大変恐縮ですが、掛け声ってこんな感じなんです。
それと、どうでもいい独白ですが。
正直既存属性って不思議なのあるんですよね、状況系とか。
ツンデレ属性とかなら分かるんですけど、ボーイズラブの属性とかどうやって回収するんでしょうか?
あのリングに状況そのものを囲わせて愛を奪う?……深く考えると結構怖いことしてるなアルティメギル。
というわけで、今回はオリジナルエレメリアンの登場です。
空も海も大地とも言えない、異空間と言われても若干の違和感がどこかに残る紫煙のような
その只中で、アルティメギルの秘密基地と称される浮遊母艦。異形たちのコロニーのなかで、一つの慟哭が鈍色のホールを揺らしていた。
「リザドギルディの敗北……文明レベルとはかけ離れた力を持つツインテールの戦士……そして、あの、純白の
「ありえん!ツインテールの少女に斃されたのなら兎も角、ポニーテールの戦士だと⁉︎」
一同に会する化生たちは、自らが生きる厄災と言うことを自覚しながらも、この
そう、彼らはテイルレッドをHDDやBlu-rayのディスク、自作でのねんどろいど作成に取り掛かりながもその実、それに迫らんとするほど鬼気とした表情で、テイルホワイトと自称した少女について驚愕を露わにしていたのだ。
それは、彼らの常道への明らかな異分子。ツインテールの戦士は属性力の強さから文明レベルの高い世界、またはその世界の技術が何らかの拍子で他の世界に漂流し、新たに生まれる事はある。
だが、ポニーテール属性というのはツインテール属性と双璧を成すからこそ、アルティメギル内において「最も求められない」属性力であり、技術が進歩しようと開発に着手したものはいなかった。
しかし、事実としてポニーテールの戦士はこの世界に生まれ出でた。それは、彼らの過去で最も異例であり、彼らの侵略活動の中である種最も厄介であることを表すのだ。だからこそエレメリアンたる彼らでも、テイルホワイトが生む影響に対しては及び腰に、彼らの間では最大のタブーすらも視野に入れなければならない事もまた、同時に示す。
ざわめきが収まらぬ一大ホール。その混乱を、何者かの鋭く重い一喝が厳粛な静寂へと揺り戻した。
「静まれい!!」
その雄叫びで騒乱を鎮圧したのは、龍を彷彿とさせる甲冑のような黒き肉体を持つエレメリアン、ドラグギルディ。
円卓の上座で腰を下ろしながら、威風堂々たる闘気でもって戦士の長が瞑目する。周囲のエレメリアンを芥子のように錯覚しそうになる、明瞭な"格"を発した彼は、リザドギルディの死を悼み、それぞれが異なる脅威を持った二人の少女たちが記録されたホログラムを眺めた。
「リザドギルディの敗北は、俺も看過できぬ事態ではある。そして確かに、テイルレッド・ホワイトの脅威もまた、我等アルティメギルにとっては留意すべき事だ」
腕を組むドラグギルディ。その真意を誰もが悟れず、思わず息を飲む者も現れた。
そしておもむろに彼は立ち上がると、まるで宣誓を捧げる王のような佇みで、周囲にその声を響かせる。
「だが!それが我らの何になろう!我らが求めるものは自らの属性と、何よりもツインテール!!たとえ異分子たるポニーテールの戦士であろうと、その可能性に貴賎はない!奪うことこそエレメリアン!彼奴等の属性力、今までのように侵略すれば良い!!」
声高らかに拳を掲げるドラグギルディの言葉は一瞬の静寂を生み。
______直後、絶叫にも等しい歓声の咆哮を引き出した。
そうだ、何がポニーテールだ。奪ってしまえば同じこと、我らに敵う道理はない。ツインテールはそのままに、ポニーテールを狩ってしまえ。テイルレッドは持ち帰ろう、着せろ!匂え!愛でろ!そして全てを侵略せよ!
