている。見かけのインパクトがあるため、加賀も連れてきた。
「加賀さん! 先生来ましたよ!」
「あんな人を先生と呼ぶのはやめなさい」
下では菊乃が慌てて加賀を呼んでいた。青い袴にサイドテール、間違いなく艦これの加賀のそっくりさんだ。
「おい! 高崎! これはなんだ!」
「おおん? 誰の許可があってここに来とんじゃい! 加賀さんのお友達に手ぇ出そうたって、俺らが許さんからな!」
牟田口が玄関の外から怒鳴るも、加賀の親衛隊に阻まれてこちらまで来られない。そこに戦と多聞丸が出ていき、牟田口を迎え撃つ。
「久しぶりだな、牟田口」
「貴様、山口多聞! 貴様の差し金か!」
「いかにも」
多聞丸を見た牟田口は、勝手に全ての元凶を彼だと決めつける。戦を軽んじての判断だが、多聞丸は仮にも教師に反抗している戦の立場が悪くならない様に、肯定した。
実質、多聞丸も牟田口には物申す事があるため、遅かれ早かれ似た様なことをした可能性があるため嘘ではない。
戦も教師相手だが、微塵も認めていない相手だけに強気の対応だ。
「お前では話にならんな、もっと偉い人を呼んできてもらおうか」
「羽黒、教師に向かってその口の利き方はなんだ!」
「だから偉い人を呼べと言ったのだ。教師なら俺の言っている意味がわかるだろう?」
レイヴン特有のアオリジツが炸裂。牟田口=サンのプライドは爆発四散。
「偉い人を呼べだと? ならば貴様の成績がどうなってもいいのか! 受験の時困るぞ?」
「いや、すまんな、本当すまん」
成績の話を出されて戦も弱気になった。牟田口が溜飲を収めていると、間髪入れずに戦が切り返しを放った。
「無茶振りをして、本当にすまない。お前に高度な日本語は通じないのだったな」
「テメェ!」
牟田口は予想外の反撃に、一気に血圧が上がる。顔が既に真っ赤だ。
「どうやらお前はこちらの首元にナイフを突き立てているつもりらしいが、それは幸せな夢だと言わせてもらう。担任でもなければ、これから教師でもなくなるお前がどうやって俺の成績に手を出す?」
「調子に乗りやがって! 覚えていろ、どうなっても知らないからな!」
「それに、既にお前は自らの墓穴を掘り、後は納骨するだけの段階まで来ている。はよ入れ、浄土真宗はお経が長いから通夜から初七日まで一気にやると、だいたいみんな疲労困憊だ」
牟田口は戦の煽りに、目眩がするほどキレていた。だいたいの生徒は恫喝すれば済むのに、戦はまるで怯まない。そこが気に入らなかった。
「どういうつもりだ! 生徒如きが教師をやめさせられるとでも思ってんのか!」
「忘れたのか? あの事故。まぁ、人類最小の脳でギネス持ってる人は忘れても仕方ないか」
「その程度か! ずいぶんと調子に乗ってくれたな!」
戦の自身の種を知り、牟田口は勝ち誇る。それなら、徹底的に隠蔽してある。その程度で調子に乗るとはやはり子供か。牟田口は油断していた。
「はい、じゃあどれがあの事故かな?」
戦はバサバサと書類の山を落とした。それは牟田口がこれまで起こして隠蔽した事故事件の資料だった。レイモンドが数秒で調べてくれた。というのも、レイモンドは牟田口がこの学校にいると知った時からマークはしていたので、集めた情報をプリントアウトするだけだった。
「いや面白いもん読ませてもらったよ。あんたみたいな役立たずでも、学校の用品を企業連から仕入れさせる先兵やれば不祥事をもみ消してもらえるんだな」
牟田口は青ざめた。今まで消したと思っていた不祥事が残っていたから当然だ。レイモンドくらいの腕前なら、一教師、それも無能のもみ消したことくらいすぐわかる。
「クソがぁッ! こうなったら体でわからせてやる!」
牟田口が戦に殴りかかる。結局は暴力に訴えるしかないのだ。しかし、Wiiスポーツのボクシングで鍛えた戦には瞼に蝿が止まるくらいトロいパンチだった。
「よっ」
「体罰を避ける奴がいるか!」
その瞬間、パシャリとシャッターが切られる。菊乃の家の屋根に、また一人水雷学園の生徒が乗っていた。
「青葉、見ちゃいました!」
一眼レフで撮影していたのは青葉だ。艦これの重巡洋艦『青葉』のそっくりさんである。呼んでもないのにスキャンダルの匂いを嗅ぎつけてやってきたのだ。その隣には見知らぬカメラマンがいた。
「青葉、その人は?」
加賀がその人物の正体を聞く。白基調で赤のラインが入ったパーカー、近くに停められた白いバイク。戦はなんとなく察した。
「どう? いい画でしょ?」
「カメラ仲間の剛さんです」
今度は仮面ライダーのそっくりさん。だんだんと菊乃の家の周りがカオスになってきた。
「追跡、撲滅! 何れもマッハ!」
何を追跡して撲滅するのかは言うまでもない。詩島剛は仮面ライダーのそっくりさんであり、反企業連のカメラマンとして有名なのだ。独自に牟田口と企業連の癒着を嗅ぎつけ、青葉とここに来たのだ。
「許可なく撮影とは! 降りてこい! カメラを渡すんだ!」
青葉は恫喝する牟田口に懐中電灯で『ワレアオバ』と信号を送る。いい具合に、望む画を誘導する技術に優れている。
「降りないならこちらからいくぞ!」
牟田口が家の屋根に登ろうとすると、青葉と剛はカメラを連写する。完全に住居不法浸入の証拠写真だ。
