当然、というべきか、ガンプラ学園の優勝である。メインのファイターはキジマ・ウィルフリッドとスガ・アキラ。
「フヒィー! 地獄へようこそ、今からお前の顔の皮を剥ぐんだ、いいだろう?」
いつもの倉庫にやってきた葉月だが、なんか変な格好の人がいたので立ち止まる。何故かスーツを着て倒れているレイモンドに向かって、アルミホイルを貼った段ボール製の刃物を突きつけている。声からして、戦だろう。接近もどうやったのか、ドムめいてスライド移動だった。
「何をしているオフェンダー=サン。早く皮を剥げ」
「わかってるってスキャッター=サン。しかしこうも生き残りが少ないとフラストレーションが溜まっちまうな」
電柱みたいなものを被った桜が戦演じるオフェンダー=サンに近寄る。これは何をしているのか。
「抗争の時点でダークニンジャ=サンが粗方殺したからな。残っている生命反応は無い。我々を除いてはな」
また何かのごっこ遊びなのか。レイモンドが加わったせいで小道具が豪華になっている。
「あ、葉月。今みんなでニンジャスレイヤーごっこしてたとこなんだ」
「そうですか」
台本を手にした辰馬が状況を伝える。いつものことであった。なんだか葉月もだんだん慣れてきた。
「はい、ではみなさん、ニンジャごっこはそのくらいにして、セレモニーの準備をしますよ」
葉月は全員を注目させて、今日することを伝える。ガンプラバトル選手権中高生の部開催を祝して、オンライン上でセレモニーをすることになったのだ。
「拠点次第では遠くなりそうですので、早めに出かけましょう。このセレモニーには準優勝までした、あのチーム『カウントカイザー』が来るらしいですよ。それも卒業したメンバー含めて」
葉月によると、準優勝チームのメンバーまで集まるとのことだ。優勝は相変わらずのガンプラ学園だったが、そうとなればいくしかあるまい。
「カウントカイザー?」
「戦は有名人とか疎いもんな。東京で、あのフロムソフトウェアの神社長と喫茶店で相席しても気づかないほどニブチンだし」
戦はカウントカイザーの名前を初めて聞いた。辰摩からすれば戦の疎さはいつものことだ。戦場ならば機体の特徴で、どんなにマイナーな傭兵でも特定するのに、現実ではこの有様。憧れの神社長も『総監督マシーン改』に乗っていないと分からないくらいだ。
「カウントカイザーというのは、昨年の準優勝チームです。ユニコーンガンダムをベースにした『カイザーユニコーン』三機のチームで、圧倒的性能と堅実な戦法でガンプラ学園に迫った強豪です。セレモニーの発起人でもあります」
葉月は簡単にカウントカイザーの説明をする。以前の戦いでアイドル研究会から接収、デコレーションを解除されたパソコンで動画や画像を見せての解説だ。カイザーユニコーンは青いユニコーンで、主にバンシィ・ノルンの装備案が採用されている。戦況によっては他の装備も使うようだ。
「バトルシステムのアップデートなら終わったよ」
桜はスキャッター=サンの被り物を脱いで、バトルシステムのアップデートが終わったことを告げる。前回、ハッキングチップを使われてしまったので急いでアップデートしたのだ。オンラインにバトルシステムを繋げば、自動でしてくれる。
このバトルシステムをオンラインに繋いで二人が、葉月の家にあったオンラインシステムでもう二人が出撃する。バトルシステムで葉月と辰摩が、オンラインシステムで戦と桜が出撃となった。レイモンドがオペレーターをするには、オンラインシステムではなくバトルシステムを使うしかない。
「よし、出発するぞ」
戦たちは出撃し、セレモニー会場に向かった。拠点は葉月個人のアカウントだとコロニー付近の宇宙だが、チーム『Gブレイカーズ』となったことで戦艦が使える様になり、自由に大気圏を突入出来る。
アーガマっぽい戦艦が地球まで戦達を運び、大気圏を突破したら出撃だ。
「羽黒戦、ガンダムデュナメス・イェーガー、ミッション開始!」
「権堂辰摩、ガンダムグライヴァーチェ、出る!」
