ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

GWばたばたしてまして、更新が遅れました。
ごめんなさいm(__)m

書き上げました。

誤字脱字があったらごめんよ。

それではどうぞ。


第78話≪BoB本戦開始≫

昼食を食べてから数時間後。

俺たちは前日のようにバイクに跨って自宅を出て、御茶ノ水の総合病院がへ向かった。

バイクを停めると入院病棟三階に足を向けた。

 

指定された病室のドアをスライドさせると、病室内には安岐さんが待っていた。

文庫本に眼を落していた安岐さんは、読んでいたページを閉じて微笑んだ。

 

「いらっしゃい、桐ケ谷夫婦。 今日もよろしく!」

 

「よ、よろしく」

 

「今日もよろしくお願いします」

 

俺たちは会釈してから、病室に足を踏み入れた。

安岐さんはニコッと笑い、

 

「さ、桐ケ谷夫婦。 電極貼るから脱ごうか」

 

「「はい」」

 

「今日はすんなり脱ぐのね」

 

安岐さんは『ちぇー』と言っていたが。

ベットに横になると、電極を上半身にペタペタと貼られた。

 

「それじゃあ、今日も4~5時間位潜りっぱなしだと思うので」

 

「二人の体はじっくり、じゃなくて……しっかり見てるから、安心して行ってらっしゃい」

 

「「安岐さん!!」」

 

俺たちが言うと、安岐さんは舌をぺろっと出し、笑みを浮かべた。

それからアミュスフィアを頭に被せ、電源を入れると、スタンバイ完了を告げる電子音が響いた。

 

「木綿季。 また《向こう》で」

 

「うん。 気を付けてね」

 

「「リンク・スタート」」

 

俺たちが叫ぶと、遮断されていく五感の彼方で安岐さんの声が聞こえた。

 

「行ってらっしゃい、《英雄キリト君とお姫様》」

 

………………なぬ。

と思う間もなく、俺たちの意識は現実世界を離れ、銃の世界に誘われていった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

俺が降り立ったのはGGO世界の首都《SBCグロッケン》の北端、総督府タワーに近い路傍(ろぼう)の一角だった。

黄昏(たそがれ)色の空をバックに、賑やかなホロネオンの群が流れていく。

その殆どは、現実世界に実在する企業の広告だ。

それらの中でも一際目立つのは、間もなく開催される《第三回バレッド・オブ・バレッツ》大会の告知であった。

俺は息を吐きながら顔の向きを戻すと、無意識の動作で肩に掛かる髪を背中に払った。

それに気付き己の仕草にげんなりするが、アバターになれたという事で無理矢理納得する。

視線の先には、長い黒髪の少女が周りをきょろきょろ見ている。

少女は俺を見つけ、駆け寄って来た。

 

「見つけた」

 

「見つかりました」

 

すると周りから、『おい、バーサク姉妹だぜ』、『最強姉妹じゃん』、と言う声が聞こえてくる。

こう言われる理由は昨日の予選トナーメントで、対戦相手の銃から放たれる銃弾を光剣で斬りまくり、特攻して勝負を決めたことが周知にされているからだろう。

俺とユウキは顔を合わせて苦笑いをした。

 

「もう有名人だな」

 

「ボクたちの、昨日の試合が広まってるね」

 

俺たちは、総督府を目指して足を進めた。

道中を歩いている時、首にサンドカラーの長いマフラーを巻き、水色の髪をした少女を見つけた。

彼女の背後まで移動し、名前を呼んだ。

 

「よ、シノン」

 

「こんにちは、シノンさん」

 

マフラーの尻尾がぴたりと止まり、水色に髪が僅かに逆立つ様は、まさしく猫のようだ。

右足を軸にして少女は振り向き、

 

「キリトとユウキか。 今日の本戦よろしくね」

 

「よろしく」

 

俺が言うと、シノンが一人事のように、

 