異形の群は高らかに吼える。彼らは人智を超えた悪魔の集団、たとえ強力な戦士であろうとこの身に届かぬ。
そう周囲ごと自らを鼓舞する叫びの中、また一人の怪物が勇ましくもその手を上げた。
「ならば私が!見事テイルホワイトを討ち取り、テイルレッドを手中に入れて見せましょうぞ!」
「ほう、ナースの神童、スワンギルディか」
一旦の歓声が止み、視線の中心で立っているのは白鳥を象った
ドラグギルディは面白そうな顔で彼を見据えると、薄く口角を上げてニヒルに笑った。
「そう逸るな、確かに今のお前ならば若き戦士たちを相手取っても不足はなかろう。だが、不足は無くとも不安は募る。敵の情報も揃っていない中で可能性の大きなお前を向かわせるのは、些か惜しい」
「ですが……!」
「けひひひ、ならば私に戦場を。ドラグギルディ隊長殿」
歯痒さに食い下がろうとしたスワンギルディの後ろから、まるで影が分離したかのように現れたのは、すさんだ黒を身に纏う、少々小柄なエレメリアンだった。
皺がれた声と紅い双眸、アルティメギル全体からしても最古参を担う一匹の鴉を模したエレメリアンに、周囲の者は畏怖か嫌悪かを滲ませてその名を呼んだ。
「レイヴンギルディ……なぜ掃討部隊の貴様が、早期に」
「けひひひ、今のテイルホワイトは誕生したばかりの子供も同然。私は普段、掃討にしか参加する気はありません。ですが、こういう駆除ならこの老骨でも喜んでやりましょうぞ」
ドラグギルディの部隊は、最前線で戦う事の多い部隊だ。そして、同時に決着の完了も行う部隊である事が多い。その後始末として、世界中の属性力を狩り尽くすのがレイヴンギルディの生き甲斐であり職務である。
勿論、武人肌の強いドラグギルディ部隊では敬遠されがちな部隊であるレイヴンギルディは、普段滅多に顔を出すことがなく、横から掠め取るだけの彼の働きには更なる否定意識が向かっていた。
しかし、その中で最大の武人である筈のドラグギルディは抑揚に頷いて、彼の出撃を肯定する。
「そうか、ならば任せよう。普段では見られぬ活躍、期待している」
「けひひひ、お上手ですなぁ隊長殿。では期待に答えて、命に代えてでも首級を上げなければなりませぬな」
言うだけ言って場の空気を戦慄のものへと引き戻した黒い鴉は、一大ホールから音もなく退出する。
程よいピリピリとした緊張感。それをもって、ドラグギルディは会議を平定した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
あの騒ぎの後、俺は結局「トゥアールの定期検診を受ける。反撃可(津辺)」という取り決めの後、問題が起きたら随時、観束の家で設計する秘密基地で合流しつつ出撃する事が決まった。
そのまま俺は騒ぐ三人と乱入してきた未春さんを皮切りに、自宅へ帰って一日を振り返っていた。
玄関を開け、靴を揃えて脱ぎながらその場に座り込んでしまう。一応、両親が四年前に他界したこの家には、俺しかいないので誰かに憚る必要も、もっと言えばこの家にいる必要もないのだが、ちょっと今日は色んな事があり過ぎた。
ふと思い出して炎に焼かれた背中を軽くさすってみると、何の変哲もない皮と背骨の感触を手に覚える。
今着ている学生服もボロボロで焼けていてもおかしくないのに、不思議なくらい新品の様相へ戻っていた。
「非常識、半分エレメリアンみたいなもの。かぁ………薄々分かってたけどな」
自嘲するように態とらしく呟き、これが自分の嫌いな「憐れみを誘う態度」だと思い出して頬を軽く張る。
だがあの化物共と俺は、大差無いというのは恐らく本当だろう。
何せ、観束のように機会技術の粋を尽くした魔法のような科学ならまだしも、俺の変身はまんま魔法みたいなものだ。人智を明らかに越えていて、それこそあのアルティメギル共の成り立ちと大した変わりがない。
俺は、どっちにしろ人間を辞めてしまっているのかも知れないな……。
そこまで考えた所で、俺は無造作に立ち上がる。寧ろ自分に苛々してきた、ポニーテールになれるのだったら、正直少々生態が変わろうと大した事じゃないはずだ。何より、俺は俺なんだ。
心機一転した俺は適当に夕飯でも作るか、とバックを机の上に起き、服を普段着に着替えて台所で手を洗う。
買い置きしてる食材の種類から、取り敢えず揚げ出し豆腐にアスパラのベーコン巻き、スズキのムニエルで良いかな、と検討をつけて調理に取り掛かった。
「_______よし、戴きます」
かちゃかちゃと食器の当たる音が広くもない家に響く中、そういえばあの変身に名前無かったな、と思い至る。未春さん曰く、
「あらゆる技にはそれに相応しい名前が必要なのよ!固有名詞さえあれば自分にも他人にも分かり易くて、しかも格好いいのよ!」
とかなんとか言っていた。実のところ、話半分で聞いていたから内容はそれっぽくしてるだけだけど、こんな感じだった筈だ。
でも、こう考えてみると結構重要かもしれない。トゥアールや観束との打ち合わせの時に会話がスムーズになるし、名前を付けて損はないだろう。