「野崎桜、ガンダムGアルケイン、出ます!」
「如月葉月、ザクプレリュード、出ます!」
機体が飛び出し、目的地へ向かう。男子勢のガンプラはGNドライヴ持ちなので飛べるが、ザクはそうもいかないので変形したアルケインに乗っていた。
「あれ、デュナメスが強化されてる」
葉月は戦のデュナメスが改造されているのに気づいた。アームアームズのパーツを使い、ハンドガンのホルスターを付ける脚部のハードポイントを3ミリ穴に変更。肩の後ろにもハードポイントを追加した。
脚部にアームアームズから拝借したと思われるミサイルポッドが装備され、肩には見覚えの無い細いアームパーツが装備され、先端に予備の銃が取り付けられている。
「戦さん、そのアームは自作したんですか?」
「東京でバトルした女の子から貰った」
そのアームは、東京でホシノ・フミナから渡されたものだ。戦にはそんなもの作る技術は無い。
セレモニー会場は地球連邦の首都、ダカールだ。度々、ガンダムシリーズでもジオン同窓会の会場として利用されている。砂漠を飛行していると、ダカールが見えてくる。
「砂漠地帯は現在、非戦闘地域となっています。公式の決定ではありませんが、セレモニーの運営委員会が警備の機体を置いて、出席者の安全を確保しています」
葉月の説明と食い違い、砂漠には多数の残骸が落ちている。まだ煙が上がって炎上している。撃墜されて間も無い機体だということだ。
不安を覚えた戦が、葉月に尋ねる。
「おい葉月、本当に大丈夫か? 騙して悪いが、って展開になりそうだ」
「おかしい。案内の機体が誰もいないなんて……」
一行は一抹の不安を覚えながら、ダカールを目指す。その時、砂漠からバズーカ弾が飛んできた。
「危ね!」
葉月を狙ったそれに反応した戦は、デュナメスのシールドでザクを庇う。シールドは破壊されたが、機体は無事だ。
「戦さん、大丈夫ですか?」
「この程度ならな!」
戦はライフルを敵の居場所に乱射する。砂丘の中からデザートカラーのバクゥとラゴゥが複数出現する。モノアイは赤だ。
『U1、目標を確認、ターゲット了解』
「UNACだと?」
戦は敵が無人機であることを瞬時に察知する。砂丘からは次々とバクゥとラゴゥが出現する。辰摩がグライヴァーチェのミサイルを放ち、一気に片付ける。すると今度は、空から大量のフラッグやイナクトがやってくる。これもUNACだ。
「なんだこれ!」
「とにかくダカールへ! そこなら味方も多い!」
圧倒的物量で迫り来る敵に、全員は一時退避する。戦は振り向きながら、時折撃って敵の頭数を減らしている。バックで他のガンプラと変わらないスピードで動いている。
「見て、ダカールが!」
桜がアルケインのセンサーで発見したのは、混乱するダカール。多くのガンプラが撃墜されており、生存する機体はごく僅かだ。
「残存機体を援護、一旦体勢を立て直します!」
『了解!』
葉月の指示で、それぞれ残存機を回収することにした。Gブレイカーズが全機散開し、レーダーの味方信号を探す。
戦が見つけた反応は一つ。ダカールの議会内部だ。崩壊した議会は、『機動戦士Zガンダム』でシャアが演説をした場所だ。そんな場所も、天井が抜けて塹壕代わりになっている。そこにいたのは、見覚えのある黄色いジムだった。黄色に塗られたジム・コマンドだ。
そのジムの背後を狙うバクゥ二匹をシレッと片付けながら、戦は接近する。こういう、サッと敵の頭数を減らせるエースの存在は貴重だ。
「あの機体は!」
『あなたは?』
戦は回線を開いて通信する。戦にはジムを黄色くする人物に心当たりがあったのだ。予想通り、そのジムはフミナのものだった。一方のフミナは回線に映った顔とデュナメスのアームパーツで、それが戦のものであると判断した。
「Gブレイカーズ、羽黒戦だ。チームメンバーは?」
『こちら、イエロー。ホシノ・フミナ。戦さん、チームは私しか残ってないけど、先に撃墜されたメンバーがラルさん呼んできてるから、しばらく持ちこたえましょう!』