「昨日の試合やっぱり決闘何か受けないで、あんたの頭を吹き飛ばせばよかったわ。 何で受けてしまったのかしら。 チャンスは一度しかなかったけど、それを不意打ちに回していれば勝てたんじゃないかしら。 でも、あの時の判断は正しかったはずよ。 いや、やっぱり間違っていたかもしれないわね……」

 

ユウキは、遠慮がちに声を掛けた。

 

「……シノンさん。 ボクたちは総督府に行くけど、一緒に行かない?」

 

シノンはハッとして、

 

「ええ、一緒に行きましょうか」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

総督府ホールの一階端末で本戦エントリーの手続きを済ませた後、総督府地下一階に設けられた酒場で時間を潰すことにした。

天井に設けられた幾つもの大型パネルモニタが、眩い原色の映像を流している。

俺たちは窓際のブース席に座り、アイスコーヒーを注文した。

金属テーブルの中央にガチャリと穴が空き、奥からコーヒーが注がれたグラスが出現した。

コーヒーを一口飲み、俺が口を開いた。

 

「本戦のバトルロイヤルって、同じマップに三十人がランダムに配置されて、出くわしたら戦って、最後の一人が優勝って事でいいんだよな?」

 

「シノンさん、レクチャーお願い出来る??」

 

シノンは呆れたように、

 

「貴方たち、運営が参加者に送ってきたメールを読んでいないの?」

 

「まぁ、読んだは読んだんだけど……」

 

正確には、一度ざっと読み流しただけだが。

ゲーム内で再度しっかり読みこんでおこうと思っていたが、その前に熟練者(ベテラン)のシノンに直接レクチャーして貰った方が早い……などとは断じて思っていないぞ。

 

「ボクたち昨日は、ちょっと時間が無くて……」

 

「もしかして、貴方たちって一緒にs……ごめんなさい、マナー違反ね」

 

「気にしてないから大丈夫だ」

 

シノンはグラスをテーブルに置き、一息吐いてから、本戦のルール説明を開始してくれた。

 

「本戦はさっきキリトが言った通りよ。 参加者三十名による同一マップでの遭遇戦。 開始位置はランダムで、どのプレイヤーとも最低千メートル離れているから、いきなり目の前に敵が立っている事はないわ。 本戦のマップは直径十キロの円形。 山、森、砂漠、川ありの複合ステージだから、装備やスターテスタイプでの一方的な有利不利は無し」

 

「ちょっと、ちょっと待て。 十キロもか!?」

 

浮遊城アインクラッドの第一層と同じサイズだ。

つまり、一万人が入ることが出来るあのフロアに、三十人が千メートルも距離を開けて配置されるということだ。

 

「……ちゃんと、遭遇出来るのか? ヘタをすると、大会時間終了まで誰とも出来わさない可能性もあるぞ……」

 

「銃で撃い合うゲームだもの、それくらいの広さは必要なのよ。 スナイパーライフルの射程は一キロ近くあるし、アサルトライフルでだって五百メートルくらいまで狙えるわ。 狭いマップに三十人も押し込めたら、開始直後から撃ち合いになって、あっという間に半分以上が死んじゃうわよ。 貴方たちは、銃弾を光剣でぶった斬りそうだけどね。――でも、キリトが言った通り、遭遇しなきゃ何も始まらないしね。 それを逆手に取って、最後の一人になるまで隠れていようって考える奴も出てくるだろうし。 だから参加者には、《サテライト・スキャン端末》っていうアイテムが自動配布されるの」

 

「何だそれは?」

 

「十五分に一回、上空を監視衛星が通過する設定よ。 その時全員の端末に、全プレイヤーの存在位置が表示されるのよ。 マップに表示されている輝点に触れれば、名前まで表示されるおまけ付き」

 

ユウキがシノンに聞いた。

 

「一箇所に隠れられる時間は、十五分が限界ってこと?」

 

