ソードアート・オンライン ~黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

書きあげました。

誤字脱字があったらごめんよ。

それではどうぞ。


第76話≪BoB予選開始≫

総督府に向っている途中で、俺は女の子に声を掛けた。

 

「あの、すいません」

 

女の子はくるりと振り向き、

 

「どうしたの?」

 

俺とユウキは、顔を合わせてから頭を下げた。

姉妹と偽ったことを謝るために。

 

「「ごめんなさいッッ!!」」

 

女の子は、俺たちが頭を下げた事に驚いていた。

 

「ど、どうしたの!!??」

 

頭を下げながら俺が答えた。

 

「……俺たちは貴方を騙していました。……実は俺、男なんです……」

 

「ボクたち、本当は恋人なんです……」

 

「……えっと。 どういう事か説明してくれる??」

 

俺たちは包み隠さず、これまでの事を話した。

女の子は腕を組み、

 

「なるほどね。 其処に私が通りかかったということか。 あと、姉妹じゃなくて恋人なのね。――まぁいいわ。 許してあげる」

 

「「ありがとう」」

 

俺たちは頭を上げた。

 

「約束して。 絶対に予選を通過して、本戦まで上がってくること」

 

「おう、約束するよ」

 

「うん、約束するね」

 

女の子はウインドウを開き、ネームタグをスライドした。

表示された文字は――【Sinon】。 性別はF(フィーメル)

俺たちもネームタグをスライドさせる。

 

「キリトとユウキね。にしてもあんた達、やっぱり恋人より姉妹に見えるわね」

 

「まぁ、姉妹で通そうと思っていたからな」

 

「この世界では、キリトとボクは双子に見えるしね」

 

そう言ってから、シノンと握手を交わした。

数分歩いた後、眼の前に途轍もなく巨大な金属のタワーが屹立していた。

おそらく、この建物が総督府だろう。

内部は広い円型のホールだった。

正面モニターには、《第三回バレット・オブ・バレッド》のプロモーション映像が映し出されている。

右端に設置させている端末まで足を進め、一台の前に赴く。

シノンがひょこっと顔をこちらに向け、

 

「これで大会のエントリーをするの。 よくあるタッチパネル式端末だけど、操作のやりかた大丈夫そう?」

 

ユウキが、シノンの質問に答えてくれた。

 

「大丈夫だと思うよ。 解らなくなったら聞くね」

 

俺は端末に眼を向けた。

エントリー者名に《kirito》。

職業欄は空欄にした。

指先でメニューを辿ると、画面フォームに【以下のフォームには、現実世界におけるプレイヤー本人の住所等を入力してください。 空欄や虚偽データでもイベント参加は可能ですが、上位入手プライスを受け取ることはできません】という内容が表示された。

とても魅力的な誘いではあったが、今回の目的は《死銃》なるプレイヤーに接触し、俺たちの眼で見極める事だ。

ゲーム内でリアル情報を晒すのは賢明な判断ではない。

仮に《死銃》なるプレイヤーが運営側の人間で、登録データにアクセスすることが出来るかもしれないのだ。

それにこのゲームは胡散臭すぎる。

俺はフォームを空欄にしたまま、一番下の《SUBMIT》ボタンに触れた。

エントリー完了を知らせる画面と、予選トーナメント一回戦の時間と日付が表示された。

 

「終わった?」

 

「うん、終わったよ」

 

「おう、終わったよ」

 

三人は端末から離れた。

シノンが言葉を発した。

 

「貴方たちは、何処のブロック?」

 

「えっと、俺はFブロック。 Fの三十七番」

 

「えっと、ボクはCブロック。 Cの十五番」

 

「キリトとは決勝で当たるわね。 絶対来なさいよ」

 

「了解だ」

 

俺たちは総督府一階ホールの奥へ向かってから、エレベータに乗り地下【B20F】で降りた。

床、柱、壁は全て黒光りする鋼板か、赤茶けた金網。

ドームの壁際は無骨なデザインのテーブルが並び、頂点分には巨大なホロパネルで【BoB3 Preliminary】という文字と、残り二十分という文字が表示されていた。