「んー、ブーストって口から出たからそれでも良いと思うけど、多分そういう事じゃ無いんだろうな。固有名詞って言ってたし」
切り分けたムニエルをご飯と一緒に口の中へ放り込みながら、色々考える。○○ブーストってのが語感的に合ってる気がするな、っていうかあの時の心境から脳裏に浮かんだ映像を観束の方と互換性を持たせて、言葉に表せば___。
「
そこまで決められた所で、食べていた夕食が無いことに気づく。
俺は片付けをしたがらその思考を払い、これからも続くであろう戦いに備えるため、お風呂とポニーテールを結う訓練や変身して鑑賞し、英気を養うことにした。
次の日の放課後、俺と観束は揃って溜息を吐きながら帰りの廊下を歩いていた。
何せ今日は、疲れた……その一言に尽きる。
登校したときに一時限が全校朝礼になっていた時点で、既に俺たちの苦難は始まっていた。
神堂会長が宣言した「テイルレッド・ホワイト、全力支援宣言」。そこから派生したのは、あの変態怪物どもと正直あんまり変わらないんじゃないかと思ってしまう生徒たちの叫びと、展開されたスクリーンの映像。
そこには異常な程の高画質で動き回るレッドと、一般人がたまたまカメラを持っていたかのような手ぶれの激しい画面の中、閃光のように刀を振るう
騒ぐ観衆、悶える俺たち。
普段なら状況は真逆でもおかしくはないが、流石に俺も半分女装してるみたいな状況で、しかもレッドになった観束を試すような酷いこと言ってるんだ。凛々しいとか美しいとか言われても、精神的なダメージにしか換算されなかった。
そんなこんなで時間も過ぎ、こうやって昇降口まで下校するオアシスがやって来たのだ。
観束も、背後に暗雲を立ち込めながらゆっくりと靴を履き替えていく。まぁ、幼女に変身する観束の方が画質も良かったし"ヤバい"変態の標的になってたからな………。
「そういやツインテール部とか書いて有耶無耶になってたな。愛香や祐一は何の部活するんだ?」
「あ、あたしはまだ決めてないわよ、まだ早いと思って。祐一はどうなのよ」
「俺か?俺は、仮申請だけな。ヘアケア研究部、作ろうと思ってはいるんだよなー」
道中の何気ない俺の言葉に、観束は「その手があったか!」と言わんばかりの唖然とした顔で見てくる。
まぁ、露骨にポニーテール部とか書く気はなかったしな俺も。つうか何する部活だよって言われるのは目に見えてるからな。
「そ、それならツインテールも見ることができるじゃないか……!何で気づかなかったんだ俺!?」
「お、おう……まぁ俺はこの部を機にヘアスタイリストの道を目指して、俺が纏めて結い上げたポニーテールが老若男女のトレンドになるのが目標だし。今まで日がな
「あんたそんな無駄に壮大な計画立ててたのね……」
津辺の呆れた声に、そんなに不思議なもんかと思いながら角を曲がると、
『この世界に住まう全ての人類に告ぐ!我らは異世界より参った選ばれし神の徒、アルティメギル!』
一際大きな空中投影映像に、思わず口をバカみたいに開けた。
もちろんそんな事を気にする事も無く、竜を模した外殻の怪物が玉座に座って演説していく。
『我らは諸君らに危害を加えるつもりはない!ただ、各々の持つ
それは、あからさまに世界に対しての大々的な挑発であり、凄まじい威嚇であった。
今の地球の技術で、ここまで巨大かつ繊細なホログラムを空中に投影することなど出来はしない。その上、言葉からして全世界に喧嘩を売れるだけの技術と叡智を、最低限有しているという事実を明確にしていた。
さっきまでの安穏とした雰囲気がまるで硝子のように砕け散った彼らの宣言は、トゥアールも勿論観測していたのだろう。観束の携帯が目印のようにバイブ音を鳴らした。
『総二様!祐一さん!今のご覧になりましたか⁉︎エレメリアン反応です!しかも場所はそれぞれ異なります!』
「初っ端から分断ねらいか……名乗りを上げる奴ららしくもないと思うが、
俺が指したのは今だに展開されるカメのエレメリアンが向かっている学校と、トゥアールが反応を捉えた画面に映らない方だ。おそらく、何かある。
「俺は、あのカメの方に向かう!……テ、テイルオン」
「よっし分かった、ならトゥアール!ナビゲート頼む」
トゥアールの了解を遠くに聞き、俺も意識を埋没させていく。
純白の粒子に包まれながら、俺は昨日を思い出してその言葉を紡いだ。
未春さんが言っていた、なり切った方が恥ずかしくないと……!
「テイル、ブースト……!」
そして純白の装甲と黒いラインに彩られた俺は、トゥアールが示す先。マクシーム宙果の中継点であるビル群へと向かって走り出した。
はい、オリジナルギルディです。
まぁ絶対前線に一人はいるだろうなーと思う奴を取り出してみました。
レイヴン、鴉ですね。まんま残飯漁りとかしてそうなイメージからきてます。
ぶつかり合う白と黒!実は引き摺るタイプのホワイトは、引き際良さそうな彼とどう戦うのか!?
次回は、彼の経歴と真面目なバトル。
どうぞ、お楽しみ頂ければ。