フミナの友人が救援を呼んでいるらしい。だが、この敵勢ではいつまで持つか。
「なんかデカイ反応があるぞ」
『これって、シャンブロ?』
オマケに、大きな熱源が近づいている。フミナは、それが大型モビルアーマー『シャンブロ』であることに気付いた。
「シャンブロ? 何だそりゃ? 何でもいいから奴の攻撃手段を教えてくれ。片付ける!」
『ちょっと待って! 流石に危険よ!』
デュナメスはフミナの制止を聞かず飛びだした。目的は、議会の外近くに落ちていたビームライフルの確保。デュナメスは弾切れなのだ。
「これだな」
そのビームライフルを右手に装備。これはジェスタのライフルだ。それを隙とばかりにジンがデュナメスに駆け寄るが、デュナメスには隠しミサイルがある。フロントスカートのミサイルでジンを返り討ちだ。
フミナはこのまま待っていても持ちこたえられないので、戦に情報を送る。
『羽黒くん、そのライフルの予備マガジンが腰に付いてるはずよ』
「これか、助かる!」
ちょうど3ミリ軸ジョイントの予備マガジンラックも回収。ジェスタ・キャノンの腕に付いていたものが、改造で腰に付いたのだ。これで戦闘が捗る。その時、シャンブロのリフレクタービットが戦の前に現れた。塹壕から飛び出た戦を狙った攻撃だ。
『シャンブロはビームを反射して攻撃するの! 避けて!』
複雑に反射するビームを回避した戦だが、回避地点でもリフレクタービットが並んで待っている。
『またよ!』
「チャンスだろうが!」
戦はフミナのアドバイスに反して、リフレクタービットに向かってビームライフルを放つ。すると、リフレクターを反射してシャンブロの砲口へビームが到達、ビーム砲を一つ破壊した。
戦は反射を見送ることなく、自分の真下にいた着地硬直かり狙いのジンにもコッソリとビームを当てていく。この撃墜ペースにフミナは息を呑んだ。自分と張り合ったあの実力は、ガンダムブルーマグノリアのものだけではない。むしろ、羽黒戦が使い熟してこその戦果だ。
「楽勝!」
一度見れば、このくらい単純なパターンであれば回避出来る。戦のゲーマーとしての勘が冴える。
『そんな倒し方あるのね。ユニコーンガンダムはビームマグナムで倒したのに』
「まだだ。これビーム砲全部潰してから本番の奴だろ? 他のゲームだと」
戦はEz-8のマシンガンを拝借し、左手に装備した。その瞬間、隣からバクゥが三匹出現した。レーダーの反応は、敵だ。
「オラァ!」
マシンガンをぶっ放してバクゥを撃破するも、マシンガンは弾切れだ。リフレクタービットを破壊する手立てにしようと思っていた戦は、新しい実弾武装を探した。
『そのマシンガンも予備の弾倉が腰に付いてるわ』
「オッケー、これだな」
フミナからの指示で、予備のマシンガンを発見した。それでリロードし、リフレクタービットを叩き落とす。飛んでいる敵にマシンガンは有効。微調整しながら撃てる。
「敵を撃滅する!」
戦とシャンブロの激戦が開始された。
一方、辰摩は窮地に陥っていた機体を発見。救援に向かう。その機体はグライヴァーチェの原型機とも関わり深いガンプラだった。
『参りました、式典用なので大した装備が……』
ガンダムナドレを改修したガンプラで、脚部の赤い袴パーツも相まって巫女の様に見える。武器は扇のみで、群がるバクゥに苦戦を強いられていた。
「グライヴァーチェの装備は、ミサイルだけじゃないんだよ!」
そこに割り込み、辰摩はグライヴァーチェの両手に装備したコンテナから銃身を伸ばす。これは片手につき二門装備された機関砲だ。
「行け!」
機関砲を連射し、バクゥを撃墜する。その隙にナドレが下がった。
『ありがとうございます!』
「大丈夫? 損害は大きいみたいだけど」
隣に立ち、辰摩はナドレの損害を確認した。機体名は『ガンダムメイデン』。味方扱いなので、機体名が表示された。
『武装が不足しています。何分、式典用ですので』
よく考えてみれば、大会用の機体でオンラインに潜ること自体迂闊なのだと辰摩は思った。そういう意味では、ガンダムメイデンの様な式典用機体は欲しいなどと考えていた。
