ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

今回は、ご都合主義発動したね(笑)

それではどうぞ。


第85話≪幻影の一弾≫

シノンによる銃撃は二回あった。

一度目は、俺たちの後方に接近していた闇風を狙ったもの。

二度目は、俺たちの視線の先にいる、――死銃を狙った一撃だ。

これによって、死銃が携えていた《サイレント・アサシン》は破壊されたが、俺とユウキは警戒を解くことなく、死銃と一定の距離を保っていた。

俺とユウキは距離を詰め、単発重攻撃ソードスキル、《ヴォーパル・ストライク》を放つ。

あの世界で、そして新たに実施された妖精の世界で、俺たちが得意としている技だ。

この銃の世界ではシステムアシストは無いが、ステータスによって高められたスピードと共に放たれた一撃だ。

 

だが死銃は、タイミングを合わせたかのように、後方に跳び退き回避した。

瞬時に後方にジャンプしようとしたが、死銃が携えている刺剣(エストック)が襲う。

 

「ぐッ……!?」

 

「きゃ……!?」

 

身体全体から、血飛沫のようなダメージエフェクトが撒き散らされる。

俺とユウキは、後方に着地した。

五メートル程離れた場所に立つボロマント。――《死銃》は、右手にぶら下げた黒光りする刺剣の尖端を、まるで何かの拍子を取るかのように、ゆらゆらと動かしている。

奴はこの体勢から、ノーモーションで突き攻撃を繰り出してくる。

あの世界で、《ラフィン・コフィン》を討伐する為に乗り込んだ洞窟で、俺は同じ光景を眼にしていた。

奴は、今のように赤い眼を光らせていた。

珍しい武器を使う奴だと感じた。

あの時言えなかったことを、一年の時を経て、俺は口にした。

 

「……珍しい武器だな。というより……、GGOの中に金属剣があるなんて、聞いたことないぞ」

 

次いでユウキも言葉を発した。

 

「ボクも聞いたことないよ。……《赤目のザザ》さん」

 

正体を見破られて動揺するかと思ったが、死銃。――いや、赤目のザザはしゅうしゅうと掠れた笑いを漏らしだけだった。

続けて、切れ切れの声。

 

「お前たちと、したことが、不勉強だったな、黒の剣士、絶剣。 《ナイフ作製》スキルの、上位派生、《銃剣作製》スキルで、作れる。 長さや、重さは、このへんが、限界だが」

 

「……なら、俺の好みの剣は作れそうにないな」

 

「……ボクとキリトは、重い剣が主武装だったからね」

 

そう応じると、再び笑いの声。

 

「相変わらず、お前たちは、STR要求の、高い剣が、好みなのか。 なら、そんなオモチャは、さぞかし、不本意、だろう」

 

すると、俺とユウキの右手に握られている《カゲミツ》と《ムラサメ》は、オモチャ呼ばわりされたのが不満だったようで、ばちばちっと、細いスパークを散らした。

俺とユウキは二つの光剣に代わって、代弁する。

 

「そう腐したもんじゃないさ。 一度こういう剣を使ってみたいと思っていたしな」

 

「ボクもこういう剣を使ってみたかったしね。 それに、君のHPを吹き飛ばせるしね」

 

「ク、ク、ク。 威勢が、いいな。 出来るのか、お前たちに」

 

フードの奥で、赤い眼光が不規則に瞬く。

スカルフェイス状に造形された金属マスクが、気のせいかニヤリと嗤う。

 

「黒の剣士、絶剣。 お前たちは、現実世界の、腐った空気を、吸い過ぎた。 さっきの、なまくらな、《ヴォーパル・ストライク》を、昔のお前たちが見たら、失望するぞ」

 

「…………よく喋るな。 でもお前も同じだろう。 それともお前はまだ、《ラフィン・コフィン》のメンバーで居るつもりなのか?」

 

「…………ザザさん、《ラフィン・コフィン》は壊滅したんだよ?」

 

しゅうしゅうと、死銃は軋むような呼吸音を漏らす。

 

「……オレと、お前たちは、違う。 オレは、本物の、殺人者(レッド)。 お前たちは、平凡な、人間だ。 黒の剣士、お前は、恐怖に駆られて、ただ生き残るために、殺した、臆病者だ」

 

こいつは、俺がラフコフのメンバーを殺す場面を見ていたのか……。

 

「……ああ、そうだな。 臆病者かもな。 俺は大きな罪を背負った。 そしてその罪は、一生消すことが出来ない」

 