「言っとくけど、勝手に人の家上がったら犯罪だから。進兄さんに通報しちゃうよ?」
剛の口ぶりからは仮面ライダードライブのそっくりさんもいるらしい。しかも刑事で。
「己、調子に乗りよってからに……」
牟田口が高血圧でフラついて、何もできないので帰ることにした。とりあえず、この無能が学校を辞めてくれないと菊乃は安心して通学出来まい。
「さて、これからどうするか」
戦は次のプランを練っていた。相手は教員、バトルで退けられる相手ではない。だが、秘策はある。
夕日ヶ丘市 市役所
夕日ヶ丘市の市役所に、黒塗りのリムジンが止まった。そのダックスフンドの様に長い車体は、狭い日本の道に不向きだ。
そこから降りたのは、白髪の老人。『私立アクトニウム学院大学』の校長、千田十五郎だ。その隣に立つのは、学園生徒会長の天野照彦。この町はアクトニウム学院大学の『実験都市』であり、行政ごとアクトニウムの管理下にあるのだ。
アクトニウムが行っている実験は、あらゆる学問を利用して、いかに人間を管理するか。『管理実験』というものである。生徒会長の天野が、実験の責任者であった。
市役所は周りのビルが古いのに反して小綺麗で、中も綺麗そのもの。あちこちに美術品がかざられ、バブルにタイムスリップしたかの様な気分を味わえる。
二人は役人に案内され、市長の待つ応接間まで向かう。市の規模に不釣り合いなほど豪華な応接間では、先に市長が待っていた。
このヨボヨボの老人が、夕日ヶ丘市長だ。長らく当選し続け、日本でも指折りの就任期間を持つ。
「ようこそ、いらっしゃいました」
「市長、暁中学がガンプラバトル部を設立したというのは本当か?」
卑屈にもへりくだる市長に、天野は座ることなく問いただした。市長はその情報を知っていた。
「その様です。今、認可申請の書類を教育委員会から預かっているところです。天野様の判断を仰ぐべく、お待ちしておりました」
「迂闊に手を出すなよ。首長が教育委員会に口を出すのはマズイ。僕がせっかく学校内で始末つけようとしているんだ」
教育は公平でなければならないため、首長が教育委員会に口を出すことはできない。回りくどい手段で暁中学のガンプラバトル部を潰そうと天野がしているのも、そうした理由からだ。
アイドル研究会に不正なチップを渡し、前生徒会長にガンプラを提供したのもそのため。
「ふん、モルモットのゲージにドブネズミが逃げ込んだよ。菌が移らないうちに始末せねば」
「ドブネズミ、ですか」
市長は天野の苛立ちを理解できなかった。天野はこれまで、単なる転校生は放置していた。転校生ともなれば、新しい学校に馴染むため、その学校のルールに自ら染まる。そうなれば天野の想定外のことをやらかすことはなかった。天野が恐れているのは、外的要因による支配体制の崩壊だった。
転校生は馴染むべくルールに染まる。そうでなければ学校から浮いてしまい、天野が困るほど大きな変化を起こすための人員を集めることはできない。そのため、どれだけ転校してこようが新しいモルモットが増えたに過ぎなかった。
「ドブネズミの品種は『如月葉月』、企業連でもなかなか決定に従わない『キサラギ』の社長令嬢だ」
しかし、今回ばかりは違う。企業の令嬢という、大きな力を持った人物が転校してきたのだ。
天野はこれまで、そうした人間が来ないように、そして管理し易いように夕日ヶ丘市内の学校の偏差値をわざと落としていた。有名な進学校がなければ、社長令嬢など転校して来なかったはずだ。
しかし、葉月は来た。皮肉にも、そうした企業の喧騒から町を遠ざけたことで、葉月を企業の争いから遠ざけたいキサラギ社長の思惑と一致してしまったのだ。
「大丈夫なのですか? なんとか排除を……」
「いや、これはかえってチャンスだ」
心配する市長に対し、天野は断言した。本当は死ぬほど焦っているが、自分に言い聞かせるように言った。
「社長令嬢とはいえ、この僕の管理から逃れられない証明としてみせよう。暁中学か、あの羽黒戦を最高点、最低点、平均点、何れに取っても、暁中学の人材などでは僕の管理を破壊する力がある組織など作れない」
天野は、以前編入試験を受けにきた戦を思い出す。暁中学の生徒があのレベルなら、いくら指揮官が有能でも管理を破壊するのは不可能だ。
「大会の予測はどうされます?」
「直す必要は無い。僕の管理に逆らえばどうなるか、無様に負けさせてやろう」
不敵にも、天野はこの不測の事態を支配体制の強調に使うつもりだった。支配体制は公言していない。だが、新しいことをする者が無様に負ければ、他にも新規参入しようとする者が減るだろうとふんでいた。
その前に、なるべく管理が崩壊しないように始末することも念頭に置いている。表に出ない様に処理するのが一番いい。
「イレギュラー、キサラギの令嬢には早いところ退場してもらう」
天野は着々と用意を進めていた。イレギュラーである葉月の排除。管理者はその仕事を全うしようとしていた。
次回予告
辰摩「前生徒会長による襲撃?」
前生徒会長「イレギュラー、如月葉月を始末する。そうすれば俺の人生はやりなおせる!」
葉月「次回、『認識不足』」
戦「あんまり好きじゃないんだよね、こういうマジな勝負ってのは」