「とにかく、うちのチームと合流しよう。信号弾飛ばすと敵が集まるかもしれないから、レーダー頼りだけど」
『ええ、そうしましょう』
グライヴァーチェとガンダムメイデンは同時に行動した。とりあえず、あの爆炎が舞ってる方へは行かないようにしよう。
『あれ、何ですか?』
「うちの戦が暴れてるんでしょ。あいつ、だいたい全部焼き尽くすから。今のうちに退避しよう」
流石にガンダムメイデンのファイターは引いていたが、辰摩は慣れっこだった。
桜はまだ無事なザクの部隊と遭遇した。このザクチーム。旧ザクで揃えている。中々渋いチームだ。
「今来たんですか?」
『いや、式の前からいたんだが、急に襲われてな』
旧ザクチームはなんと、この非常事態に初めから参加して生存していた。練度の高いチームということか。旧ザクもビルダーズパーツや他のガンプラのパーツに頼らない独自の改造が施されている。背負った煙突の様なパーツは何だろう。
『あんたらのチームは?』
「今来たばかりです」
連絡を取り合っていると、物陰からゲイツが出現した。瓦礫の影から飛び出し、剣で襲い掛かってくる。それを見た黄色の旧ザクが剣を素手で叩き落とし、膝蹴りを喰らわせる。
「格闘技? 凄い!」
『俺はチーム「サンダーハウス」の伊達明。お嬢ちゃんは?』
「私はチーム『Gブレイカーズ』の野崎桜です」
このチームは『サンダーハウス』というらしい。旧ザクのいぶし銀っぷりに桜は目を輝かせる。
『じゃ、一旦生存チームで集まろうか。ネットで情報が流れて救援も来るらしいし』
「そうですね」
桜とサンダーハウスは戦が暴れているだろう爆煙を避けて移動を開始した。
「では、生存した機体はこの地点に合流お願いします」
葉月はあらかたの敵を片付け、待避できる場所を用意していた。場所はダカール郊外。周りが砂漠だと返って見つかりやすい気もするが、救援が来ているなら見つけてもらうことが優先である。それに、敵は多くがダカールに突入しており、外にはいない。
葉月が連絡を取り合っていると、背後からダナジンが飛びかかる。無線の操作は明らかな隙だ。しかし、葉月も無根拠で油断しているわけではない。
ダナジンは横から飛んできたビームに撃ち抜かれた。誰かが狙撃しているのだ。
「しかし、先程から凄い支援ですね」
狙撃手の存在には、葉月も気付いていた。味方の様だし、場所もわかっている。ビームの飛んできた方を計測すれば割り出せる。
「数発ごとに移動ですか。それをする相手でもないでしょう」
狙撃手というのは得てして、腕が無い者は一箇所に篭って狙撃しがちである。しかしこの狙撃手、数発撃ってはポイントを移動している。
「おや、何か来ましたね」
グフを乗せたドタイの到着を見送り、葉月は全軍に指示を出す。
「全軍、救援が到着しました。各自、撤退を願います! ポイントをマップに示します」
『了解! 戦は来ないと思うけどね!』
辰摩によると、戦は従わない模様。それもそのはず、戦はシャンブロと戦っているのだ。あれがこちらの合流を嗅ぎつけたらマズイ。
戦だけでどれほど持つか。葉月は当然として、助けに行くこととした。
「戦さん、持ち堪えて下さい。今行きます」
『いや、いいや。もうすぐ終わる』
「え?」
戦から返ってきた答えは意外なものだった。葉月は既に移動を開始していたが、ビルの上に乗って様子を見た時、その理由がわかった。
「あれは!」
シャンブロは全ての砲口を潰されていた。シャンブロなら葉月のいた場所にまで攻撃を仕掛けてきてもおかしくなかったが、その様子が無かった。この理由は、これだ。
「楽勝!」
戦はシャンブロをフミナから借りたサーベルで貫く。デュナメスも小破していたが、それでもほぼ素組のガンプラで撃破したという事実はフミナを驚愕させた。
シャンブロが崩れ落ちる。これが、あのガンダム・ブルーマグノリアを使いこなした男の実力か。
「これで一先ず安心だな」
『待って、そうでも無いみたい!』