 

「さて、控え室に行きましょうか? 貴方たちも、さっき買った戦闘服に着替えないとね」

 

「「ああ(うん)」」

 

「よかったわ。 キリトが男だと解らなかったら、一緒に着替えていたわ」

 

「大丈夫だよ。 ボクがそんな事させなかったから」

 

「……まぁ、うん、そうだな」

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦

 

戦闘服に着替えてから、壁際のデーブルの椅子に腰を下ろした。

BoBのレクチャーをしてくれるらしい。

 

「最低限のことだけ説明しておくね」

 

予選までのカウントは十分を切っている。

 

「カウントがゼロになったら、全員予選一回戦の相手と、二人だけのバトルフィールドに自動転送されるの。 フィールドは一キロ四方の正方形。 地形、天候、時間はランダムね。 決着したら勝者はこの待機エリアに転送されるわ。 次の対戦者が決まっていれば、すぐに二回戦がスタートね。――質問はある??」

 

俺とユウキは首を横に振った。

 

「キリト、もう一度言うけど決勝まで来るのよ。――最後に教えてあげる」

 

「最後?」

 

「敗北を告げる弾丸の味」

 

俺は思わず微笑してしまった。 苦笑いなどではなく、本心からの笑みだ。

こういうメンタリティの持ち主は嫌いではない。

 

「……楽しみだな。 しかし、君の方は大丈夫なのかい?」

 

シノンは『フン』、と小さく息を吐き出した。

 

「予選落ちなんかしたら引退する。 今度こそ――」

 

広いドーム犇く好敵手たちを凝視するシノンの瞳が、強烈な瑠璃色の光を放った。

 

「――強い奴らを、全員殺してやる」

 

――この台詞は、彼女の心の奥底から絞り出すように聞こえた。

俺たちの耳が、近づく音を捉えた。

一直線に歩み寄ってくるプレイヤーは、銀灰色の長髪を垂らした背の高いプレイヤーだった。

 

ダークグレーの迷彩を上下に身に纏い、肩にはアサルトライフルを下げている。

戦歴の兵士というよりは、特殊部隊の隊員といったところか。

男はシノンを真っ直ぐ見て、口許に笑みを零した。

 

「遅かったねシノン。 遅刻するんじゃないかと思って心配したよ」

 

シノンは微笑を浮べて応じた。

 

「こんにちはシュピーゲル。 ちょっと予想外の用事で時間取られちゃって。 あれ、でも……あなたは出場しないんじゃなかったの??」

 

男は照れくさそうに笑いながら、片手を頭に置いた。

 

「いやあ、迷惑かと思ったんだけど、シノンの応援に来たんだ。 試合も大画面で中継されるしさ。 それにしても、予想外の用事って?」

 

「ああ……ちょっと、そこの二人を案内しててね」

 

「こんにちは」

 

「どーも、そこの人です」

 

「あ……ど、どうも、はじめまして。 ええと……お二人はシノンさんのお友達さんですか?」

 

シュピーゲルは外見に似合わず、礼儀正しい性格のようだ。

『ここでどう答えると面白いかなぁ』と思いながら言葉を探していたら、シノンが短く吐き捨てた。

 

「騙されちゃダメよ。 二番目に挨拶をした奴は《男》よ」

 

「えッ!? 姉妹じゃなくて」

 

眼を丸くするシュピーゲルに、俺は普通に名乗った。

てか、姉妹に見えたのね。

 

「あー、キリトと言います。 男です」

 

「お、男……。 え、ていうことは、えーと……」

 

シュピーゲルは困惑した顔で、俺とシノンを交互に見る。

ユウキが『なるほどね』、と手を打ち、

 

「大丈夫だよ、シュピーゲルさん。 この人はボクの《婚約者》だから」

 

「ッ!?……えーと、その、あの」

 

ユウキは『やっぱりね』と言っていたが、何がやっぱりなのか??

