ガンダムビルドファイターズ ダークレイヴン   作:級長

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 ミッション名:輸送列車襲撃
 依頼主:チーム『ネオティターンズ』
 報酬:5000C
 概要
 ラインアークに取り入ろうと、小規模なチームが輸送任務の請け負いをしている。
 近日開始されるのイベントではかつて、『HG00 ダブルオークアンタ』を瞬殺状態にした『GNソードⅣフルセイバー』が景品になることがアナウンスされている。これを確実に入手出来る様に、最大勢力となりつつあり加入制限の無いラインアークにプレイヤーが流入したのだろう。
 勝馬に乗るつもりだろうが、そうはいかない。俺の力ではラインアークに立ち向かえないが、一矢は報わせてもらう。資源を運ぶ列車を襲撃してくれ。こちらも違う列車を襲撃する。



勢力戦2.初めてのガンプラ

 模型屋『ピースミリオン』

 

 この町にはヨーツンヘイム改二の他にいくつか模型屋がある。ピースミリオンもその一つであり、そこを訪れる人物がいた。

 「……」

 緊張気味に店へ入った少女は彼方氷霞。こんな休日にも中学の制服を着ている真面目そうな女の子であった。中学の制服である紺と白のセーラーにロングスカートがまるで違和感無く似合う。

 「あった」

 氷霞はガンプラのコーナーに辿り着く。だが、そこで立ち止まってしまう。

 「……大きい」

 手に取ったのはMGのウイングガンダム。ガンダムWのDVDを見てガンプラに興味を持ったわけだが、箱の大きさで挫折しそうだった。

 親友の四条志帆は『いきなりMGフィギュアライズのバーナビー組めたんだからだいたい大丈夫だろ』とか言いそうだが、あれの苦労を思い出すと腰が引けてしまう。フィギュアライズ6を知ったのが散々苦労した後だったりする。

 「おや、どうやら君は始めてガンプラを作るみたいだね?」

 そんな氷霞に声をかけたのは、白髪の青年だった。脱色しているわけではないので眉毛なども同じ色だ。赤い瞳に白い肌と、アルビノらしき特徴がある。ついでに言うなら、眼鏡をかけている。

 「いきなりMGは難しいんじゃないかな? ほら、HGにもウイングガンダムがあるんだよ」

 その青年が渡したのは、HGACのウイングガンダムだ。こちらは箱が小さく、組み立て易そうだ。

 「小さい、これなら……」

 「ここには制作スペースもあるから、よかったらこの店のマイスターに教えてもらうといいよ」

 青年は氷霞に教えつつ、マイスターを探した。その瞬間、エレベーターが閉じたのを彼は見逃さなかった。

 「ちょっと待っててね」

 「……?」

 青年はエレベーターまで向かった。

 

 エレベーターに乗っていたのは坂井秀一。修業中のガンプラマイスターである。中性的な外見の青年で、美大に通いながら各地の模型屋でマイスターの仕事をしている。今はちょうど仕事終わりであった。

 「もうすぐで遊人にバレるところだった……!」

 エレベーターに駆け込み、一息付く。秀一は白髪の青年、直江遊人の元クラスメイトであった。別に気まずい関係ではないが、どうしても今会うのはまずかったのだ。

 「意外な再会だからな、もっとサプライズを仕込まないとな」

 秀一は遊人と同じ眼鏡をかけて彼の物まねをしつつ、再会のサプライズを想定した。

 「お前は、坂井秀一!」

 サッと位置を変えて眼鏡を外した秀一は次の台詞を言う。

 「久しぶりだな直江遊人。修業した俺の力、見せてくれる! ……なーんて『再会、シャアとセイラ』みたいに……」

 あれこれしていると、エレベーターの扉が開いた。その前に立つのは直江遊人だった。

 「エレベーターは行き先ボタンを押さないと動かないぞ」

 「……」

 秀一は行き先ボタンを押し忘れていた。それでエレベーターは動かなかったのだ。

 「ゆ、遊人くんじゃないか! 土偶だな」

 「それを言うなら奇遇だ」

 「そ、そうか。じゃあな」

 秀一がエレベーターを動かそうとすると、遊人は扉を押さえて止めた。

 「仕事だ、マイスター」

 「嫌や、こんな再会嫌やー!」

 遊人は秀一を引きずり、仕事させることにした。

 

 「まず、ガンプラを作るために必要な道具はニッパー、デザインナイフ、紙やすりだ」

 制作スペースにて、秀一は氷霞にガンプラ制作を教えることになった。

 「説明書の通りの順番に作る必要は無いぞ。まずは胴体から作るんだ」

 「……胴体」

 「パーツを切り離す時は、一回で切らずに余白を残してもう一度切る、二度切りが有効だ。一度で切ろうとするとパーツに力が掛かって白くなってしまう。白くなったら爪で擦れば戻るぞ」