「だからその罪を、ボクも一緒に背負う事に決めたんだよ。 キリトの背中を少しでも軽くする為に」

 

しゅうしゅうと音を立てながら、笑い声が聞こえた。

 

「お前たちは、相棒、だったな。 黒の剣士の、戦意喪失を、狙ったんだが、失敗、したようだ。 だが、黒の剣士。 お前は、ここでオレに倒され、無様に転がり、絶剣が倒される姿と、――あの女が殺される姿を、ただ見ている以外には……、何も、出来ない」

 

「そんな事は絶対にさせないさ。 お前は、此処で俺たちに倒されるんだ」

 

「いつまで、そんな事が、言ってられる、かな」

 

バネ仕掛けの人形のように唐突な動きで、死銃は右手のエストックを突き出した。

正確に心臓を狙って伸びてくるその針を、俺は無意識の内に光剣で迎撃したが、ライフルの銃弾すら切り裂いた刃を、エストックが擦り抜けてきた。

だが、ダメージを受ける直前に、ユウキが突き出してきた刃と衝突し、金属音が響いた。

 

「なんだ、その、ナイフは?」

 

「これはボクが作ったナイフだよ。 ボクも《ナイフ作製》スキルを取っていたんだ。 熟練度が低いから、この小さなナイフが限界だけどね」

 

エストックを受け止めた後、俺とユウキは二、三歩バックジャンプをし、死銃と距離を取った。

 

「絶剣。 そのナイフでは、一度防ぐのが、限界だ」

 

死銃の言う通り、ユウキが左手に携えていた小さなナイフは、ポリゴン片になって地面に落下した。

 

「……ク、ク。 そんなもので、この武器と、張り合おうなんて、考えない方が、いいぞ。 こいつの、素材は、このゲームで手に入る、最高級の金属、だ。 宇宙戦艦の、装甲板、なんだそうだ。 クク、ク」

 

死銃はマントを大きく(なび)かせながら、一直線に突っ込んで来た。

これまで見せなかった連続の突き、スラント系上位ソードスキル、《スター・スプラッシュ》計八連撃――。

剣によるパリィが封じられた。

そして足元が砂地ゆえにステップもままならない俺とユウキの全身を、鋭利な針が次々貫いた。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「(キリト、ユウキ!!)」

 

砂丘の上で死銃と交戦している二人が、約一メートル後方に吹き飛ばされていた。

死銃の剣捌きは、シノンの眼から見ても凄まじいものだった。

この攻撃でHPを全損してしまったのでは、と息を詰めるが、二人は砂漠を一度蹴って後方に宙返りし、大きく距離を取っていた。

しかし、死銃には仕切り直すつもりはないの為、幽鬼のようにマントを靡かせながら間合いを詰める。

そんな光景を見て、シノンはトリガーに指を掛ける衝動を、必死になって堪えていた。

スコープさえ無事なら、狙撃で二人の支援が出来たが、この距離を肉眼では予測円を収束出来ない。

闇雲に撃てば、最悪二人のどちらかに当ってしまう可能性がある。

今の自分が、何も出来ないことが悔しかった。

二人は、私以上の苦悩を抱え、それを受け止めて、前に進んでいる。

二人が強いわけじゃない。

キリトはユウキの為に、ユウキはキリトの為に強くあろうとしている。

私も二人のように強くなれるだろうか……?――私も強くなれる。 強く在ろうと思うことが出来る。

その為にも、この事を気付かせてくれた二人の力になりたい。

――何か、私に出来ることが何かないか。 岩山を降り、接近するのは逆効果だ。 得策ではない。 だが、スコープなしでの狙撃はただのギャンブル。

サイドアームのMP7では、射程が足りない。 何か……、何かないの……。 二人を支援する手段が……。

――ある。 たった一つ、今のシノンが行える攻撃が。

何処まで効果があるかは判らないけれど、――でも、やってみる価値はある。

大きく息を吸い、ぐっと奥歯を噛み締めて、シノンは彼方の戦場を見据えた。

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

赤目のザザ。こいつは強い。

スピード、バランス、そしてタイミング。

全てが完成されている。

つまり、この男はラフコフが壊滅させた攻略組――恐らく俺への復讐心をエネルギーに、技を磨いた。 何千回、――何万回、同じ動作を繰り返したんだろう。 エストックという武器から繰り出す技を、身体に焼き付けるように。