婚約者という言葉を出した途端、シュピーゲルが安堵したような……。 気のせいかな。

 

ドーム内に控えめのボリュームで流れていたBGMがフェードアウトし、代わりに荒々しい音楽が響き渡った。

次いで、女性の合成音声が大音量で響き渡った。

 

『大変長らくお待たせしました。 ただ今より、第三回バレッド・オブ・バレッツ予選トーナメントを開始致します。 エントリーされたプレイヤーの皆様は、カウントダウン終了後に、予選第一回戦のフィールドマップに自動転送されます。 幸運をお祈りします』

 

ドーム内に盛大な拍手と歓声が沸き起こった。

シノンは立ち上がり、

 

「二人とも本戦まで来るのよ。 私に案内までさせたんだから」

 

「おう、任せろ」

 

「うん、任せて。 絶対に本戦まで行くから」

 

俺とユウキは、転移に備える為前を向いた。

カウントダウンがゼロになり、体を青い光の柱が包み込み、たちまち視界の全てを覆い尽くした。

 

 

Side ユウキ

 

ボクの眼の前には薄赤いホロウインドウで、【yuuki vs ジェネラル将軍】。

将軍将軍?? 何で同じことを言ってるのかな?

ウインドウの下には、【準備時間:残り58秒 フィールド:深き森の中】と書いてあるね。

さてと、準備しなきゃね。

えっと、まずは主武装を《ムラサメ・斬》っていう光剣、副武装を《F・Nファイブセブン》にセットと。

キリトとボクって、初戦から光剣を振り回すのかな??

 

残り時間がゼロになり、転送エフェクトがボクを包んだ。

放り出された場所は、深い森の中だ。

このフィールドは、木が沢山あって視界が悪いね。

隠れる場所も沢山あるしね。

う~ん、取り敢えず全力で走ってみようかな。

走っていたら、予測線がボクの体に伸びた。

次の瞬間、弾丸の嵐がボクを襲う。

 

「きゃ!」

 

ボクは近くの木の柱に隠れた。

さっきのが、シノンが言っていた《フルオート射撃》かな。

約二十メートル離れた所から銃撃してるよ。

 

「う~、どうしよう。 近づけないよ」

 

途中でハンドガンを撃ったんだけど、全く違う方向に飛んで行ったし。

本当にどうしよう……。 ボクが今使える武器は、《ムラサメ・斬》しかないよ。

この状況で、キリトならどうするんだろう??

そう言えば転移する直前に、『みんなが吃驚することしようぜ』って言ってたっけ。

う~ん……あ、そう言えばALOでは魔法が切れたっけ。

予測線上にタイミングを合わせて光剣を当てれば、銃弾は切れるんじゃないかな……??

やってみる価値はあるよね。

将軍さんは何処に居るのかな??

ボクは耳を澄ませて将軍の位置を探った。

……此処から真っ直ぐ、十五メートルの所に隠れているね。

 

ボクは右腰のベルトから《ムラサメ・斬》を外した。

親指でスイッチをスライドさせ、青色に輝く刃が長く伸びた。

 

「よし!!」

 

ボクは一直線に、将軍目掛けて走り出した。

その途中で、六本の弾道予測線がボクの体に伸びてきた。

そこに光剣の刀身を当て、寸分の狂いもなく遮った。

光剣を閃光のように動かし、二弾、三弾と銃弾を全て弾いていく。

弾くと同時に、耳元でプラズマエネルギーによって弾かれる衝撃音がする。

遂に、将軍さんが弾切れになった。

ポケットから予備のマガジンを取り出そうとするけど、ボクの方が速い。

 

「ま、マジかよ!!??」

 

残り二メートル。

ボクは突進の勢いを弱めずに、全力の突き。

SAOの世界で、ボクとキリトが好んで使っていた片手剣ソードスキル単発重攻撃《ヴォーパルストライク》。

光の刃が将軍さんの胸を貫通し、【Dead】の文字が浮かび上がった。

 