 氷霞はサクサクと組み立てていく。早くも胴体が完成した。

 「次は腰だな。こうして出来たボディはパーツのホルダーになる」

 腰を作り、氷霞は胴体と合体させる。パーツを合体させていくことで完成が見えて来るし、パーツを無くしにくいのだ。

 「頭だな。ツインアイのシールが難しいから、僕は絶対、ガンダムを奨めないがね。シールはピンセットで摘むんだ。手で触ったり貼り直しは粘着力が弱まる」

 完成した頭をボディに付ける。こんな調子でウイングガンダムは完成した。

 「出来た」

 「よし、じゃあ手を加えてみよう」

 秀一は墨入れペンとガンダムマーカーを取り出す。HGACウイングガンダムは完成度が高いものの色分けが完全ではない。

 「墨入れは、パーツの溝をこのペンでなぞるんだ。白いパーツには灰色、それ以外には黒を使うのをオススメする。なぞったらはみ出した場所を拭うんだ」

 墨入れをすると、モールドが強調されて引き締まった印象がある。

 「完全に色分けされていない部分はマーカーで塗ろう。羽に使う白は薄いから、乾かして何回も塗るんだ。はみ出したらデザインナイフを垂直に立てて削るといいぞ」

 色が付くと、素組との違いが出て来た。

 「バーニアみたいな細かい部分はマーカーじゃなくて黒の墨入れペンを使うといいぞ」

 細かい部分はマーカーにこだわらず、墨入れペンを使う。だいたいそういう場所は黒いのでこれで問題無い。

 「広い面積のパーツはヒケがある。これは目の細かいやすりで削るといいぞ」

 シールドなどにあるシワのようなものは、やすりで削る。玩具っぽい光沢も無くなり、見かけの重さが増した。

 「これで簡単仕上げの出来上がり、だな」

 初心者の割にしっかりしたウイングガンダムが出来上がった。氷霞も前に組み立てたものと比べ、明らかにクオリティが上がっているのを感じた。

 「じゃ、早速バトルしようぜ。ワールドモードでいいよな」

 「相手次第なら独立傭兵だとダメージCだからな。いいミッションがある」

 秀一は遊人と相談して、初バトルの場所を決めた。ラインアークの子飼いが相手の輸送列車襲撃任務だ。

 『Please set your GP-Base. Beginning [Plavsky particle] dispersal』

 この店にもバトルシステムは存在する。大型店舗故に、1フロアを丸々バトルスペースに出来るのだ。もちろん、GPベースも貸し出している。

 『GUNPLA BATTLE World Mode,Start up.Please set your GUNPLA. BATTLE START』

 「彼方氷霞、ウイングガンダム、出る!」

 「直江遊人、ガンダムスローネアンサングOSBS、出撃する」

 「坂井秀一、デルタマイナス、行くぞ!」

 フィールドに飛び出した氷霞達は、渓谷に敷かれたレールに沿って飛行した。

 遊人の機体は鳥の様な逆脚が特徴のガンダムスローネ。各部にある動きそうな装甲も気になるが、右手のハイレーザーライフルと左手の実弾マシンガンの隙の無さもただ者ではない雰囲気だ。氷霞には当然、よくわからないのだが。

 秀一のデルタマイナスは両手にマシンガンを持つデルタプラスの改造機。シールドの機能がバックパックに集約され、シールドを破壊されても変形が可能らしい。色は白となっている。

 「今回のミッションは敵の護送する輸送列車を破壊することだ。このまま相手に追いつくぞ」

 『こちらネオティターンズ。協力、感謝する。我々は別の車両を破壊する。ここは任せた』

 作戦内容を秀一が確認していると、ヘイズル3機とジェスタが合流した。

 『そちら、初見か。雇われ、援護に付け』

 『ヒャッハー! 初見だ、囲め!』

 ジェスタが氷霞達に混ざり、ヘイズルは別れて作戦開始。氷霞も列車に追い付いた。

 「あれが作戦目標だな」

 『待て、あの機影は……』

 遊人が列車を足止めしようとハイレーザーライフルを撃つと、ジェスタが何かを見つけた。

 列車を護衛していたのは、ヘイズル・チーフテン、シスクード、デスパーダの3機。

 『あれは、ブラックイーグル!』

 「川本姉妹か。ラインアークに肩入れしているとはな!」

 遊人の攻撃を認識したブラックイーグルは一斉にビームを撃って来る。それを前に出た遊人のアンサングが受ける。装甲が開いて、ビームが吸い込まれていくではないか。

 『アブゾーブシステム?』

 『元日本代表の直江遊人か!』

 『話が違うぞラインアーク!』

 想定外の事態に慌てるブラックイーグルこと川本姉妹。直江遊人はそれだけ有名な人物なのだろうか、氷霞は初めて聞いたのだ。

 ブラックイーグルは列車を先行させて、氷霞達の足止めを目論んだ。

 『なるほど、列車だけ先に行かせるつもりか』

 「俺達の作戦は列車の破壊だ。ここは俺が食い止める!」

 ジェスタは作戦を見抜き、遊人がハイレーザーライフルをバカスカ撃った。足止め所か流れ弾で列車を壊しそうだ。

 『それはそんなに乱発出来ないだろ!』

 「だとよ遊人。舐められてるぞ?」

 変形したデルタマイナスの秀一がジェスタを乗せてシスクードと戦闘していた。デルタマイナスは変形するとほぼデルタプラスと変わらない姿になるが、両手のマシンガンがドッグファイトで活躍する。