「そういうことね」

 

「そんなルールがあるなら、スナイパーは不利じゃないか? 茂みに隠れてじーとして、只管(ひたすら)ライフルを構えているんだろ?」

 

俺がそう言うと、シノンは鼻を鳴らした。

 

「そうでもないわよ。 一発撃って一人殺して一キロ移動するのに、十五分もあれば十分すぎるわ。 今度こそあんたの眉間に、へカートの弾丸を撃ち込んであげるわ」

 

「さ……さいですか」

 

最後に、俺が今までの情報を纏める。

 

「つまり、試合が始まったら兎に角(とにかく)動きながら敵を見つけて倒して、最後の一人まで頑張る。 十五分ごとに全プレイヤーの現在位置が手元のマップ端末に表示されて、誰が生き残っているか判るってことか??」

 

「その理解で間違っていないわ」

 

シノンは左手首に装着した、ミリタリーウォッチを見て時刻を確認した。

俺たちもその動作に釣られて確認をする。

本戦スタートまで、残り一時間を切った所だった。

シノンは笑みを浮かべた。

 

「もうレクチャーは十分ね」

 

俺たちは頷いた。

 

「そう。 じゃあ、待機ドームに移動しましょうか。 装備の点検やウォーミングアップの時間がなくなっちゃう」

 

「「ああ(うん)」」

 

そう言ってから、俺たちは席を立ち上がった。

酒場の隅にあるエレベータまで移動し、シノンは下向きのボタンを押した。

金網がスライドし、鉄骨の箱が現れる。

それに乗り、俺が一番下のボタンを押す。

シノンが言った。

 

「二人とも最後まで生き残るのよ。 特にキリト。 あんたとはもう一度勝負したいから、私以外の奴らに撃たれたら許さないからね」

 

「わかった」

 

「むー、ボクのこと忘れてない」

 

「ユウキもことも警戒しているわ。 貴方たちは、『最強姉妹』って言われているからね。 昨日の試合だけで二つ名が付けられるなんてね」

 

二つ名を付けてくれるのはありがたい事なんだが、なんか複雑だ。

てか、セット扱いなのね。

シノンの言葉が終わると同時に、エレベータが乱暴に停止した。

俺たちは、硝煙の臭いがする控え室に踏み込んだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

控え室に入った後シノンと別れ、控え室の一番端に腰を下ろし、今後の事を話し合う。

 

「一回目のサテライト・スキャンが終わったと同時に、俺はお前を探しに行く」

 

「了解したよ。 ボクもスキャン後、キリトを探しに向かうね」

 

「合流してから、《死銃》との接触を計ろう」

 

「そうだね。 犠牲者が出る前に動かないと」

 

俺たちはシノンに、【Sterben】の事を話していない。

《笑う棺桶》残党、SAO帰還者、【Sterben】。――通称《死銃》が、現実世界で死を(もたら)すと確信が出来ないからだ。

それに《死銃》の可能性がある三人と俺は、殺し合った事があるはずだ。

だからこそ本戦フィールドでもう一度接触して、奴の正体をはっきりさせてから、この銃の世界で何をやっているかを聞き出さなければならない。

そして、昔の因縁に決着を付ける。

 

「……和人」

 

気付くと、ユウキが俺の顔を覗き込んでいた。

 

「すまん。 少し考え事を」

 

「和人の考えている事が解るよ。 決着を付けようね」

 

「ああ、そうだな」

 

ユウキは、俺の手を優しく握ってくれた。

それから数分後、俺たちは立ち上がり、武装してから本戦の開始を待った。

残り時間は、後十秒。

十秒後。 俺たちの体を青い光が包み、本戦フィールドに転送した。

今、BoB本戦が始まろうとしている。

 




最強姉妹が降臨しましたね(笑)
最後のユウキちゃんの声は、周りに聞こえていなかったということで。

さて、本戦が始まりましたね。

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