「つ、疲れた……。 あ、途中でハンドガンを使うの忘れた……」

 

ボクは光剣を左右に振り払い、スイッチを切る。

光剣を右腰のスナップリングに吊った。

勝利を告げるウインドウが浮かび上がると、ボクは元の控え室に戻された。

 

Side out

 

 

俺が待機エリアに戻ると、ちょうどユウキの試合も終わった所であった。

俺はユウキに歩み寄った。

 

「勝ったか?」

 

ユウキは、Vサインで応じた。

 

「俺も勝ったぞ」

 

シノンはまだ戻って来ていない。ということはまだバトル中だということだ。

シノンが映っている場所を探している、その時だった。

俺とユウキの後ろから声がしたのは、低く乾いた、それでいて金属質な響きのある声だ。

 

「おまえたち、本物、か」

 

「「ッ!?」」

 

反射的に俺たちは跳び退き、振り向く。

全身ボロボロに千切れかかったダークグレーのマント。

目深に被ったフードの中には漆黒で、その奥の眼だけが仄かに赤く光る。

俺は一瞬ゴーストと見間違えてしまった。

だが、この世界にゴーストが居るはずがない。

俺はこのプレイヤーの足元を確認した。

すり切れたマントの裾から、ほんの少しだけ爪先が覗いていた。

俺は大きく息を吐いた。

隣に居るユウキも同様だ。

俺たちは、何時でも放剣出来る状態だ。

 

「本物って……どういう意味だ? あんた誰だよ?」

 

「そうだよ。……答えて欲しいなら名乗りなよ」

 

不快で切れ切れの声が響く。

 

「試合を、見た。 お前ら、剣を、使ったな」

 

「あ……ああ、別にルール違反じゃないだろ」

 

俺の声は掠れていた。

ユウキの声は力強かった。

 

「何でそんなことを聞くの。 貴方は何者?」

 

ボロマントはCブロックと、Fブロックに載っている俺たちの名前を指し、

 

「この、名前、あの、剣技。……お前たちは、本物、なのか」

 

俺も強気で出た。

 

「解らないな。 本物って何のことだ?」

 

「本物だとしたらどうするの?」

 

こいつはワザとグローブの隙間を覗かせた。

其処にはタトゥーが刻まれていた。

図柄は、カリカチュアライズされた西洋風の棺桶。

蓋にはニタニタ笑う不気味な顔が描かれている。

その蓋は少しだけずらされ、内部から白い骸骨の腕が伸びて、手招きをしている。

このエンブレムは、殺しを快楽とする集団《笑う棺桶》の図柄だ。

此処で導き出される答えは一つ。

このボロマントはSAO帰還者で、《笑う棺桶》に属していたという事だ。

ユウキが居てくれなかったら、俺は危険な状況に陥っていたかもしれない。

ボロマントが低く囁いた。

 

「……本物、だったら。 いつか、殺す」

 

この言葉は、ゲーム内のロールプレイだとは全く思えなかった。

ボロマントは音も無く遠ざかって行き――唐突に消滅した。

俺たちは大きく息を吐いた。

 

「もしかしたら、あれが《死銃》かもね」

 

「……ああ、その可能性は高いかもな……」

 

あの声は、ボイスレコーダで聞いた声と限りなく一致する。

 

「これは本選で調べる必要があるね」

 

「だな。――さっきは助かったよ、ありがとう」

 

「旦那を守るのは妻の役目だからね」

 

「いや、それは逆じゃないか」

 

「だから、和人はボクを守ってね」

 

「ああ、絶対に守る」

 

張り詰めていたものが解れていく、そんな気がした。

俺は改めて誓った。

命を賭けて、木綿季を守ると。




ユウキちゃんの戦闘が、キリト君と同じになってしまった……。

戦闘スタイルが似ているっていうことで勘弁してね(>_<)

さて、死銃と接触しましたね。
シノンには死銃の事は話していないということで。
あと、ブロックは本選に出る為に分けたということで。

ご意見、ご感想、評価、よろしくお願いします!!

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