 ヘイズルの川本が言う様に、遊人のスローネが持つハイレーザーライフルは連発出来ない。だからこそのアブゾーブシステムだ。

 『蜂の巣だ!』

 撃たれたビームを吸収したスローネは、再びハイレーザーライフルを放つ。威力は減退していない。

 『何? 何で撃てる! アブゾーブシステムだとしても、ディスチャージしてないはず!』

 「ディスチャージならしてるさ、吸収した瞬間、常にな」

 遊人のスローネアンサングOSBSは、アブゾーブで吸収した粒子をノータイムでディスチャージし、武装やGNフィールド、ブースターに充填している。

 OSBSとは『オーバースタービルドストライク』の略であり、『スタービルドストライクと同じ機能でスタービルドストライクを越える』ことがこの機体のコンセプトだ。

 奇抜さや独創性で勝るスタービルドストライクに対し、ビームには全身のアブゾーブ、実弾にはGNフィールド、アブゾーブした粒子は即座にディスチャージすることにより、『堅実さと安定性』で秀でているのがアンサング。当然、内部フレーム内蔵によるRGシステムも完備だ。

 「なにせこいつは、俺がメンテナンスしてビルダーのエディ無しで運用するのに5年掛かった代物だ。このくらいなら余裕なんだよ」

 頼もしいサポートを受ける氷霞だが、川本姉妹は列車の行く手を遮る様に戦闘している。このままでは列車を取り逃がす。

 「バードモード!」

 氷霞はウイングガンダムをバードモードに変形させて列車を追った。

 『させない!』

 「それはこっちの台詞だ!」

 川本姉妹が追撃しようとすると、遊人がアサルトアーマーで辺りを吹き飛ばした。氷霞には何が起きたのかわからなかった。ジェスタはデルタマイナスに運ばれてアサルトアーマーを回避する。

 川本姉妹も何とか避けたが、氷霞を見失ってしまう。

 「バスターライフル!」

 氷霞が目標の列車に追い付くと、ウイングガンダムをモビルスーツ形態に変形させて、列車に最大出力のバスターライフルを撃つ。

 「やったか?」

 『いや、まだよ!』

 バスターライフルは直撃したが、列車は壊れない。ダメージこそあれ、一撃では落ちない。列車は装甲が固く、バスターライフルは表面を焼いただけの様に見える。

 『ほぼ素組のウイングでは、三発以内に列車を壊せない!』

 ウイングガンダムのバスターライフルは最大出力で三発しか撃てない。ヘイズルが迫る中、残るは二発。

 「だったら!」

 氷霞はガンダムWの内容を思い出す。バスターライフルを先ほどの直撃ポイントに寸分狂わず当てて、集中攻撃だ。

 『あんなガンプラしか作れない初心者が移動する物体を狙い撃ち?』

 「志帆に……習った!」

 川本姉妹が驚くのも無理は無い。移動する的に弾を当てるのは難しいのだ。ここだ、と思って引き金を引いても、着弾までのタイムラグがあるためピッタリ当てるのは困難だ。

 それを初心者は意識しないので当てられない。氷霞は志帆からそのことを教えられているので、タイムラグを計算して撃てるのだ。先ほどの着弾からタイムラグを換算出来れば、レールに沿って動く列車は当て易い部類の的なのだ。

 「行け!」

 バスターライフルは先ほど当てた装甲に当たり、列車に穴を空けた。その穴にまたバスターライフルを当て、列車を内部から破壊する。侵入したビームが広がり、列車が破裂した。

 『Mission Succed!』

 これで輸送列車は機能を停止した。ブラックイーグルは呆然と立ち尽くす。

 『しまった!』

 『こんな初心者に……』

 『撤退だ!』

 ブラックイーグルの川本姉妹はエリアから退却する。ミッションクリアだ。

 『協力、感謝する。こちらも列車の停止に成功した』

 ネオティターンズも作戦に成功していた。氷霞の初陣は勝利で終わった。




 勢力戦の動き
 今後行われる予定のイベントに向けて準備を進める各勢力だが、ラインアークは着々と勢力を拡大しつつある。
 イベント前にどれだけ相手に損害を与えつつ準備するか、それが勢力戦では鍵になる。

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