戦が気を抜くと、フミナのジムが高いレーダー性能で何かを捕捉した。それは、ダカールに向かってくる大型の機影だ。
『これ……シャンブロ!』
「マジ?」
それは複数のシャンブロであった。一体は戦で倒せたとはいえ、これだけの数では話が違う。
「さすがにもう無理だぞ? 一体だから対処出来たんであって、複数クエは複数故の難易度が……」
『撤退しましょう!』
戦とフミナが撤退を決める。その時、シャンブロが独りでに爆散した。シャンブロには複数の穴が開けられていた。
「なんだ?」
『あの機体は!』
フミナがダカール上空に粒子の翼を広げて現れたガンプラを見つけた。そのガンプラはダブルオークアンタにも見えたが、各部のコンデンサーがクアンタムバーストの様に展開している。よく見ると、他のソレスタルビーイング製ガンダムの、背中のコーンみたいな形状であり、コンデンサーではなかった。
『あれ全部GNドライヴなの?』
フミナは絶句した。クアンタではコンデンサーだった場所がドライヴ。それでクアンタムバーストしているのだとすれば、想像出来ない脅威だ。無論、操作性も劇的に劣悪だろう。
ダカールを虹色の粒子が覆う。そのガンプラは、フミナ達の側に降り立った。
周りの敵機体が勝手に爆発していく。GN粒子そのもので攻撃しているのだ。
『大丈夫? ここは私に任せて』
フミナと戦に通信してきたのは、白衣を着た女性だった。モニターを介して通信しているため、顔がわかる。 『あ、貴女は……星影雪菜さん?』
「誰なんだ?」
フミナはその人物を知って驚いていたが、戦は詳しくなかった。星影雪菜がPPSEの、現ヤジマ商事のプラフスキー粒子研究部門の責任者であることなど、当然知らない。
『敵影、消滅です』
「今ので全部倒したのか?」
フミナのレーダーからは、敵の姿が消えていた。あのGN粒子散布で敵を倒したのか。このガンプラ、なかなかの性能である。戦もこれと戦うのは避けたいと思った。
「ん? あの機体は?」
安心している戦達の目の前に、灰色のジャハナムがいた。無人機では無いみたいだ。雪菜も無人機だけを狙って攻撃していた。例え敵でも、有人機は攻撃していない。
ジャハナムはライフルを装備、背中の左側にはキャノンが取り付けられている。損傷は一切無い。
『ふん、面倒なことになったな。如月葉月、やはり奴がイレギュラーか』
「誰だ!」
『星影雪菜がいるのなら撤退せざるをえないな。覚悟しておけGブレイカーズ、不穏分子は必ず抹殺する』
それだけ告げると、ジャハナムは去っていった。戦はその声に聞き覚えがあった。
「あの声……」
眠気を呼び覚ます声だ。全校集会とか、そういう眠くなる場所で聞いた覚えがある。だが、とにかく敵であることは確かだ。
『見て! カウントカイザーの機体が!』
フミナはジャハナムの足元に転がる残骸を見つけた。それは前回の準優勝チーム、カウントカイザーのカイザーユニコーン三機の残骸である。HGでありながらデストロイモードで変形する青いシールドタイプのアームドアーマーは、間違いなくそれだ。
「カウントカイザーをやったのか?」
『そうだ。そしてお前たちもこうなる。このジャハナム・アドミニストレータがGブレイカーズ、貴様らを灰塵へと帰すのだ』
ジャハナムのファイターがそう告げると、雪菜のクアンタが粒子で攻撃を仕掛ける。しかし、ジャハナムは奇妙なフィールドでそれを防いだ。
『何?』
『お楽しみは後に取っておきますよ。Gブレイカーズというイレギュラーは、我が校にはいらないのです』
ジャハナムはそのまま飛び去った。謎の機体だが、戦達には避けられない壁の様だ。
この事件はネットでも大きく取り上げられ、騒動となった。ただ、犯人の目的などが話題となり、シャンブロを退けた戦の活躍は表に出なかったという。
次回予告
葉月「戦の膝のケガに迫ります」
桜「昔は無かったと思うよ?」
戦「いや、これはな……」
葉月「次回、『ダークソウル』」
戦「膝に、いやマジで矢を受けてしまってな」