俺たちは負けても、現実の身体に一筋の傷も受けないだろう。

しかし、後方で待機しているシノンが、あの黒い銃に撃たれれば、死銃の共犯者が現実のシノンを手に掛ける。

それは、絶対に阻止しなければならない。

一瞬、ほんの一瞬でいい。

このラッシュを、一瞬だけブレイク出来れば。

重い単発攻撃をクリティカルヒットさせれば、死銃のHPを吹き飛ばせる確信がある。

だが、光剣のエネルギーブレードは、死銃のエストックが擦り抜けてしまう。

どうする。 どうすれば――。

直後、チャンスは訪れた。

俺たちの後方から飛来した一条の赤いラインが、死銃の中央を音もなく突き刺した。

実弾、――ではなく。 照準予測線。シノンだ。 彼女による予測線そのものによる攻撃。

彼女が、その経験と閃き、そして闘志のあらん限りを注ぎ込んで放ったラストアタック。

――幻影の一弾(ファントム・バレット)

死銃は突然の攻撃で、本能的に大きく後ろに跳んだ。

シノンが危険を犯してまで撃つはずがないと気付いたが、身体が勝手に幻影の弾に反応し、回避行動を取った。

これがラストチャンス。

もう二度と予測線のフェイントは通用しない。

しかし、《光歪曲迷彩》の効果で、奴の姿が消えていく。

足跡が残るので見失いはしないが、光剣を正確にクリティカルポイントへと叩き込む為の狙いが付けられない。 死銃のHPを吹きと飛ばす強力な一撃が。

だが、その時だった。

――システム外スキル、《接続》が起こったのは。

 

『ボクの光剣を投げるよ。 受け取って』

 

『ああ、わかった』

 

ユウキが振り抜いた右手から、金属の筒がくるくる回転しながら、俺に向かって飛んでくる。

そして、それは俺の左手に吸い込まれた。

親指でスイッチをスライドさせ、《ムラサメ・斬》から青色に輝くプラズマの刃が伸長し、右手に携えていた《カゲミツ》と合わせて《二刀流》のスタイルとなった。

 

「う……おおおお――――ッ!!」

 

咆哮と踏み込み。 一度強く捻った全身を、弾丸のように螺旋回転させつつ突進し、揺らめくシルエットの輪郭に向け、左手を大きく振り出す。

宙に斜めラインを描いて飛翔した光の刃が、不可視の何かに命中し、激しくスパークを散らし、隠れた死銃を引きずり出す。

時計回りに旋転する身体の慣性と、重量を余さず乗せた右手の光剣を、左上から叩き付けた。

二刀流重突進技、《ダブル・サーキュラー》。

エネルギー刃は、死銃の右肩口を深々と切り裂き、そのまま胴を斜めに断ち切り、左脇腹から抜けた。

分断されたアバターと引き千切られたぼろマント、そして青白い炎が、満月の中をゆっくりと舞う。

俺は、死銃から少し離れた場所に着地した。

僅かに遅れて、細い金属針が――エストックが砂の上に突き刺さった。

膝を突いた俺の耳が、ごく僅かな囁き声を捉えた。

 

「…………まだ、終わら……ない。 終わらせ……ない。 あの人が……お前たちを……」

 

この言葉を最後に、死銃のアバターから、【DEAD】のタグが浮き上がった。

死銃は、完全に活動を停止させた。

俺はゆっくり身体を起こし、横たわる死銃の死体を見下ろした。

 

「いや……、終わりだ、ザザ。 共犯者もすぐに割り出される。 《ラフィン・コフィン》の殺人は、これで完全に終わったんだ」

 

身を翻し、ユウキの元に向かった。

 

「ありがとう。 助かったよ」

 

「どう致しまして。 これで終わったね」

 

「ああ、完全に終わったな」

 

「シノンさんの所に向かおうか??」

 

「そうだな。 全て終わった事を伝えないとな」

 

俺とユウキは満身創痍の身体で、砂漠を西に歩き始めた。

何百歩、何百メートル進んだだろうか。

そこには、スコープの失われた大型ライフルを抱えた狙撃手の少女が、穏やかに微笑みながら立っていた。

 




死銃の言葉づかい難しい^^;
ユウキちゃんが、サポートに回ったね。
戦闘が、これしか書くことが出来なかったんだけど^^;
文才が欲しいですね。

てか、ユウキちゃん。 何時の間に《ナイフ作製》スキル取ってたんだ!?
それに、二人の主武装が重い剣だった(笑)

ご意見、ご感想、評価、よろしくお願いします!!






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